そんな感じの亜種聖杯戦争の物語です。
バートリ家はハンガリー貴族の中でも古い家で、遡ればローマまで連なるだの竜種に連なるだのという
「よくお聞き、エルジェベート。バートリの女は、美しくあらねばならない。美しくあり続けなければならない」
母はよく、幼い頃の私に語って聞かせた。
「そうやって、殿方をバートリの側に繋ぎ止め続けるのですよ。それが貴女とバートリの家を護るのです。美しくなくなったら、いとも簡単に捨てられてしまいますからね」
美しいとはどういうことだろう、と幼い私は疑いもしなかった。何故なら、母も、侍女たちも、兄弟たちも、私の美しさを称えてやまなかったからだ。
――私が私のまま、この美しさを保てばそれで良いのだ。
幼い日から、そのような確信の中で育った。
貴族には責任がある。その最たるものは、その家を保つことだ。だから、私にとって、家の決めた結婚に従うのは当たり前のことだった。
夫となった人物は、ハンガリー宮中伯の息子だった。そもそも夫の家は『成り上がり』ではあったのだけど、それを言い出せばバートリの家に比べれば大抵の家は成り上がりなのだ。だから、彼方にしてみれば旧家の縁戚になり、此方にしてみればより権力に近付くことが出来るというので、互いにそれを良しとしたのだった。(それ故に私は、結婚後もバートリの家名で呼ばれ続けた)
実際、夫はその父に恥じず、有能で勇猛だった。戦えば異教徒をよく防ぎ、政治をすればよく国内を治めた。偶に城に戻れば子も為した。
夫の相手をし、他愛ない晩餐をし、時には道化や魔術師・芸術家などの謁見にも応じ、夫の留守中には領地を代理に視て回る。こうやって「貴族の妻」として生きるのも悪くない、と私は思った。実際、私の美しさが夫を引き止めて血を繋いでいくのなら、私の存在する甲斐もあったのだろう。
だが、ある日、夫が若くして死んだ。その死に顔は、苦しみに歪んだまま固まっていて、生前の美しさを最早留めていなかった。
――人は死ぬ。
そんな簡単な事実が、私を打ちのめした。
死ねば、栄華も美しさも、あっと言う間に喪われる。
嫌だ。
『私が美しくある限りバートリの家は安泰だ』と言われて育った。なら私が美しくなくなったら。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。私は――永遠が欲しい。
※ ※ ※
「……何だ、これは」
未明に
余りに夢見が悪かったのである。
その夢が何であるのかは、仮にも間桐の当主である鶴野にとっては、自明のことである。
「精神の同調……か。あの女と?」
エルジェーベトの、あの
だが、そのことこそが鶴野を苛立たせた。
「あんなものと、同質であってたまるか」
(思えば、
魔術師は通常、『根源』を追求して世代を繋ぐ。次の世代に魔術刻印を引き継ぎ、志を託す。
そのような中にあって、間桐の祖たる
そのような臓硯を、鶴野や父は、『お祖父様』と仰ぐよう強要されていた。無論、実際の世代は更に数代離れている筈だ。しかし、源流刻印の持ち主が生きてそこに在る以上、そのような些事でも異論は許されなかった。
それでいて、蟲蔵で鶴野らに鍛錬を強いる際、臓硯は口癖のように言った。
『間桐の子よ、儂に「根源」を
今にして思えば可笑しな話である。歴代の間桐達は結局、臓硯ほどの秘術など誰も実現し得なかったというのに、この老人は、子孫に命じて自分に栄光を齎せという!
それでも、疑うことなど許されなかったのだ。間桐の魔術刻印は即ち、臓硯の蟲の株分けたる刻印蟲でしかないのだから。
その臓硯が、ある日突然姿を消した。
『御祖父様! 御祖父様を探せ!』
鶴野の父などは半狂乱であったのだが、結局その姿も、その核となる蟲さえも見つけることは出来なかった。
ただ、鶴野はその『遺言』らしき書き付けを見つけていた。
『永遠を手に入れに行く』
それを読み上げると自動発火の魔術が発動し、灰と化した――故に、父はそれを読まないままであった。
(永遠なんて、糞食らえだ)
寿命を引き伸ばし続けた臓硯翁ですら、本当の意味では『永遠』では居られなかった。だから『永遠を探す』などと宣いつつ寿命に負けて消えたのだ――少なくとも、今の鶴野はそう解釈している。
(なのに何故今になって、あんなサーヴァントと)
誰かから奪ってまで自分は永遠で居ようとした。詰まるところ、暗殺者と臓硯翁との共通点はそこだ。そんな事をしても永遠では居られないというのに。
今見た夢のことは誰にも、暗殺者自身にも話すまいと、鶴野は決めた。
※ ※ ※
少し遅めの朝食が始まった。
イン=アインツベルンが根拠地として確保した日出の古民家は、元々は純和式の建物であるはずだが、食事や茶菓を椅子とテーブルでとれるよう、居間だけは板敷きに改装してある。そこに洋式にパンとソーセージ、幾らかの付け合わせを並べ、三人のマスターが席についた。
フラウフェル以外のイン=アインツベルンのホムンクルスは、陪席しない。幾体かがメイド然と部屋の隅に立ち控えているだけである。
(他は召使い扱い、か。元は自分もホムンクルスだろうに、あの女は貴族気取りか)
鶴野は内心で悪態をつく。尤も、貴種を気取っていたのは、嘗ての間桐家も同様であろう。それ故に、彼にもその様な悪態はこの場で言い立てるべきことではないという程度の分別はある。
「さて、この場を借りて報告しておくことがある」
食事に手を着ける前に、
「昨夜の事カ?」
上席に座るフラウフェルが応じた。
「はい。それと、今後の対応について」
――
昨夜の顛末に関する報告は概ねこのようなものであった。それ自体は、鶴野にとっても想像の範囲内である。万一追跡を回避できていないのであれば、今頃は
問題は、今後の聖堂教会の対応に関する説明である。
「事態の変化を受けて、今朝までに上長に連絡を取り、指示を受けた。私はこのままイン=アインツベルン陣営に参画し、亜種聖杯戦争を続行すること。その外の聖堂教会員は私の指揮下から離れ、聖杯戦争の管理に専念すること。概ねこの二点だ。他の教会員にも指示がでているはずだ」
「何を悠長な」
鶴野は毒づいた。
「事態の急変というが、元々あんたの手違いだろうに」
「落ち度と言うか」
「そうとも。
鶴野はフォークで綺礼の方を指す。
「だいたい、あんたは霊器盤を持ってたはずだろう。
「確かに、騎行者――ゲオルギウスを連れていれば、未然に裁定者を倒せたかも知れない。戦わずして裁定者を説得できた可能性すら考えられる。そういう意味では、私にも判断が甘かった所はあろう」
そう言って、綺礼は一息の間を挟み、鶴野の方に向き直った。鋭い眼光。
「しかし、そもそも霊器盤は基本七
その語気に、鶴野は気圧された。フォークを思わず手元に戻した。
「それは言峰の方が正論だナ」
上座に座るフラウフェルが言った。
「それより、マキリこそ。それ程勝ちたければ、まずは自分で努力するべきではなイカ?」
「
鶴野の返答にはさほど気を留めずに、続ける。
「そもそも私がお前にあの暗殺者をあてがったのは、奴は魂喰いを禁忌とせぬからダ。お前の魔術回路が貧弱だろうが
「大っぴらに魂喰いをさせてたら、神秘の隠匿違反になる。それこそ監督役……いや裁定者が来るだろ」
分かり切ったことだろう、と言わんばかりに鶴野は答える。
「それはお前が努力すべきことダ。目立たぬように、目に付かぬように少しずつ喰らわせればいい。そう思うだろう、言峰ヨ」
「そうですね。そもそも魂喰いなどすべきではないが、任務上必要な範囲では目を瞑ろう。目を瞑っていられる程度であれば、な」
「やればいいんだろう、やれば!」
声色にも態度にも厭気をあからさまにしながら、鶴野は応えた。それを綺礼やフラウフェルは、どう見たのか、鶴野には気に留める余裕も無かっただろう。
「取り敢えず、朝食は我等と済ませていケ。どの道、目立つまいとすれば夜にするしかないのだからナ」
フラウフェルは淡々と着席を促した。それに綺礼も言葉を継ぎ、頭を下げる。
「そもそもまだ話は終わっていないのでな。座って貰えると助かる」
形だけでも頭を下げられれば、鶴野にも座らない理由は無かった。無言で着席する。
「敵陣営の戦力について、調べと予想のできる範囲で説明しよう。あちらの召喚しているサーヴァントは現時点では不明だが、現時点までの噂と情報で魔術師が何者かは想定できる」
綺礼の長口上の間、鶴野は静かにナイフとフォークを動かし、フラウフェルは音もなく茶を口に運んだ。
「まず、国東の管理者・椚家の椚
「椚は『類感魔術』の家だったか? 正直、戦闘向きの魔術とは思えないが……」
鶴野が食事の手を止め、疑問を口にした。食べ物を口にしたまま喋るような不調法はしない。
「そうだな。聖堂教会としても特に注意すべき異端とは捉えていなかった。今回の件が発覚するまでは、な」
『類感魔術』は「ある事物甲に与えた出来事がその事物と魔術的に結ばれた事物乙に与える影響」を指す魔術体系である。卑近な言い方をすれば『藁人形を釘で打てばその人形に挟んだ髪の持ち主が苦しむ』ようなものであり、洋の東西を問わず普遍的に存在する基礎的な『呪い』の概念である。初学者が必ず学ぶ基礎的な魔術であるが故に、逆に家学として深めようとする家は少ない。
そして、釘を打つ前に藁人形に髪の毛を挟まねばならないように、『呪い』を発動するためには事前に『ある物』と『呪う対象』とを魔術的に連結しなければならない。鶴野の言う通り、戦闘に使用するには迂遠すぎるのだ。
「だが何しろ、この地の、重霊地の
「それはまあ、そうだな」
「それに、養女の方はそもそも椚の魔術を使うかどうかも分からんだロウ? 養女と決まった訳でもなイガ」
カップを置いてフラウフェルが付け加えた。
「それは聖堂教会としても把握出来ていない。ただ、魔術において一番の脅威であるのは、藤谷だろう。『言霊』――と称していても、あれが使うのは事実上は『神言魔術』だ」
『神言魔術』とは、まだ地上に『神』――と言っても一神教のそれではなく多神教の神々だ――が居た時代の、西暦以前の魔術である。神への信仰と神の権能を基盤とする魔術は、現代の魔術とは様々な点で次元の違うものであったという。言い換えれば、神話上の『魔術』は神言であればこそ、今日の魔術とは桁の違う、隠匿など必要とすらしないものであったのだ。
「少し前の論文発表で、『世界を作り替える』って騒ぎになったヤツか?」
「それは流石に大袈裟だろう、と上長は判断しておられるがね。魔術行使において外形的には『神代と同等の事』が出来るというだけでも充分な脅威だ。既に『時計塔』は封印指定に動いているという情報が此方には入っている。早ければ、この戦争中にも封印指定執行者が来るかも知れない」
封印指定のかかるような魔術は、大抵、戦闘能力としても尋常の対人兵器では敵わないものとなる。であるから、それらを時計塔に持ち帰る任務を帯びた封印指定執行者は、それらを凌駕しうる超人的な能力の持ち主ばかりだ。
「それは――拙いナ。戦争が全うできヌやも知れヌ」
「それです。幸い、昨晩までの霊器盤の観測結果から、我々と相手側との相対的な位置関係は大まかには分かる。この屋敷から概ね東北東、岐部記念公園から概ね南西南から南西……
「当座、冒険は避けつつ早期決着を目指すことになるカ?」
「ええ。そのためにも間桐には万全であって欲しいものだよ」
(結局そこか)
自分が劣ることは認識すればこそ、鶴野には憮然として話の成り行きを聞くことしか出来なかった。
※ ※ ※
「行くぞ、暗殺者。霊体化したまま付いて来い」
自室に戻って些か服を整えてから、鶴野は告げた。
『おや
実体のないままであるが、召喚主たる鶴野には、暗殺者の気配が分かる。その目線が、こちらを見据えているように感じられる。
「戦いじゃない。お前の餌を仕込みに行くんだよ」
暗殺者の目線から、目を逸らすようにして答えた。
『……つまらない男』
暗殺者が零した言葉からも、耳を逸らすようにして、屋敷を出た。
魂喰いは『神秘の隠匿』破りと紙一重の行為だ。万一の際にこの屋敷を怪しませないために、ある程度遠方に行かなければならない。その為の早出である。
丘を暫く下り、駅に出る。
鶴野は敢えて列車を選んだ。それは以前にフラウフェルが大分空港を合流の場に選んだのと同じ理屈――『人の多い場所であれば万が一敵方に知られても仕掛けられまい』という意図であった。
だが、日豊線の普通列車の運行間隔は、疎らだ。次の列車が来るまで一時間はある。要するに、駅だからと言ってそもそも人など居ないのである。
『全く。時刻表くらい調べて来れないのかしらこの男は』
霊体化したまま暗殺者は悪態をつくが、それに無闇に反応する訳にもいかない。一般人の眼からすれば不審な一人芝居となるだろうし、万が一敵魔術師が居るならば目標を露わにすることになるからだ。
ただ、黙って、イン=アインツベルンのメイドたち(恐らくホムンクルス)が寄越したサンドイッチを口に運ぶ。食べながら思考を巡らせる。
(恐らく敵……椚家は元々の本拠である、国東町の寺から動いていまいということだが、だから言って
それにしても、日出の中央駅ではないとはいえ、後背にそれなりの住宅地はあるのいうのに、如何にも利用者が少ない。高校の登下校時間なら多少は違うのかも知れないが。
(田舎なのだな。利便性を考えれば自家用車で事足りる、って事か。まさか車に乗ってる一般人を襲う訳にもいくまいし、やはり
『物を食べるだけの余裕があるのは悪くないけれど、もう少し丁寧に食べられないの?』
思考に暗殺者の念話が割り込んだ。
「やらんぞ」
『今更要らないわ。それより、血の算段は出来ておるのでしょうね?』
「それを今考えてたんだよ」
『しっかり頼むわ。主の魔力だけでは、心許ないもの』
鶴野にも自覚はあるのだが、改めて当のサーヴァントに言われると、気は良くない。それで、その一言には無言で通した。
『ああもう! 食べ散らかさない! 朝食はそれなりに丁寧に食べていたのに!』
「放っといてくれ。どうせこちとら、余り丁寧に育ってないんだよ」
『魔術師が?』
「爺様が居なくなってからは、な」
駅に入ってきた鈍行列車は二両編成で、それでも乗客は疎らであった。
(これでは、列車内で魔術戦闘が起きたとしても、『隠匿違反』を責めることすら出来ねえんじゃないか?)
見込み違いに眉を顰めながらも、しかし今更引き返す訳にもいかない。
秋晴れの日差しが車窓から差す。しかも、十月にもなって、この地はなお暖かい。
(上着は余計だったか……)
後悔しながらも、しかし鶴野には上着を羽織らねばならない事情がある。魔術の蟲が宿る体の線を、隠しておきたいのである。
『主よ、日傘か日除けは無いのかしら。眩しくて敵わないわ』
暗殺者も苦情を念話で寄越すが。
「霊体なんだから、それくらい我慢しろ」
その程度しか返す言葉は無い。そもそも、疎らとはいえ乗客は居るのだ。余り一般客から見て不審な行動は取れない。
(まあ、地元の人間からすりゃあ、この暑さで上着羽織ってる時点で、もう不審者かも知れんがな……)
やがて、列車は杵築駅に着いた。
杵築駅を降りると、そこは田舎であった。
幾ばくかの集落と小さな商店があるほかは、稲穂の揺れる田園と森ばかりが見える。本州よりは未だ暖かいのに、寒々しい感じすら受ける。
「おいおい。本当にここが杵築の中心か?」
思わず鶴野の口から不平が漏れた。無理もない。鶴野の住んでいた範囲の常識では、ともかくも駅前に行けば何かしら『街』のあるものだったのだ。
すると駅員から声を掛けてきた。
「お客さん。杵築の町なら、ここから大分交通のバスに乗らなきゃ」
手慣れた様子である。よく聞かれることではあるのだろう。
「バスかよ!」
この集落では、暗殺者の望むような「若い女」は望み薄だろう。
そう考えたから、鶴野は素直に駅員の言に従った。
杵築の中心街につく頃には、昼を大きく回っていた。そこは城下町の面影を残す土地で、丘陵地にある古い武家町と、その谷側及び海側にある商人町がある。そして、海を見下ろす一番高い丘に城がある。
バスを降りた鶴野は、谷側を歩いている。そもそも観光に来たわけではないし、『若い女』を求めるなら商業地側の方が見込みがあると踏んだのだ。
『あら、若い男と女が集団で来たわ』
暗殺者が念話でいうので辺りを見渡すと、恐らく中学生であろう、制服の一団が歩いていた。下校時間なのだろう。
「暗殺者、少し静かにしろ。【気配遮断】だ」
『どうせ相手は一般人でしょう?』
「それでも、だ。万一にも勘のいい奴が居るとまずい。若い女の魂を喰らいたいなら言う通りにしろ」
『はい』
暗殺者が
女子生徒生徒の群が数人になり、四人になり、二人になる。バラける都度、人数の少ない方を文字通り息を殺して尾行し、一人になるまで待った。
その一人が路地に入った所で、声を掛ける。
「おい」
女子生徒からしたら、『気配も何もない所から突然声がした』ように感じられたのだろう。驚愕の余り声さえ挙げられないまま振り向いた彼女の、目線の先に鶴野が立っていた。
鶴野は手から蟲の眼を出す。間桐の使う『蟲』は、天然自然のそれではない。魔術によって変貌させられ、魔術師と共生するように改竄された怪物だ。今出した蟲は、暗示魔術に相当する機能を持つ。
「そうだ。黙ったまま、この蟲を見ろ」
生徒の目線が蟲に固定されられる。「看られる」ことで蟲はその機能を発動させた。鶴野の手から抜け出し、瞬く間に生徒の中に潜り込んだ。
「よし。お前は今晩、家が寝静まったら中学校の校庭に来るんだ」
「中学校の……校庭……」
生徒は虚ろな表情で復唱する。
「そうだ。家の者が寝静まるまで、お前はこのことを忘れる」
頷くと、生徒は鶴野に背を向けた。
『ところで、その中学校とやらはどこに有るか分かっているのでしょうね?』
少女が立ち去ってから、暗殺者が念話で告げた。
「大体は分かる。おおかた、こいつらが歩いて来てた方向の反対側だろうさ。それに、すぐに分かる」
『どういう意味よ』
「もう何人か学校の辺りから
『……ふん、少しは頭回るみたいね』
「お前な、召喚主の事を何だと思ってやがるんだ」
鶴野の悪態に対する返事は無かった。
「まあ、やるしかないんだ。やるにはやるから、待ってろ」
気は進まないが、魂喰いに手を染めなければ勝てないこと程度は、鶴野も承知している。であれば、曲がりなりにも魔術の家にある者として、手は動かすのだった。
キャラクター便概:
間桐鶴野:
エルジェーベトの夢を見て、その動機に臓硯に通ずるものを感じて嫌悪を抱く。『お前がまず働け』と周りから責め立てられるようにして、魂喰いに赴く。
既に散々述べた通り、この物語の鶴野は、原典での『臓硯健在のもと魔術師としては期待されずに育った』鶴野とは生育歴がかなり異なる。丁寧に食べようと思えば食べられるが、意識しなければ雑な食べ方になる。そういう育ち方をしてきた男として描いているつもり。
暗殺者・バートリ・エルジェーベト:
鶴野のことを『つまらない男』と詰りながら、その立ち振る舞いには注意せずには居られない。吸血鬼のごとき存在となろうとも、根本的には貴族の女なのだ。
鶴野に『夢に見られた』ことは意識したのかしないのか。精神の共感の性質上全く認識しない訳はないのだが、今の所おくびにも出していない。
言峰綺礼:
前回までの状況の説明と敵勢力に関する分析を、ブレックファースト・ミーティング(という表現が1990年代にあるかどうか確認できなかったので本文ではそうは書いていない)の形で行う。
情報源は自分で分析しただけでなく、夜のうちに聖堂教会の上司(本文では教会用語で上長と書いている)と情報交換した結果に基づくものであろう。たぶん。
フラウフェル・イン・アインツベルン:
朝食の席を設けた。ドイツ式料理ベースではあるのだろうが、彼女自身は紅茶派の模様。
※ ※ ※
この物語はpawooで随時『国東聖杯戦争』タグを付けて呟いたものに、加筆修正のうえアップロードしているものです。
待ち切れない方はpawooも御覧いただければ幸いです。