ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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うす。センター当日っす(こんな日に何やってんだ貴様)
まあ予約投稿なので恐らくぼくは今会場に向かっているのでしょうが

ラブライブフェス、参戦する方は大いに楽しんでください
………………………………………………………………明日参考書片手にガチャだけ回して爆速で帰ります(小声)


百三十話 また、一人

 

 

寝静まっていた夜の町に、二体の獣の咆哮が轟く。

 

「あっちゃー・・・、こりゃ完全にキレてるね陸君。・・・無理もないけどさ」

 

月光の下で衝突を繰り返すのは暴君怪獣タイラントに、即座に漆黒の姿へとその身を変えたウルトラマンゼロ。

普段に増して荒々しいその戦闘スタイルは、多くの人々を、肉親を屠った奴への怒りの現われにも見えた。

 

「あなたは・・・」

 

「やっほー千歌ちゃん。残念ながら二人っきりの時間は楽しめそうにないよ」

 

自分でも少し滑ったなと思う冗談を口にしつつ、オウガは少しでも冷静であろうとする頭で戦況を分析する。

タイラントは強い。特にヴィラニアスのあの固体は過去にウルトラ戦士を相手取ってきた固体と比べても格が違うと言えるだろう。

正直冷静さを欠いている今の陸で勝てる可能性は…限りなく低い。

 

「いやらしい手使ってくるじゃん。君らしくないねヴィラニ・・・・・・ヴィラニアス?」

 

流した視線の先で、少女の姿を借りた極悪星人は影も形もなく消えていることに気がつく。

次になにが起ころうとしているのか。それだけは容易に想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャアァァァァヴゥゥゥゥゥゥッッ!!』

 

『グアァァァ・・・・・・ッ!』

 

振り上げられた鎌状の腕が胸元を抉り、激しく火花を散らしたゼロダークネスがその巨体を地面に打ち付ける。

 

「くっそ・・・!」

 

〈おい陸落ち着け! 闇雲に戦って勝てる相手じゃ―――〉

 

『ジュアアァァァァッ!!』

 

ゼロの忠告に耳を貸さず、主人格が陸にある漆黒の巨人は再度突進を仕掛ける。

だが怒りのままに繰り出される攻撃は尽くタイラントに防がれ、カウンターで逆にダメージを貰うばかり。戦闘が始まってからずっとこの調子だ。

 

『ギャアァァァヴゥゥゥゥゥゥッッ!!』

 

『ハアァッ!』

 

一度距離を取ったゼロダークネスへの追撃で放たれた三日月形の光線をデスシウムショットで相殺。

舞い上がった黒煙で視界が悪化するが、奴の位置は分かっている。死角から一発お見舞いしてやろうと光線の発射モーションに入るが―――、

 

『ッ・・・!? ガ・・・アァァァ・・・!』

 

それよりも一瞬早くジャラララと音を立てて鎖に繋がれた鎌が飛来し、ゼロダークネスを弾き飛ばすと共に溜め込んでいたエネルギーを霧散させてしまう。

 

「読まれ――――――ッ!?」

 

『当たり前だ。我輩の相棒を舐めるでないぞ』

 

不意に背後に気配を感じ、咄嗟に防御姿勢を取った両腕に衝撃が走る。

後転受身の後に顔を上げれば、そこにはやはり金色のマントを揺らす両腕の鋏が特徴の青い宇宙人。

 

『最強のテンペラーと最強のタイラント・・・・・・我等、極暴タッグよ!!』

 

多彩な能力を持つテンペラー星人最強格のヴィラニアスと、様々な怪獣の長所が結集しているタイラント。

そんなコンビを独力で突破するの困難なのは分かっているが―――、

 

〈はっ・・・相変わらずだっせーコンビ名しやがって・・・・・・おい陸変われ。俺がやる〉

 

『ウアアァァァァァッ!!』

 

〈っておい聞けよ!!〉

 

手のひらからデスシウムショットを連射しながら三度突撃。

しかしヴィラニアスは右腕の鋏から発生させた雷の鞭でいとも容易くそれを弾いて見せ、そのまま撓りを利かせた雷撃が巨人の身体を打つ。

 

『オオォォォ・・・!』

 

ならば弾けないほどの威力で叩き込んでやればいい。そんな安直な考えの下、先日ジャタールを粉砕したデスシウム光線のチャージに入る。

 

〈待てッ! タイラント相手に光線技は―――〉

 

ゼロの静止も僅かに遅く、解き放たれた赤と黒の雷槍が迸る。

そしてヴィラニアスを庇うように前へ出たタイラントへと直撃し―――、

 

『ッ・・・・・・!?』

 

―――微塵もダメージを与えることもなく全て腹部の口へと吸収された。

 

『ギャアァァァァヴゥゥゥゥゥッ!!』

 

『ヌッ・・・・・・ンン・・・・・・!』

 

光線のエネルギーで活性化したのか、より猛々しさを増したタイラントの体当たりの衝撃が全身を貫く。

辛うじて吹き飛ばずに持ちこたえたものの、こう掴み合いの純粋な力比べではやはり劣ってしまう。

 

『教えてやろう。正しい光線の使い方というものをな』

 

『グアアァァァァ・・・・・・!!』

 

タイラントとの押し合いの形となったゼロダークネスの背後に回ったヴィラニアスの放った光線。

それは身体の内部から破壊されていくような激痛を伴って強襲し、著しい体力の消耗がカラータイマーの光を赤く点滅させる。

 

『フハハ・・・! 貴様等ウルトラ戦士にはよく効くだろう?』

 

ウルトラ兄弟必殺光線。かつてウルトラマンタロウと戦ったテンペラー星人が星の科学力を結集して編み出した対ウルトラマン用の破壊光線……以前そんな話をゼロから聞いたことを今になって思い出す。

そんな光線をいつまでも受け続けていては身体が持たないが、抜け出そうにもタイラントがそうさせてくれない。

 

なら―――、

 

『ンンン・・・・・・・・・ハアアァァァァァ!!!』

 

『ギャアァァァァヴゥゥゥゥッ!?』

 

赤黒く発光させた全身から闇の波動を放ち、タイラントの拘束とヴィラニアスの光線を同時に振り払う。

不意の反撃に怯んだその一瞬を突いて暴君怪獣の足元を蹴り上げては転倒させ、ムカデのような尻尾を掴んだのちに力任せに放り投げた。

 

『グ・・・・・・ウゥゥ・・・・・・』

 

が、逆転劇を見せたのも束の間。

ただでさえ消耗していた体力の中放った大技は余力を根こそぎ持ってゆき、襲い掛かってきた脱力感がゼロダークネスに膝をつかせる。

 

『悪足掻きを・・・・・・だがもう勝負は見えたな』

 

バリバリと帯電するヴィラニアスの両腕が決着が近いことを知らせる。

敵討ちどころか、少しのダメージも与えることも出来なかった。そんな無力感に打ちひしがれる陸の眼前でエネルギーは解放され―――、

 

『ッ・・・・・・!?』

 

満身創痍の巨人を大きく逸れ、何もない虚空を疾走する。

外したのか。一瞬そんな甘えが脳裏を過るが、その狙いはすぐ明らかとなった。

 

「・・・月ッ・・・・・・!」

 

雷撃が向かうその先。

ヴィラニアスから解放されると共に放置されたか、気を失い、横たわる月の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・、んん・・・・・・?」

 

耳をつんざくような衝撃音や爆発音が暗闇の底にあった意識を引き戻し、月は閉じていた瞼を開けた。

胡乱な思考でも既に辺りが暗くなっているのは理解でき、自分に何があったのかと昼間の記憶を辿ろうとするが、次の瞬間目に飛び込んできた光景によって遮られる。

 

「え・・・?」

 

自身の真上に黒い巨人の顔が見えた。

その巨人は背後の宇宙人の雷撃を苦しみながらも受け続けており、それはまるでソイツの攻撃から月を守っているようにも思えて―――、

 

「なんで・・・? なんでボクを・・・・・・」

 

理解が追い付かなかった。

あの巨人は、ウルトラマンゼロは人類の敵。周りの人々は皆口を揃えてそう言うし、月自身、それが当たり前なんだと思っていた。

 

けれど目の前の彼はどうにも身を挺して自分の盾になってくれている。そう思えてならなかった。

 

『ウ・・・・・・ァァ・・・・・・』

 

どうしてそう思ってしまうのか。その疑問に答えを出す前にゼロの胸の輝きが消え、身体を消滅させながら前のめりに倒れこむ。

やがて落下してきた光が弾け、その姿を現した者の正体に―――目を疑った。

 

「りっ・・・・・・くん・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ・・・ぁ・・・・・・!」

 

死ぬほどに痛む全身と、人としての肉体に戻っているという事実が敗北を告げた。

変身解除までに追い詰められた身体は思うように動かず、立ち上がろうにも途方もない疲労感がそれを拒んでしまう。

 

『笑止』

 

傲然とした声が頭上から降りかかった。

その主であるヴィラニアスは言葉通りの不機嫌さを示しており、線上に並んだ紅い複眼は侮蔑を込めて陸を見下ろしていた。

 

『宇宙最強の肉体の持ち主と一体化し、陛下の力を得てなおその程度か。つまらんぞ』

 

『・・・明らかにフェアじゃねぇ勝負持ち込んどいてよくもまあんな口が叩けんなテメェ』

 

『なんとでも言え。どちらにせ貴様等が負けた事実は変わらん』

 

 食ってかかるゼロを軽くいなし、陸達にトドメを差すのかと思えば次の瞬間。

 

『興醒めだ。戻るぞタイラント』

 

 ぽつりとそう零し、ヴィラニアスとタイラントを囲うように発生した光が奴等の身体をどこかへと転送してゆく。

 退いてくれて安心した。そう言った感情はなく、むしろ目的は果たしたとでもいうような極悪星人の視線に不穏な予感を禁じ得ない。

 

 そしてその予感は、またしても最悪の形で的中する事となる。

 

「・・・そっか・・・・・・、そういう事だったんだね・・・・・・」

 

見たくなかった表情が、聞きたくなかった声色がそこにはあった。

 

「・・・曜ちゃんは、知ってたんだ・・・。だから・・・」

 

「・・・・・・月・・・」

 

 ・・・ああ、そうか。

戸惑いを隠せていない月の顔を見て全てを悟る。

 ヴィラニアスの本当の目的は、ここにあったのか。

 

「・・・りっくんが・・・ウルトラマン・・・」

 

 何故わざわざ月を人質に取って勝負を仕掛けてきたのか。

 何故その月に対し攻撃を放ち、陸が彼女を庇うように仕向けたのか。

 何故変身解除にまで追い込んだ陸とゼロにトドメを差していかなかったのか。

 

 

 全てはこのため。

 月の目の前でウルトラマンゼロが陸に戻るのを見せつけることで、彼女の心を陸から引き離すため・・・・・・つまりはそういう事だ。

 

「その、月・・・・・・これはっ・・・・・・!」

 

「っ・・・・・・!」

 

 痛む身体に鞭打って何とか起き上がるも、月の瞳に映った色に再度脱力する。

 畏怖、怯え・・・・・・彼女のそれは明らかに陸への拒絶を示していた。

 

「・・・ごめん・・・ボク・・・・・・、どうしたらいいかわかんないや・・・」

 

 逃げるように陸に背を向けて走り去ってゆく月が、物理的な距離以上に遠く感じる。

 

 傷付いた身体以上に心が悲鳴を上げ、保っていた何かが崩れかける。

 同時に蟠っていく黒い感覚に誘われ、糸が切れた意識は暗闇の中へと沈んでいった。

 

 

 




最悪のタイミングで正体バレっと
ちなみにこの話は1週間くらい前に書き上がってましたがこの日に上げるために取っておきました。ただの嫌がらせですハイ

公式サイトの言及によればヴィラニアスはダークネスファイブでもトップクラスの実力らしいのでゼロはともかくあの状態の陸を圧倒するなら造作もないことだと思いボッコボコにさせていただきました

さーてこの状態からどう立ち直るのやら…()

それでは次回で

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