Aqours4thの余韻から抜け出すのに二週間、定期テストを乗り越えるのに一週間かかりまして・・・・・・。
まあ、なんというか、「待ってました」という方も、「テメーなんか待ってねーんだよさっさと失せろクズ作者」という方もお久しぶりです。本日より帰還しましたがじゃまるです。
三週間開けた代わりに今回はボリューミーかつサプライズもあるので許してください。久々の挿絵もつけたので許してください。
あ、Aqours4th最高でした♡ あとあんなクソ広い会場で現地での連絡手段もなしに人と会うとかムリゲーっす。一部の方、本当にすみませんorz
謝罪会見も終わったので、本編どうぞ
「陸ちゃん!」
「大地さん!」
変身が解除され、息を荒げながら地に伏せる陸と大地の元に駆け寄る少女達。
「陸! しっかり!」
「・・・う・・・ぁ・・・・・・」
『おい! 陸!』
陸の身体を抱き上げた果南がすぐさま怪我の具合を確認するが、一瞬目を逸らしそうになってしまう程のものであった。
裂傷や打撲は当たり前、その他にも凍傷や火傷などが身体のいたる部位で確認できる。
「エックス・・・? エックス⁉」
理亞の時のようにエックスがダメージを請け負っていたのか、陸に比べればまだ軽傷な大地がエクスデバイザーの中にいる相棒に呼びかける。
デバイザーは、まるで封印でもされたかのように霜で覆われて白く染めあげられていた。
「エックス! 返事をしてくれ!」
『落ち着け・・・‥無事だ・・・』
デバイザーから返ってきた声を受けてほっと息をつく。
『だがこの氷のせいでデバイザーの機能が幾つか凍結してしまっている・・・‥今の状態ではユナイトが出来ない・・・』
「そんな・・・」
ゼロ、エックス、グレンファイヤー、ミラーナイトの四人を蹴散らしたアーマードグロッケンとアーマードデスローグはまだまだ健在。
ウルトラマンの敗北は、この状況では何よりも人々の恐怖を煽る。
当然それはAqoursやSaint Snowの二人とて例外ではなく、光の戦士を破った宇宙人達を見上げる顔には、しっかりと恐怖の色が滲んでいた。
「なら・・・・・・俺が・・・・・・!」
『待て! その怪我で何するつもりだ!』
「じゃあ誰が戦うんだ・・・・・・よ・・・・・・」
ブレスを掴み、立ち上がろうとする陸だが、既にボロボロのその身体は思うように動いてくれない。
それどころか強烈な脱力感に襲われ、再度倒れ伏してしまった。
『ヒェヒェヒェ・・・・・・勝負あったな・・・』
暗黒の鎧を身に纏ったグロッケンが陸達を見下ろし、ケタケタと笑いを漏らす。
『もったいねぇよなぁ・・・。そんな奴等守ってなけりゃもっと善戦出来たろうによぉ』
「っ・・・! 先に人質を取ったのはどっちだと思ってんのよ!」
自分の身の丈を遥かに超える宇宙人に対し、臆することなく善子が食い掛かる。
『うっせーな・・・。手段もクソも関係あるかってんだ。フッ!』
「うにゃっ⁉」
羽虫でも振り払うかのようにグロッケンが息を吹き、絶対零度の冷気が善子に降りかかる。
「善子ちゃん!」
『まだお前等に用はねーんだよ。ちょっと大人しくしてろ』
「まだ」という意味深な言葉と共に冷気は襲い掛かる範囲を広げ、陸と大地、Saint Snowを除き、Aqoursメンバーの身体だけを凍てつかせていく。
「うぅ・・・・・・」
「・・・寒い・・・・・・」
小さな身体に氷の結晶を降り積もらせて凍える少女達は、一人、また一人と膝を折っていく。
「待て! 止めろ‼」
『だったら止めてみろよなぁ・・・。つっても今のお前等に立ちあがる力なんざ残っちゃいねー。指でも咥えて見てやがれ』
「テメェ・・・・・・!」
グロッケンに対する怒りと共に、また別のどす黒い何かが奥底から込み上がってくるのが分かった。
そしてその何か―――ベリアルの闇を、陸は自ら放出する。
「・・・仙道さん・・・?」
「・・・陸君・・・・・・それは・・・・・・?」
瞳を赤く煌かせる陸を見て大地と聖良は驚くような、恐れるようなといった表情を向ける。
『・・・? 傷が・・・・・・!』
空間を黒く染め上げていくその禍々しいオーラが傷口を覆い、塞いでゆく。
勿論だがゼロの力ではない。増大し続けるベリアルの闇が陸の身体を修復すると同時に、蝕んでいっているのだ。
『ケケ・・・・・・種の発芽が近いみてーだな・・・』
『何・・・? どういう事だ!』
『そーだな・・・。一つだけ教えてやるよ。オウガがそいつに陛下の力を植え付けたのにはもっと別の訳があるんだぜェ・・・』
『・・・・・・訳・・・?』
『そいつが陛下の力を酷使すればするほど、俺達にとっちゃ好都合ってこった』
『なんだと・・・⁉ 陸!』
「・・・今これ以外に方法があるかよ」
リスクなんて知ったこっちゃない。例えそれが奴等の目論見通りであっても、ここで引く訳にはいかないのだ。
『陸‼』
「があぁぁッ!」
痛む身体に鞭を打ってブレスを叩き、ウルトラゼロアイをその手に掴む。
「・・・ゼロ・・・・・・行くぞ!」
ゼロアイが出現できたという事は、ゼロにも変身できる程度のエネルギーは残っている。
ゼロのエネルギーだけでは戦えなくても、ベリアルの力を使ったゼロダークネスなら、まだ戦える。
『お前・・・アイツの言った事聞いてなかったのか⁉ お前にベリアルの力を使わせるのがダークネスファイブの狙いなんだぞ! それにこれ以上闇を身体に浸透させたらお前自身がどうなっちまうかわかんね―――』
「でも・・・・・・俺達がやんなきゃだろ‼」
怒涛の勢いで捲し立ててくるゼロを、陸もまた強い語気で跳ね返す。
「今戦えるのは・・・、千歌達や聖良さん達を守れるのは俺等だけなんだよ・・・」
グレンとミラーナイトは戦える傷ではないし、大地とエックスも今は変身できる状況じゃない。陸とゼロが出るしかないのだ。
「こんな時に無茶しちまうのが俺の悪い癖なんだってのは重々承知してるよ。けど・・・何かのために命かけて戦うのがウルトラマンってもんだろ! ・・・それに・・・・・・」
一度口調を落ち着かせ、陸は姉であるダイヤに身を寄せて震えるルビィを見やった。
「・・・・・・このままじゃ、ルビィ達が頑張ってきた事が全部無駄になる」
協力してきたからこそ、陸は彼女達が今日この日のためにどれだけ苦労し、壁を乗り越えてきたかを知っている。
その成果をダイヤと聖良に見せられなくなるなど、許される事じゃない。
「・・・だから・・・・・・俺はたたか――――」
ゼロアイを強く握り直し、目元に装着しようとした次の瞬間、温かく、柔らかな何かが陸の手を掴み止めた。
「・・・・・・もう・・・、いいです・・・・・・」
その刹那に耳朶に触れた弱々しくも意思を感じる声音。
熱くなっていた感覚が急激に冷まされていく感覚に引き寄せられて振り向いた背後では、聖良が陸の腕に触れていた。
「・・・・・・聖良さん・・・?」
『・・・! ソイツぁ・・・!』
陸から放出されるベリアルの力は、宿主に触れた聖良も侵食せんと闇を伸ばしている。
だがそれが聖良を蝕む前に消失させているのは、彼女の胸の輝きから発せられた鎧のような、光の膜だった。
『・・・リトルスター・・・・・・!』
思い返してみれば、聖良も理亞を慮り、一人悩んでいた。
妹に対する強いその想いは、確かにリトルスターを発現するには十分だ。
「・・・あなた方の狙いは・・・・・・これですよね・・・」
巨大な宇宙人達を見上げ、聖良は自身の胸に手を当てながらそう言う。
聖良がリトルスターを発現したという事は、彼女にもダークネスファイブに狙われる理由が出来るという事。
奴等が狙ってきたリトルスター保持者は、理亞だけではなかったという事だ。
『へぇ・・・妹の方と違って理解が早いじゃねーか・・・・・・』
理亞を乏しめるような物言いをするグロッケンに少しむっとしたような表情をした後、再び顔を引き締めては言う。
「私がそちらについて行けば、この場では誰にも手を出さずに引き下がってくれると約束してくれますか?」
「っ・・・⁉ 聖良さん・・・⁉」
「姉様・・・・・・?」
思わず耳を疑う陸と理亞。
だが聖良は振り返らず続ける。
「約束してくれますか?」
巨大な宇宙人相手に臆する様子を見せず、それどころか有無を言わせない威圧的な態度で圧を掛ける。
その剣幕に流石のグロッケンも気圧されたのか、若干言葉に詰まった後口を開いた。
『・・・・・・いいぜ。約束してやるよ』
そう言った後、物理的に温度の低い視線を理亞に向ける。
『・・・どーせ、どっちかが欠けりゃぁ残った方はぶっ壊れちまうしな』
聖良も理亞も、互いに互いを想い合っているからこそリトルスターを発現した。
そしてそれが故に二人の星は脆い。思いやる存在がいなくなってしまえば、リトルスターは形を成さなくなる。
つまり、リトルスターの始末が目的の奴等からすれば、一人攫えば無問題な訳だ。
「そうですか・・・」
「姉様!」
ならば迷う事はないといった様子で歩き出そうとする聖良を呼び止める理亞。
聖良は振り返ると、今にも泣きそうな顔をする妹に対し、一言。
「・・・・・・ありがとう」
「え・・・・・・?」
「こんな私でも、姉様と呼んでくれて・・・」
儚い笑みと共に紡がれたその言葉には、どれほどの感情が籠っているのか。
それらを全て読み取る間もなく、聖良は再度グロッケン達へと足を向ける。
「待って・・・・・・私・・・まだ何も・・・・・・」
グロッケンの目論見通り、徐々に理亞の胸に宿った輝きは弱々しく萎んでいく。
それから目を逸らすように前だけを向いた聖良は、再び歩を進め―――また立ち止まることとなる。
「・・・・・・?」
「・・・行かせるかよ・・・・・・」
先程聖良が陸にしてきたように、今度は陸が聖良の手を掴んで引き留めたのだ。
「・・・ここで妹から離れたら、アンタはずっと自分を肯定出来なくなる・・・・・。だから絶対行かせねぇ・・・」
絶対に放すものかと握るその手に力を籠め、顔を上げる。
「・・・どうして・・・・・・貴方がそこまでやる理由は―――」
「言いましたよね」
初めて。前のようにゼロに身体を奪われてではなく、陸自身の意思でしっかりと視線を重ねた。
他の力に頼らなくていい、陸の意思だけでやらなければいけない事だから、必要のないベリアルの闇は身体の奥底に押し戻す。
「今まで聖良さんが積み上げてきた事は・・・・・・聖良さんにも否定はさせないって」
話の流れで零した口約束かもしれないが、約束は約束だ。
改めてその事を口にした陸に、決意に固まっていた聖良の瞳が微かに揺れ動いたように感じた。
「・・・それに・・・」
元の色を取り戻した双眸を理亞に向ける。
別段彼女と特別な関りがある訳じゃない。むしろ会話した事もないくらいだ。
だが、今彼女が考えていることぐらいは、分かる。
「・・・・・・聖良さんがいないと、アンタの妹も前に進めねぇんだよ」
『陸の言う通りだ』
続きエックスも言葉を連ねてくる。
『君が理亞の事を心の底から想っているという事は、ここ数日間でハッキリと感じ取れた。だが君はそれが故に妹の声を聞き逃してしまっている。・・・・・嫌な事を思い返させるようで悪いが・・・ラブライブでの失敗も、それが起因していないとは言い切れない』
氷に閉ざされたデバイザーの中から発せられる、理亞の想いを知っているからこその声。
『またその失敗を繰り返すことなど誰も望んではいない。だからこそ君が今すべきなのは自分を犠牲にする事じゃなく、理亞の声を聞いてやることじゃないのか?』
今回のSaint Snowの失敗は、互いが互いをよく見えていなかった事に起因している。
どんなに親しくて、互いの事を知り尽くしていても、言葉にしないと伝わらない事がある。
それはかつて陸が仲間に伝え、改めて仲間に伝えられた事。
その事を伝えた後、エックスは理亞に言葉を向けた。
『理亞・・・・・・、伝えてやれ。君が聖良の事をどう思っているのか。・・・・・これから君自身がどうありたいのか』
「っ・・・・・・」
鹿角姉妹が改めて互いの顔を伺い合う。
「わ・・・私は・・・・・」
『みすみす言わせるかよ!』
今まで何度も送り込んだ刺客が失敗するところを見てきているのだ。グロッケンも同じ轍を踏むほど馬鹿ではない。
口籠る理亞を好機と捉えたか、希望の芽を潰すかの如く白銀の切っ先を聖良へと振り下ろす。
「姉さ―――」
『伝えろ! 理亞ァ‼』
陸が盾になるように聖良の前に出たのとほぼ同時に、エックスの叫びが理亞を一喝する。
グロッケンの手刀が到達すれば、聖良は間違いなく理亞の手の届かない場所へと行ってしまう。
その事実と、エックスの言葉に焚きつけられてか、意を決したように眉を吊り上げる。
「私は・・・姉様にいっぱい感謝してる! だから・・・・・・! 一人でも大丈夫なんだって証明したい! もう心配いらないよって、安心して欲しい‼」
赤く燈った彼女の胸の光に乗り、理不尽に襲いかかった絶望を切り裂く理亞の願いが響く。
「理亞・・・・・・」
『ぐおあぁッ⁉』
それに呼応するように聖良のリトルスターは輝きを増し、現出した光の盾がグロッケンを弾き飛ばす。
「・・・・・・?」
「・・・・・・エックス・・・これって・・・!」
想いの連鎖はそれだけでは止まらなかった。
理亞と聖良のリトルスター。そして陸のウルティメイトブレスレット。大地のエクスデバイザーまでもが共鳴し合うように光を帯び始めたのだ。
『これは・・・結びの光・・・⁉』
「そうか・・・この地球でも、ユウト君と同じ・・・・・・」
何か悟ったような顔をした大地が鹿角姉妹を交互に見やり、首を縦に振る。
「エックス。今度は行けるよね?」
『ああ。・・・だが、まだ足りない。・・・・・・理亞、聖良』
あと一押し、そう言わんばかりのエックス。
『一度負けている手前、こんな事を言うのは変な感覚がするが・・・・・・もう一度、我々を信じてはくれないか? ・・・・・・その想いが、何よりも私達の力になる』
「・・・・・・うん」
そんなこと言われなくても信じている。そう言った様子の理亞が静かに、されど力強く頷く。聖良も態度には出さずとも、そう思ってくれたようで。
その証拠に二つの星は二人の胸を離れ、青の輝きはウルティメイトブレスレット、赤の輝きはエクスデバイザーへと、それぞれ吸い寄せられていく
――――――友情を結び、未熟を融解せし勇気の炎―――ウルトラマンメビウス
――――――邪を払い、高潔を貫く群青の誉れ―――ウルトラマンヒカリ
『『っ・・・・・・!』』
瞬間、エクスデバイザーを覆っていた氷は焼き尽くされ、ブレスとゼロアイにも光が満ちる。
『陸・・・行ける』
『大地! 行けるぞ!』
「よし! 陸君!」
「はい!」
変身可能になったところで、身体のダメージが抜けた訳ではない。
だがこうしてリトルスターが譲渡されたという事は、二人はまたゼロとエックス、陸と大地を信じてくれたという事。
それを、裏切る訳にはいくまい。
『シェア!』
『イイィィィッ・・・サアァァァァ‼』
閃光が立ち昇り、再度二人のウルトラマンが函館の街に降臨する。
『ぎぃぃ・・・! 立ち上がったところで力の差が埋まってたまるか‼』
『グオオォォォォォォォォ!』
嫌な流れに入った事を悟ったのか、戦況を覆される前に叩こうとするグロッケンとデスローグ。
つい先程自分達を打ちのめした強大な敵が接近するも。ゼロとエックスに物怖じする様子はない。
『『フッ!』』
光りの巨人と、闇を纏った宇宙人。
暗い寒空の下、三度目の衝突が勃発したのであった。
『デエェェェヤ‼』
『オォウラ‼』
身体を蒼く染め上げたゼロが操るゼロランスと、グロッケンの二刀の刃が激突し、炸裂音が響く。
『ケケケ・・・・・・やっぱ動きは鈍いみてぇだな・・・』
『ぐっ・・・・・・』
スピードと超能力が強化されるルナミラクルゼロでも、この寒さでは存分に能力が発揮しきれない。
それでも他の形態よりは早く動けるので攻撃はいなせるが、それも限界があるだろう。
『んだよ? 結局負け晒しに来たのかよオイ!』
『うおぉ・・・・・・』
ゼロランスの腹で振り下ろされた切っ先を受け止めるが、強化された奴の剛力を受け止めるにはルナミラクルではパワーが足りない。
『レボリウムスマッシュ!』
『ッ・・・! 甘いんだよォ!』
掌の衝撃波で引き離そうとするも、それを押し返す冷気が吐き出され、胸元を強襲してしまう。
『ヒャハハ!』
『フッ!』
ゼロディフェンダーでグロッケンの回し蹴りを受け止めると、その勢いを利用して後方へと飛びのく。
そして再度ゼロランスを手に取ると、放った光の刃を指揮するように振るった。
『ミラクルゼロスラッガー!』
『アーマードインフェルノォ‼』
グロッケンも負けじと火炎を放出するが、他方から迫るゼロスラッガーの大群までは処理しきれない。
『ぎぃぃ・・・!』
背後からゼロスラッガーの一撃を貰い、のけ反った身体に突っ込む蒼い影。
『デエェェェイヤァ!』
『がふぁっ・・・・・!』
ゼロの繰り出した鋭い刺突が腹部を捕らえ、グロッケンは思わず悶え―――たかのように見えた。
『・・・・・・なんてな』
暗黒魔鎧装によって守られたその身体には、殆どダメージが通っていなかった。
『・・・パワーが足りないか・・・・・』
『シャオラァ!』
「『があっ・・・・・・!」』
お返しだと言わんばかりに薙がれた剛腕が直撃。堪え切れずに殴り飛ばされるゼロ。
『・・・・・・お前、さっき努力は否定させないだのなんだの言ってたよな・・・』
後頭部を掻くような仕草を見せながら、グロッケンはゼロに冷ややかな視線を送る。
「・・・だからなんだ」
『・・・いや。もうとっくに自分の事を否定してる奴にそんなこと言うなんざ・・・おもしれーなって思ってよ』
「あぁ?」
ねめつける陸の視線を軽く流し、自分達を見上げる聖良の方に視線を移す。
『ラブライブ・・・だったか? こいつぁもうその色んなものを捧げてきた大会で負けたんだろ? その時点で積み上げてきたモノなんざ皆崩れ去る。自分が招いた失敗で全部失ったんだ。自分で自分・・・いや妹との二人分の努力を否定したも同然だろ』
ケタケタと笑いながら綴るその言葉は、確かに筋は通っているようにも思える。
『はっ・・・馬鹿言ってんじゃねーよ』
だがそれでも、ゼロは強い意志を含ませたまま言葉を返した。
『一度や二度の失敗でなくなっちまうほど、人の想いは軟じゃねぇよ』
「・・・あぁ。・・・それに、積み上げてきたモンはスクールアイドルとしての努力だけじゃない」
ただ一人、聖良からスクールアイドルとしてではなく、鹿角理亞の姉としての話を聞いていた陸は知っている。
「聖良さんが妹のことを想って積み重ねてきたものは、絶対になくなったりしねぇ」
形として残るものではない。けど、確かに存在するもの。
聖良に自覚はないが、周りには、理亞にはしっかりそれが伝わっているから。だからこそ理亞はそれを返そうとしているから。
「Saint Snowとしての努力も同じだよ。積み上げてきたものは何一つ変わらず残ってる・・・。その二人の意思は・・・」
一拍入れ、冷気から解放されたAqoursメンバーを見下ろす。
「・・・アイツ等が背負って歌ってくれる」
『俺達はその想いを背負って、繋げるために戦ってんだ。・・・だから、負けられるかよ!』
ここで陸達が負ければ何もかもおじゃんになる。聖良は自責に捕らわれたままだし、理亞は前に進めない。
だから・・・諦めてなるものか。
「『う・・・・・・おおぉぉぉぉ‼」』
刺さるような痛みと冷気を跳ね返し、ルナミラクルの限界を超えた力でゼロランスを振り回す。
『そいつ等の想いも背負って戦うだぁ? しゃらくせぇ! 負けた時点でそいつ等にゃもう夢も形も何も残っちゃいねぇ!』
それを受け止めて鍔迫り合いの形になったグロッケンは尚も笑う。
『それに他人に想いを託すなんざ、自分の無力さを棚に上げてワガママを押し付けてるだけに過ぎねぇんだよ!』
『そんな訳があるか‼』
『グウオォォォォォッ⁉』
『なあぁッ・・・⁉』
突如吹き飛ばされてきたデスローグが衝突し、派手に転倒するグロッケン。
『友に託す事も・・・・・立派な夢の形だ‼』
[ゴモラアーマー! アクティブ‼]
『『グゥ・・・オォォォ・・・・・・』』
エックスの纏う青い重厚な鎧―――ゴモラアーマーの鉤爪から放たれた振動波が追撃を掛ける。
「俺もずっと無理だって言われてた夢があった。けど、諦めなかったからこそエックスが、アスナが、皆が! 一緒に無茶な夢を追いかけてくれている! 夢を託せる仲間が出来たんだ‼」
グロッケンとデスローグ。そしてAqoursとSaint Snowに対し大地も言葉を重ねる。
そして並び立った二体の巨人は、確かな頼もしさを持って十一人の少女を見下ろした。
『託して、託される。それが仲間というものだろう?』
『コイツ等が俺達を信じて、託してくれた想い・・・・・・もう無駄にはしねぇ‼』
『『―――――俺達(私達)は・・・・・・テメー等(貴様等)を倒す‼』』
刹那。
ゼロ達の意思に呼応するかのようにウルティメイトブレスレットが輝き、クリスタル部分から二つの蒼い光球が浮き出てくる。
『・・・?』
「これ・・・、聖良さんと、姉ちゃんの・・・・・・」
ヒカリと・・・アグルの力。
この蒼い光は、共に他者を頼り、寄り添う事を知った二人から託されたものだ。
「これは・・・・・」
それはエックスと大地も同じ。
炎のように暖かい光が、ゴモラアーマーに覆われたX字のカラータイマーから優しく漏れ出ている。
『理亞の・・・炎・・・・・・』
理亞の心情を想い、気に掛け、前に進ませる手助けをしたエックスだからこそ託された力。
『・・・エックス・・・』
『・・・・・・ああ』
ここでこの光が呼び起こされた理由を悟った二人が互いに顔を合わせ、頷く。
『君達の託してくれた想い・・・・・・決して無駄にはしない‼』
『ここからが真のクライマックスだ。・・・・・・さあ、行くぜ!』
二つの光をブレスの中に押し戻すように、二つに光を叩く。
瞬間、蒼い閃光が爆発するように四方に伸び、ゼロの身体を包み込んだ。
『フゥゥゥ・・・・・・』
プロテクターが金色に変わり、青と銀の胴体には黒のラインが走る。
これがルナミラクルの力に、アグルとヒカリ、二人のウルトラマンの力が上乗せされた強化形態・・・その名も―――、
『グランナイト・・・・・・ゼロ‼』
[ゴモラアーマー! バーニングフェイズ!]
方やエックス。
理亞のリトルスターから発生した炎が赤熱と共にゴモラアーマーを包み込んでいく。
「・・・・・・この光・・・物凄いエネルギーを感じる」
『当たり前だ。なにせ、私が信じた理亞の光なのだからな』
「調子のいいことばっかり言って・・・・・・まあでも、今回はそういう事にしといてあげるよ。・・・さあ、行くぞエックス!」
『もちろんだ!』
炎を吹き飛ばし、姿を現したゴモラアーマーの色は―――真紅。
「『スカーレットゴモラアーマー‼」』
「「『『ハアァ‼」」』』
北の大地に唸りを上げさせ、蒼と紅の巨人が同時に駆け出す。
『チッ・・・・・だが、パワーアップしてんのはそっちだけじゃねーんだよ‼』
『グオオォォォォォォォォ‼』
デスローグが両腕で漆黒の業火球を生成し、突撃するゼロとエックスに投げつけてくる。
『大地!』
「ああ、分かってる!」
その火球を受け止めたのは、ゼロに先んじて前に出たエックス。
両腕を交差し、紅のゴモラアーマーから噴出した灼熱の炎で攻撃を打ち消した。
『シャアァ!』
群青の閃光が迸る。
一瞬にしてグロッケンとデスローグの背後を取ったゼロが、展開されたウルティメイトブレスレットの先端から伸びた蒼い光剣を音速で振り回す。
『ナイトビームセイバー!』
『グオォッ・・・!』
『ケッ・・・! 凍えろォ‼』
速くなったならまた凍えさせて動きを鈍くすればいい。そんな目論見で吐き出したであろう冷気がゼロに迫るが―――、
『ッ・・・⁉ な―――ぐあっ・・・!』
吹き付ける吹雪に屈する事もなく、ナイトビームセイバーがグロッケンの胴を横薙ぎにする。
『同じ手を何度も喰らうか!』
今のゼロには、大海の化身であるアグルの力が宿っている。
温かさを湛え、全てを包む偉大な海の前には、冷気など可愛いものだ。
『ウオオォォォォォ‼』
冷気と、そのエネルギーを全て刃に集め、横一文字に振り抜く。
『アブソリュートゼロレイド‼』
『ガあぁッ・・・⁉ なぁッ・・・⁉』
迸った極零の刃を受け、ピシリと音を立ててひび割れた自身の鎧を目にして驚愕の声を漏らすグロッケン。
『ハアアァァ‼』
『ぐっ・・・うぅぅぅ・・・!』
驚きを噛み締める暇など与えず、ゼロは即座に斬り掛かる。
グロッケンが防御に回す両腕の刃を上回る速度で振るわれる光剣は、次々にその銀色の身体と紫色の鎧を切り刻んでいく。
『そう好きなように・・・・・させるかよ‼』
『くっ・・・!』
ならばと多少のダメージは覚悟で突進を仕掛け、無理矢理剣戟の網を突破したグロッケンの一撃が通ってしまう。
が、
『イイィィィッ・・・サアァァァァ‼』
『グはあぁッ・・・‼』
奴の死角から懐に潜り込んできたのはエックス。
スコップのように地面を抉りながら振り上げられた真紅の鉤爪が鳩尾を直撃し、グロッケンの身体は空中に打ち上がった。
『グオオォォォォォォォォ‼』
『フゥッ!』
右腕の鎧を大剣へと変形させたデスローグの切っ先が迫るも、元の防御力が更に強化されたスカーレットゴモラアーマーは苦も無くそれを受け止めて見せた。
そして流れるような動きで両腕の爪をデスローグの胴に突き立てると―――、
「『グレンネイルアッパー‼」』
『グオオォォォォォッ・・・・・・‼』
莫大な熱量と振動数を誇る衝撃波が解き放たれ、鎧の胸部にひび割れを走らせると共に豪快に弾き飛ばした。
『ぎぃぃ・・・・・! デスローグ‼』
本格的に焦りを覚えたのか、グロッケンは冷気でゼロとエックスを牽制しつつデスローグの傍らに寄る。
そして互いに目配せを交わした後、尋常ならざる熱量の爆炎と絶対零度の柱が立ち昇った。
『『双天煉獄氷斬‼(グオオォォォォォォォォ‼)』』
地面から突き出てきた無数の氷の槍と、それに続く形で放出される無数の火焔球。
『『ハアアァァ・・・・・・‼』』
迫る合体技を前に、左腕のウルティメイトブレスレット、両腕のゴモラアーマーを掲げ、頭上でエネルギーを増幅させる。
その光が収束した後、ゼロは腕を十字に組み、エックスは真紅の爪を突き出した。
『リキデイトシュート‼』
「『フルフレイム・・・ゴモラ超振動波‼」』
絶大なエネルギーが双方の中間で衝突する。
『『『『オオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!』』』』
光線干渉の余波で揺れる大気は、まるで空間そのものが意思を持って震えているかのようで。
『何だとッ・・・・・⁉』
だがやがてその均衡は崩れ、徐々に蒼雷と熱波の光線が氷炎の槍を押し返し始める。
『クッソ・・・・・! 何でだ・・・! 何でテメェ等はいつも・・・・・・‼』
『分からねぇのか?』
『人が人を想い、繋がり合おうとする心。それが天と地とを結ぶ光。その光とユナイトするからこそ、私達は光の巨人と呼ばれるんだ!』
『・・・こっちにだって意地があんだ・・・・・・負けてたまるかァァァァァァァァ!!!!』
怒号と共に余力の全てを叩き込むグロッケンだが、その身に纏った鎧は絶大な光を受け続け、崩壊を始める。
『仲間を支え、尊ぶ想いがいつだって俺達に力を与えてくれる!』
『それこそが・・・・・・貴様が嘲笑った彼女達の力・・・・・・想いの力を舐めるな‼』
『グウゥ・・・オォォォォォ・・・‼』
デスローグも維持と根気で踏ん張り続けるも、増大し続けるエネルギーを前に皮肉な事にも鎧は徐々に崩れていく。
『これが俺達が友から受け継いだ力・・・』
『・・・そしてこの星の人々の持つ、希望の力だ‼』
そう言い放った直後に輝きが増し、光線はグロッケンとデスローグに直撃。凄まじい閃光と共に轟音が夜空を疾走した。
『ウ・・・・・・ウゥゥゥゥ・・・・・・』
『あ・・・ぐぁ・・・』
ゼロとエックス。人間の想いを乗せた二人の渾身の光線を受けた二人の鎧は完全に砕け散り、白銀と武骨な身体が露わになってしまっていた。
ふらふらと立っているのもやっとな様子で、もう力が残っていないのが伺える。
『・・・ケケ・・・・・・想いだの希望だの・・・・・、んな事がどこまで通用するかなァ・・・』
『・・・・・・?』
魔鎧装は完全に消滅したというのに、何故かグロッケンとデスローグの身体からは闇の瘴気が漏れ、空に昇っていく。
〈・・・・・・この感じ・・・・・・〉
『ヒャ・・・ハハ・・・・・・もうじき陛下は復活する・・・・・その時、テメェ等は知ることになるだろうよ・・・・・そんなモンは真の絶望の前にゃ無意味だってなァ・・・・・』
訝しむゼロの眼前でそこまで言った後、糸が切れたようにふらりとバランスを崩し―――、
『破滅の・・・未来で・・・・・・・・待ってるぜェェェェェェェェェェェェェ!!!』
『グオオォォォォォォォォ!!!』
真後ろに倒れ込んだ二人の身体が、次の瞬間には轟音と共に爆散する。
ここにダークネスファイブの一角が二人、氷結のグロッケンと炎上のデスローグを討ち取ったのだった。
――――――Awaken the power
言葉に出来なかった想いが。今日この日まで積み上げてきた努力と感謝が。
それら全てを詩として歌い、曲として表現する。
刹那として生まれた一つとしてない輝きを、永遠の思い出とするために。
『・・・・・雪の結晶・・・か』
大決戦から数日経ったクリスマスの日の夜。
夜景の中で歌う十一人の少女達を見つめ、エックスがそう零す。
『・・・理亞が言っていたんだ。聖良が卒業してもスクールアイドルは続けるが、Saint Snowはもう続けないとな』
こうして彼女達がAqoursとSaint Snowの十一人で歌う事を決めた理由。それは定かではない。
だが、
『形として永遠に残すより、思い出として永遠に残すことを選んだ。Saint Snowという、理亞と、聖良だけの雪の結晶を、決して消えない輝きにするために』
曲が止み、最後のポージングと共にパフォーマンスが終了する。
内の一人、氷の妖精のような衣装に身を包んだ理亞をエックスは再度見つめる。
『彼女がまた、新たな雪の結晶を見つけるために・・・・・な・・・』
Saint Snowとしての思い出は、ここで区切りを打った。
理亞も聖良も、これからは新たな道を進む。
やり切れなかった想いを、Aqoursに託して。
それは世界の片隅で起こった、ささやかな聖夜の物語。
AWaken the powerはいいぞぉ・・・。劇中でのエモさもさることながら、Aqours3rdでとんでもねぇカメラワークを見せたと思いきや、続く4thでは曲中にドゥーム内で花火を打ち上げるとか言う頭のおかしい(褒め言葉)演出でいつも我々の予想の上を行く神曲・・・。
あのドゥームすら揺らす爆発的なコールもまた良きかな・・・。
さ、Awaken the powerについて語るのはここまでにして、今回の振り返りと解説。
まずはゼロライブ初となるオリジナル形態であるグランナイトゼロ。作中で語った通りルナミラクルにアグルとヒカリの力が重なったものとなります。ん? オーブのナイトリキデイター? 知らない子ですね。外見は俺の下手くそな挿絵で我慢してください・・・。
スカーレットゴモラアーマーは赤くなったゴモラアーマーって事で(雑)
そしてやっとこさ幹部ポジションであるダークネスファイブの一角、グロッケンとデスローグを倒すことに成功しましたね(現アニメ本編全26話中22話)
・・・・・・あと四話分でどうやって残り三人倒したらいいんだよ・・・。
悩んでもしゃーない。とりあえず遅れた分を取り戻すために出筆せねば。
それでは次回で!