ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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第三部もいよいよ大詰め
長きに渡ったベリアル陛下との因縁も遂に決着です


百五十七話 みんなで叶えた物語

 

 

 形となって荒れ狂う厄災。

 希望も、未来も、何もかもを粉砕するように響き渡っていた悪魔の咆哮は、突如として鳴り止む。

 

 その瞬間に顔を上げた人々が目にしたのは、眩いほどの光を放つ二人の巨人だった。

 

『また…、またその光か……! 俺の前から消えろォッ!』

 

 ベリアルの怒号に続き、隠す気のない嫌忌や憎悪の籠った闇の刃がギガバトルナイザーより放たれる。

 ゼロもまた放った光の刃でそれを相殺して見せると、奴との距離を取りつつネクサスの隣へと並び立った。

 

「皆…」

 

 互いに頷く。

 何があったか、なんて話は全部後だ。

 

 そんなことは全部目の前のことを終わらせてから、未来を勝ち取ってからだ。

 

『シュァッ!』

 

 ネクサスの援護を受けつつ、ウルトラマンゼロアインが大地を蹴る。

 その接近を拒むようにベリアルから轟雷の波が押し寄せるも、ネクサスから発せられる波状光線によって打ち消され、その合間を掻い潜ったゼロの一撃が悪魔を捉えた。

 

『グッ……ァァア……ッ!?』

 

 拳から溢れ出す光がベリアルを抉り、一撃すら見舞うことも叶わなかった奴を大きく弾き飛ばす。

 すかさず額から伸ばした柱のような光の束がその身体を飲み込み、遂にその背中を地につかせた。

 

『なんだ…、この、光は……!?』

 

『テメェが捨てた力だッッッ!!!』

 

 同様する奴へ、再び肉薄。

 横薙ぎに振るわれたギガバトルナイザーの一撃を腕を立てて防ぐと、懐に潜り込んではまたその拳と奴へと見舞う。

 

『グ……オオォォォォッッ!!』

 

「『があぁッ……!」』

 

 が、意地で堪えたベリアルのカウンターに薙ぎ払われたゼロが辛うじて原型を留めていたビルを巻き込み転倒する。

 瓦礫と粉塵が視界を舞う中、それらを突き抜けてきたギガバトルナイザーによる刺突が更に横腹を抉った。

 

『調子に乗るな……! 俺は、今度こそその光を打ち砕くッ!』

 

『なら何度でも言ってやる。テメェが俺達に勝とうなんざ……二万年早いぜ!』

 

 この段階まで辿り着いて、ようやく互角に渡り合える相手。

 けど、信じてる。自分達が積み上げてきたものは絶対にこの絶望を振り払えると。

 

『ジュアァッ!』

 

 バックステップで攻撃をいなしたその瞬間、ゼロとスイッチしたネクサスの鋭い蹴りが叩き込まれる。

 立て続けに繰り出された連撃もベリアルを捉えるも、その身を後退させるのにも至らず逆に一撃を貰い地面にたたきつけられてしまう。

 

『デェェェェイヤッ!』

 

 L字に組んだ両腕から光線を伸ばし奴の射程から逃れる時間を作るも、ネクサスは退くどころかベリアルへの攻撃を続けた。

 その度に薙ぎ払われては立ち上がり、幾度となく、ベリアルへと立ち向かってゆく。

 

『俺の復活に利用されていただけの子娘どもが粋がるな! 貴様等の歩みにそれ以上の価値などない!』

 

『それを決めるのはコイツ等だ。例えテメェに利用されていたとしても、コイツ等の歩みは他の誰でもない、コイツ等自身のものだ。その価値を……テメェが決めるんじゃねぇッ!』

 

 ギガバトルナイザーを受け流しつつ、呼吸を合わせてその間合いに踏み込む。

 そして同時にゼロとネクサス。両者の拳がベリアルの腹を穿った。

 

『貴様もだ仙道陸! 利用されるためだけに生まれ、今となってはその唯一の価値すら失った……そんな貴様が進んだ先に何がある! 何が得られる!?』

 

「そんなん……知る訳ねぇだろッ!」

 

 ベリアルから投げかけられる声を払いのけるように上げた声が光の波となり、呪縛もろともそれらを弾く。

 

「意味とか価値とか、そんなモンハナから追い求めちゃいねぇ」

 

 今だからこそ言える。何があるのか、何を得られるのか、踏み出す時は何もわかりやしない。

 自分達の歩んで来た意味も価値も全て、ふと振り返った時にそこにあるもの。

 

「今の俺を作ってくれた奴等がいる、そいつ等に託されたモンがある…………だったらどんだけ苦しかろうが辛かろうが、それを背負って前に進むしかないんだよッ!」

 

 だからここから先の未来で何を得られるのかなんてわからない。

 わからないからこそ前に進むんだ。これまでもそうだったように、進まないことには何も見つからないから。

 

 そうして歩んだ道のりの中で得たものがきっと、また無二のものとなるはずだから。

 

「だから止めさせてたまるかよ……俺達の、アイツに託された未来ッ!」

 

 爆炎を纏った拳を振り上げ、立ち昇った業火の柱と共に奴を殴り飛ばす。

 かつては大切なもののためならば死んでも構わない。そう思っていたけれど、今ならば言える。

 

 心の底から、この先の未来をアイツ等と生きてゆきたい。

 

『夢見事を抜かすな! そんな幻想は罷り通らない、貴様等も嫌というほど味わってきただろう!』

 

 千歌の中にいたからこそ、ベリアルはこれまでの皆の歩みを知っている。

 喜びや手にしたもの、そしてそれ以上の悲しみや失ったもの。それはこの先もずっと消えずに、重みを増しながら纏わりついてくる……自身の過去と重ねるように陳ずるベリアル。

 

『失い続けた貴様等の歩みに価値などない……貴様等自身が最も理解しているはずだ!』

 

「そんなわけないッ!」

 

 けれどそれを否定したのは、奴に最も負の感情を見せたはずの千歌だった。

 

「価値だとかなんだとか難しいことはわかんないけど、私達にとっては泣いたことも笑ったことも全部、全部大切なもので、輝いてたんだ!」

 

 そんな叫びに呼応するように、ネクサスはその光を変化させる。

 

 劣弱の鎖を砕き、内なる己を信ずる煌めき。

 自身の光を奔り抜き、未来へ羽ばたく群青の翼。

 

 これまで歩んできた中で抱き育んだ光はその全てを肯定し、また新たな輝きを紡がんとする。

 

『例え貴様等がそう思っていてもそんなものはすぐに崩れ去る。時は永遠ではない。一時の友情や幸福などただのまやかしだ』

 

「……確かに、楽しかったり幸せな時間はいつもあっという間だよ」

 

 太陽のような光に続くように灯る新たな光。

 

「皆、その時間がずっと続けばいいのにって思うこともある……でもそんなの私達じゃないから!」

 

 果南の輝き。

 深く穏やかに揺蕩う海のような翠玉の光を宿し、身体を翻したネクサスの回し蹴りが迫る轟雷を粉砕する。

 

「そうだよ…どんなに楽しい時間でもやっぱり終わりは来る。ずっとそこにいていたいけど、それでも進んできたのが私達だから!」

 

 曜の輝き。

 軽やかな側転で反撃をいなすネクサスがどこまでも透き通るような淡青の光が軌跡を描く。

 

「時が戻らないこと、もう一度同じ時間を繰り返せないことはとても寂しく思えまずが……」

 

「それ以上に、どうなるかわからない明日の方が楽しみだから!」

 

 ダイヤとルビィの輝き。

 交わった紅と桃色の光が弾け、その煌めきを誇示するようにベリアルへと突き刺さる。

 

「そうやって時が進んでいくことを実感しながら進んできたずら。それが最高に楽しかったから!」

 

 花丸の輝き。

 陽を受け咲き誇る花々のような黄の光が広がり、その加護を齎すかのように攻撃を弾く盾となる。

 

「二度と同じ時はないから、今こうしているのがたった一度きりだってわかっているから、全力になれる!」

 

 善子の輝き。

穢れなき純白の光が羽を開き、迫る闇の波動を浄化する。

 

「いつか終わりが来ることを知ってるから……終わりが来てもまた、明日が来ることを知ってるから!」

 

 梨子の輝き。

 旋律を奏でるように舞う桜色の光が、導くように尾を引いて進む。

 

「どんなに苦しくても……未来に向かって、歩き出さなきゃいけないから!」

 

 鞠莉の輝き。

 再度懐に踏み入ったネクサスの拳が淡紫の光を宿し、その声に乗せ打ち込む。

 

「そうやって足搔いて、進んできたから今の私達が、この輝きがあるんだ!」

 

 

 仲間を支え、守り抜く力。

 

 友を想い、前に進む力。

 

 仲間と手を取り合い、自分を貫く力。

 

 万物を思いやり、全てを包む慈愛の力。

 

 可能性を信じ、未来を切り開く力。

 

 光を結び、絆で繋がる力。

 

 想いを受け継ぎ、勝利へと導く力。

 

 希望を捨てず、想いを繋ぐ力。

 

 

 これまでの道のりで抱き、紡いできた想い。

 その全てを包括するかのように、太陽が如し光がネクサスを包む。

 

「何もかも、一歩一歩……私達が過ごした時間の全てが、それが―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――輝きなんだ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷いなく、全員で叫び辿り着いたその答え。

 その想いをネクサスが肯定するように、絶大な輝きを放つ光の柱が立ち昇った。

 

「ッ……!」

 

『あれは……!』

 

 それぞれの輝きが一つになり、新たな形となって降臨する。

 

 眩いまで白銀の肉体に、その光を象徴するような双翼。

 神と見紛うようなその姿は、例えるならば輝きそのものが人の形を成したような錯覚を齎す。

 

 

 

 絆の紡ぐ究極の輝き―――ウルトラマンノア。

 

 

 

 

 

 

『馬鹿な…、あり得ん……!』

 

 Aqoursが、皆の絆と想いが、ネクサスの究極最終形態にして本来の姿を呼び覚ました。

 これまでの歩み全てが培い、生み出した輝きに、ベリアルは明らかな動揺を見せる。

 

『認めん……そんなもの、俺は認めんぞ!』

 

 そしてその輝きを拒絶するように、闇が膨れ上がる。

 全てを飲み込み粉砕せんばかりに迫るベリアルを前に、ノアはただ静かに立ちはだかり、微かに動く。

 

『ドゥアァァッ!』

 

『ヌ…アァァァァッ……!?』

 

 炎塵を纏った両の拳がベリアルの土手っ原を射抜き、左右へ振り抜かれると共に発生した光の刃がその闇を裂く。

 更に追撃の三日月蹴りが直撃し、奴の身体を大きく吹き飛ばす。

 

『グ…ウゥゥ……貴様等ァ!』

 

『デェェェリャッ!』

 

 即座に反撃に移ろうとしたベリアルにゼロが空拳を殺到させるも、辛くも弾かれ逆にカウンターを貰ってしまう。

 だがその一瞬の間を突くように、ノアは大地を蹴った。

 

『オオォォォ……!』

 

 ノアの左腕に膨大な熱量が集約してゆく。

 神風の如し速度の中でも衰えることのないその熱はやがて獄炎となり、突き出された拳と共にベリアルへ叩き込まれる。

 

『シュゥゥアッ!』

 

 噴出された炎の柱は大気を焦がしながら猛進し、その衝撃波で地面を抉りつつ奴を遥か奥へと運ぶ。

 辛うじて受け切ったベリアルにより炎は消滅させられるも、その懐へ迫ったのはまたもゼロだった。

 

「『ダアアァルァッッ!!」』

 

『グオォッ……!』

 

 全身全霊で振り抜いた鉄拳が今度こそ顔面へめり込む。

 もんどり返って吹き飛び、何度も地面を転がったベリアルだったが、まだその双眸に宿した野望は衰えぬと言わんばかりに雄叫びを上げる。

 

『まだだ……まだ終わらんッッ!!!』

 

 暗雲、大地、そして奴自身。

 それら全てから発生した赤黒い雷をその両腕へ集約させ、叩きつけるように十字に組んでは暗黒の光線を疾走させた。

 

『アァァ…!』

 

 ベリアルがその全てを叩き込んだ一撃を放っても、ノアはなお静かに、対抗するように胸に宿る深紅の輝きを増大させる。

 そのエネルギーが極限まで高まった瞬間、立てた右腕に左拳を打ち付け、幾重にも重なった九色の光線を解き放った。

 

『シュアァァァ!!!』

 

 ライトニング・ノア……超新星爆発をも超える威力を持つとされるノアの必殺技。

 それはAqours九人の輝きと合わさり、悉くの闇を切り裂く勢いでベリアルの光線と衝突する。

 

『グ……オオォォォォォォォッッッ!!!』

 

 互いに譲ることなく、爆ぜては消える光と闇。

 仲間との絆が紡ぐ究極の輝きを前にしても、空っぽなはずの孤独な闇はそれに拮抗する力を見せている。それほどベリアルにとってこの輝きは認められないものなのか。

 

『……』

 

『……!』

 

 無言のままこちらに双眸を向けるノアに対し、静かに頷く。

 輝きはこれだけではないはずだ。その瞳はそう語っていた。

 

『ぶつけるぞ陸……俺達の、全てを!』

 

 歌が奏でられた。

 旋律を刻むメロディと共に光はゼロを中心に広がり、やがてそれぞれの色を咲かせる。

 

「……眩しいな。それに、なんかあったかい」

 

『ああ……今この瞬間は、アイツ等が最高に輝いてるよ』

 

 光の中で想起する。

 決して平坦な道でも、順風満帆なものではなかった。けど、それでもその一瞬一瞬がかけがえのないものだったと言えたからこそ、この輝きがあるんだ。

 

 そんな日々を、これからも歩んでゆくために。

 また新しい輝きへと走りだすために。

 

 今はただがむしゃらに、進むんだ。

 

『食らいやがれベリアル…! これが俺達の―――輝きだッ!!』

 

 無数の色を持つ光がゼロの中へ溶け込み、その輝きを限りなく増大し解放される。

 刹那にゼロの全身から巻き起こった輝きの嵐がノアの光線と融合し、暗黒の光線を掻き消してはベリアルを飲み込んだ。

 

『アアァァァ……ァアアアアアアァァッッ……!!』

 

 その圧倒的な光の中で、ベリアルの身体もまた光となり消滅してゆく。

 轟く断末魔の猛々しさとは裏腹にその光は酷く穏やかに、また純粋にも思えた―――――、

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ベリアル。お前、もう止まれないんだよな」

 

 いつか来たベリアルの精神世界。

 その魂をも消滅する寸前、同じ力を持つ陸だからこそか、僅かな時間とは言え彼の精神と繋がった。

 

「信じてたもん、信じたかったモンがあったのに、すれ違いから裂け目がどんどん大きくなって……もう戻れなくなった、止まれなくなった」

 

『……黙れ』

 

「今のお前がそれをどう思ってるかは知らないけど、お前がずっと抱いてきた苦しみは、それに起因してるんだろ?」

 

『…黙れ……!』

 

 最初はただの嫉妬や劣等感からだった。

 けれどもそれすら否定され、憎しみと共に復讐を誓った。

 

 その復讐の中で憎しみが晴れることのないまま別の憎しみを抱く……それを繰り返してきたんだ。

 

「止まれないから何度倒されても蘇って、その度に憎しみを募らせて……でも、それじゃダメなんだよ」

 

 己の過去を肯定できずに、やってきたことに価値があったと認められずにここまで来ている。

 きっと千歌達の輝きに拒絶を示したのもそういうことだろうから。

 

『わかったようなことを言うな! 貴様に俺の何がわかる!』

 

「わかんねぇよ……お前がどんだけ苦しんできたかなんて。……でも、お前って存在が続いていく限り、お前の苦しみも増していくってことだけはわかる」

 

 理解できたなんて言うつもりは毛頭ない。

 でも、彼の中で、彼の苦しみの根源を見た者として、それ以上その苦しみが続くのを終わらせたかった。

 

「誰に言われても、今更、お前は止まれないだろうからさ……」

 

 もし、それが出来る者がいるとするならば。

それはきっとベリアルから生み出された、自分のような存在だろうから。

 

「だから……俺達で、お前を終わらせてくれ」

 

 ベリアルの遺伝子を持って生まれたことに、意味を見出すとするならば。

 それはベリアルという苦しみの連鎖を断ち切るためだった……そう信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は……俺はァァァァッッ…………!!!!』

 

 その肉体が、魂が、光となって消えてゆく。

 復讐に囚われ、苦しみ続けた彼が迎えたのは、()()に渡って自分が利用しようとした存在に受け止められる……そんな最期だった。

 

「……もう、ゆっくり眠れ」

 

 そんな祈りに光を差し込むように、暗雲が晴れてゆく。

 やがてその顔を覗かせた青空はどこまでも遠く、明るく、澄み切っていた。

 

 




スクールアイドルを通し数多の人の絆を繋げた穂乃果に対し、千歌はこれまでの歩み全てを肯定し、隣にいる皆と一緒にノアを覚醒させるに至った……ということです

ベリアル陛下との決着の付け方に関してはジードの踏襲です
ゼロに陛下は倒すことはできても終わらせてあげることは出来ない。正史においてそれを成し遂げられたのはベリアルの遺伝子を受け継ぎつつ、垣間見たその過去を受け止めることのできたジードだけ
今作で陸の設定をジードに寄せたのはこの結末を迎えさせるためでもありました

次回から13話、そしてエピローグがてら劇場版の話に移っていくつもりです
それでは次回で
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