黒い瞳を持つ美少女がこちらを向いていた。
深い、黒い、澄んだ瞳。くりくりとしていて、愛らしくもある。目にはハイライトが灯っていた。昔見た自分の目は、ハイライトなんて、全く無かったはずなのにだ。
そして、長く伸びた真っ黒な髪の毛。烏の濡羽色と言うには少しボサっとしているせいで言いにくいのだが、逆にそのボサボサしている感じが絶妙であって、もうその絶妙さと言えば他に表現できる物がない。ともあれ、この髪型は俺の完全に好みなタイプであることは確かであった。。
肌は日本人的な色だとは見て取れるものの、少し病弱であるような雰囲気を与えている。そんな雰囲気を持ってしまうのに、同時に健康だと見てわかる感じである。
鼻、というのは美しさを邪魔させないことが必要だと思っている。いくら凝視していても、全くゲシュタルト崩壊のしないような、美しさを保っている。いや、今までは他のパーツの邪魔しないことこそが良いことだと思っていたのだが、この鼻を見てしまうと、最早鼻は必須で、如何に重要であるかが分かってくるような、今までの世界観を一気に破壊してくるような、そんな小悪魔的な存在に見えてくるようになった。
唇は淡いピンク色で、ぷくっとしている。それは今までキスした事をリセットし、こんな唇とキスをしたいと思えてくるような、サキュバスが持つべきし妖艶な唇であった。だが、この唇が俺のものになったのかと思うと、少し残念に思う。俺がなるんじゃなく、こんな彼女が欲しかったと思う他ないのだ。
頬に角張りは無く丸みを帯びている。それは、唇の小悪魔的な物はなく和みであると俺は感じた。というのも、角張りは少々攻撃的だと思う。その攻撃的な角張りというのは俺好みではなく、ただ丸みを帯びたこの頬には、そんな角張りさえも丸くしてしまうような包容力さえも垣間見える。その包容力こそ和みであると俺は考える。そして、少し笑ってみせるると、くいっと上がった和みに、ただただ視線を向けることしかできないでいる。
その全ての個々のパーツが極めて秀麗な上、さらにそれが黄金比率的に組み合わさっていて、これ以上の美少女はこの地球上のどこを歩き回っても見つけ出すことはできないと言っても過言では無いくらいのその顔を俺はただ只管(ひたすら)覗いていた。
けれども、俺には思うことがあった。
俺が美少女になるんじゃなくて、美少女を彼女にしたいなぁ。と言った模様だ。
だが、そもそも元に戻れるかすらもわからないのに、彼女を作ろうなど、野暮だとも思った。
取り敢えずは、冷静になろうと思う。
まず、元に戻れるという考えは、現実逃避であると確信している。さらに、これから一生女性として生きていく破目になる可能性がある事も考えている。
とはいえ、まずは俺が女の子になってしまった原因を探らないといけない。
昨日の食事は、配給されたものであった。金持ちでも無い普通の人なら、どんな人でも全員受けとれる食事だ。だから、多分大勢の人がこの配給された食事を食べているはずだ。食事が原因なら他にも女の子になってしまった人がいるのではないかと思ったのだ。
取り敢えず○ちゃんねるを開き、そういうような事例があるかを調べることにした。
旧V○Pを見てみたのだが、そういうスレッドは全く建っていなかった。
では、何が原因で女の子になったのだろうか?
昨日やったことと言えば……。
朝起きて、朝食を食べ、瞑想をし、昼食を食べ、瞑想をし、夕食を食べ、瞑想をし、寝た。所々に衛生的、生理的に必要な入浴や排泄等のことはするものの、それまでだった。
ならば、一体どうして女の子になってしまったというのだろうか……?
他に考えられる原因として挙げられる物は、TS病か何かの病気に罹ったとか、実は俺は女の子で合っていて人格障害によって男として生きてきたという想像の人格が表に出てきたとか……?
いや、後者の理由であることは絶対ないと確信する。その確信した理由とは、男だった時の証明となる保険証を持っていたからだ。とまぁ、女の子になってしまいそうなことなんて考えれば幾らでも存在するはずだが、結局俺が女の子なってしまった原因というのはわからなかった。
ただ、このまま放って生きること不可能である。それは何故か。日本国民にしか配給が無い上に、その配給は、本人、若しくはその保護者のみしか受け取りができないのであるからだ。それは法律により禁止されていることだ。
男だった時の俺は、確実に日本国民の証明になる戸籍か住民票か何かがあったのだが、女の子になってしまった俺には、証拠が無いため配給を受け取ることができないのだ。
配給を受け取れないということは、つまり餓死を待つ生活を送ることになる。
結局は、俺だけではどうすることもできない
そこで、特に行くような場所も無かったので、貴重な友人が居る病院に行くことにした。
自分と証明できるものはないのだが、その貴重な友人であり熊野(くまの)さんならきっと分かって、俺が志摩陽月であると証明してくれるはずだ。
いや、待てよ……。
服が、無いッ!!!
この体には、俺の服は大きいのだ。
とはいえ、餓死しない為には背に腹はかえられない。このまま誰にも相談せずに死ぬより、少しの恥ずかしさくらい我慢する方が良い!
ぶかぶかな服を着たままだが、着替える服もないので、外に出ようと決め、階段を下り、玄関についたのだが……。
靴の重要性を忘れていた……。
靴がなければ外には出られない。ただ、今の小さな足に合うものは無い。
だが、これも仕方ないことだと腹を括ってぶっかぶかの靴を履き、玄関を出ることにしたのだった。
熊野さんとは、志摩陽月の貴重な友人です。
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