204X年。世界は、変わり続けていた。
フルダイブ型VRや円盤型飛行船、脳内にチップを埋め込むこと、人体の冷凍保存とそれの解凍、クローンの製造。ナノマシンも開発され、一般人はこのナノマシンに日々メディカルチェックを受けるようになって、定期健診も必要とされなくなった。論理的にいけば、脳移植だってできる。
それはまさに諸行無常であった。
つまりはどういうことか。世界は常に変わり続けていくということ。一時も、全く同じ状況なんて存在しないということ。そのような意味である。
そもそも、このようなマシンなどが作られた原因があるのは2030年代後半のことである。
その当時、世界は転機を迎えた。AIが、人間の知能を越えたのだ。
だから、AIは次々と新しい物が考え出し、またそれと同時に実用化もしていった。
そのせいと言うべきだ。あっという間に世界は変わっていった。
昨日まで空想上にしかないものだと思われていたものが、今日には実用化されているような世界だった。
建物なんかも、より良い建築方法や、新しく生まれた技術などを用いて建てられた物にどんどん変わっていって、都市部で言うと、数年前の建物でさえ、激減してしまったのだ。
AIを通じたテクノロジーの進化は絶えず起こっていた。
だが、そんな中にその変化についていけない人々もいた。
その中の一人、志摩陽月(しまひつき)。41歳男性。趣味は無い。
彼は、今まで普通の生活を送っていた。
極々一般的な程度の月収で、のほほんとした生活を送っていた。
だが、2030年代後半のその世界の転機が訪れたときのことだ。
彼は、職を失った。
機械の労働の方が人間の労働より安価になったためだ。
勿論、企業側は安価な機械を使い出す。
それで犠牲になるには、安価な機械に仕事を奪われた人間達だったのだ。
日本から最低限度の衣食住は提供されるので、生きることはできる。
ただ、仕事が無くなったのだ。仕事をしてる理由はだいたいお金稼ぎである。
自分の為、家族の為、誰の為であっても良いものの、最終的には自分の満足感に繋がるものだ。
彼は仕事を自分の為にやっていた。日々の娯楽をするために、必要な資金をせこせこと稼いでいたのだ。
だったのだが、無職になり収益がなくなり、娯楽ができなくなり、生きる希望を失う。
安価な機械が登場する度、自殺者は増えるというのだ。
何事にもお金は必要で、普通の娯楽を求めている人々は生きる希望を見出だせないまま死んでいってしまうのだ。
だが、彼は職を失ってから外に出なくなったのだ。
生憎、彼の住んでいる町は、"旧人街"と言われる場所になってしまったのだ。
"旧人街"というのは、2030年代前半の暮らしをしている"旧人"が住んでいる街である。
外の変化に耐えられない人だったり、外の情勢を知らない元からここに住んでいる者が、今、"旧人"として生きている。
彼は熟(つくづく)不運な人であった。
職を失い落ち込んで引き篭もっていたら、いつの間にか住んでいる町が"旧人街"となってしまったのだ。
そして、彼は、僅かな貯金を崩しながら生きていたのだ。
一日一日、確実に、死へと近付いていた。
ハーメルン初投稿!
小説(っぽいものは)3年前以上から書いていましたが、よくここまで書けるようになったものだと思いました。
追記: 主人公はちょいと適応力高すぎかもしれないです。不自然なところありまくりかもしれませんが、生暖かい目でご覧頂ければ嬉しいです。