ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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Z面白れぇ!!(毎年言ってる)
流石田口監督というか、色々な描写が丁寧でかなり手堅く来てる感じがあったのでこれからの展開が楽しみです


百三十九話 幻影の輪花

 

 

 

『グ……ウゥ……!』

 

『陛下、まだご復活なさって間もないのです。無理だけはなさらぬよう』

 

『……俺に心配なんて必要ねぇ……、引っ込んでろ』

 

 怪獣の姿のまま肩を大きく上下させ唸る主の言に従い後退する。

 ウルトラマンネクサス……いくら力を失っているとはいえあのノアだ。如何に絶大な力を誇る我等が主と言えど吸収には相当の労を要するらしい。

 

 ともかくしばらく動けそうにない。当然その間は自分の判断が事態を左右するが……一つ気掛かりな存在がいる。

 

『おやおや……、随分とお苦しみのようで』

 

 カツン。自分達以外は誰もいないはずの船内に床を叩く音が溶ける。

 自分達の存在を知っておりかつこの挑発するような態度。そして容易くここに侵入できるのは奴くらいしかおるまい。

 

『……丁度、貴方について考えていたところですよ。トレギアさん』

 

『覚えてもらえていて光栄だよ。魔導のスライさん』

 

 微塵もそんなことは思っていないと態度に出しつつ、教えてもいないスライの名を口にするトレギア。

 確認できる範囲での此奴の暗躍の数々……正直現状においてはウルトラマンゼロ以上の障害だ。

 

『……どういうつもりですか?』

 

『…と、言うと?』

 

『貴方の行動の件ですよ。キッパリ言ってしまうと、我々にとって不利益な結果を生んでいるのでね』

 

 仙道陸に立ち直られたのは計算外であり痛手だ。おまけに一人だが仲間の記憶が戻ってしまったのはますます計画に支障をきたす。

 

『おいおい、私はどっちの味方にもなった覚えはない。今回の件も私の計画を進行した結果起きたもの……いわば副産物に過ぎないさ』

 

 ブルトンの作り出した結界が時間稼ぎになっているのもその結果、トレギアはそう言う。

 

『ほう……ではその計画とやらを聞かせて頂いても?』

 

『そう結論ばかり急ぐものではないよ。……君もそう思うだろう?』

 

 スライの言攻めをのらりくらりと躱し、皮肉っぽく別な方向へ向けて嗤う。

 

『君も中々に興味深い。望んで光から離れた訳でもなければ闇に堕ちた訳でもなく、今なお闇に身を置く動機は単純な恨みだけ』

 

 命知らずかただの馬鹿か、はたまた別の何かか。

 あろうことか主に矛先を向けたトレギアは、如何にも自分の主張こそが正しいといわんばかりに弁を振るうが―――、

 

『思想もなければ信念もない。そんな君の何に彼等が惹きつけられたのか……』

 

『……気に入らねぇな』

 

 刹那。

 明らかな苛立ちを含む声に続き、迸った赤黒い雷槍がトレギアに迫った。

 

『ッッ……!!』

 

 初めて焦るような様子を見せたトレギアにそれは直撃し、両腕の防御もろとも奴の身体を数十メートル後方まで運んだ。

 

『口達者なだけで偉そうに踏ん反り返るな……俺に何か言いたきゃ力で示せ』

 

 この主は少々好戦的というか短気というか、俗っぽく言うならば喧嘩っ早いのが困りどころだ。

 まあ少なからず、理詰めのトレギアに対してはその方が効果的なのかもしれないが。

 

『…いや、やめておこう。お互い消耗するのは不都合だろう?』

 

『フン……腑抜けが。……着飾っても所詮は光の国の奴等と同じか』

 

 加えどうにも主はトレギアに対し相性がいいようで。

 吐き捨てられたその言葉への反応は、スライのそれに対するものとは明らかに違って見えた。

 

『ははは……まあ、流石にこの姿では同族の君にはバレてしまうか』

 

『なっ…!?』

 

 肯定したトレギアに驚愕したのはスライだけだった。

 同族。確かに奴はそう口にしたのだ。

 

『まさか、貴方も……!?』

 

『あの星の連中と同じ括りで捉えるのはやめてもらいたいな。私が見ているのはもっと別のものさ……っと、こんな話をしに来たんじゃなかったね』

 

 なおも余裕だけは崩さすに奴はやれやれと肩を竦めて見せる。

 確かにトレギアの行動は˝あの種族˝の信念とは正反対のものだが、かといって主と同じ側かと言われればそうとも言い難い。

 

 奴の言葉の通り光や闇、善や悪とは乖離した何かを見つめているように思える。

 

『じきにここを離れるのでね。その前に挨拶でも……と思っただけさ』

 

 紳士染みた一礼の真後ろで広がった闇が魔方陣を形成し、その奥へとトレギアを誘っていった。

 

『先程の発言は詫びるよ。それではまたどこかで…………もっとも、その˝また˝があればの話だがね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレギアだと……!?」

 

『ああ、確かに奴はそう言った』

 

 トレギア。

 その名に衝撃を受けたのはゼロだけでなく、彼伝いにそれを聞いたメビウスとヒカリも同じだった。

 

「確証はあるの?」

 

『さぁな。けど、今回の手口は聞いていたそれと同じだ。それにわざわざアイツの名前を名乗る物好きな奴なんざいないだろ』

 

 三人の属する宇宙警備隊の追っていた犯罪者か何かなのか、これまでとは明らかに反応が違うのは言うまでもない。

 現にゼロは奴と接触して以降、これまで以上に警戒の糸を張っているように見える。

 

「…とりあえず、どんな奴なんすかそのトレギアってのは」

 

 実際に触れて見て陸が感じたのは、これまでの宇宙人は支配や侵略といった利己的な目的で行動していたことに対し、トレギアにはそれがないように思えた。

 言うなれば愉快犯だろうか。ともかく奴からは他人の苦しむ様を楽しんでいるような節が垣間見えた。

 

 だが逆に言えばそれだけ。確かに強大な力を有しているのだろうが、それでもこの三人がこれほどまでに神経を尖らせるような相手とは考えにくい。

 

 一体、トレギアの何が彼等をここまでさせるのか。その理由はすぐに明かされることとなった。

 

「……奴は、光の国の出身だ」

 

「……は?」

 

 ヒカリの零した言葉は数秒の沈黙を生むには十分だった。

 光の国。それはゼロ達の故郷だ。ともなれば当然奴も―――、

 

「…ウルトラマントレギア。正真正銘、俺達と同じ光の国のウルトラマンだ」

 

「え…、でも、光の国で闇に堕ちたのはベリアルだけなんじゃ……」

 

「ベリアルは光の国唯一の˝犯罪者˝ってだけさ。地球人にいい人や悪い人がいるように、ウルトラマンもそれぞれ色々な考えを持っている」

 

 ともなれば当然過激な考えに至るウルトラマンも現れる……ヒカリの言葉を継いだメビウスはそう言った。

 

「現に俺やゼロもかつては道を誤りかけた。トレギアは、踏み止まれずそのまま闇に墜ちてしまった者の一人という訳だ」

 

 自分が如何にウルトラマンという存在に盲目的だったかを実感する。

 宇宙の守護者。その認識は間違っていないのだろうが、全員が全員そうと限った訳ではないのだ。

 

「こればかりはどうしようもないことなんだがな。かつての俺も罪を犯した手前、ベリアルやトレギアと言った同族によって傷つけられた者を見るのはそうにも居たたまれん」

 

 何故か、ヒカリの憐れむような視線が陸に向けられる。

 タイミング悪く着信音を鳴らした携帯に阻まれ、この時はまだその意味を理解し得ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い炎の中で佇む漆黒の巨人に、その影と重なるもう一人の人影。

 絶望の渦中と思われるその様子は、自然と破滅の訪れを連想させた。

 

「花丸ちゃん、最近ずっとそれ見てるね」

 

 閑散とした図書室の中で、古びた巻物とにらめっこをする自分に掛かる声。顔を上げた先で綺麗な赤髪が揺れた。

 

「あ…、ごめんねルビィちゃん。図書室の整理手伝ってもらってるのに」

 

「ううん。来たいって言ったのはルビィだから、気にしないで」

 

 嫌味なく、かつどこか不安げに親友がはにかむ。

 数日前から見覚えもない少女が何度も何度も訪ねて来るらしい。今日図書委員である自分に付き添って休日の学校に来たのもその少女を避けるためなのだろう。

 

「何が描いてあるの、それ」

 

「なんだろ、……でも」

 

 知らぬ間に手元にあった巻物。

 太平風土記。どこかで、誰かに聞いた覚えもないのに、自分はこれを覚えている。

 

 その中の一幕……この黒い巨人のページを見ていると、何故だか酷く不安になるのだ。

 

「まる……知ってるのかな、このこと」

 

 失いたくない大切な誰かが手の届かない場所に行ってしまう。そんな感覚。

 その正体が誰なのか、それすらも分からないのに、どうしてこんなに怖いのか。

 

 そもそも描かれている事象が現実になることすら考えにくいのに、その感覚だけは確かなものとして胸に存在している。

 

「はっ…! ひょっとして何者かがまる達の記憶に細工を……!?」

 

「……ファンタジーの読みすぎじゃない?」

 

 突如口走ったフィクションめいたことに容赦のないツッコミが飛ぶ。こういうのは現不登校の幼馴染の仕事だというのに。

 

 と、言いつつまあ、現実身近にそれを可能にしてしまいそうな存在がいるのだが。

 

「先生に言われてた分は終わったから、帰ろっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、こんな花この辺に咲いてたっけ?」

 

 その帰り。

 図書室内から引き続き歩きスマホならぬ歩き巻物に勤しんでると、傍らのルビィが何かを発見。

 

「チューリップかなぁ? でも真っ黒…」

 

 独り言に興味を引かれ視線を巻物からずらせば、確かにルビィの言葉通りの黒い花が存在感を放っていた。

 

「花丸ちゃん、このお花何かわかる?」

 

 ルビィの無垢な瞳が向けられる。

 本ばかり読み漁っている手前多少なりの知識、少なくともここら一体に自生している植物の知識ぐらいはあるつもりでいたが……、

 

「……見たことないずら…」

 

 と、普段は抑えるようにしている口癖が出てしまう程度には該当する知識が存在しなかった。

 仮に外国の珍しい花の種子が何かの拍子でここに根付いたとするならば外来種の観念からこの場で処理するべきなのだが……、

 

「でも、綺麗だね…!」

 

 興味津々かつ魅入っている親友にそうとは言いにくい。

 仕方ない。ここは環境に影響が出ないことを祈って見過ごすとしよう。

 

「あれ……?」

 

 ふとルビィの顔から花に視線を戻すと、弁の辺りからふわりと花粉のようなものが舞うのが見えた。

 風媒花の一種なのだろうか。そんなことが頭を過った次の瞬間に変化は起こった。

 

「ぴぎっ……!?」

 

 ルビィの悲鳴が短く上がる。

 もしかしてまた例の少女が……そう思うも、それは悪い形で外れることとなる。

 

「っ……!」

 

 気付けば走り出していた。追わなければいけない気がした。

 何故かルビィはそれに対する反応とは思えないほど怯えているが、それを認識する余裕すらなく足は前へと進む。

 

「待って……!」

 

 素顔を伺わせない影が遠ざかってゆく。

 太平風土記の中にあった炎の中の影。その姿と重なるそれを夢中で追った。

 

 失っちゃいけない。手放しちゃいけない。理性ではなく心がそう叫んでいた。

 

「あ……?」

 

 不意に、それまで踏みしめていた地面の感覚がなくなる。

 切り立った斜面へ足を踏み外したのはすぐに分かった。必死になるあまりあの影以外が見えていなかったのだ。

 

「花丸ちゃんッ!!」

 

 ルビィの声がするが、答える声は出ずに視界が下へと流れてゆく。

 流石に無事では済まないだろう。そう覚悟し目を瞑った時、がっしりとした何かが花丸の身体を受け止めた。

 

「……お前、馬鹿なの?」

 

 恐る恐る開いた目が非難めいた少年を映す。

 彼が今の今まで追っていた影とは対極の位置にある存在だということを理解するのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下ろすずら! おらは助けてなんて―――」

 

「暴れんな。落ちるぞ」

 

 自分は何をしているのだろうか。

 存在するはずもないものを追って怪我をし、今は触れあってはいけないような少年に介護されている。

 

「…理事長に何したずら?」

 

「……どうもこうも、偶然通りかかっただけってあの人も言ってたろ」

 

 煮え切らない反応に疑念が深まる。

 ルビィは自分が陸に連れていかれるのを危ぶんでいたようだが、ふらりと現れた理事長に連れられ家に帰されてしまった。偶然にしては聊か都合が良すぎやしないだろうか。

 

「何か弱みでも握ってるずら―? それとも……」

 

「…大した想像力だな。小説家にでもなったらどうだ?」

 

「それ犯人のセリフずら……」

 

 口元を緩ませ、すぐに締めなおす。

 一瞬だ。ほんの一瞬だが、この軽口の叩き合いを楽しいと思ってしまった。それも足の痛みを忘れるほどに。

 

「いいからおとなしくおぶさっとけ。これで悪化でもされちゃ俺も後味悪いんだよ」

 

 理解が出来ない。

 敵なはずなのに。助ける理由なんてないはずなのに、どうして彼は自分を助けたのか。

 

「……変な人ずら」

 

 でも、最も理解出来ないのは自分の心だ。

 嫌いなことに間違いはない。実際嫌悪感だって確かなものとして胸の中にある。

 

なのに―――、

 

(なんで、こんなに安心するんだろ……)

 

 不意に生じたそれを誤魔化ように、その背中に顔を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で? 何か分かったことは?」

 

 無事花丸を家まで送り届け、そのついでに摘んできた黒い花を片手にゼロに問う。

 彼女を助けられたのは本当に偶然。丁度鞠莉に話を持ち掛けられてこの花を調べている最中に遭遇したのだ。

 

『コイツは地球の植物じゃねぇってことはわかったよ。メージヲグっつー人のトラウマみたいなもんを幻影として見せて、それに対する恐怖感情を養分にする宇宙植物だ。まあ、大方トレギアの野郎の仕業だろうな』

 

 ナイトファングと今回のメージヲグに共通しているのは人の恐怖心……つまりマイナスエネルギーを刺激しているということだ。

 恐らくはそれに関連した何かが狙いなのだろうが、相変わらず意図が掴めない。

 

「ほんっとに何が目的なんだよアイツ……」

 

 ぼやいてばかりではどうしようもないことは理解しつつもそれは口から出てしまう。

 正直トレギアの目的自体は今のところどうでもいい。奴の張っている結界のせいで千歌を助けに行けないのが一番の問題だ。

 

『近い内に去る……とは言ってたがな。それに期待してばっかじゃ―――』

 

 

 

「―――少しいいか」

 

 暗がりの中から呼びかけられる。

 また別の宇宙人かと身構えるも、電灯によって照らされたその正体はヒカリ。昼間見せたような神妙な面持ちでいる。

 

『どうした? トレギアの居場所でも掴めたか?』

 

「いや、そうでないのだが重要な話だ」

 

 静かな口調だが、その裏には計り知れないような何かがあるように感じた。

 

「……元々、俺とメビウスがこの地球に来た理由は覚えているな?」

 

『……陸を調べに来たんだろ』

 

 真意を悟ったらしいゼロが緊張感をもって返す。

 

「ああ、タロウからの依頼でな。……そしてその結果が出た」

 

 淡々と語るが、その一言一言は重い。

 

「正直伝えるかどうか迷ったが……やはりお前達は知っておくべきだと判断した」

 

 明らかに変わった空気感にぐっと息を飲む。

 少なからず良い知らせではない。そんな予感を秘めたヒカリの眼は、憐憫を含んで陸に向けられ―――、

 

 

「……陸、君は――――――」

 

 

 

 




視点変更が多すぎてごっちゃになってますが次回に持ち越すと少し厄介なので今回に詰め込みました

メージヲグはゼロの説明通りダイナに出てきた人間の恐怖の感情をエネルギーにして成長する宇宙植物で、恐怖心を素粒子に変えて、人々が最も恐れるものを幻影という形で出現させることができる厄介なものです
でまあ、前にも言った通りこのメージヲグ関連で単発の怪獣等は最後になりそうですね。ということはつまり……

そしてラストでヒカリが陸達に伝えたこととは……


それでは次回で。スパート掛けますよん
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