ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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少し忙しくクライマックスにも関わらず間が空いてしまいました
オウガから命の融合を持ち掛けられた陸、そんな彼が進む道とは……


百五十六話 ゼロからイチへ

 

 消えない。

 目障りな光が、消えない。

 

『ジイィヤッ!』

 

 何度叩き伏せても、何度絶望で覆うとも。

 その度に瞬くあの光が、消えない。

 

『アアァァァッ!!』

 

 沸き起こる胸騒ぎのままに腕に持つ得物を振るった。

 力の差は歴然。勝利が揺ぎ無いことになっているのも火を見るより明らかなはずだ。

 

 それでも、その光を前に気は逸った。

 

『誰であろうと関係ない……俺の邪魔をするなら潰す!』

 

 怪獣墓場の時も、アナザースペースの時も、サイドアースでも、自身の野望を打ち破ってきたのはいつだってあの光だった。

 仲間、信頼、絆……自分の捨てたものが紡ぐ圧倒的なまでの光、力。

 

 そんな目障りな光がまた目の前で生まれようとしている。

 

『所詮貴様等は俺に利用されるために泳がされていたに過ぎない。調子に乗るなァ!』

 

『フウゥッ!』

 

 九色の光を放つ銀の巨人を粉砕せん勢いで攻撃を繰り返す一方、ざわつく胸は更なる予感を悟る。

 

 また別の場所で別な光が生まれようとしている。

 そんな胸騒ぎがしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……命を、一つにする…?」

 

「そ。一応ボクにも陸君にもベリアルの遺伝子……つまりはウルトラマンの遺伝子がある。理論上は前に君とゼロ君が一体化した時みたいに、命を一つにすることで傷を癒すことだって出来るはずだ」

 

 ただ白が続く生と死の狭間で、淡々とオウガは話す。

 状況を飲み込み切れていない陸の反面、彼は全てを把握し、また迷いもないように見えた。

 

「このままじゃ二人とも死ぬだけだしね。どっちか片方だけでも助かるなら、それに越したことはないだろ」

 

 丸め込まれかけ、そして止まる。

 その言葉の中に無視できないものがあったのを陸は聞き逃さなかった。

 

「片方だけってどういうことだよ……?」

 

 ウルトラマンの持つ一体化能力は、対象の傷を癒すだけでなくウルトラマン自身が負った傷やダメージも回復させることができる、ゼロ曰くwin winの関係。

 つまり一体化すれば互いに傷を癒し命を留めることが出来るはずなのだ。

 

「言った通りだよ。ボク等はウルトラマンの遺伝子を持ってはいるけど、ウルトラマンではない。つまり、一体化して傷を癒す力も彼等に比べれば劣るって訳だよ。多分、完全に命を融合させてやっと片方の傷を癒せる程度だと思う」

 

 けれど、オウガの言葉はそんな認識を打ち壊してくる。

 そして次に彼の放ったそれは、理想すらも、瓦解させた。

 

「…そんな訳だからさ。ボクのこの命、君に預けるよ」

 

「は……?」

 

 あっけらかんと、至極当たり前のようにオウガは言う。

 けれどそれが指し示す意味はあまりにも残酷で、また受け入れ難いものだった。

 

「心配しなくてもいいよ。これでもボクは君よりずっと丈夫な身体してるし、その分ベリアルの力も君より多くある」

 

「いや、お前……」

 

「ボクの計算ではまず間違いなく君の傷は治せるし、ボクの抗体と融合することでもしかしたらベリアルの力への耐性だって―――」

 

「そうじゃないだろ!」

 

 勝手に話を進めるオウガの声を遮る。

 そんな陸を見て、彼はどこか儚く、また諦観したように笑った。

 

「それじゃどうなるんだよ……お前は……」

 

「……いいんだよ、もう」

 

 片方しか助からないということは、どちらかの存在は消失するということ。

 しかも話を聞く限りではオウガは、自らの命を引き換えに陸を助けようとしている。

 

「言っただろ、君や千歌ちゃん達の描く輝きが好きで、その未来が奪われるのが嫌だって。君が命を張ってる理由と変わらない」

 

「けど……!」

 

「これ以外方法がないならやるしかないだろ。このままじゃ君や皆のやってきたことが全部無駄になる」

 

 無理矢理にでも陸を納得させるように、オウガは合理的な言葉を連ねる。

 けれどそれだけで済むような単純な話ではなかった。

 

「……それに、君が人間じゃなくなる引き金を弾いたのはボクだ」

 

 オウガが思い浮かべるのは彼が陸にベリアルの力を受け渡したあの日なのか。

 生まれ故に背負った闇を拒み、スライ達の計画に手を貸したその選択を悔いるように、自嘲して笑う。

 

「だからせめて―――」

 

「そんな罪滅ぼしなんざ求めてねぇんだよッ! どんだけテメェに振り回されてきたと思ってんだ……今更そんなことで許す訳ねぇだろうが!」

 

 仲間だなんて、まして友達だなんて思っちゃいない。

 散々迷惑だって掛けられてきたし、対立だってした。陸の身体だって、オウガがいなければこんなことにはなってなかったのかもしれない。

 

 けど、それでもコイツだってもう仙道陸を構成する者の一人なんだ。欠けちゃいけないんだ。

 

「テメェが本当にそれを罪だと思ってんなら贖罪なんて必要ねぇだろ……生きてりゃそれで十分なんだよッ!」

 

「はは……嬉しいなぁ……、そんな風に思ってくれてて」

 

 小さく、儚くも咲いた笑みは思い留まったかのような様子を見せる。

 けれどもそんな期待は、一瞬の後に打ち砕かれた。

 

「……けど、ごめんよ。ボクは最後まで君のことを裏切り続けるみたいだ」

 

 声に続き、思念体として浮かぶオウガの身体が綻び始める。

 

「実はもう、とっくに融合してるんだよね。こうして君の精神に干渉できたのもそのおかげ……でももう、時間切れみたいだ」

 

「は…? 待てよ……俺は認めてなんか―――」

 

「時間もないし完全に消える前に伝えちゃうね」

 

 顔を突き合わせながらも決して視線は重ねず、オウガは一方的に続ける。

 そんな彼から零れる光の粒子が、儚く舞っては散る。

 

「…ボクは、君達に出逢えて良かった」

 

「そんなん聞きたかねぇんだよ! お前言ってたよな、ベリアルの力だなんて関係ない、自分を自分自身だって認めさせるって! なのにそれでいいのかよ!」

 

「…そんな願い、とっくに叶ってるよ」

 

 輪郭すらも覚束無くなる中、オウガは満たされたように笑う。

 出会った時からコイツの色んな顔を見てきた。

 

 キモイ顔。ウザい顔。狂気を孕んだ笑み……けど、これほど穏やかなものは初めて見る。

 

「……少なくとも君は、千歌ちゃん達は、ボクをボクとして受け入れてくれた。それだけでもう、十分すぎるくらいだよ」

 

 心残りがないという訳ではない。

 けれども一番叶えたかった願いは、求めていたものは手に入った……そう、その表情が語る。

 

「この星に来て、君達に出逢えて、ボクは変われた。自分のことしか頭になかったボクが、ボクなりの大切なものを見つけて、それを守りたいと思ってる……こんな素晴らしいこと、他にないだろ」

 

 心が認めなくとも、理性が理解してしまう。

 コイツはもう、満たされてしまっているんだ。

 

「嬉しかったよ。君がボクを引き留めようとしてくれて、失いたくないだなんて思ってくれて……」

 

 望まぬ形で背負わされた闇に囚われ続けていた彼が、光となって消えてゆく。

 

「…最後にそんな、ボクには大きすぎる餞別まで貰えた…………悔いはないさ」

 

「オイ待て……ふざけんなッッ!!!」

 

 必死に伸ばした腕は、何も掴むことのないまま空を切る。

 

「…………ありがとう」

 

 その声を、最後に。

 彼だった光は空間全体に広がってゆき、あるべき場所へと導くように、陸を引き戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッ……!」

 

 五感全てから伝わってくる情報が全身を駆け巡る。

 即座に起き上がった直後に実感したのは、己の身体が存在しているということだった。

 

「本当に生き返った……」

 

 呆然とする声に導かれるように振り返った先にあった姿は、聖良と理亞の二人。

 影も、形もないけれど、それでもわかった。アイツも今の今までここにいたんだ。

 

「…アイツは……?」

 

 一度死んだ実感も、再び生を得た実感もある。

 けどそれがどうでもいいくらいに心は、あのバカの姿を求めている。

 

「それは……」

 

 どうせまたタチの悪い冗談だ。どこかからこちらを見て笑っているに決まってる。

 都合よく考えようとする頭も、二人の反応を見ては冷静になってしまう。

 

「……あんのバカが……!」

 

 叩きつけた拳が、やり場のない感情を地面に沈めてゆく。

 なんで助けたかなんて聞かない。そこまでする意味があったのかだなんて言わない。わかってる、わかってるんだ。

 

 アイツがこんなことをした理由がわかってしまっているから、余計に腹立たしいんだ。

 

「くそ……クソッ……!」

 

「陸さ……!」

 

「ちょっと、急に動いたら…!」

 

 ああまでしたアイツの望みが何であるのかもわかってる。

 だからこそ、今陸に出来るのは―――、

 

「……あの人も、今の陸さんと似た顔をしていました」

 

 完全には治りきっていない傷にふらついた陸を抱き支えては、聖良は言う。

 その瞳には言葉の中にある彼の姿が、克明に浮かんでいた。

 

「……私に、あの人が何を思ってこうしたのかはわかりません。だから、伝えてほしいと言われたことをありのまま伝えます」

 

 オウガの姿を見たからか、それともまた別の要因か。わからないけれど。

 聖良の瞳もまだ、希望を捨ててはいなかった。

 

「……自分は、いなくなったことにはならない」

 

「ッ……」

 

 聖良の声に重なって聞こえたもう一つの声。

 彼と融合したからか、それともただの幻聴なのか、どうであれ、その声は確かにオウガのものだった。

 

 

――――例え形が消えても、想いはずっと心に残る。君達に教えてもらったことさ。

 

 

――――そんな君達だったからこそ、ボクは初めて守りたいものって言うのを見つけられた。

 

 

――――その守りたかったものがこの先も続いていく。それもきっと、想いを繋げる形だとボクは思う。

 

 

 その声が何であろうと関係ない。

 この言葉は、アイツが辿り着いた答えで、最後の願いなんだ。

 

 

――――この先の未来もずっと、君達が歩み続けてくれる。

 

 

――――それだけで、ボクが生きた証になるから。

 

 

 それをきちんと言葉として受け取ることが出来た。

 だったらあとはもう、進むだけだ。

 

「…わかってるよ。やっと、見つけたんだもんな」

 

 すぅと肺いっぱいに空気を吸い込み、今ある生を改めて実感した。

 許した訳じゃない。それは今だって変わりはしない。

 

 けど、アイツが灯した希望を、想いを無駄にすることは。もっと出来ないから。

 

「……描いてやるよ、お前に託された未来」

 

 握った手のひらの中で、新たに光が生まれる。

 同じ気持ちだ。消えかかっていた相棒の声が、光の中から聞こえた。

 

「まだ最後じゃねーぜゼロ……約束したろ」

 

『……ああ、終わらせねーよ。終わらせてたまるかよ、陸…!』

 

 そうだ。終わらせない。

 皆とここまで歩んで来て、これからも続く未来。終わらせてたまるか。

 

「…行くんですね」

 

「勝てるの……?」

 

「戻ってくるよ、ちゃんと。アイツ等も連れて」

 

 二体の巨人を見上げる。

 衝突し、九色の光が舞う度に、聞こえるんだ。皆の声が。

 

 皆もそうだ。これまでの歩みを無駄にしないために、これからもまた歩んでいくために、前に進もうとしている。

 だからこんなところで、立ち止まっていられるか。

 

『行くぜ陸……俺達も!』

 

「……進んでいくんだよな、皆で」

 

 陸とゼロ、オウガだけじゃない。ここまで歩んできた中で抱き背負ってきた、皆の想い。

 その全てが眩い光となり、ウルティメイトブレスを介し新たな形を成して陸の手に握られる。

 

「俺達に―――

 

俺達の(みんなで)描く未来に―――

 

 これまでの因果を終わらせて、皆の望んだこれからの未来を描く。

 突き上げた腕に宿るブレスから広がった光に包まれ、全てを込めて、叫ぶ。

 

 

 

 

 

―――――――限界はねぇッッ!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッッ……!?』

 

 立ち昇った光の柱の前に、ベリアルは己の胸騒ぎが最悪な形で現出したことを悟った。

 苛立たしい。虫唾が走る消し去りたい。奥底から沸き上がってくる全ての感情を吐き出すように、ベリアルは最大の憎悪を込めてその名を叫ぶ。

 

『ゼロォォォッッ!!!』

 

 眼前のネクサスを払いのけ、駆り立てられるように光を纏うゼロへ暗黒の稲妻を纏った光線を放つ。

 だがそれはゼロからも伸びた光の線と衝突し、間もなく共に消滅する。

 

『互角だと……バカな…!?』

 

『……互角? 馬鹿言ってんじゃねぇ』

 

 収束してゆく光の中で、ゼロは言い放つ。

 

『この光は俺達が歩んできた証だ、皆で紡いだ輝きだ……テメェの独りよがりな力と同じにするな』

 

『たかが一発防いだ程度で調子に乗るなァッ! 一度敗れた貴様等に今更何が出来る!』

 

「確かに俺達は負けたよ、完敗だった。けど、今は違う」

 

 ゼロに続き、陸もまたベリアルへ声を向ける。

 利用するために生み出した存在が自分の脅威となろうとしている……その姿は、かつて同じように自分へ立ち向かってきた息子と重なった。

 

「皆が俺を俺でいさせてくれた…、アイツが繋げてくれた……だから今ここに立ってるんだ」

 

 これは終点などではない。

 これからも続いてゆく。これは新しい始まりの一歩だと言うように、ゼロは告げる。

 

『そうだ……これまでの全てが、また俺達をまた一歩進ませてくれる!』

 

 赤に青、そして銀の肉体の中に金色の煌めきが走る。

 額や胸の輝きからは水色の光が漏れ、双刃や双翼の光輝をより神秘的なものとしていた。

 

「ゼロから―――」

 

『―――イチへ』

 

 収まった光の中から現れたその姿は、さながらこれまでゼロが得たもの全てを体現しているようだった。

 

 

 

『俺の名はゼロ――――ウルトラマンゼロアイン!!!』

 

 

 




みんなで紡いだ光と孤独な闇、相反する両者の決戦もこれで最後です

絶望を体現する陛下の対を為すように陸とゼロが変身した姿はゼロアイン
これまでの全てが今へと繋がり、また新たに˝一歩˝を踏み出すという意味を込めてドイツ語で「1」を意味するアインを名としました
外見は比較的シンプルなものを想像していて通常形態のゼロにこれまでの形態の特徴が組み込まれた感じです

いつかまだイラスト化できてない形態と一緒に描けたらいいですね()

長かった戦いも次で決着です!
それでは次回で!!!
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