ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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新しいウルトラマンが発表されましたね(今更)
まさかゼロの弟子とはねぇ…………うん…(ちょっと考えてた構想が揺らいでる人)


それはそうと劇場版タイガはいつ公開されるんですか!!!!


百三十三話 再来の悪魔

 

 

 目を覚ましてすぐに理解した。

 また、失敗したのだと。

 

「・・・陸ちゃん・・・・・・」

 

 自分以上にボロボロの様相でいる彼の名を呟く。

 ベッドの上の自分と、その傍らに置かれた椅子の上でこちらを見守るような姿勢で眠る彼。

 

 本当ならば逆だったはずなのに。こうさせてしまったのは紛れもなく自分だ。

 

―――――私なら君に彼を助けるための手助けができる・・・・・・そう言ったらどうする?

 

―――――まあ、ただ。このままじゃ君のだぁい好きな彼が無事に帰ってくる保証はないだろうけどね

 

 自分は何をやった。何がしたかった。

 結局ただ無暗に突っ走って空回りしただけじゃないか。

 

 まんまと口車に乗せられて、陸の事しか見えていなくて。その結果更に彼への負担を増す事となった。

 

 ダメだ。このままじゃダメなんだ。

 役に立たなきゃ。陸を助けなきゃ。今の陸には自分しかいないんだ。ひたすらにそう言い聞かせ、奥底の熱い何かを滾らせる。

 

 それでいい。

 

 確かに聞こえたその声が、歯止めの利かない想いを増長させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・トレギア、ですか・・・・・・』

 

 ダークネスファイブ参謀、魔導のスライは一人唸る。

 悩みの種は高海千歌を焚きつけネクサスへと変身させたあのトレギアと名乗った謎の宇宙人だ。

 

 地球周辺には宇宙怪獣を配備しておいたのだが、それを突破して飛来してきたとなるとかなりの手練れ。その上ウルトラマンゼロ含め宇宙警備隊を相手取っている以上敵対するのはあまり好ましくない。

 

 実際本人にこちらと敵対する気はなく、結果的に言えば奴の行動がこちらにとって有益だったのも事実。

 

 だがそれ以上に、奴にはスライを警戒させる何かがあった。

 

『あの気配は確かに―――――』

 

『・・・用とは何だスライ』

 

 呼び出したヴィラニアスが近づいてくるのを察し、IQ一万の頭脳をフル稼働し迅速に思考を纏める。

 今この状況では間違いなく、こうする事が最善解だ。

 

『大した用ではありませんよ。ただ次の作戦の内容を共有しておこうと思いましてね』

 

『・・・次は何だ。張り合いのないのは御免だぞ』

 

『いえ、そうではなくてですね』

 

 トレギアの行動がどうであれ警戒すべきことに変わりはない。頃合いの瞬間に不安材料が出来たのは少々計算外だが、元より自分達の目的は一つだ。

 

 幸い˝あの御方˝も、お考えは同じであるようだから。

 

『・・・次は私が出ます。直々にエンドマークを打って差し上げましょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・とにかく、無茶するのはやめろ」

 

 少ない気力を振り絞ったような声が向けられる。

 結果から言うと変身した事はこっぴどくとまではいかずとも、予想外に叱られた。生気など殆どなかった彼がその声に確かな怒気を孕んで。

 

 彼のためにした事なのに、なんで。

 陸を助けたくてやった事なのに、ナンデ。

 

 役に立たなかったから。迷惑をかけたから。負けたから。独り歩きする思考が次々と極端な想像を浮かばせては積み上げてゆく。

 

 ともかくとして彼にまで拒絶されるような事になるのだけは避けたかった。

 陸に自分しかいないように、今の自分にも陸しかない。一度は優越感を覚えたそれも、今となっては強迫観念以外の何物でもなかった。

 

「陸ちゃん・・・・・・私―――」

 

『ご機嫌、いかがでしょうか』

 

 千歌と同じような気を背負った彼の背中に掛けた声は予期せぬもう一つの声に阻まれる。

 その正体に気が付いたのは瞬刻の後、身体の主導権を切り替えたゼロが千歌を背後に隠してからだった。

 

『・・・今度はテメェかラッキョウ野郎』

 

『久方ぶり・・・・・・でもありませんね。私のゲームは楽しんで頂けているようで』

 

 確かスライ・・・だとか言ったか。何度も陸やAqoursに魔の手を伸ばしてくる組織の参謀であり、一連の事態を引き起こした張本人。

 つまりAqoursの存在を消し、今尚千歌を・・・陸を苦しめている元凶。そう思うだけで抑えようのない何かが湧き上がってくる。

 

『連日ウチのヴィラニアスが失礼いたしました。なので今回は私が挑戦に出向いた次第です』

 

『吹っ掛けてきたのはテメェのくせによく言いやがる・・・・・・挑戦だぁ? 受ける訳ねぇだろそんなモン。受ける理由がねぇ』

 

『理由ですか・・・・・・ではこういうのは如何でしょう』

 

 千歌と、それ以上の眼光を光らせるゼロを前にしても余裕綽々として手を打つスライ。

 そして一拍置いた後に奴が提示したのは―――、

 

『私に勝つことが出来たら催眠を解き皆さんを元に戻して差し上げる・・・・・・というのは』

 

『なに―――うぉ・・・!?』

 

 怪しい含みを持ってスライが口にした甘言にゼロによって抑え込まれていた陸の意識が再び表へと出る。

 活力を失っていた彼の瞳には傍目にも伝わるほどの闘志が宿り、今の一言が如何に陸に対し効果的だったかが伺える。

 

『・・・受けて頂ける・・・・・・という判断でよろしいのですね』

 

『待て陸! 罠に決まってんだろ! 落ち着け!』

 

 低く笑うスライに、ゼロの制止も聞かずに陸がゼロアイをその手に握る。

 彼を突き動かしているのは陸自身のためでもあり千歌のためでもある。その事を理解してはいても、図らずとも共依存の状態を受け入れていた千歌にとって自分以外の誰かに縋ろうとする姿は少し、釈然としない。

 

 直後に迸った赤と青の閃光も、その靄までは切り裂いてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 自分じゃダメなのだろうか。

 やっぱり彼が必要としているのは彼女なのだろうか。

 

 拒絶されても、心無い言葉を吐かれても、それでも彼は彼女を求めるのだろうか。

 

 今の彼には自分しかいないのに、それでも彼が求めるのは彼女なのだろうか。

 

―――――ずっと陸の事・・・・・・好きだったから・・・!

 

―――――これでラッキョウ野郎の催眠が解けたら晴れて両想いだぞ?

 

 偶然にも聞いてしまった言葉が、砕けかけている心を深々と抉る。

 ダメだ。それではダメなんだ。

 

 もう彼しかいない。最後に残った彼すらも離れてしまったら自分はどうなってしまうのか。それが怖い。

 

――――力が欲しいか? もっと強大で、望むがままに振るえる力が。

 

 ˝あの声˝に、今回ばかりは力強く頷いた。

 彼を助けなきゃ、こっちを見てもらわなきゃ。そうでないともう壊れてしまうそうで。

 

――――俺を受け入れろ。そうすればお前は更に大きな力を手にできる。

 

 今度こそ、絶対に・・・、

 

――――超えてやれ、お前を無下にする全てを、奪い去ろうとするアイツ等を・・・!

 

 瞬いた黒が、全てを染め上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やれやれ、邪魔をするな・・・ということかな?」

 

 深層意識に干渉しようとする度に微弱ながらも深い闇の波動に阻害される。

 この程度ならば打ち破るのは容易いがその必要はないだろう。そうした方が˝面白い˝だろうから。

 

「・・・やっと見つけた」

 

 背後から掛かった声に振り返れば、そこには至って普通な男。

 そんな男から感じる妙な気配が今しがた自分の干渉を阻んだそれと同質であることを悟ると、男―――トレギアは偽りの顔を愉悦に歪ませた。

 

「おやおやこれは・・・・・・裏切り者の君が何の御用で?」

 

「お、そこまで知ってるんだ。なら自己紹介の必要はないね」

 

 笑みを保ったままの男に再度内心で嗤う。

 これはいい。これから起こる一大イベントまでの余興には十分だろう。

 

「単刀直入に聞くよ。何が狙いだい?」

 

 言葉の通り、余計な要素を省いたシンプルな問い。

 その主の黒い瞳に秘められた敵意や警戒と言ったものはむしろ薄く、むしろ同類を見るような暗さがあった。

 

「そうだなぁ・・・ただ答えるだけというのもつまらない。ここは一つゲームといこうか、カド―星人」

 

「ゲームねぇ・・・・・・付き合ってあげたいところだけど、そう時間も無さそうなんだよねぇ」

 

 一瞬眉を揺らすも、カド―星人は平静に努めて答える。

 その視線が向く先ではこの星の者ではない二つの巨影が轟音を響かせている。

 

「まあいいや。どうせそうしないと答えてくれないんだろ・・・・・・まあ、陸君が絡んでくるのは確かだよね」

 

「・・・それは以前君が犯した過ちと重ねているのかな?」

 

 またもカド―星人の眉が揺れる。

 動揺・・・とまではいかないが、楽しむには十分なくらいだ。

 

「・・・・・・ボクが言うのもあれだけど気持ち悪いね君。流石に知りすぎじゃない?」

 

「おっと、それは御堪忍。私の悪い癖でね」

 

 胸に手を当て紳士的に一礼。もっとも誠意の一つも向こうは感じていないのだろうが。

 

「・・・でも実際君の言う通りだよ。これでも友達のつもりだからね、ボクのやった事で彼が苦しんでるなら助けるのが道理ってもんだよ」

 

「ほう・・・・・・あの少年との絆とでも言い出すのかな?」

 

「・・・・・・そう言えたらどんなに幸せだったかね。まあ彼がどう思ってるにしろボクが勝手にやってる事だから、ちょっち君のやってる事は看過できないんだよね」

 

「・・・流石、闇の者でありながら光に感化され、結局どちらにもなり得なかった道化の言うことは違うなぁ」

 

 無意味と理解しつつ戯言を吐く。

 コイツは付け入る迷いや苦悩こそあるが既に腹を括っている。暇つぶし程度にはなるが渇きを満たす程ではない。

 

「・・・・・・そんな君に敬意を表して一つ教えるよ。私の玩具は彼だけじゃない」

 

「なに・・・?」

 

 この星の人間を模した仮の肉体を動かし、カド―星人の視線を誘導するように身体を反り返らせる。

 二体の巨人に向かって走る一人の少女。そんな彼女が背負った雑多な感情に思わず嗤ってしまった。

 

「・・・・・・千歌ちゃん・・・?」

 

「彼女は素晴らしい・・・・・・嫉妬、焦り、孤独感に葛藤・・・・・・・・・・・・器を満たすには十分だと思わないかい?」

 

「・・・・・・っ! まさか・・・」

 

 本質こそ違えど近かりし存在の自分には分かる。

 目障りな光に隠れてこそいるが、˝彼˝はそこにいる。

 

「待て千歌ちゃん! 今ネクサスになるの―――――ごあッ・・・!?」

 

「邪魔するなよ。これからもっと面白くなるんだ」

 

 ようやく顔色を変えたカド―星人を振るった腕からの波動で薙ぎ払う。導いては意味がない。自分の意志で選ぶからこそ生命は輝くのだ。

 

 自ら破滅を呼び寄せたとなれば、それはもう格別の甘美を齎すだろう。

 

「さあ・・・・・・楽しいパーティーの始まりだ」

 

 直後に立ち昇った光の柱が、更なる愉悦を確実のものとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪意の疾走する数刻前。

 甲冑を着込んだ悪魔のような宇宙人の前で漆黒の巨人が膝をつく。

 

『グ・・・アァ・・・・・・』

 

『随分とお苦しみのようですねぇ・・・・・・ナイトさん』

 

 端的に言うと、スライは強かった。

 ヴィラニアスのような圧倒的な力も、グロッケンやデスローグ、ジャタールのような特殊な能力がある訳ではない。だがそれらを除く全てでこのスライがダークネスファイブの頂点である事は間違いないだろう。

 

『普段の貴方ならばいざ知れず、この状況ともなるとこうも違うものですかね』

 

 そんな相手に本調子ではない上に冷静さも欠いている陸が勝てるはずがなかった。ゼロが主人格を入れ替えようにもベリアルの力が大きすぎて干渉する事も出来ない。

 

『ゼアァァッ!』

 

『フフ・・・』

 

 肉薄と同時に放ったデスシウムショットも一刀の下に打ち砕かれ、逆にカウンターの回し蹴りが腹部にめり込む。

 点滅を始めたカラータイマーが危機を知らせ、その脱力感を物語るようにゼロダークネスが再度膝をついた。

 

『もう終わりですか・・・・・・・・・ほら』

 

 腕を背後で組んだスライが赤い双眸を向ける先で閃光が空へと立ち昇る。

 間もなく収束し始めた光が象ったのは巨人の姿。ウルトラマンネクサスだった。

 

「千歌・・・」

 

〈アイツまた・・・・・・、・・・?〉

 

 ヴィラニアスの時のように無策で突っこむことを警戒するが、すぐに異変に気が付く。

 何故だかネクサスはその場から動く気配がない。

 

『・・・・・・』

 

 何か行動を起こす事もなく、銀色の巨人が無言で佇んでいる光景はただただ異質だった。

 

「・・・千歌・・・? どうし―――」

 

『ッッ!!』

 

 妙な緊張だけが流れる時間に耐え兼ね、漆黒の巨人がゆっくりと歩み寄ったその時、遂に動き出すネクサス。

 それまでとはまるで違う、疾風の如き鋭さで大地を蹴り―――、

 

『グアァァァ・・・・・・ッ!?』

 

 ―――ゼロダークネスを攻撃した。

 

「っ・・・・・・!?」

 

〈どうなってやがる・・・? なんで俺達を・・・〉

 

 唐突な出来事に陸もゼロも戸惑いを見せるが、迫りくるネクサスのラッシュは止まる気配を見せない。

 

「千歌・・・? 千歌ッ!」

 

〈おいラッキョウ野郎! テメェ何しやがった!〉

 

 荒波のような激しい連撃がこれでもかと押し寄せる中飛ばした声にも返事がない。

 何かが起きていることは明白であり、その原因と思しきスライに怒声を飛ばすも奴は笑い続けるだけ。

 

『私は何もしていませんよ・・・・・・時は満ちた。それだけのことです』

 

〈なに・・・?〉

 

『・・・貴方にも分かりますよ。すぐにね』

 

 スライの零した不穏な言葉が耳朶に触れると共にネクサスの手刀がヒット。確かなダメージと共に火花が散る。

 

〈・・・・・・ネクサス・・・ではないな〉

 

 ヴィラニアスの時の様子からして今のネクサスは千歌に干渉できていないが、だからといって千歌の意志とも考えにくい。

 ともなると千歌とネクサスのシンクロを遮っている何者かかが千歌を操るないしは身体を操作している可能性が高いが・・・・・・、

 

――――――・・・・・・!

 

〈ッ・・・!? おい・・・嘘だろ・・・・・・?〉

 

 語り掛けてくる声ではない声がその正体を告げる。

 だがそれはあまりに信じがたく、厳重に注意を張り巡らせていた脅威とはかけ離れたもので―――、

 

〈陸ッ・・・! 離れろッ!〉

 

 咄嗟に張り上げたその声が届くよりも早く。

 突き出されたネクサスの腕が、文字通りゼロダークネスの土手っ腹を貫く。

 

『グッ・・・アアァァァ・・・・・・ッ!』

 

 途端、ゼロダークネスから溢れる闇が腕を介してエナジーコアへと注がれてゆく。

 いや、正確には陸のベリアルの力が吸収されている・・・と言った方が正しいか。ともかく流れ出る闇がネクサスを、千歌を侵食する。

 

『ア・・・、グァアァ・・・・・・・・・ッ!』

 

 腕を引き抜いた直後にネクサスの光と反発した闇が紫電を走らせ、倒れ込むようにして銀色の巨人の肉体が掻き消える。

 変身が解け、霧散する粒子の中無言で佇む千歌は、歓喜に肩を震わせているように見えた。

 

「・・・千歌・・・・・・?」

 

『・・・・・・そんな奴はもういない』

 

 陸の呼びかけに答えた彼女の声は、千歌のそれでこそあるが˝高海千歌˝のものではなかった。

 そしてその正体を示すかのようにスライが彼女へ向かって頭を下げる。

 

『再び貴方様にお仕えできる事、真に嬉しく存じ上げます・・・・・・陛下』

 

「へい・・・か・・・・・・?」

 

『・・・久しぶりだな。逢いたかったぜェ・・・・・・』

 

 掠れた陸の声を受け、千歌が口角を吊り上げる。

 眼前の巨人に向けられた瞳は赤黒く染め上げられ、その身体を支配する者の力の強大さを伺わせた。

 

『お前も俺に会えて嬉しいだろ・・・・・・・・・ゼロ』

 

 地球人の少女から発せられる、小さな身体に不釣り合いな程の威圧感。

 そんな触れているだけで狂いそうな程の覇気に旧懐すらも覚えつつ、ゼロは最大級の敵意を持って忌々しき宿敵の名を口にした。

 

 

 

 

 

 

〈・・・・・・・・・・・・ベリアル・・・ッ!〉

 

 

 

 




控えおろう。陛下の御前であるぞ
と、言う訳で序盤から存在を匂わせていた陛下が遂にご登場です

これまでのようなドーンッ!といった感じの復活ではないのでインパクトには欠けますが御復活です!(ゴリ押し)
詳しくは次回で明かされる事となりますが伏線らしきものを漁ってみるのも面白いかもしれませんね。まあこれに関しては相当分かりやすかったでしょうが…


それでは次回で

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