それとAqours4thライブまであと二週間ですね。俺は3rdに続き再びぼっち参戦です。
読者の方々に参戦する方がいるかも知れないので一応言っておくと、ライブのぼっちは本気で寂しいです。俺は前回朝7時から現地入りして物販とライブ中以外一切声を発しませんでしたから。マジで。
どっかにこんな俺とでもエンカしてくれるっていう優しい人いないかなぁ・・・。
―――ピリリリ!
「・・・んあ?」
時計の針が頂点に差し掛かろうとしている時間帯。
不意に携帯電話が着信音を鳴らし、そろそろ寝ようかとしていた陸は気だるげにそれを手に取る。
画面に表示されていたのは、鹿角聖良の名前。
「・・・・・・もしもし?」
『・・・すみません仙道さん。こんな夜分遅くに』
呼びかけに返ってきたのは、どこか元気の無いようにも感じられる聖良の声音。
「どうかしました?」
『・・・いえ。ちょっと寝る前に誰かと話したい気分になりまして。お時間よろしいですか?』
「ええ、構いませんけど」
たまにスクールアイドル関連で第三者の意見を求められる事はあったが、こうやってただ話すだけというのは初めてな気がする。
「どうですか? ルビィ達」
予選の事については既に散々話したので触れないことにする。代わりに思いついた事と言えばもうこれしかなかった。
『ふふ。とても頑張っていますよ。理亞とも仲良くしてくれてるみたいですし』
彼女達が計画しているサプライズについてはまだバレていないようで何よりだ。陸も下手にボロを出さないようにしなければ。
「大体の事はエックスから聞いてましたけど、やっぱそっちから見ても楽しそうですか? ルビィ達も、御宅の妹さんも」
『えぇ。本当に・・・・・・・・・・・・理亞があんな楽しそうに笑うのを見るのは、凄く久しぶりな気がします』
聖良らしからぬ弱々しい、張りのない声がスピーカーから聞こえる。
『少なくともあんな顔、私には向けてはくれないですから・・・・・・』
理亞がルビィ達と打ち解けられた事に喜びと、それに伴う一抹の哀愁が電話越しに伝わってくる。
『ねえ、仙道さん。私は、ちゃんとあの子の姉として何かしてあげられているのでしょうか?』
不意に投げかけられたその質問は、姉としての自信を無くしているからこその不安を孕んでいるようにも感じ取れた。
少しの間の後、聖良は次の言葉を重ねた。
『私がもっとしっかりしていれば、あのライブでの失敗も、理亞がスクールアイドルをやめるだなんて言い出すこともなかったと思うんです』
理亞が自身の失敗を悔やんでいたように、聖良も彼女なりに今回の事で悩んでいたのだろう。
それもすべて、妹の事を大切に思っているが故。
『・・・もしかしたら私は、あの子の足枷になっているんじゃないかって・・・』
「・・・・・・そうっすかねぇ・・・?」
欠伸を噛み殺しながら、決して声質が重くならないようにやんわりと聖良の考えを否定する。
「少なくとも俺は、聖良さんが妹さんの事を大切に思ってるのは知ってます」
これまでに聖良が持ち掛けてきた相談には、必ずと言っていいほど理亞の名前が出てきていた。
このフォーメーションで妹の魅力は発揮されているのか、妹の立ち位置に違和感はないか。
「アンタ、自分の事はそっちのけで妹の事ばっか話してましたからね」
この人は本当に妹が、理亞と一緒にスクールアイドルをしているこの時間が大好きなんだと分かったのだ。
それこそ、どこぞのシスコンダイヤモンドに匹敵するほどに。
「・・・・・・まだ知り合って一年も経ってない俺でもそこまで分かるんです。十何年も聖良さんと一緒にいるアイツが、その事を知らないはずないでしょ?」
『・・・・・・そういう、ものなのでしょうか?』
「そういうもんですよ」
まあ、陸は別に兄弟とかがいる訳ではないのだが。それでもこれくらいは分かる。
「聖良さんがスクールアイドルとして重ねてきた努力も、姉としてずっと妹の事を大切に思ってた事も、俺が絶対否定させません。勿論、聖良さん自身にもですよ」
努力は人を裏切らないとはよく言ったものだが、陸は事実その通りだと思っている。
結果が伴うかどうかはさておき、積み重ねた努力や想いは形を変えて帰って来る。
聖良の場合、それは理亞という妹からの敬慕だろうから。
「だから、胸張っていいと思いますよ」
偉そうに陸が言うような事でも無いのかもしれないが、聖良の努力や想いは紛れもない事実であり、本物だ。
それを自分自身で否定してしまうなど、彼女にはさせたくない。
『・・・・・・貴方は、本当に不思議な人ですね』
「俺自身よく分かりませんけど、よく言われます」
これでも結構常識はある方だとは思っているのだが、何故だか周りにいる皆は口を揃えてそう言ってくる。褒められているんだか罵倒されているんだか分からないのが困ったところだ。
『・・・でも私は、嫌いじゃないですよ? 貴方のそういうところ』
「そりゃどーも」
幾分か明るさの戻ってきた声を受け、陸もまた笑って返す。
そこからは静謐な沈黙が続き、電話を介して妙に熱っぽく感じる聖良の息遣いだけが聞こえてくる。
そんな静けさを打ち破ったのは、陸でも聖良でもない第三者―――、
『・・・・・・いい雰囲気なところを邪魔して悪いが・・・・・・』
会話に割り込んできたのはウルトラマンエックス。ゼロに無理矢理北海道に向かわされたウルトラ戦士だ。
携帯電話の中に入り込めるのは知っていたが、通話に介入する事も可能らしい。
『聖良。理亞とルビィがあのまま寝落ちした。私が声掛けしても起きないから頼んでもいいか?』
『ああ、はい。了解しました』
曲が作り終わったという話はエックスから聞いていたが、その後に疲れて眠ってしまったらしい。
一人でも大丈夫だってところを見せると言っていたのに、まだまだ子供っぽいようだ。
『仙道さん、こんな時間に付き合って頂きありがとうございました。それでは―――』
「あ、ちょっと待ってください。一つ言いたいことが」
『・・・? 何ですか?』
「さっき、妹の方にも聖良さんの気持ちは伝わってるって言いましたよね? 近々、それが分かると思いますよ。そんじゃ、おやすみです」
そう言い残して通話を切り、ごろんとベッドに寝転ぶ。
『お前何人に手ぇ出したら気が済むんだよ』
とりあえずゼロは無視し、ここしばらく会っていない三人の少女の顔を思い浮かべる。
「あとはお前等次第だぜ? ちんちくりん共・・・・・・」
『二人共顔色が悪いぞ』
ルビィと理亞が姉に送るライブを行う機会は、クリスマスの日に実施されるイベントでと決めていた。
そしてそこで歌うためには、そのイベントに相応しいかどうか、選考会に合格する事が求められるのだ。
「うぅ・・・ルビィ、知らない人と話すの苦手・・・・・・」
「私だって・・・・・・」
代表者は当然ルビィと理亞。
これから選考員の人たちと話さなければいけないというのに、二人共血の気の引いた顔で身体を強張らせていた。
『ガチガチになっているところを悪いが・・・・・・そろそろ君達の番だ』
そうしている間にも刻一刻とその時間は迫ってきている。
だが緊張とプレッシャーに押し潰されている身体は言う事を聞いてくれず、椅子から離れてはくれない。
「姉様がいないのがこんなにも不安だなんて・・・・・・」
理亞の震え声が更にルビィの煽る。
何もかもが重く感じ、心中に灯っていた炎が消えてしまいそうな感覚に陥ったその時、手の甲に触れた暖かな感覚に意識を引かれた。
「でもさ、自分達でやらなきゃ」
「全部意味がなくなるずら」
花丸と善子の激励が染み入る。
これから大きな壁に挑む自分達。当然不安も感じるが、こんな時に背中を押してくれるのが仲間であり、友達だ。
『・・・そういえば、ルビィ。陸から伝言だ』
「え・・・?」
友達といる時とはまた別の感情を与えてくれる者の名前に少し胸が高鳴るのを感じた。
『恐れに負けてやりたいことを見失わないように、悔いのない道を選べ。ダイヤに想いを伝えた時みたいにな・・・との事だ』
「っ・・・・・・!」
かつて自分の背中を押した言葉が脳裏で反芻する。
そうだ。出来るか出来ないかじゃない。やりたいかどうかだ。
自分はこのライブで姉に、ダイヤに成長した姿を見せたいんだ。
「・・・・・・先輩らしいずら」
『それと、これは私の独り言だが・・・・・・』
ルビィが表情を引き締めると、自身も何か言いたげにエックスが弁を続ける。
『君達に限らず、人とは何か恐ろしいものに直面した時、自分の殻に籠ってしまう』
その言葉はルビィに限らず、理亞にも、花丸にも、善子にも。自分の世界に閉じこもってしまっていた者全てに向けられている気がした。
『そこから牙を剥き、自分だけの世界に閉じ籠る事は誰にだって出来る。だが、友と手を取り合い、恐れる心を乗り越えた者こそが未来を切り開き、明日へ歩み出せるんだ』
はっと理亞が目を見開き、この数日間共に協力してきた仲間―――否友の顔を見やる。
同じように顔を上げていたルビィは彼女と目が合うと、くすりと笑った。
『今の君達は一人じゃない。想いが、心が、深い絆でユナイトしている。自信をもって、思いの丈を伝えてこい』
「次の方、どうぞ」
狙いすましたかのようなタイミングで自分達の番がくる。
だがもう足をここに縫い付けるものはない。友達や、特別な先輩に背中を押してもらえた。
そして何より、気持ちを再確認することが出来た。
「理亞ちゃん・・・」
「うん」
理亞と視線を交わし、同時に一歩を踏み出す。
「「行こう。私達だけで!」」
「私達は、スクールアイドルをやってます!」
堂々と胸を張り、ルビィと理亞はハッキリと想いの全てを審査員にぶつける。
「今回は、このクリスマスイベントで、遠くに暮らす別々のグループが手を取り合い、新たな歌を歌おうと思っています!」
「大切に人に送る歌を!」
もうそこに姉の影に隠れていた弱々しい妹はいない、譲らぬ想いを胸に秘めた、頼もしい姿だ。
そしてそんな二人を見て、号泣する者もまた二人。
「何泣いてるずら~~・・・・・・?」
「アンタの方が泣いてるわよ・・・・・・!」
「ずらぁ・・・・・・」
『・・・何をそんなに泣いているんだ君達は・・・・・・』
まるで母親にでもなったかのように泣きじゃくる花丸と善子を呆れ気味に一瞥し、横に視線を流す。
『・・・・・?』
そこでエックスの目に留まったのは、自分達と同じく中の理亞達の様子を伺っている二人の少女。
〈・・・・・・あの制服は・・・・・・聖良と理亞の・・・・・・〉
『・・・・・・という事なんですけど、ちょっとお願いしてもいいですか?』
「ん、了解した」
ルビィからの報告と依頼を受け、快く承諾する陸。
「選考会、頑張ったな」
『えへへ・・・・・・』
シンプルに賞賛の言葉を送ると、電話の向こう側から嬉しそうな声が帰って来る。
『・・・理亞ちゃんと一緒だったし。花丸ちゃんと、善子ちゃんと、エックスさんにも励ましてもらえて・・・・・・それに先輩が背中を押してくれたから・・・・・・』
「別に俺は何もしてねーよ。勇気を出したのはお前自身だろ?」
ルビィは元々、好きなものに対してはどこまでも真っ直ぐに、いくらでも力を発揮できる。
陸はあくまでもその力を信じただけだ。
「・・・成功するって信じてるぞ。ライブ」
『はい!』
元気な返答を受け取り、通話を終了させてそのお願いとやらを実行しに移る。
『ルビィも中々ぶっ飛んだ行動に出るようになったよな』
「しまったゼロの病気が移ったか・・・・・・」
『どういう意味だこの野郎!』
身体の共有者とじゃれ合いながら携帯を操作し、ダイヤを除いたAqours三年生のアドレスを表示する。
Aqoursでルビィ達の計画を知らないのは、サプライズを受ける側のダイヤのみだ。
「えっと・・・・・・姉ちゃんでいいか」
今の陸では鞠莉とまともに話せそうにないので安全策に決定。
数回のコールの後、目的の果南に繋がる。
『もしもーし? 陸? どうかした?』
「ああ姉ちゃん? ルビィ達の件なんだけど、ちょっと協力してくれない?」
『グウゥゥゥ・・・・・・?』
グロッケンが函館でリトルスター保持者を探る一方、彼と共に動いていたはずのデスレ星雲人炎上のデスローグは母船にて魔導のスライと共にいた。
『ああ、これですか?』
スライの眼前に展開された空間ウィンドウ。デスローグはそこに映し出されているロボットに興味を示す。
『これが貴方を一度こちらに呼び戻した理由です。これは別宇宙で発見されたものを解析し、再現したものなのですが・・・・・・まだ実戦データがなくてですね。それでもし今回の件で戦闘になるような事があれば、試運転も兼ねてこちらを使って頂きたいのです』
『グウゥゥゥ・・・』
分かった。といったように頷き、召喚装置を受け取ったデスローグは再度グロッケンの待つ函館へと向かって行った。
『ふぅ・・・・・・』
静寂が舞い降りた空間の中で、スライは孤独に疲労の溜息をつく。
『やはりグロッケンがいないと、デスローグとコミュニケーションを取るのも一苦労ですねぇ・・・・・・』
陸が聖良お姉様、エックスが理亞ちゃんを同時に攻略していくって言う謎の構図。後者は攻略って言うにはちょっと怪しいですが。
最近ウルトラマン要素が薄いですが、多分次回から決戦開幕するので、もう少しお付き合いください(開幕するだけ、戦うとは言ってない)
多分戦いさえ始まれば、大地の出番もきっと・・・・・・。
それでは次回で!