ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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かつての調子を取り戻しつつあるので魂の三日連続投稿

サンシャイン2期12話、ラブライブシリーズ全話を通して一番好きな話であるためかなり自己解釈が入っていますのでご了承を


百五十一話 その場所へ

 

 

 

「……と、まあ、俺はこんな感じでやってるよ」

 

 早朝の、まだ薄暗い時間帯。

 まだ低い位置にある太陽の日を浴びつつ、墓石の並ぶ場所で陸は一人()()へと語り掛けていた。

 

「じゃ、そろそろ行くわ。アイツ等の姿、見届けないとだし」

 

 返答は返ってこず、ただただまだ真新しい墓石が朝日を反射している。

 Aqoursのこと、ゼロのこと、そして陸自身のこと、色々話した。

 

 どこまでこの人達に届いているかわからないけど、陸がこうしたいと思ったことだから。

 

「……また来るから」

 

 本当の意味で会ったことはないし、それはこの先も叶うことは絶対にない。

 それでも向き合うことはやめたくなかった。この辛い記憶も、今陸がここにいる証だから。

 

『……もういいのか?』

 

「あんま長居する訳にもいかないしな」

 

 両親の眠る地から足を踏み出すと、一気に加速。

 人気もなく閑散としている朝の街並みを風のような速度で突っ走り、彼女達の下へと戻る。

 

「……お話、できた?」

 

 浦女の前まで戻ると、既に準備を終えた皆が校門の前で並んでいた。

 

「聞こえてたかはわからんがな……そっちももういいのか?」

 

 その問いかけに頷かない者はいなかった。

 

 この時のためにすごく練習した。

 朝も早くから夜も遅く、たまに弱音も吐いたけれど、皆一度もサボらずに頑張った。

 

 その日々が全部、この学校には詰まっている。

 

「それじゃ、行こっか」

 

 楽しいことも、辛いことも、幾重にも重なる過去を束ね、彼女達は今、憧れの舞台に立とうとしている。

 

 皆の愛した学校、浦の星女学院の名前を刻みに。

 

 

 

——————『『『行ってきます!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何…? 第五部隊が全滅……!?』

 

『はい、同様に第三、第七部隊とも通信が取れない状況にあります』

 

 光の国。宇宙警備隊本部。

 その支部長であるウルトラマンタロウに、ベリアルを追跡していた部隊の全滅情報が届いた瞬間だった。

 

『反応が消失した地点はどこだ?』

 

『はい……第五部隊がベリアルを捕捉したという地点がM80球状星団付近。そして他の舞台の反応が消失したのは…………アナザークライシスの起きた宇宙です』

 

『なんだと……!?』

 

 その報告にタロウだけでなく、周囲の隊員達や別部隊の指揮を取っていた兄弟達にも激震が走る。

 つまりベリアルはまたあの地球へと向かっているということだ。

 

『今まで我々が追っていたのはフェイクだったと思われます……その隙にあの地球へ向かったのかと』

 

『何ということだ……』

 

 ダークネスファイブを失った今ベリアル一人でそんな芸当が出来るとは考えていなかったが……認識が甘かった。

 ともかく起きてしまった以上悔やむのは後だ。今は全力で、あの悪魔の進行を阻止しなければ。

 

『君は大隊長への報告を頼む。私は先にベリアルを追う。メビウス、君も同行してくれ』

 

『勿論です!』

 

 早急に部下への指示を済ませ、弟子と共に光の国を飛び出す。

 その双眸にはかつての厄災を二度と繰り返すまいという、強い決意が現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京の街に来るのは、これで三度目か。

 一度目に現実に打ちのめされ、二度目に自分達の進む道を探しに。

 

 そして今回は……その答えを示すために。

 

「oh! 変わらずbeautiful!」

 

 神田明神。ここに来ようと提案したのは千歌だった。

 この場所にいたという憧れのグループの後を追い、その輝きを知った上で自分達に何が出来るのかを模索した。

 

 その答えを得ることが出来たのかはまだわからない。

けど抱くものも見える景色も前とは違う。その想いを胸に、Aqoursは三度その地を踏む。

 

「…じゃあ、お祈りしよっか」

 

 千歌に続き、皆も賽銭を投げ入れては手と手を合わせる。

 

「会場の全員に想いが届きますように」

 

「全力を出し切れますように」

 

「緊張しませんように…」

 

「ずらって言いませんように……」

 

「…全てのリトルデーモンに喜びを」

 

「浦の星の皆の想いを」

 

「届けられるような歌が歌えますように」

 

「明日のステージが、最高のものになりますように」

 

 皆口にする言葉はそれぞれ違う。

 けれどその先にあるのはただ一つの、純粋な願い。

 

「ラブライブで、優勝できますように」

 

 どんな未来が待っているのか、それはまだ誰も知らない。

 それでもこの九人ならば叶えられる。根拠はないが、そんな想いは確かに生まれていた。

 

 

「…これ……」

 

 何気なく絵馬掛け所を眺めていた時、ふとあるものが目に入る。

 

「どうしたの?」

 

「……見てみろ」

 

 集まってくる九人に陸が見せたのは数枚の絵馬。

 Aqoursが優勝しますように。そう書かれた絵馬が日付を変え、何枚もそこには掛けられていた。

 

「皆…!」

 

 改めてAqoursの優勝はこの九人だけの悲願じゃないのだと実感させられる。

 皆願っていたんだ。千歌が屋上で宣言したあの日から。

 

 絶対に消えない思い出を作る。

 

 その願いはもう、浦の星の生徒全員のもの。

 

『……他にも、色んな奴等のがあるな…』

 

「コイツ等だけじゃないんだよ……どのグループも勝ちたくてここにきてんだ」

 

 勿論ラブライブで歌うのはAqoursだけじゃない。

 決勝進出を決めたグループ……その殆どの名前がここで確認できた。

 

「皆さーん!」

 

 また一段と士気を高めていたその瞬間、自分達に向けられたものと思われる声が境内に響く。

 振り返った先に並んでいた二人の少女が目に入ると、千歌達はよりその笑みを深めた。

 

「聖良さん!」

 

「理亞ちゃん!」

 

 Saint Snowの二人。

 ある時はAqoursに壁を示し、またある時は共に一つの答えへ向かって同じステージで歌ったライバルであり仲間。宣言通り決勝を見に来てくれたらしい。

 

「遂に、ここまで来ましたね!」

 

「ビビってたら負けちゃうわよ!」

 

 それは叱咤か激励か。

 ライバルとしてAqoursの成長を見届けてきた彼女達の言葉には何気のないものでも重みがあった。

 

「わかってるわよ!」

 

「アキバドームは、今までの会場とは違うずら……」

 

「どんなところか、想像もつかないよ……」

 

 勿論もうその重みに気圧される彼女達ではないが、挑むのは未知の舞台。どうしても多少の不安は付きまとう。

 

『お前等はあそこで歌ったことあるんだよな』

 

「ええ……今でも信じられない」

 

「自分の視界……全てがキラキラ光る、まるで、雲の上で踊っているようでした」

 

「雲の上……」

 

 一度そのステージに立った聖良達の言葉を受け、彼女達が想像することは何なのか。

 少なからず、高い実力を持つSaint Snowの二人でも圧倒されるような舞台……それだけは確かだ。

 

 それこそがラブライブ決勝。数多のスクールアイドルが憧れる舞台なんだ。

 

「だから! 中途半端なライブしたら、許さないんだからね!」

 

「あ、当たり前だよ! 頑張るビィするよ!」

 

「……また一緒に歌おうね」

 

「……うん!」

 

 この先の未来を語らい、ルビィと共に笑い合う理亞。

 思えば初対面の頃から随分と変わったものだ。ルビィ達と触れ、彼女もまた成長している。何かと彼女を気に掛けていたエックスもさぞ喜ぶだろう。

 

「……素敵な笑顔ですね」

 

 それは姉である聖良も同じ。

 その一方、彼女は何か別なものも感じ取っているように思えた。

 

「初めて会った時、なんて弱々しいんだろうって、思ってました。けど、今の皆さんはとても頼もしく思えます……その上で問いますね」

 

 それを投げかけるように、真剣味を帯びた表情の聖良が千歌へと迫った。

 

「勝ちたいですか?」

 

「え…?」

 

「以前、千歌さんは私に聞きましたね。勝ちたいですか……ラブライブ」

 

 二度目に東京を訪れた時、Aqoursの形を模索していた千歌が聖良に問うたこと。

 聖良が千歌に問い返せるのは、彼女がこれまでの過程の中で自分達の答えを見つけているからなのだろう。

 

「それと、誰のための、ラブライブですか?」

 

「……」

 

 何のために歌うのか。何のためにあの舞台に立つのか。あの日出せなかった答えも、今ならば出せるかもしれない。

 けれど、どこかまだ迷いがあるような様子で千歌は黙ってしまい、そのままその場で答えが出ることはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ちたいか、ねぇ……」

 

 その夜。

 今回は流石に宿を取った陸も、聖良の口にした問いについて悶々と思考を巡らせていた。

 

「お前、あの時えらそーに聖良さんに説教垂れてたよな。小手先の力がどーとかなんの」

 

『メンドクセーことばっか覚えてんなオメーは…………俺ぁただ、あん時のアイツ等の姿勢に思うところがあっただけだ』

 

 勝ちたいか。

 学校の皆の前で誓ったことがあるはずなのに、千歌はそれを答えようとはしなかった。

 

『それにこれはアイツ等が見つけるモンだし、それぞれで見つけ出す答えも違う。違う誰かに掲げられるようなモンでもないだろ』

 

「……それもそうか」

 

 結局最後まで陸が出来るのは彼女達の行く末を見守ることだけらしい。

 少々不安はあるが……まあ、大丈夫なのだろうと思ってしまう自分は確かにいた。

 

『……もう、明日なんだよな…』

 

「…色々あったよなぁ。何度どうなることかと思ったか」

 

 楽しかったこと、苦しかったこと、辛いでは済まされなかったこと。

 本当、たった一年とは思えないほど色々あった……それも明日で終わる。

 

 泣いても、笑っても、これまでの日々の結果が出るのだ。

 

 

 彼女達も今、そんな想いを馳せているのだろうか———、

 

「マリー・シャイニング☆トルネードッ!!!」

 

 が、隣の部屋から聞こえてきたのはあまりにも想像とかけ離れたもので。

 間違いなく鞠莉のものと思われる声に続き、はしゃぎ始める皆の声と、何か柔らかいものがぶつかり合うような衝突音が壁越しに伝わってくる。

 

「お前等なにや———おぶっ!?」

 

 流石に見過ごせず確認がてら一言物申そうと隣の部屋の障子を開けた瞬間、ふんわりとした衝撃と共に視界が真っ白に染まる。

 直後にぽてんと陸の顔から落ちたのはここの旅館の枕。なるほど、定番のアレか。

 

「人がちょーっと心配してやってたら当の本人達がこれかよ……おい!」

 

「うにゃっ!?」

 

 反撃に陸の投げた枕が偶然軌道上にいた善子にクリーンヒット。

 暴れたせいで軽く制服が開けているとか、汗をかいて少し扇情的に見えるとか、この際どうでもよかった。

 

「決勝前に何しとんのじゃお前等はぁぁぁッ!!」

 

 枕の嵐が巻き起こる。

 数分後、陸以外誰も立っていなかったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは、エライ目にあった」

 

「首謀者テメーだろうが」

 

 宿から少し離れた場所に赴き、二年生組で夜風にあたる。

 何でもこっちにいた頃の梨子のお気に入りの場所らしいが、枕投げで上がった体温にここの風は優しかった。

 

「決勝前だってのにこんなことしてていいのかよ……怪我したらどうすんだ」

 

『一番無双してたお前が言うな』

 

「あはは……でも、決勝前なのにこんなことしてるって、なんか私達らしいよね」

 

 自分達らしさ。

 そう口にした千歌の目には、聖良にあの質問を投げかけられた時と同じものが映っているように見えた。

 

 支え合う仲間の笑顔が力。

 いつだかウルトラの先輩にそう言われたことがあった。

 

 今だってそう。少なからず抱いていた不安を払拭するように皆で笑い合う。

 聖良の言っていた頼もしさとは、もしかしたらこのことだったのかもしれない。

 

「……やっぱり行きたかった? 音ノ木坂」

 

 誰のためのラブライブか。

 少しずつだが自分達なりの答えに近づいている実感の中、千歌同様何かまだ抱えてる様子の梨子に彼女は問う。

 

「そうね……今だからこそ、確かめたい気持ちもあるけど…」

 

 自身の曲、ピアノ、そして発表会。逃げるように内浦へと来た梨子が、そこでの出会いを通して再び向き合えたものは多くある。

 

 そんな彼女が唯一取りこぼしてきたもの、それが梨子の原点である音ノ木坂。

 

「なら、明日は会場集合にして、自由行動にしない?」

 

「自由行動…?」

 

 訪問を進める千歌に対し、決勝があるからと断る梨子。

 だったらと彼女が提案したのは、決勝戦の時間まで各々の好きなように行動する…というものだった。

 

「本番前に自分を見つめなおす……私も、そうしたいの」

 

 何のために歌うのか。どうして勝ちたいのか。自分自身と、更にはその疑問と向き合う時間にしよう。Aqoursのリーダーとして千歌はそう語る。

 

「賛成!」

 

「…そうね。なら、そうさせてもらうわ」

 

 曜に続き、梨子もその意を受け入れる。

 事実千歌だけじゃなく、皆、それぞれその問いには向き合おうとしていたから。今の提案はその意も組んでいるのだろう。

 

「……なんか、リーダーっぽくなったよな」

 

「む、褒めてるの?」

 

「褒めてるよ、べた褒めだっつの」

 

 かつて偉大なグループを引っ張っていたあの人のようなリーダー性は千歌にはない。けれど、だからこそ見えているものもある。

 

 前を走って皆を引っ張るリーダーではなく、皆の隣を走るリーダー。思えばずっとそうしてきたと、改めて思う。

 

「よっしゃ! そうと決まれば皆にも伝えないとね。旅館まで競争だ! 負けた人ジュース驕りー!」

 

「うあぁ!? 抜け駆けはズルい! ほら梨子ちゃん早く!」

 

「ちょ……待ってよ二人共―!」

 

 明日あのステージに立ち、あのステージで歌うのは彼女達自身。

 離れてゆく始まりの三人の背中は、あの時よりも大きく見えた。

 

 

 

「いやぁー、青春って感じだね! 輝いてる!」

 

「……?」

 

 その背中を追おうとした時、真後ろから聞こえた声に意識を縫い留められた。

 振り返れば女性が一人。快活さを感じさせるその人はキラキラした目で千歌達を追っていた。

 

「ねね、あの子達スクールアイドルだよね? 見慣れない制服だけどこの時期にここにいるってことはやっぱりラブライブ? ラブライブだよね!?」

 

「え…、あ、ああ……はい…」

 

「おぉ~すごーい!」

 

 快活……というよりはそれを通り越してもはや太陽のような人だ。

 見るからにスクールアイドル好きといった感じだが、ひょっとして元スクールアイドルだったりするのだろうか。

 

「あ、ごめんね引き留めて。置いて行かれちゃうよ?」

 

「え……うおぉぉぉッ!?」

 

 気付けば見失っていた彼女達を追って道を覚えていない陸は全力で追う。

 去り際に軽く会釈をすると女性も快く返してくれる。

 

どうしてかその笑みが暫くの間、頭から離れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

「ラブライブかぁ……懐かしいなぁ…」

 

 明らかに人間の限界を超えた速度で走り去っていく少年を気にも留めず、瞳を閉じてはかつての記憶に想いを馳せる。

 

「……限られた時間の中で、精一杯輝くスクールアイドルが好き…か」

 

 あの子達がどんな道を歩んで、どんな想いを抱いてきたのかは知らないけれど。

 あの日自分達の見つけたものが、伝えたかった想いが受け継がれていると信じて、エールを送ろう。

 

 

「…ファイトだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 考えも、立場も、世代も超えて、それぞれの想いを一つに紡ぎながら。

 

 ラブライブ決勝。その日を迎えようとしていた。

 

 




最後のシーンに出てきた女性が誰であるかはご想像にお任せします
正直作者としても書いていいものかすごく迷ったのですが、前々から入れてみるか画策していたシーンなのでせっかくですし書いてしまいました


迫るラブライブ決勝に再び飛来する陛下
クライマックスはすぐそこです


それでは次回で
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