そんな感じの亜種聖杯戦争の物語です。
今回は特段これ自体にストーリーがあるわけではなく、サーヴァントたちの戦闘シーンの予告・オープニングというべきものです。
『戦争は銃火器の時代だ。最早剣や弓や槍で争う時代ではない。まして魔術など』と人は言う。
それが通用するのは、我々が只人の領分で暮らしているからだ。一つ隠蔽の皮を捲れば、そこには只人ならざる者たちが、前時代から続く方法で戦う姿を見ることが出来る。
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女が、少女の生血を啜っている。啜る銀髪の女は
「おい。何してンだ手前……!」
そこに現れたる金髪の男もまたサーヴァント、
「私が『民』に何をしようと、勝手でしょう?」
言うなり暗殺者は軽く手を振る。すると、狂戦士の足下から虎挟みが、鉄杭が、鞭が……様々な拷問道具が生き物のように襲いかかる。
が、狂戦士はその手にした鉞で、軽々とそれらを打ち払った。
「俺の目の前で小娘を■■■■■■■■――!!」
文字通りの意味で、狂戦士の眼の色が変わる。青から赤へ。【狂化】、狂戦士の在り様そのものを示す業である。
狂戦士は激情のままに突進する。踏みしめた足の一歩一歩が、雷光の軌跡のように残像を残す。
「でも、足下がお留守じゃなくて?」
暗殺者が再び手を振ると、狂戦士の足下に虎挟みが出現し、その爪先を捕らえた。
「■■■■!!」
狂戦士は唸り声をあげると、軽くそれを捻り切った。傷にすらない僅か一瞬の足止めでしかないが、しかし、その一瞬で暗殺者には充分であった。
その一瞬で、狂戦士の
「その若き血を私に寄越しなさい! 《
宝具の真名が解放され、あたかも元から其処に在ったかのように、
「■■■■■■――!!」
魔力を滾らせ、宝具を迎撃しに馳せる。軌跡は黄金の光となり、あたかも衝撃波が走るように、空気を揺らす。
※ ※ ※
古今東西の英雄が死して英霊の座に在る。今また魔術師がそれを召喚して使役する。召喚された英霊を特に「サーヴァント」と呼ぶ。
英霊自体がある種の
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その原則に忠実に、この弓騎士は遠距離からの投石を繰り返している。無論、それが可能になるのは、敵の近距離・中距離を召喚主とその手勢……
「印地打ちもこうまで威力があると! 弓矢をも凌ぎますな!」
石が着弾するたび、地面がえぐれ、木は千切れ、爆音のような音すらする。しかし、その石は敵方の召喚主には届かない。召喚主に向かう石は、
膠着状態である。弓騎士は槍騎士やその召喚主に決定打を与えることが出来ずにいる。槍騎士もまた、弓騎士の投石が牽制として機能するため人造生命体達を振り払えずにいる。
先に動いたのは、弓騎士であった。
(これより四投のうちに人造生命体達を退かせるんだ)
簡潔に召喚主に念話を送ると、返答を待たずに投石器に一段と魔力を込め始める。
そして一投。それは最早投石の域を超えている。木の幹を軽く蹴散らし、空気を響かせ、熱と光を帯び、爆音をあげて槍騎士の足下に着弾した。土石と熱風が起こり、地面に大穴が空き、林が薙ぎ倒される。
人造生命体すらたじろぎ咄嗟に飛び退いたが、しかし、槍騎士は微動だにしない。自分に命中しないことを見て取り、その身で余波から主を守ることを優先したのだ。
続けて二投、三投、四投。そのいずれもが槍騎士には命中せず、虚しく大穴を増やし轟音を立てるばかりだ。
「どうした弓騎士! もそっと拙僧に当てて見せよ!」
挑発とも取れる槍騎士の言動に、しかし弓騎士は反応しない。――この四投こそが、宝具の発動要件であるからだ。
「――では仕方ないな」
四投は警告であり、神の寛容を示すものであるから、敢えて外す。それで軍門に降らない相手を、五投目が神の加護を受けて撃ち殺す。それが弓騎士の宝具。
「神意に依って強敵を撃つ――《
放たれた石は、それまでの四投よりも更に強大な魔力を帯び、最早光の弾丸にも見える。だが、それを眼にしながら槍騎士はなお慌てるでもなく、直立不動のまま。ただ、一つの巻物を懐から取り出した。そして、その真名を解放する。
「鬼若忠勇譚が一景――《白紙の勧進帳》」
突然、光弾がただの石に戻り、地に落ちた。
※ ※ ※
宝具は、サーヴァントが真名を呼び解放することによって真価を示す。真名を解放しないそれはただの武具・道具にしか見えないが、一たび解放されれば英霊の偉業・奇跡の地上における再現となる。
或いは大規模破壊、或いは即死、或いは生命奪取。威力規模の大小こそあれ、近代兵器を凌ぐ効果をもたらす兵装を、超人が振り回すのだ。只人の軍勢にどうにか出来るものではない。
確かにサーヴァントを召喚するのは魔術師だ。魔術師とて生身の人間には違いない。限定的だが、サーヴァントを制御する手段もある。だが、結局、サーヴァントを倒せる者はサーヴァントしか居ないのだ。
※ ※ ※
国東の谷間の荒れ地。恐らくは休耕田。そこに二騎のサーヴァントが対峙している。
白馬に跨がり西洋風の鎧姿で顕れたのは
「全力でお相手仕ろう」
剣騎士はまず、粗末な
「剣騎士が手鑓を?」
軽い驚きの表情を見せながらも、二回、三回と繰り出された鑓を騎乗したまま避ける。それで間の開いた一瞬をついた。
「生憎と、貴方ほど世界中に知られた英雄でもないのでな。使える手段は全て使う!――《■■殺しの鑓》!!」
その鑓の真価は単に突き刺すことには無かった。真名を解放した途端、剣騎士の魔力は膨れ上がり、鎧甲までも金色に染め上げる。鑓自体は姿を消す。
「霊基の格が上がった――のですか」
「応。これで単なる剣技でも対抗出来るというもの」
剣騎士は腰に帯びた刀を抜き、騎行者に――いや、騎行者の跨がる白馬に切りかかる。
そも、馬上の騎兵に対して剣の間合いでは不利だ。しかし鑓は先ほど使い切ってしまっている。
前足を狙って横薙ぎに一閃。白馬は身を踊らせてこれを避ける。
すかさず胴を狙って刀を跳ね上げる。騎行者が槍でこれを受け、剣騎士ごと刀を弾き飛ばす。しかし剣騎士もまた、難なく受け身を取って起きあがる。
このように、馬の足を狙って斬りかかること数度。剣騎士の身体能力が上がっているとはいえ、白馬に傷を負わせるには至らない。
「なるほど騎行者――人馬一体の境地だな。戦い甲斐がある」
剣騎士の顔には笑みが浮かぶ。
騎兵に刀で対応しようとするなら、どうにかして馬を倒し騎兵を地面に引きずりおろす他ない。尋常の刀しかその場に無いならば。
「だが、人馬共に倒せばどうであろう?」
そして、仮にも剣の英霊が帯びる刀が、尋常のものであるはずもないのだ。
「薙払え――《
真名解放とともに、剣騎士の刀から衝撃波が放たれた。聖剣ほどの神秘は無くとも、人馬を共に斬り倒すには充分だ。
だが、騎行者とてただの騎兵ではなく、白馬もまたただの馬ではない。
「護るべき者の為に推し進む――《
その白馬自体が宝具である。真名解放とともに白馬は聖なる光を湛え、寧ろ透き通っていくようにすら見える。
衝撃波と、光となった騎馬が激突する。
※ ※ ※
魔術師が英霊をサーヴァントとして召喚し、万能の願望器を賭けて争う。サーヴァントそれぞれが一軍或いはそれ以上に匹敵する戦力であれば、それはもはや単なる個対個の闘争の域を超えた『戦争』となる。
それ故に、願望器――聖杯を賭けた魔術戦は『聖杯戦争』と呼ばれるのだ。
ここに英雄の戦いと、人の弱さについて試みに記録を残そう。
これらのサーヴァントが何者であるかは、オリジナルサーヴァント以外はタグと宝具名でバレバレですが、物語上は続く序章第五節以降で追々具体的に示されます。
なお、このシリーズは
pawooに初出→pixivに纏めて掲出→加筆の上ハーメルンに投稿/pixivにても加筆
という順で公開されています。pawoo上では『国東聖杯戦争』のタグを検索してみてください。