やっぱ現地はいいですね……久々に生を実感しましたよもう……
作者は幸せに浸っていますがゼロライブでは絶望が迫っております
いざ最終決戦へ
先程まで晴天広がっていた空は、今は暗雲が支配していた。
人々はざわめきながらその空を見上げる。視線を集めるのは曇天だけでなく、敵の存在もない中出現したウルトラマンゼロもまた騒ぎの一因となっている。
だがゼロはそんなもの気にも留めていなかった。
ただただ静かに、宿敵が現れるであろう空を静かに注視している。
『……来たな』
その気配を察知したゼロが身構えたその瞬間、台風の目の如く空を覆う暗雲に生じる巨大な穴。
そこより飛来した邪悪の化身は降臨と共に周囲の建物を薙ぎ払い、人々を一瞬のうちに恐怖の渦へと誘った。
『邪魔な雑魚共に手子摺らされたが……』
逃げ惑う人々を羽虫でも見るかの如く蔑視する悪魔に戦慄を覚えない者はいなかった。
続々と立ち込める畏怖の中、ゼロだけがただ静かに宿敵と対峙する。
『……ベリアル…!』
『もう邪魔者はいない……決着をつけるぞ、ゼロォ!』
挨拶代わりに振るわれたギガバトルナイザーの起こす突風がゼロの真横を疾走し、並び立っていたビルを何棟も倒壊させる。
これから何か恐ろしいことが始まる。その様を見た全ての者がそう悟ったという。
「……なあ、ベリアル」
『あぁ…?』
いざ戦いの火蓋が切って落とされようとしたその瞬間、待ったをかけるように陸はベリアルに声を飛ばす。
もう避けられぬ戦いなのはわかってる。そういう運命なのも理解している。
それでもただ一つ、問いたかった。
「…お前、この戦いが終わったらどうするつもりだ」
ベリアルの中で見た憎悪に苦しみ、力への渇望。
でもそれは全てベリアルなりの正義があったから、それを理解されなかったからこそのもの。
歪んでさえしまわなければ、その心にも仲間や平和への愛があったはずなんだ。
『陸…』
『…フン、詰まらんことを聞くな。俺はただ光の国への復讐が出来ればそれでいい』
「…お前は何度も何度も蘇ってさ、その度に恨みを募らせて……もう、自分でも止まれなくなってるんだろ」
『わかったようなことを言うな! 俺はゼロも、光の国も、貴様も、全てをぶっ壊すだけだ!』
「……そうか。だったら、俺達が終わらせてやる」
こんな言葉でベリアルが止まるだなんて毛頭思ってなんかいない。
それでも問うたのは陸自身の覚悟を固めるため。戦う他にコイツを止める方法はないのだ。
「…いこう、ゼロ」
『……あぁ』
《ニュージェネレーションカプセル!》
《α!》
《β!》
《ネオ・フュージョンライズ!》
「『俺達に……限界はねぇ!!」』
《ウルトラマンゼロビヨンド!》
ベリアルが全てを壊そうとするなら、自分達はそれを守るだけ。
陸が陸である証……皆にもらったこの力で。
『…来い』
嵐の前の静けさ。そう例える他ない静寂が束の間に舞い降りる。
それが打ち壊されたのは———すぐ、直後だった。
「やったよ……皆…!」
会場から届く光が、声援はまだ止もうとしない。
優勝した。その実感を噛み締めながら、千歌は共に歌った八人の仲間と抱擁を交わした。
「優勝…したんだよね、私達…!」
「うん…、うん……!」
やったんだ。ラブライブの歴史に浦の星女学院の名前を、学校の皆の想いを刻み込むことが出来た。
未だ止まない熱気と声援がその事実を物語り、悲願の涙は止めどなく流れる。
「ルビィ!」
「理亞ちゃん…」
控室に駆け込んできた友に抱き着かれ、ただでさえ落涙していたルビィは更に大粒の涙を流す。
「おめでとう……おめでとうルビィ……!」
「なんで理亞ちゃんの方が泣いてるぉぉ……!」
「いや、アンタも中々だからね!?」
「善子ちゃんも泣いてるずらー」
Aqoursや浦の星の皆だけじゃない。託されていたSaint Snowの想いにも応えることが出来た。
これまで自分達がどれだけの人達に支えられてきたか。改めてそれを実感する。
「おめでとうございます」
ルビィと抱き合って泣きじゃくる理亞とは対照的に、遅れて控室へと入ってきた聖良は静かに礼賛の意を述べた。
「答え、見つかったんですね」
「……はい!」
前日に聖良が投げかけてくれたかつての自分自身の問い。
あの問いに答えを出せたからこそ、全員が自分自身と向き合えたからこそ、今この瞬間があるのだと思う。
「素晴らしいステージでした。あの瞬間、間違いなく皆さんは輝いていたと思います」
「なんか、面と向かって言われると照れるね」
「聖良さん達が力を貸してくれたおかげですわ」
「イエース! 聖良、理亞ちゃん、Thank you very much!」
「いえ、私達の力なんて微々たるもの……この優勝は、Aqoursと浦の星の皆さんで掴み取ったものですよ」
暫くは互いに高め合ってきたライバルでもある友との会話と泣きじゃくる声が室内を満たす。
そんな空気の中、曜の口にしたとある疑念が微妙な間を生む。
「…遅いね、陸」
真っ先に飛び込んできそうな彼が一向に顔を見せない。少なからずそれを疑問に思っていたのは曜だけではなかった。
特に何かを知っているような曜の様子を見ていると、多少なり不安に思う心は生まれてしまう。
「…外で待ってるんじゃないかな」
「案外、道に迷ってたりしてね」
「まーだ客席で泣いてる可能性もあるずらー」
それでも彼の現状を予想して笑い話にしている仲間達を見ていると自然にその不安も和らぐ。
自分も何か言って参加しよう。そんな緩んだ空気はすぐに打ち壊されることとなる。
「ウルトラマンが——————!」
何やら控室の外が騒がしい、そう思った瞬間に鬼気迫る声が聞こえる。
ウルトラマンゼロと謎の巨人が交戦を始めた。それを知ったのは、この直後だった。
『デェェェェヤッッ!!!』
『ヘエェェェラッッ!!!』
互いに仕掛けたゼロとベリアルの得物が衝突し合い、発生した衝撃波が轟音と共に東京の街を疾走する。
既にアスファルトの大地はひび割れ、周辺の建物の殆どは原型を留めていない。
ただ一つ無傷なまま鎮座しているのは、陸にとっての大事なもの全てがあるアキバドームだけだった。
『オオァァァッ!』
「『あがッ……!」』
横薙ぎに払われたギガバトルナイザーがゼロを掠め、その身体を回転と共に打ち上げる。
だがゼロは即座に着地するとその回転を利用するようにベリアルの懐へと突っ込み―――、
『ツインギガブレイク!』
『グオォオォォッ……!』
ビヨンドツインエッジによる二連斬が今度はベリアルの胴を薙いだ。
どちらかが一撃を繰り出してはすぐさまもう一方が反撃に移る。そんな果てのない攻撃と攻撃の押収を、人々は抱く恐怖のままに見上げていた。
『いいぞ…! この姿の前に無様に散っていったあの時よりは楽しませてくれそうだな』
『テメェが強大な力を手に入れるなら、俺は仲間と共に成長する。これまで出会ってきた全ての奴等と育んだ想いと力が、今俺をここに立たせているんだ!』
エメリウムスラッシュとアトロスリッパ―。ぶつかり合った互いの光線が弾け、火花となって崩壊する街に降り注ぐ。
『その全てが俺にとってかけがえのない守るべきものだ。テメェには指一本触れさせねぇ』
『守るべきものか……それが貴様の力なら、その全てをぶっ壊してやるだけだ』
『絶対にやらせねぇ……俺の、俺達の友に手を出すなんざ、二万年早いぜッ!』
『ほざけ。すぐあの時のように地を這わせてやる』
ギガバトルナイザーの両端から発生した轟雷がゼロを打ち付け、その度に爆ぜる。
何度も何度も上がる爆音は人々の希望を削ぐように轟き続け、祈りすら覆いつくすように濛々と爆炎を立ち込めさせた。
『そうだろ……陸ッ!』
だがまだ光は潰えない。
爆炎を吹き飛ばすような声と共に蒼い輝きが疾走し、目にも止まらぬ速度でその軌道を描く。
「当たり前だ。壊されてたまるかよ!」
グランナイト。これもまた仲間から受け取った力だ。
誰かを守り支えたいという海のように深く、騎士のように強い心。あの日触れたものも、間違いなく今の自分達を形作っている。
『アブソリュートゼロレイドッ!』
絶対零度の太刀が破壊のオーラを纏ったベリアルの魔爪———アトロスヘルクローと刻み合う。
方や砕け、方や凍り付き、その余波で地面に幾つもの斬痕を刻みながら両者の斬り合いは次のフェーズへと移行する。
『ハァッ!』
『フンッ!』
次なる舞台は空中。蒼の光と邪な闇が軌跡を描きながら幾度となくぶつかり、交錯する。
『軽い! 軽いぞゼロ!』
『ぐっ……!』
全神経を集中させ、攻撃を行いつつアトロスヘルクローによる反撃を回避する。
あの爪から繰り出される攻撃には生物の細胞を破壊する力があると、サイドアースでもアトロシアスと対峙しているゼロの思考が伝えてくる。
もしスピードや機動力が格段に上がる代わりにパワーと防御力で劣るグランナイトの状態でそれを食らえば、戦闘に大きな支障をきたし兼ねない。
だから焦るな。それでいて急げ。
『レボリウムスマッシュ!』
肉薄してくるベリアルを掌からの衝撃波で押し戻し一端の距離を取る。
『リキデイトシュート!』
『舐めるなァ!』
十字に組んだ腕から光線を放つも、再び雷を発生させたギガバトルナイザーの一振りによって弾かれてしまう。
それどころか更に発生した雷撃はゼロへと伸び、もう何度目かもわからない衝突音と火花を散らせた。
「負ける……かァッ!!」
赤熱の炎をその身に宿し、立て続けに迫る雷の群れを熱波で掻き消す。
その瞬間に出来た一本の道筋を全速で飛翔し、突き出した右腕をベリアルの懐へめり込ませた。
『ガルネイトバスタァァァァァァッッッ!!!!』
『ガアァァァッ……!』
当てがった拳からゼロ距離で放出した爆熱の奔流が奴を地面へ叩きつける。
クラッシャーブレイブ。戦う中で出会った仲間や師から授かった力。
何者に阻まれようとも己が信じた道を進む力強い意志。その想いが絶望の中でも陸を前へと進ませてくれた。
『プロミネンス……パニッシャァァァァァァッッッッ!!!』
ベリアルが反撃に転じる間もなく連続で最高火力の攻撃を叩き込む。
爆発的な熱量と光を以って巨大化した光剣を振り下ろされ、生じた衝撃はベリアルのみに収まらず街の一角にクレーターを生み出した。
『決めるぞ陸!』
「わかってらぁ!」
胸の紋章から沸き上がる炎を広げた腕の中で集約、増幅させ、巨大な獄炎の球体を作り出す。
『ダグビュームバーストッッッッ!!!』
突き出した両腕の動きに合わせ火球が進行を始める。
太陽そのものが落下してゆくかのような一撃は着弾と共にベリアルを飲み込んだ。
「『ッ……!?」』
これにより決着———とはいかなかった。
地に落ちてもなお膨れ上がる火球には徐々に紫電が迸ってゆき、やがてその形を崩壊させてゆく。
「炎が…砕け——————ッ!?」
何が起こっているのか。そう思った刹那だった。
ゆうに百メートルは肥大化していたであろう火球が爆発霧散し、その地点から紫電を纏った暗黒の光線が眼前へと迫る。
「『がっ…ああぁぁぁッ……!!」』
回避も間に合わず直撃。身体が消し飛ぶかのような激痛が全身に突き刺さりながら地面へと落ちる。
突然のことに思考が上手く回らないが、ただ一つ確かなのはまだベリアルは健在だということ。
最高火力を誇るクラッシャーブレイブの必殺技を受け続けてもなお、奴はその足でゼロ達の前に立ちはだかっている。
『……ハエがいるな』
ギガバトルナイザーを振り翳したベリアルの一撃が向けられたのは未だ立ち上がれないでいるゼロ———ではなく、奴の頭上。
それは攻撃ではなく、天空より飛来した火球の群れを粉砕するために放たれたものであるのだと理解したのはこのすぐ後。
『…一度のみならず二度もこの俺に牙を向けるか失敗作よ』
『失敗作だからだよ。飼い犬に手を噛まれる気分はどうだい?』
首を刈り取らんとするギガバトルナイザーの一振りをテレポートで回避して見せると、ゼロの傍らに着地しその肩を貸すのはベムゼード。
ベリアル融合獣であるそれに変身を可能とするのは、陸の知る限りでは一人———、
「オウガ……!」
『ごめんね二人共、奇襲作戦失敗』
陸と共にベリアルの接近を察知していたオウガ。
出撃前に持ち掛けてきた話では隙を見て参戦するとのことだったが、恐らく戦況を重く見てゼロの援護を優先したのだろう。
『情けない結果ですまねぇな』
『気にすんなよ。……それより今は目の前のことだ』
オウガもベリアルと対峙するのはこれで二回目。
初戦で力量の差を嫌というほど味わったからか、彼の変身するベムゼードからは普段の彼からは想像もつかない緊張感が溢れていた。
『フン……ひよっ子が一人増えたところで何も変わらん』
『それはボク一人の場合だろベリアル。流石に君の動きに宇宙警備隊が気付いてない訳がないからね……もうじき増援が来る頃だと思うよ』
苦し紛れにも思えるが、宇宙警備隊が動き出しているのは事実だし、ここに到着するのも時間の問題だろう。
だがその言葉を受けてもなおベリアルの態度が崩れることはなかった。
『援軍……まだそんなものに縋っていたか』
「…どういう意味だ」
『……どうもこうも、見ての通りだ』
せめてもの手向けだといわんばかりに、ベリアルはギガバトルナイザーを掲げて見せる。
『何故、俺がこの戦いでモンスロードをしていないと思う?』
『ッ……!』
『まさか……!』
ゼロとベムゼード、その双方が同時に見上げたのは真上。
暗い雲に覆われその上空の様子を窺い知ることは出来ないが、微かに聞こえる咆哮がその答えを物語っていた。
『そのまさかだ。この星の上空……貴様等の求める増援は今頃俺様の怪獣軍団に蹴散らされてる頃だろうよ』
そう告げられた途端、上空から何かが爆散する音が聞こえた。
それが味方であったにしろ敵であったにしろ、もう宇宙警備隊からの援軍は期待できないと判断した方がいいだろう。
『……解せないね。確かにそうすれば一時的に宇宙警備隊がこの地球に飛来すのは防げるだろうけど、突破されるのも時間の問題だ。それだったらこの場で百体モンスロードをして僕等を蹴散らした方がよっぽど手っ取り早いと思うけど』
『……時間稼ぎが出来ればいい。そう言ったらどうする?』
『なんだって……?』
眉をひそめた陸達の前で、邪悪な光が灯った。
ベリアルのカラータイマーから溢れるそれは確かに光なのだ。けれど周囲を照らすどころか光を奪ってゆく様は、その性質が真逆になったかのように感じる。
『ようやくだ……ようやく全ての光の変換を終えた……!』
そしてその光の正体は陸達のすぐ近くにあったもの。
即ち、元はウルトラマンノアの光であったことを感覚で理解する。
『俺が今までやっていたのはあくまでノアの光を体内で抑え込むことだけだ。だが光のままではその力を十分に発揮できない……だからこれを使った』
『ストルム器官でノアの光を変換するための時間稼ぎだった訳か……!』
ベリアルの背後で禍々しく灯るストルム器官にはものの性質を反転させる力がある。熱いものは冷たく、柔らかいものは硬く……そして光は闇に。
怪獣墓場での騒動から行方を眩ませていたのも、この地球に飛来してからの行動も、全てはノアの光を闇へと変えるための時間稼ぎだったということ。
『準備運動もここらで十分だろう……遊びは終わりだ』
そして闇へと変わったノアの光は、真の意味でベリアルに力を与える。
『フフフ……ハハハハハハハハハハッッッ!!!!』
「『『ッッ……!?」』』
膨れ上がってゆく邪な波動がベリアルを飲み込み、その姿を更に邪悪に、禍々しく変質させてゆく。
バキバキと無骨だった装甲が剥がれ落ちてはモノトーン調の肉体の中に血のような紅が走り、その背中には神話における破壊神を連想させるような翼が伸びる。
全宇宙の神と呼ばれるノアと、模造品でありその対となり得るダークザギ。
ベリアルを介しその相反する存在を一つに融合させたかのような巨人が咆哮を上げると、その余波だけで大地は震え、より黒い暗雲が立ち込めた。
『真の絶望を味わえ…このウルトラマンベリアル—————シグマディアボロスの力の前にな』
早い時点でアトロシアスを出した時点で察していた方もいらっしゃるかもしれませんが今作におけるベリアル陛下にはオリジナル形態でラスボスを務めて頂きます
その名もシグマディアボロス
the☆中二病感前回のこの名前、アトロシアスが元々アルファオメガという名前になる予定だったという話を知ってギリシャ文字の中からシグマと悪魔という意味を持つディアボロスを併せました
端的に言うとボディラインに赤が走ってかつノアイージスが生えたアトロシアスみたいな感じです
闇に変換されているとはいえノアの力を使える為当然その力は……
それでは次回で