ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ニュージェネクライマックス観てきました
色々トラブルがあったタイガがようやくエンディングを迎えられたのもあってエンドロールで泣いちゃいましたよもう


百四十二話 フラグメントメモリー

 

 

 

「あっ……鞠莉さん!」

 

「…聖良」

 

 理亞を追っていったルビィを探していれば、またも意外な人物と出会う。最も、理亞がいた時点で姉の方もいるとは薄々思ってはいたが。

 

「今理亞とルビィさんが走っていくのを見たのですが、何かあったんですか?」

 

「まあ、ちょっとあってね。実は―――」

 

 理亞の時同様、鞠莉と聖良の間に驚きは伺えない。きっと花丸が戻る前から既にあの三人は記憶を取り戻し合流していたのだろう。

 

 …と、花丸はすぐに理解したが、この場において唯一記憶を取り戻していないダイヤだけは怪訝かつ不安気に妹の姿を探していた。

 

「…そうでしたか。かなり躍起になっていたので、宥めてはいたのですか……」

 

「この状況じゃ仕方ないし、理亞ちゃんの気持ちも分かるよ? とりあえず、二人がどこに行ったか分かる? 聖良も理亞を探してたんでしょ?」

 

「待ってください! まずその方は一体……」

 

「今は気にしてる場合じゃないでしょ? ほら、早く二人を追うよ」

 

 そう言いつつ鞠莉は笑っていた。まるでこの後起こることが分かっているかのように。

 まだ少し混乱している様子のダイヤだったが、自信ありげな幼馴染の姿を見ると従うようにその後に続いた。

 

「お久しぶりです……と言っても一月ほどですが」

 

「……すみません。失礼ですがどこかで…」

 

「…まあ、覚えていらっしゃらなくても無理はないですよね」

 

 花丸達を導きながら、ダイヤに軽く会釈する聖良。

 記憶の改変を受けたままの彼女は覚えていないのだが、聖良はそれに傷つく様子もなく、何か諭すように続けた。

 

「……けどせめて、あの日の二人の姿だけは思い出してあげてください。妹の成長を見届けた姉として」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハアァァッ!!』

 

 蒼雷の光剣の描く軌跡が幾度となく巨獣を掠める。

 当たらない訳ではないが捉えきれない。キメラべロスの鉄板のような強度を誇る皮膚を持ってすれば剣が掠る程度痒くもないのだろう。

 

『軽い』

 

『ぐあっ……!』

 

 水平に滑らせた一閃は軽々と受け止められ、逆に重く巨大な拳を打ち込まれる。

 いくらスピードで上回っていようと決定力に欠けてしまえば奴は倒せない。万全のキメラべロスを相手取るにはグランナイトでは不利だろう。

 

『陸!』

 

「分かってるよ!」

 

 心の内から滾らせた熱を全身で増幅。そのまま爆炎を纏ってキメラべロスを殴りつける。

 

『ほぅ…ヴィラニアスをやった力か』

 

 クラッシャーブレイブの力を試すように、そして楽しむように、低く笑った奴から殺到する赤黒い波状光線。

 それらを拳の一振りのもとに粉砕して見せると、ゼロは更に重みと熱量を増した一撃を叩き込んだ。

 

『ヘエェェラッ!』

 

『フンッ!』

 

 横から迫る剛腕を片腕を立ててガード。切り返しにドロップキックを見舞うも、身じろぎ程度で堪えたキメラべロスに足を掴まれそのまま放られる。

 

『ガルネイトバスタァァァァッッ!!』

 

 素早くとった受け身の後に放った高熱光線が直撃し、爆音と共に低く呻き声が零れる。

 即座にグランナイトへと再変身すると一気に肉薄。音速で振り抜いた一刀がキメラべロスの胴を斬り上げた。

 

『オオォォッ!』

 

『パーティクルナミラクル』

 

 大木の如し腕とそこから伸びる巨大な爪がゼロを引き裂かんと迫るが、寸でで身体を光の粒子へと変えそれらに空を切らせる。

 

『リキデイト―――』

 

 そのまま奴の背後で実体化し、十字に組んだ腕から至近距離射撃を試みるも―――、

 

『見えていないとでも思ったか?』

 

『なっ―――があぁっ……!?』

 

 待ち構えていたかのように両腕の倍は太く剛力な尻尾に打ち上げられ宙を舞う。

 更に翼を広げたキメラべロスはその体躯に似合わぬ速度で飛翔してはゼロの上を取り、今度は全体重を掛けたテールハンマーで蒼き身体を叩き落とす。

 

『力が…増して……!?』

 

『当然だろう。俺はこの娘を通してノアの力を吸収し続けている……力の差は歴然だ』

 

 どの程度ネクサスの力が奪われているかは懸念材料ではあったが、正直、想定は上回っていたと言わざるを得ない。

 だが完全に吸収し切れていないということはまだ千歌もネクサスも消えてはいないということだ。

 

『はっ…、思い上がんな。俺に勝った気になるなんざ……二万年早いぜ!』

 

 

《ニュージェネレーションカプセル!》

 

《α! β!》

 

「『俺に限界はねぇ!」』

 

 

《ウルトラマンゼロビヨンド!》

 

 

 双剣を構えた巨人の放つ閃光が吹き荒れた。

 その眩さも収まらん前にゼロはキメラべロスの懐に潜り込み、両刃を重ねて振り抜く。

 

『ツインギガブレイク!!』

 

『ぐ…おおぉぉぉ……ッ!』

 

 直後、音のない宇宙に轟々と衝撃音が響く。

 光を纏い肥大化した大剣による一撃はキメラべロスのみならず船体をも飲み込み、ダークネスファイブの拠点であった宇宙船は完全に崩壊してしまう。

 

『陛下の中には高海千歌がいるというのに……容赦ないものですね』

 

 難なく船体の崩壊から逃れて見せたスライの声が真上から飛ぶ。

 

『……あんまこんな事ぁ言いたかねーけどな』

 

 スライの方は向かず、静かに宇宙空間に静止したゼロ。

 刹那に上横真下の全方向に巡らせた警戒網が察知した影へゼロスラッガーを投擲する。

 

『この程度でどうにかなるような奴なら、この俺が何度も手を焼くはずねぇだろうが』

 

 言い放つと同時に四つの刃を悉く弾かれ、雄々しく広げられた翼が肩を掠めた。

 急旋回の後に突進してくる奴を掴み掛かる形で受け止めると、視線ですらも鎬を削るように顔を突き合わせる。

 

『随分と高く買ってくれてるもんじゃねーかゼロ。嬉しいぜ』

 

『認めたかねーがなッ!』

 

 深く刻まれた因果は何度否定しても離れないとでもいうように幾度となく両者が衝突し、その度に空間が振動した。

 

『そうか……なら嫌でも認めさせてやる』

 

 紅い双眸が瞬き、高まってゆくそのエネルギー量を示すようにキメラべロス周辺で熱が発生する。

 コイツはヤバイ。本能的にそう察知し、一気に距離を開けたゼロは自身を囲うように次々と球体を生成する。

 

『バルキーコーラス!』

 

 やがて八つとなった光球からレーザーの如く光線を一斉発射。

 だがまたもキメラべロスはその全てを回避して見せ、両腕に赤黒い雷を集中させつつゼロへと迫った。

 

『なっ……!?』

 

 狭い上に科学的に重力が生成されていた舟艇の中とは違い宇宙空間には奴の枷となるものがない。

 つまり今この場は、キメラべロスの飛翔能力と機動性が最大限生かせてしまう場所ということに他ならず―――、

 

「『がっ……ああぁぁぁぁぁぁッ……!!」』

 

 十字に組まれた両腕が胸元に叩きつけられ、ゼロ距離で放出された光線がその身体を押し流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの子の悲しそうな顔を見ると、猛烈に胸が痛んだ。

 それが何故か自分自身までもの否定になりそうで。自分の大好きなものさえも否定しているようで。

 

 この感情の正体が何なのか、どこから生まれてきているのか、それを確かめないといけない。

 

「………えぇっと……理亞……ちゃん…?」

 

 海辺の堤防で座り込んでいた理亞を見つけ、親友が呼んでいた名前をおずおずと口にする。

 すると彼女は少し期待するかのような目で振り返ったが、すぐ何かを理解したようにまた元の方を向いてしまう。

 

「…何しに来たの」

 

 海風に乗り、小さな声が耳を撫でる。

 抱えていたものを投げ出したような、どこか自棄的な含みを感じた。

 

「……お話、聞きたくて」

 

 必死に言葉を選んだ結果、口癖のようだった謝罪でなく正直な想いを口にする。

 

「スクールアイドル、楽しい?」

 

 あれほど抱えていた緊張や恐怖はもうなかった。

 むしろ彼女のことが知りたくて、彼女の言う自分がのめり込んでいたものがどんな景色を見せてくれるのか、興味があった。

 

「……楽しくなかったらやってないわよ」

 

 少し表情を緩ませて理亞が答えた。

 

「ずっと憧れてたから、そんなスクールアイドルを姉さまと一緒に出来るのがうれしくて仕方なかった」

 

 そこまで言って再び表情が陰る。次に彼女にとって辛い事実が並べられるのは想像に難くなかった。

 

「……でも、私がそれを壊した」

 

 ずきりと、知り得ないはずの事象を口にした理亞の姿に胸が痛んだ。

 想像できるというか、自分は知っているのか、その時の彼女の苦悩や葛藤が克明に浮かぶ。

 

「……ごめんね。嫌なこと思い出させて」

 

「なんでアンタが謝ってるのよ。これは私が向き合わないといけないことなんだから……そもそも、向き合う勇気をくれたのはアンタじゃない」

 

 ハッキリとそう口にした理亞にどこかこそばゆくなる。何の取り柄もないように思えていたが、少なくとも彼女の力にはなれていたらしい。と言ってもその記憶はないのだが。

 

「ルビィのおかげで、また新しく踏み出せたんだもん……感謝してる」

 

 照れるように語尾を萎ませる理亞。

 けれど三度表情は沈む。今度その原因を作っているのは自分なのだろう。

 

「けどアンタは覚えてない……ううん、そもそもあの日のこともなかったことに……」

 

 それを表すように心底悔しそうな呟きが二人の間に滲む。また訪れた沈黙が酷く苦しかった。

 

「……ルビィ、どんなスクールアイドルだったの?」

 

 もう理亞の言っていることが嘘か本当かなどはどうでもよかった。真偽など関係なしにその顔を見るのが辛い。

 

 そしてそれ以上に、今の自分の知らない自分がどうであったのかを彼女の口から聞きたい。

 

「……どうもこうも、今のアンタそのものって感じだけど? 気弱で、自信も無さげで。正直、最初は舐めてるかと思ってた」

 

 辛辣な評価に思わず苦笑い。先程の理亞の言葉からして、少しは憧れていたようなスクールアイドルに近づいている自分を想像していたのだが。

 

「そんな落ち込むことない。そう見えるだけで、ルビィは私よりずっと強い……立派なスクールアイドルだったよ」

 

 励ます方法を探していたつもりが、何故か逆に励まされている。

 でもどうしてか心地いい。褒められたからとかそういうのではなく、単純に今、理亞とこうして言葉を交わしているのが。

 

「……姉さまに歌を届けられたのだって、ルビィが一緒だったからだもん」

 

「歌!? ルビィ理亞ちゃんと一緒に歌ったの!? すごい……聞かせて!」

 

 もうすっかり目的も忘れて子犬のように目を輝かせた。それを見て釣られるように理亞も笑う。

 

「……もう、仕方ないんだから…」

 

 照れつつも、また何かを期待するようにその曲を口ずさみ始める理亞。

 そしてこれまでになく強く―――心が震えた。

 

「……始まる時は、終わりのことなど―――」

 

 静かに歌いだす理亞。

 いつか来る終わりを憂いつつも、それ以上に今この瞬間を楽しもうとする想いが伝わって……いや、呼び起こされると言うべきか。

 

―――――歌いませんか? 一緒に曲を! お姉ちゃんに送る曲を作って、この光の中で、もう一度!

 

 自分の声……なのだろうか。

 理亞の歌声に重なって聞こえるのは、その歌に込められた理亞の……ルビィの想い。

 

―――――…ルビィを……置いて行かないで……!

 

 抑えきれなかった寂しさが。

 

―――――わたくしの知らない所で、ルビィはこんなにも一生懸命考えて、自分の足で答えに辿り着いたんだって!

 

 成長した自分に対する姉の喜びが。

 

 全部、全部この曲に、この歌に込められている。

 

「―――頑張るって決めたら」

 

「……絶対、負けないんだ」

 

 理亞から歌を継ぐように、自然と口にしていた。

 

 自分は……この歌を知っている。

 

「……ルビィ?」

 

 姉がいなくなってしまうのが寂しくて、もう一緒に歌えなくなるのが嫌で。

 けど、だからこそ成長した姿を見せて、もう一人でも大丈夫なんだと安心させたかった。

 

 そんな想いで自分はこの曲を……理亞と一緒に作ったんだ。

 

「……理亞ちゃん」

 

 ぎゅっと、理亞の手を取った。

 どんな顔で、どんな言葉を言えばいいのか。正解は分からない。

 

 だからまた伝えるんだ。自分の、正直な気持ちで。

 

 

 

 

 

「……ルビィ…」

 

 遠目から見る妹の背中は大きかった。

 もっと前に、もっと間近で、自分はその姿を見ている。そんな確信があった。

 

「…少し、寂しい気もしますね」

 

 傍らで聖良が呟いた。

 

「あの日理亞がああ言ってくれたのが嬉しかった反面、やはり寂しさは拭えませんね」

 

「……そうですね」

 

 静かに頷く。

 不明瞭なことだらけだが、ただ一つはっきりと言えることがある。

 

「正直、まだわからないことの方が多いですし、信じ難いのも確かです。……けど」

 

 雪の結晶のように煌めく聖夜の贈り物。これだけは確かなものだと言える。

 

「せめて妹のことくらいは信じたいですね……姉として」

 

「すーぐ全部信じさせてあげるわよ。スッポンのマリーとはわた―――」

 

 

 

 —————ドオォォォォ……ン……!

 

 

 

 唐突に、脈絡もなく。

 轟音と共に大地が揺れ、震源と思しき内浦の海から柱のような水飛沫が上がる。

 

「うわわぁ……!?」

 

「なんですの……?」

 

 雨のように降り注ぐ海水に目を細めながらも見やった先で、深紅の翼が雄々しく広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 底に叩きつけられた後、急速に浮かび上がる感覚。そこでようやく水中にいることを把握する。

 

『がっ……あ…………!』

 

 水面に上がると共に蘇る痛み。苦悶の声を漏らしながらも敵の姿を探すと、今自分がどこにいるのかを理解した。

 何の因果か、両親の命が奪われた内浦の海……光線によって地球にまで叩き落されたか。

 

「くっそ……!」

 

 カラータイマーの点滅を確認した途端に脱力感が加速する。

 どんなに鞭打とうとも力が入らず、静かに舞い降りてくるキメラべロスの影が更に大きく感じた。

 

『ノアの力も大分馴染んできた……そろそろ頃合いか』

 

『ぐああぁぁっ……!』

 

 振り上げられた鉤爪が横腹と共に余力を抉り取る。

 気力だけで立ち上がるも既に風前の灯火。ゼロビヨンドの変身は解かれ、海の底を踏む足にももはや力はない。

 

『ちと弱っちいが、模造品にしては上出来だ。ここまで待った甲斐があった』

 

 ゼロを抑え込むキメラべロスのカラータイマーの禍々しく光が灯る。

 途端に生まれた更なる脱力感はあの日と同じ。陸を吸収しようとするもの。

 

『やらせ……るかぁッ!!』

 

 絞り出したエメリウムスラッシュで辛くも拘束を振りほどくが、遂にエネルギーが底をつき立つことすらもままならなくなる。

 

『受け入れろ。お前はそうなるために生まれた運命……抗うことなど出来ん』

 

『んなモン、知ったことかよ……!』

 

 だがそれでも抜いた剣を納めないゼロ達を見下ろし、呆れたように息を吐いた。

 

『…全く、せめてもの情けで隠してやってたが…………知った方が諦めがつくか。なぁ、仙道陸』

 

 猛攻の手を一度止め、尊大にベリアルは笑う。

 消えた闘争心の代わりにその双眸が映すのは、途方もないような執念と狂気だった。

 

『ずっと待っていた。お前の中で俺の力が増幅するのを……˝俺の遺伝子˝が目覚めるのを』

 

 淡々と封じ込めていた蓋をこじ開ける悪魔が一拍の間を置き、やがてその瞬間を心待ちにするかのように、告げた。

 

 

 

 

 

『—————————お前は人間じゃない』

 

 

 




黒澤姉妹に進展があった一方で陛下から告げられた事実
人間じゃない。その言葉が意味するものとは……

伏線はちょいちょい張っていたので答え合わせの前に探してみても面白いかもです

それでは次回で
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