ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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あけおめです!久々の2週間以内更新!
今年もよろしくお願いします!


百二十八話 暴君の鉄槌

 

 

 駿河湾へと沈む夕日を浴び、古びた印象を与える木造の校舎が赤く萌ゆる。

 その門前に構えられたバス停の前で月と別れた陸は、複雑に感情が入り混じった溜息を深々と吐いた。

 

「・・・・・・ぜんっぜん話が入って来なかった・・・」

 

『学校代表がそれでいいのかよ・・・』

 

「あんなこと言われて集中しろって方が無理だっつの・・・」

 

 ―――――ボクはずっと、りっくんは曜ちゃんが好きなんだと思ってたけど

 

 月のその一言は最近告白されたばかりだという事に加え、スライの催眠で豹変してしまった彼女を少なからず辛く思っていた陸を動揺させるには十分すぎた。

 おかげで何か統合に際して大切な話をされたのにも関わらず内容はさっぱりである。

 

『・・・まあなんつーか、月に便乗するみてーに今更こんなこと言うのもあれだとは思うが・・・・・・俺もお前は曜が好きなんだとばかり・・・』

 

「お前もそっち側か!?」

 

『・・・・・・つーかお前自覚なかったんだな・・・』

 

 呆れられても何が何だかだ。

 傍から見るとそんなに分かりやすかったのだろうか・・・・・・いやそもそもとしてまず陸は自分が曜に好意を抱いていたなどとは思っていなかった訳で・・・。

 

「・・・い、いつから・・・? いや確かに告白されてから妙に意識してたのは認めるけど・・・」

 

『いやもう大体一体化した後辺りからぼんやりとは思ってたぞ? 確信したのはダークザギの一件の時だな』

 

 ゼロが言うのは曜が梨子への嫉妬心を利用され、ノアの光を追って飛来したダークザギに取り込まれた時の事。

 あの時の陸は後にも先にもあれ以上はないのではないかと思う程に必死で、事が済んだ後も曜の差異に気が付かなかった自分を責め、彼女をもっと見るようになったのだったか。

 

『・・・・・・こんだけしちまうほどの想いを好きと呼ばずに何と呼ぶよ?』

 

 一体化しているせいで筒抜けな心の声を聞いたゼロが重ねて言う。

 

『それと、閉校祭の日。お前なんか曜に告白同然なこと言ってたよな?』

 

 その一言で呼び覚まされた閉校祭での記憶、それは―――、

 

―――――喧嘩も、苦労も、気遣いも迷惑がる事も全部。全部含めてお前といる時間なんだよ! それが心地いいから一緒にいるんだろうが‼

 

 異国のチャンパールだか遅刻のテンパールだかのせいで自暴自棄気味になり、自分は迷惑しか掛けてないからこれ以上近づかない方がいい、そう言った曜に対し陸が言い返した言葉。

 感情のままに思っていたことをそのまま言葉にしたが、今思えば確かに告白のそれだ。

 

『あの場には俺等しかいなかったが・・・・・・ギャラリーいたらモロバレだぞあれ』

 

 言われてみればそれらしき節が思っていたより多い・・・・・・ていうか過去の自分が恥ずかしいことを宣いすぎていて震える。よくもまああんな恥ずかしいことをペラペラと・・・。

 

「い、いやそりゃ好きか嫌いかで言われりゃ勿論好きだけどよ・・・友達としてーとかそんなんじゃ・・・」

 

『・・・そうだな・・・、例えば、Aqoursの誰かがその辺の野郎に告白されてその答えに悩んでたとするぞ? どう思うよ』

 

「何だその例え・・・まあ、多少気になるとは思うけど・・・」

 

 言った通り多少なり気になりはするが、どうするかは本人が決める事だし陸の意志が入り込むものでもないだろうに。

 実際スクールアイドルをやっている以上はそう言う機会もあるだろうし想像には難くない。

 

『・・・じゃあお前、それを曜で想像できるか?』

 

「いやお前出来るもなにもアイツが一番そう言うの多いと・・・・・・」

 

 答えかけの言葉が止まる。

 想像することはしたのだ。曜に惹かれた誰かからの想いを受け取り、結果がどちらであれ自分なりに答えを出そうとッする彼女の姿を。

 

 ・・・何かこう、嫉妬などとは少し違うのだが、凄くモヤモヤする。

 

『・・・まあ、お前の気持ちの事だから断定はしないけどよ・・・・・・』

 

 そう言えば中学の時、曜が人気のあるサッカー部の男子から交際を申し込まれたことがあり、千歌や果南と一緒に――何なら陸が一番――断ったと言う報告を聞くまでハラハラした事があったか。

 

 思えば、あの頃にはもう・・・?

 

『少なくとも曜は、お前に好きって気持ちを伝えてくれてんだ。・・・それにお前なりの答えぐらいは出してやれ』

 

 流石に自覚せざるを得ないのだろうか。

 曜の事が、好き。

 正直に恥ずかしいし、こうしてゼロに色々指摘されてて穴にだって入りたいくらいだ。

 

 ・・・けれど、決して嫌な感情という訳ではなくて―――、

 

『あと鞠莉の方にもな』

 

「注文が多い・・・・・・てかそれだったら余計今の状態をなんとか―――――っと」

 

 悶々と没入していた思考が身体に加わった衝撃に遮断される。どうやら人とぶつかってしまったらしい。

 

「すみません・・・! よく前見てなく・・・て・・・・・・」

 

 見上げた先の顔に咄嗟に口から出た言葉が徐々に霧散してゆく。

 見つめていると心身が乖離するような感覚を覚える、どこまでも黒い瞳。

 その双眸は遠く、陸を見ているようで、もっと別の何かを見ているようにも思えた。

 

「なに、お気にせず」

 

 何故だか背筋が凍るような薄い笑み。ぶつかってきた陸を責めない思慮のある男性、と言った印象だが、その紳士的な振る舞いの裏からは底の知れない何かを感じる。

 

「それでは」

 

数秒の間陸を見つめた後ぺこりと一礼し、歩き去る男の青のメッシュがかかった黒い髪が揺れる。

油断してはいけない。直感がそう警告し、陸はその背中を見えなくなるまで目を離すことが出来なかった。

 

「・・・なんだ今の感覚・・・」

 

『・・・アイツ、この星の人間じゃねぇな』

 

 幾分か低い声音になったゼロが静かに告げる。

 鼻が利くゼロが言うのだから間違いはないのだろうが、それだけじゃない。説明は出来ないが確信めいたものがあった。

 

 今まで接触してきた宇宙人ではなく、どちらかというとゼロに近いような・・・、

 

『宇宙人全員が全員悪党って訳じゃねーが・・・・・・用心しておくに越した事はないか。次また見かけるようなら警戒だな』

 

「・・・分かった」

 

 どっと溢れ出てきた疲れに深く息をつく。

 結局月に対して確かめたかった事も叶わずじまい。判明したのはこっぱずかしい陸の恋心疑惑とまた何か怪しい奴がその辺をうろついてるという事。

 特に状況を改善させるようなものは得られず、むしろその足かせになりそうなものばかり。

 

こんな事をしてる場合じゃないのに。完全に無駄にした一日が重く圧し掛かる。

 

『・・・とりあえず今日はもういいだろ。お前の親も帰ってくるんだろ』

 

「ああそうだ・・・・・・千歌の件の言い訳考えねぇとなぁ・・・・・・」

 

 再度溜息をついた陸の影の伸びる、その先。

 背後で手を組む男が陸と同じく伸ばした影の中で嗤う仮面の悪魔の存在には、まだこの時は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 夏のある日をきかっけに毎晩のように見続ける、何度目かも分からない悪夢。

 だから、またあの夢だ。胡乱な意識の中でもそれだけは分かった。

 

『随分と楽しそうだったな。お前でない何かと戯れるお前のお友達は』

 

 一筋の光すら差さない、黒で塗り潰された暗闇の中に声が木霊する。

 そんな世界を彷徨う私は、いつも一人だ。

 

『哀れなものだな。お前が大切な仲間だと思っていた連中は、今やすっかりお前を忘れ、それを気に留めることなくのうのうと過ごしている。所詮、お前という存在は奴等にとってその程度だったという事だ』

 

 日に日に、迫る巨影が大きくなってゆく。

 つり上がった赤い双眸は足を竦ませ、慣れる事のない恐怖が全身を震わせる。

 

『どんなに逃れようとところで人間の本質は闇、どこまででも付きまとう。大いなる光を宿した貴様とてそれは変わらん。・・・・・・だが受け入れれば楽になる。貴様の抱く嫉妬や劣等感もろともな』

 

 囁く声と一緒に影は私を飲み込み、更に深い漆黒が世界を包んだ。

 

 いつになったらこんな悪夢から解放されるんだろう。

 放り出された闇の中で一人孤独に思う。

 いつもいつも、このただ辛く苦しい時間が過ぎるのを待つだけで―――、

 

『感心しないねぇ・・・』

 

 ぽつんと、虚空から発された˝もう一つの声˝。

 それは稀にこの夢に現れる白銀の光ではなく、青黒いオーラを纏った魔方陣を伴って現出し―――、

 

『光も、そして闇も、皆等しく空虚だ。固執する価値などない。・・・・・・それより今はお目覚めの時間だよお嬢さん。光や闇なんかよりももっと、面白いものが見られる―――・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 一言で言い表すと目覚めの気分は最悪だった。

 部屋はまだ暗いまま。ハッキリしない視界で辛うじて確認できた時計の針は頂点を過ぎ、一桁の数字を差している。草木も眠る丑三つ時というやつか。

 

「・・・なんだったんだろ」

 

 夢の終わり、あの強制的に自分を悪夢から引き離したようにも思えた謎の声と魔法陣。

 少なくとも偶然で片付けられるような雰囲気を纏ったものではなかった。夢の中の存在とはまた別の、得体のしれない恐怖を覚える。

 

「・・・」

 

 キュッと枕を抱き、昨日の夜を思い出す。

 急に一人になったような感覚が怖く、泣きじゃくった千歌を受け入れてくれた陸の、腕の中の温もり。

 

(・・・暖かかったな・・・)

 

 どうにもこの、あの夢を連想させる一人きりの暗闇というのが心地が悪い。

 彼ならばまた、こんな恐怖も取り除いてくれるのだろうか。

 

 そう思うと、自然と足は彼の元へと向かっていた。

 

(・・・まだ起きてるのかな・・・?)

 

 ドアノブに手を掛けた時、扉の向こうから陸とゼロと思しき話し声が聞こえる。

 

「―――っぱお前等の想い過ごしじゃ・・・」

 

『・・・そんなに認めたくないのかよ・・・、曜じゃ嫌なのか?』

 

「いやそうじゃないんだけど・・・なんかこう思ってたのと違うと言うか・・・・・・」

 

『そんなもんだろ。人を好きになるってことは』

 

 話の内容はうまく聞き取れないが、とにかくまだ起きていることは確かなようだ。

 曜が以前寝ている陸に近づいたら敵と勘違いしたゼロに迎撃されたことがあると言っていたが、起きているならその心配はなさそうだ。

 

「ああもう月の奴こんな時に余計なこと言いやがって・・・・・・!」

 

『まあいいじゃねーか。これでラッキョウ野郎の催眠が解けたら晴れて両想いだぞ?』

 

「・・・お前楽しんでないか・・・? つか断定しないんじゃなかったのかよ・・・」

 

(両・・・想い・・・?)

 

 少しだけ開いた扉から漏れ出た声に、数秒の硬直どころか思考停止にまで陥る事となる。

 それが寝起きの胡乱の中での聞き間違いでない事くらいすぐに理解出来た。

 

 ―――――ずっと陸の事・・・・・・好きだったから・・・!

 

 同時にフラッシュバックするある日の光景。

 そこからある答えを導き出すことくらい、頭の弱い自分でも容易だった。

 

「・・・・・・千歌?」

 

「っ・・・!」

 

 背後からかかった声にびくりと肩を震わせ、振り返ってみれば陸の顔が映る。

 するとこうして彼と二人でいる事が、何故か途端に辛くも思えてきて。

 

『・・・どうした。またおかしな夢でも見たか?』

 

「・・・う、ううん。ちょっとトイレ行こうかなーって思ったら、なんか話してるみたいだったから気になって・・・・・・邪魔してたらゴメン・・・」

 

 どうして誤魔化したのか自分でも分からないまま、用もないトイレに駆け込む。

 最後のゴメンは、一体何に対するゴメンだったのか。

 

「・・・はは・・・・・・やっぱりバカチカだ・・・私・・・・・・」

 

 込み上がってくる哀感と、また別の黒いものが滲みとなり、視界を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しずつ春の兆しが見えて来ているとは言え、季節はまだ冬。肌に吹き付ける潮風は刺すように痛い。

 

「・・・・・・なんか千歌に避けられてる気がするんだけど・・・」

 

 陸の両親が帰って来る日。わざわざ港まで出向いて海風に揺られる船の中から生みの親の乗る漁船を探そうとしていたのだが、今やすっかり別のものに注意が向いていた。

 昨日の朝辺りからか、どうにも千歌の態度がよそよそしい。

 

『・・・お前が何かしたんじゃねーの・・・?』

 

「・・・・・・だとしてもそれで拗ねるような奴じゃないと思うんだけどな・・・」

 

 そもそもその何かをした覚えもない。

 強いて何か心辺りを上げるなら・・・・・・、

 

「・・・・・・もしかして聞かれてた・・・?」

 

『・・・さあな・・・・・・けどないとは言えない・・・』

 

 あの夜不自然に陸の部屋の前にいたし、可能性としてはあり得なくはない。ないのだが、仮にそうだとしても避けられる理由が・・・、

 

『・・・・・・知らぬが仏とはよく言ったものだが・・・・・・やはり無知とは哀れなものだな』

 

「『ッ・・・⁉」』

 

 ビリビリと全身に警告が走り、咄嗟に低く身構える。

 ジャタールの時のようなテレパシー・・・・・・とも思ったがこの声は確かに耳を撫でた。

 辺りを見渡してもそれらしき影は見えない―――となれば、

 

『久しいな仙道陸・・・・・・侘びしい道化よ』

 

「ヴィラニアス・・・!」

 

 見上げた先に映る異形の姿。

 青く頑強な鎧が如し体表に、特徴的な両腕の鋏と金色のマント。

 ダークネスファイブの一角―――極悪のヴィラニアスの姿が確かにそこにはあった。

 

 

「・・・・・・どういう意味だ」

 

『そのままの意味だ。己の生の意味すら分からぬまま踊り続けたマリオネットに対する、な』

 

 そう言い放つヴィラニアスに以前の業然たる態度は薄く、むしろどこか控えめさすら感じさせる。

 

『生の意味だぁ・・・? ハッ、んなモンは初めから持ってるんじゃなく、進みながら見つけていくモンなんだよ』

 

『・・・貴様等は本当にそのような言い回しに拘るな・・・・・・どうでもいいことだが』

 

 どこか遠く息をついたヴィラニアスは、ふと顔を上げ波立つ渚に視線を飛ばす。

 

『・・・だがそんな戯言ではどうにもならないものもある』

 

 ヴィラニアスの見やるその先、先程から出入りしている地元のそれらよりも二回りほど大きい漁船が波に揺れている。

 小さい頃から幾度かこうして帰りを待っていた陸には分かる。陸が生まれた時から変わらぬという、どこか古びた、両親の船。

 

『・・・・・・その意味がこれだ』

 

 儚げにすら見えたその双眸が、突如として赤く煌く。

 そしてそれに呼応するように、穏やかだった海は激しく波立ちはじめ―――、

 

『ッ――――――!!!』

 

「なぁっ・・・・・・⁉」

 

 自ら上げた巨大な水飛沫を弾き飛ばし、君臨した巨大ななにか。

 ヴィラニアスと同様の赤い双眸に、鉄球や鎌の装着された両腕、口のようになった腹部。

 その全身が兵器かのような出で立ちのそれは、間違いなく怪獣だった。

 

『タイラントッ・・・・・・⁉』

 

「・・・おい・・・・・・やめろッ―――!!!」

 

 次に起きようとする事態を悟るも、時すでに遅し。

 その刹那にゼロがタイラントと呼んだその怪獣は、唸り声を上げると共に頭部の角へエネルギーを集約させ―――、

 

『ッッ―――――――――!!!!』

 

 解き放たれた、三日月形の光弾。

 それは両親の乗る船を含め、周囲の漁船を残らず直撃し――――――爆発と共に紺碧の海を紅蓮渦巻く地獄へと一変させた。

 

 

 

 

 




陸は…曜が…好き…?
そしてそれを見てしまった千歌がまた…曇る…

戻ってきた陸の両親もダークネスファイブの計画の内…?タイラントの暴虐により悲惨な事に…

そしてなんか怪しい仮面野郎が…ダリナンダアンタイッダイ…()
 
それでは次回で!
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