トレギアの素顔とか超久々のフューチャーモードとか色々衝撃でしたが尺が足りるのかが一番心配です!!!!
作者はこんなテンションですがゼロライブの方は決戦真っただ中
最強の姿となった陛下に陸達はどう立ち向かってゆくのか……
先行して地球へと向かったタロウとメビウスが見たのは待ち構えていたかのように宇宙空間に鎮座する怪獣の群れだった。
遅れてくる本隊が到着するまで少しでも怪獣の数を減らす。そう判断したのはタロウだった。
『ッ——————!!』
『セヤァァッ!』
全方位から襲い来る怪獣達に最大の警戒心を払い、一体一体的確に撃ち落としてゆく。
正直効率はかなり悪いが、これが一番確実だ。下手に存命させてしまった怪獣を地球に落とすわけにはいかない。
『キリがありませんね……』
『あぁ…だがこれを打ち倒さないことにはベリアルの下には迎えん』
ギガバトルナイザーの制御下にある怪獣ならばともかく、この戦場にはダークロプスやレギオノイドと言ったかつてのベリアル軍が率いていたロボット兵器も多数見受けられる。
各宇宙に散らばっていた各機体が全てこの宇宙に集まっているとするのならば、それはもう想像もつかないような数になる。
『恐らく機体同士の通信で互いに呼び寄せ合っているんだ。まずはロボットから殲滅するぞメビウス!』
『はい!』
愛弟子と共に宇宙空間を駆け、一騎爆散させてはまた一機と確実にその数を減らしてゆく。
だが如何に歴戦の戦士と言えど多勢に無勢。徐々に波のように押し寄せる攻撃に対処が回らなくなってゆく。
『ストリウム……ブラスターッ!!』
自分達のものでない光線が怪獣を貫いたのは、丁度その瞬間だった。
七色の光線が飛来してきた方向を見やれば、点々と瞬く星々に混じり精鋭達の集う部隊がこちらに向かってくるのが見えた。
『待て! 何故お前がここにいる!?』
ようやく追いついた援軍にタロウも胸を撫で下ろす……ことはなく、むしろ更に鬼気迫った様子で怪獣の群れに突っ込んでゆく若い戦士を諫めようとする。
『お前にはまだ早いとあれほど言っただろう! ここは我々に任せて———』
『いつまでも子供扱いしないでください! 俺だって、宇宙警備隊だ!』
『ッ…! 待て!』
タロウの制止を振り切り、その戦士は再び怪獣達への攻撃を再開する。
強くなって己の名を示さなければいけない。そんな念に囚われているような彼を見て頭を抱えるタロウに近づく戦士が一人。
『セブン兄さん……』
『やはり心配か? 息子というものは』
『ええ……特に、アイツはまだ危なっかしい……』
『若いな……あの頃のゼロと重なる』
そう言うセブンの姿に、あの事件の日のゼロが目に浮かぶ。
『……心配ですか? ゼロのこと』
『…心配していないと言ったら嘘になるのだろうな』
厳格な双眸に映る、父親としての感情。
そんな目で青い水を湛えた星を見下ろしつつ、セブンは続けた。
『…だが、信じてやるのも父親の仕事。私は息子と、息子の仲間達を信じるだけだ』
「シグマディアボロス……」
対峙するだけでわかった。これまでとは圧倒的に何かが違う。
威圧感、存在感、そして絶望感。その全てがこれまで出会ってきたものとは比べ物にならない。
ただそこに立っているだけで敗北したような感覚になる。格が違うのだと、本能で理解してしまっているように。
『御大層な名前つけちゃってさ…、中二病かな』
『だがこの感じ……!』
ゼロもオウガも、既に陸と同じそれを感じているようだった。
過敏なまでに高まった緊張感に、時の流れすらも遅く感じる。ただ奴と睨み合っているこの瞬間が永遠にも思えた。
「ゼロ…」
『…あぁ』
こちらの出方を探っているのか、ベリアルが自ら動こうとする気配は感じられない。
なら多少リスクはあるがこちらから仕掛けるべきか。奴の力がわからない以上慎重に行くべきではあるが、この精神すらも蝕んでくるような緊張感がそう急かしてくる。
それに———、
『オオォォォ……!』
攻撃しないことに、奴は倒せないから。
『ダグビュームバーストッッ!!!』
『トリリオン・メテオ!』
ゼロとベムゼード。その双方の放った火球が融合し、爆発的な熱量を伴ったそれが悉くを燃やし尽くさん勢いでベリアルへ進行する。
それに対しベリアルは、ただ静かにその右腕を真横に振るって見せ———、
「え……?」
その
散り散りになり霧散していく火の粉の奥には、愉しそうに首を鳴らすベリアルの姿があった。
『どうした…? それが本気か?』
『ぐっ……!』
同様のままに打ち出したガルネイトバスターもまた、奴へ到達する前に掻き消される。
ならばと振り下ろした煉獄の大剣も一瞬のうちに燃えカスと化し、ただ空虚に腕を振り抜くだけ。
『…言ったはずだぞ。遊びは終わりだとな』
攻撃が通用しない。
ダークネスファイブをも一撃で粉砕した攻撃の数々すらも、奴は指も触れずに消滅させてしまう。
「くっそ……!」
徐々に大きくなってゆく不安感を押し殺し、両の拳を燃やしては大地を蹴った。
対峙しているだけで圧し潰されそうで、生物としての生存本能が全力で危機を訴えていて、動いていないと気がおかしくなりそうだった。
『…この力の差を前に逃げ出さない度胸だけは褒めてやる』
一歩、また一歩とベリアルへと近づく度に本能が叫ぶ。
コイツはヤバイ、死ぬぞ。どれだけ己を奮い立たせても止まない声が頭の中で入り乱れる。
『だがそれは勇敢でも何もない、ただの無謀だと知れ』
そしてそれが正しかったとでも証明するように。
次の瞬間には突進していた方向の真逆へと身体は吹き飛んでいた。
「ぁ……?」
何が起こったのか。
気付けば背中から地面に倒れており、強烈な痛みが全身を駆け巡っている。
『せいぜい地獄で悔やむがいい。俺に歯向かう……その最大の過ちを』
『……そんなものしてないし、する予定もないよ』
すぐには立ち上がれない状態の中、ゆっくりと歩を進めるベリアル。
その言葉に否を突き付けつつ、ベムゼードは自らゼロの盾になるように立ち塞がった。
『欠陥品が今更口答えか…、いいだろう。聞くだけ聞いてやる』
『自分の選んだ道に後悔はないってことだよ』
連射する火球が尽く打ち砕かれる中ベムゼードは、オウガはベリアルへと語らう。
『君がその道を貫いたように、ボク達にも貫き通したいものがある……それだけだよ』
『くだらん……正義に目覚めたとでも言うつもりか』
『まっさかぁ、そんな御大層なモンで動いてる奴はここにはいないよ』
屈託なく、かつ怏々と答えるオウガ。
表情こそ伺うことは出来ないけれど、自然とあの気持ちの悪い笑みを浮かべている様子が浮かぶ。
『今も昔も変わらない。ボクは自分の好きなことを……やりたいと思ったことやってるだけだよ』
千歌達がそうだったように、陸がそうだったように。
オウガもまた自分の意思を貫いているだけ。自分本位なことも変わらない。
ただ一つ変わったことがあるとするならば、彼にも守りたいものが出来た……ということだろうか。
『そんなくだらないもののために自らに与えられた無二の存在価値を捨てるというのか愚か者が!』
『愚かで結構馬鹿で結構! 生憎ボクはそんな馬鹿達が好きになっちゃったみたいでね!』
目的こそ違えどかつてベリアルに与していた彼が己の意思で反旗を翻す姿は勇ましく、また雄々しい。
信念を貫き強大な相手に立ち向かう姿勢は、自然と陸の身体を奮い立たせた。
「…テメェにばっか、いいカッコさせっかよ……!」
元々この星なんて関係なかったはずのアイツがあそこまでしているんだ。
初めに啖呵を切ったはずの陸がたかだか一撃くらった程度で寝っ転がっている訳にはいかない。
『…陸、もう一回いくぞ』
「おうよ……何べんだってやったらぁ!」
痛む身体を起き上げ、声を張り上げると共に突き進む。
《ネオ・フュージョンライズ!》
「『俺達に限界はねぇ!!」』
《ウルトラマンゼロビヨンド!》
二度目となる強化変身の負荷にカラータイマーの点滅が始まってしまうが、もはや気にすらならなかった。
今奴と戦うための最善手がこれならば負荷なんて関係ない。妥協なく、ただ目の前のことに全力を注ぐだけだ。
「『おおぉぉぉッ!!」』
ベムゼードを薙ぎ払うベリアルへ向け振りかぶる二本の刃。
それらが到達する直前、またも掌から沸き起こった衝撃波に吹き飛ばされかけるが、意地で堪えたゼロはその両刃を奔らせた。
『ツインギガブレイクッ!!』
炸裂音が轟き、先の衝撃波を上回るほどのソニックブームが響き渡る。
間髪入れずに二撃目を叩き込もうと刃を握るその手に力を籠めるも、次に放たれたギィン、と甲高い音を立てて勢いを失うこととなる。
『…真面目にやれ、詰まらんぞ』
渾身の一撃を防ぐのに用いられたのはギガバトルナイザーただ一本。
たったそれだけで、またもこちらの攻撃はベリアルへ届くことはなかったのだ。
『……大真面目だよ』
ビヨンドツインエッジを押し戻したベリアルの背後に一瞬のうちに現れるベムゼード。
薙ぎ払われた地点からテレポートによって肉薄して来たのか、完全に虚をつく形で両腕の炎が奴へと向けられる。
『甘い!』
『な———ぐあぁぁぁッ……!?』
だがベリアルはそれすらも粉砕する。
瞬時に背後にまで回されたギガバトルナイザーがベムゼードの腹へめり込み、そのまま描かれた弧が巨大な三日月型の光線となりその身体を切り裂く。
『目障りだ……消えろ!』
それどころか両腕にエネルギーを集束させると、十字に組んだ腕をそのまま至近距離で彼へ叩きつけようとし———、
『させ……るかぁぁ!』
それは寸での瞬間にゼロの妨害が入ったことで発射には至らなかったものの、代わりに残留したエネルギーはそのまま奴の拳に乗って陸達に叩き込まれる。
またも地面へ転倒する瞬間、難を逃れたベムゼードの身体が光り輝くのが見えた。
『サンキュー二人共、借りはすぐ返すさ!!』
《スカルゴモラ!》
細身だった影は太く大きなものへと変貌してゆき、紅い雷を纏った巨大な角がベリアルへ迫る。
その突進は軽くいなされてしまうものの、ゼロの傍らへと転がってきたその巨体はベムゼードとはまた別の頼もしさを抱かせる。
『お前、こんなことが……?』
『負担が大きいからあんまりやりたかないんだけどね……この期に及んでそんなこと言ってられないだろ』
ゼロとスカルゴモラが共に並ぶ不可思議な光景。
希望の象徴であるウルトラマンと並ぶかつて日本中を襲った厄災の象徴に人々から不安の声は上がるものの、共闘している側からすると中々心強いものだ。
『どんだけ反動が来ようとそれで平和を掴めるなら安いもんだろ……行くよ!』
「『ああ!」』
地震のような揺れを起こしながら再び突撃を開始したスカルゴモラに続きゼロも駆ける。
融合獣の中でも随一であるその巨体と重量は進行を阻まんとする衝撃波をものともせずに突き進み、直撃こそしないものの受け止めたベリアルに確かな隙が生まれる。
『ワイドビヨンドショットッ!』
スカルゴモラとの押し合いになっているベリアルへ伸びる光線。
それを弾こうと片腕が離れた瞬間、一気に込める力量を上げたスカルゴモラがベリアルを押し上げる。
《キングギャラクトロン!》
即座に別の融合獣へと変わり、衝撃波すら貫く勢いのレーザー光線を放つオウガ。
それすらも即座に反応したベリアルはギガバトルナイザーから発生させた雷撃で相殺して見せるが、ならばと今度はゼロが切り込む。
攻撃し続けろ。反撃の隙を与えるな。
攻撃が通らないのなら、通るまで殴り続けるだけだ。
『デェェェェイヤッ!!』
ツインエッジで押し寄せる衝撃波を切り裂いて進む。
一発処理するだけでも身体は悲鳴を上げるが、それでもいつかチャンスが来ると信じてひたすらに突進する。
『オゥラッ!』
「『がッ……!」』
もう何度目かもわからない斬撃が軽々と受け止められ、重い重い蹴りが鳩尾に突き刺さる。
それによりまたも地面を転がることとなるも、何度だって起き上がって攻撃を続けた。
『…飽きたな』
幾度となくその攻防を繰り返しているうちにベリアルがふと零す。
そしてあからさまにゼロとオウガを自らの懐に潜り込ませてみせると、どす黒いオーラを纏った左右の鉤爪を両者へと突き刺した。
「『があぁぁッ……!?』
『ぐっ……あ……!?』
蹴り飛ばされたことで鉤爪からは解放されるも、何故だか刺された部分から痛みが広がり、また強くなっていく。
まるでその部位から徐々に壊れていっているような。次第に立つことすら苦しくなり膝をついてしまう。
『デスシウムデストラクトか…、くそ……!』
敵を細胞から破壊するというアトロシアス形態での技。
最初こそ警戒していたが、更に強くなった奴を前に余力を削られこの可能性を失念していた。
『あーもう……、こんなになってまで何してんのかなボクは!』
感覚共有によってより大きいダメージを追っている陸とゼロに対し、またも突撃を繰り返すのはオウガだった。
融合獣への連続変身や戦闘のダメージで負った負担は陸と同等以上のはずなのに、それでもその身体を引き摺って奴へと突き進んでゆく。
『…解せんな、それも守るべきものとやらのためか』
『……どーだろうね。案外自分のためかもしれないけど』
口調こそ普段のそれだが、声音からはいつもの調子は感じられなかった。
けど、それでも秘めた信念だけは燃え尽きていない。
『誰のためだっていいよ。彼等や、彼女達の、あんなに面白そうな未来……泥臭くて、馬鹿みたいで、それでも眩しくて、ボクじゃ絶対に辿り着けないもの………それがなくなるのが嫌なだけだよ!』
非生物的な融合獣の中から溢れる渇望。
自分では掴めない光を他者に見出した彼の、皮肉に塗れた矜持。
『そうか……なら———』
しかしそれすらも打ち砕くように悪魔は静かに嘲笑し———、
『せめてその瞬間を目にする前に葬ってやる』
二度目となるデスシウムデストラクトが、深々とその肉体を貫く。
鉤爪を介して流し込まれる破壊の波動にキングギャラクトロンはやがて動きを止め、だらりとその両腕を垂れ下げてしまう。
「オウガァッ!!」
『たまたま生き永らえただけの失敗作が調子に乗るな。所詮貴様は何者にもなれん』
嘲るような高笑いが荒涼とした東京の街に響く。
その笑いを遮るものはなかった。太陽の光も、風の音も、ただその声を聞いていろと言うかのように世界は静まり返っている。
『……と…』
『あぁ……?』
『…やっと……見つけたんだ…、輝きってやつを……!』
ただ一つ、縋るようなか細い声を除いては。
『ベリアルの、闇の中で、後ろしか向いてなかったボクを照らしてくれた……光をくれた輝きが……!』
事切れていたように見えていた両腕が、少しずつ持ち上がってゆく。
その輝きが何なのか。確証はないが、一人、彼の想い浮かべている少女が見えるような気がした。
『……こんなことでそれが奪われるなんて死ぬほど嫌だからさ。なんか、頑張っちゃうんだよねぇ……!』
また光が漏れ、新たな融合獣へと変化していく。
肉体もとうに限界を迎えている中彼が変身したのは金色の鎧を纏った白い龍ような怪獣———サンダーキラー。
『君もそうだろ……陸君』
「っ……!」
がっちりと、サンダーキラーが自身の身体を貫く腕を掴む。
瞳こそ伺えないが、それでも確かに強い覚悟が見えた。
「オォォォ……ッ!」
壊れ始めている身体を無理矢理起き上げた。
痛み方がおかしい。幾つかの部位が完全にイカれている。
でも、それでも、こんなところで果てる訳にはいかないんだ。
「ゼロ…、もうちょっとだけ、力を貸してくれ……!」
『当たり前だ…!』
残された力、ありったけのエネルギーをその大剣に込め、叫びと共に突っ走る。
『小癪な真似を……!』
引き剥がそうと何度も殴打で叩きつけても、サンダーキラーがベリアルを放そうとしなかった。
あれがオウガの意地なら、この一撃が陸とゼロの意地。
終わらせやしない……絶対に。
「『おおおおぉぉぉぉおォォォォォッッッッッ!!!!」』
迸った光の閃がベリアルと交錯した。
重く、そして確かな手応えが剣越しに伝わる。
ようやく届いたその一撃は、ベリアルの肉体に深々とその後を刻み込———、
『……もう一度言うぞ。遊びは終わりだ』
———むことはなかった。
脇腹に刻まれた小さな切り傷。それが今、全身全霊を込めた渾身の一撃が残した跡だった。
『こんだけやって…、これ、だけかよ……!』
余力の殆どを叩き込んだことでカラータイマーの点滅が加速したゼロが崩れるように膝を折る。
その背後でベリアルは大地を叩きつけ、その衝撃波だけでゼロとサンダーキラーを吹き飛ばす。
『所詮貴様等は欠陥品……誰と結託したところで、俺には勝てん』
絶望というものに形があるとするならば、このことを言うのだろうか。
何もかもを蹂躙し、決死の一撃すらも棒で突いた程度。
見つからない……この絶望を退ける方法が。
『ようやく理解しただろう。これが力の差だ』
己に歯向かう者達が崩壊する街に転がる様を、ベリアルは見下ろす。
力の差を思い知らせるように、思い上がった者に罰を与えるかの如く、強烈に、過激に。
立ち込めた絶望は、二度と晴れることはないかのように重く立ち込めていた。
『そうして転がりながら己の無力さを悔やみ…………更なる絶望を味わえ』
そう言ったベリアルの双眸が向けられたのは、激戦の中で必死に守っていたアキバドーム。
その中にいる大切な者達に狙いを定めたように、眼光が邪悪に灯る。
「この……やめろッ……!」
痛みも忘れて立ち上がるも、時すでに遅し。
十字に組まれた腕から放たれた光線は一切の慈悲もなく猛進し、希望もろともその建物を———、
『う…おおぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!』
衝突音が上がる。
けれどドームはそこに建っており、何の崩壊もない。
その理由は、代わりにその身体から煙を昇らせるサンダーキラーの姿が物語っていた。
『オウガッ……!』
『言ったよね……奪わせない、って…………!』
既に半身が吹き飛んでいるサンダーキラーがゆっくりと倒れ込む。
次の瞬間に起こった大爆発は、付きかけていた心の火を爆発させるには十分だった。
「あああぁぁぁぁぁぁッッッ!!」
感情任せの突進はもはや意味を成さなかった。
攻撃はおろかその場から動かすことすら叶わず、オウガのように深々とその鉤爪が突き刺される。
『力が欲しいか? ならくれてやる』
「あッ…がッ…! あああぁぁぁぁぁぁ……ッッ!!」
『陸…? 陸ッ……!?』
また身体が破壊されるのと同時に、大量のベリアル因子を注ぎ込まれる。
内部から突き刺し、裂かれるような痛みが全身を疾走した。
『ほぉ…?』
その様子を眺めていたベリアルは、面白そうに息をつく。
奴の眼前で起こっていること。それは肉体が崩壊してもなお、陸がベリアル因子を吸収しようとしている様だった。
『…これだけ俺の力を注がれても耐えるか。最期に面白いものを見せてくれたな』
それでもまだ余裕然と言った様子のベリアルに、完全に主導権の移った身体を向ける。
拳を振り翳すゼロビヨンドの姿は、ゼロダークネスのそれに酷似していたという。
「ガアァァァッッッ!」
莫大な闇を解き放ちながら炸裂した拳がベリアルを数歩後退させる。
炸裂点から上がる焦げたような煙を見下ろしながら、またもベリアルは愉しそうに嗤った。
『クク……今のは少しだが利いたぞ。見事だ』
褒めるように嗤う一方で、ギガバトルナイザーに注ぎ込まれてゆく。
『だが届かん、それが貴様の限界だ』
直後に振るわれた巨大な闇の波動が、ゼロの肉体を飲み込んだ。
痛みと表現するのも生温いそれが全身を蝕む中、相棒の身体が消えていくのがわかった。
(クッ……ソ…………!)
『……終わりだな』
変身も解け、生身のまま崩壊した街に投げ出された陸が地面を転がる。
ブレスは無事だがゼロの声は聞こえなかった。それほどエネルギーを消費したのか、はたまた陸の身体がおかしくなっているのか。
その答えがどうであるかは、次の瞬間に起こったことが理解を強要してくる。
「ごぶッ……!?」
何とか起き上がろうと腕を立てたその瞬間、溢れ出した赤が地面に広がってゆく。
それが自分の口から吐き出た血だと理解したその瞬間、またも冷たいアスファルトの上で倒れ伏していた。
「…ぁ……?」
『細胞を壊され、絶大な量の俺の因子を注がれたのだ……当然身体は崩壊する。持ってあと数分だろうな』
ベリアルの声が遠い。
それだけじゃない。腕も、足も、身体そのものがなくなってしまったかのように力が入らず、感覚もない。
「ま………だだ……!」
意識の底から這い上がってくる闇が誘ってくる。
やがて視界すらも黒く覆ってゆくそれは抵抗しようとする陸の意思すらも飲み込み、深い、闇の底へと引き摺り込んでゆく。
「まだ…俺は……」
言葉も、視界も、意識も、全てが黒に染まる。
事切れたことを認識する間もなく、動かなくなったその身体だけがその場で果てていった。
いやー…ボッコボコですね()
作者としては絶望感を出せるか苦心してたんですが現れてたでしょうか…?
殆どどっかの暗黒宇宙大皇帝さんさながらの戦闘シーンですが最初はエンペラとルギエル戦両方を参考にしようと思ったんです
けど気付いたら8割エンペラ戦になってたので開き直って全力でオマージュしました←
さあ陸も力尽きてしまった中、希望は残っているのか
それでは次回で