ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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要点だけ切って張って色々端折ったら微妙な文字数に……
とりあえずこの話で第三部は終わりとなります


百五十八話 幕が下りる

 

 

 

「…いつまで準備してんだお前。遅刻すんぞ」

 

「もうちょっと、もうちょっとだけ待って……!」

 

 寄りかかった戸の向こうから聞こえる曜の声にドタバタと床を駆ける音。

 普段ならば曜が陸を急かしているはずの構図も、今日ばかりは逆転していた。

 

「ほいお待たせ! いっそげー!」

 

 数分待った後、勢いよく新品のそれと見紛うような制服姿の彼女が自室から顔を見せる。

 そんな曜に続き、彼女の母親から送迎の声を受けつつまだ肌寒い三月の空下へ飛び出した。

 

「お前それ仕立てるのに時間掛かったのか……?」

 

「まあ…うん、今日が最後だと思ったら気合入っちゃって」

 

 いつも呼び出されていた寝坊常習犯の陸が逆に呼び出しに行くほどなのだからよほど熱中していたのかと思いつつ、自転車のサドルに跨る。

 それに続き曜が荷台へ腰かけたのを確認すると、吹き付ける海風を切るようにペダルを踏んでは前へと漕ぎだした。

 

「…そういや、こうやってお前のこと送るのもこれで最後か」

 

 ふと思い起こしそう呟く。

 よくよく考えればよくもまあ二年もこんなタクシーまがいな行為を受容してたものだ。

 

「そうだね……なんか寂しいなぁ」

 

「ようやく奴隷生活からおさらばできると思うと清々する」

 

「おーい?」

 

 不満気に口を尖らせた曜に背中を突かれる。

 まあ静真の方にも自転車通学する予定なので十中八九この扱いは継続だろうが。

 

「……ちょっと時間ヤバイな。飛ばすぞ」

 

「…前みたいなのはやめてね」

 

「わかってるよ」

 

 以前ウィリー走行で泣かせてしまったことは陸としても反省しているので今回は少々抑え目に飛ばす。

 とは言え原付バイクほどの速度で進んでいるため吹き付ける風も冷たさを増すが、これはこれで嫌いではない感覚だった。

 

「…俺さー」

 

 目的地である建物の影が見え始めたその時、少しスピードを緩めると背を向けたまま零す。

 

「前にも言ったと思うけど、お前と一緒にいる時が一番落ち着くし……もう皆とは一緒にいられないって思った時、真っ先にお前の顔が浮かんだ」

 

 全部終わったら。そう言ったのは陸自身だし、まだ全てが終わった訳ではないけれど。

 けど、何故だかこの気持ちは今、伝えなければいけない気がした。

 

「お前がああ言ってくれたことも嬉しかったし、俺の気持ちも多分、そういうことだと思う」

 

 決して彼女の顔を見ずにそう伝える。

 頬を走る風の冷たさが少し和らいだのは、きっと気のせいではないのだろう。

 

「……だから、お前が俺でいいって言ってくれるなら…………よろしく頼む」

 

「……うん」

 

 腰に回された腕に力が込められるのがわかった。

 そんな彼女の手に片手を重ねる。

 

仄かに伝わってくる温もりは今日も、確かなものだった。

 

 

 

 

 

 

「二人共―! おっはヨーソロー♪」

 

「「ヨーソロー!」」

 

 校門前まで着くと、既に見慣れた顔触れが出揃っていた。

 桜舞う中、生徒のみならず保護者やOGと思われる人達の声も加わりそれなりの喧騒が生まれている。

 

「わ! 曜ちゃんの制服新品みたーい!」

 

「へへん! 気合い入れてきたであります!」

 

「入れ過ぎて遅刻しかけたけどな」

 

 かくいう皆も、着込む制服は新品かのように整えられていた。

 それほど皆、今日という日が大切だということだろう。

 

「……てか、ホントに俺がいていいんすか」

 

「何を言うんですの。貴方もこの学校を救おうとしてくれた一人です。十分、ここにいる資格はありますよ」

 

「イエース! りくっちなら皆歓迎だよ♪」

 

 生徒会長と理事長。この学校のトップ二人に引き摺られるようにして校内に連れ込まれてゆく。

 ふと見ると皆、明るい談笑を交わすその裏に、一抹の寂しさが垣間見えるようだった。

 

 

 

 今日は、彼女達の愛した学校の閉校式。

 浦の星女学院、最後の時が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日この日、浦の星女学院はその長い歴史に幕を閉じることになりました」

 

 三年生への卒業証書の授与を終え、残すところは全校生徒を代表して、ダイヤのスピーチのみ。

 着々とその時は迫るものの、その瞬間を告げる役割を担った彼女の顔は晴れやかだった。

 

「でも、私達の心にこの学校の景色はずっと残っていきます。それを胸に新たな道を歩めることを、浦の星女学院の生徒であったことを誇りに思います」

 

 これは別れの言葉ではなく、これから来る未来へ向かって歩き出してゆくという誓い。

 それを胸に秘めているのはきっと、壇上の彼女だけではないのだろう。

 

「只今をもって浦の星女学院を――――閉校とします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここで最後か?」

 

「……うん」

 

 最後の時というのは、なるべく長く続いて欲しいという皆の想いを裏切るように早く進む。

 夕焼けに染まった空の下。陸の眼前で、九人の少女が小さな部屋の中でこれまでを思い起こす。

 

「結局、誰も帰ろうとしなかったね」

 

 閉校式自体は午前中で終わったし、そこから順次解散になる予定だった。

 けれど今ルビィが言ったように誰一人としてこの場所を去ろうとせず、気付けば夕刻を迎えていた次第だ。

 

「皆、少しでも長くいたいって思ってるからかしら」

 

「ほっといたら、明日でも明後日でも残ってそう」

 

「完全に籠城ずら」

 

「そしたら、また学校続けていいって言われるかも」

 

 思い出巡りと称し校内を連れ回された陸だったが、まあ、これはこれで思い起すことが色々あった。

 皆それぞれ一人一人に同じような思い出があって、この学校につまっているのだろうと、改めて実感する。

 

「そうなったら、皆びっくりだね」

 

「でも、ちゃんと終わらせなきゃね。皆で、そう決めたんだから」

 

 果南の言葉を皮切りに、一人ずつ、スクールアイドル部の部室を後にしてゆく。

 

 ここがあったから皆で頑張ってこられた、前を向けた。

 

 毎日の練習も、楽しい衣装づくりも、腰が痛くても、難しいダンスも。

 

 どんな嬉しさも楽しさも、不安も緊張も、全部受け止めてくれた。

 

 それも全部、返ってこられる場所が、ここにあったから。

 

「…ありがとう」

 

 スクールアイドル部。

 千歌がその名が刻まれたプレートを外すと、皆で最後に一礼。

 

 輝きを置き残してゆくように部室に別れを告げると、遂に、その時は訪れた。

 

『……終わるんだな』

 

 Aqours九人も、校門の外に集まっていた他生徒達も、保護者達も皆、その校舎を見上げていた。

 その輪から少しだけ離れた場所へ移動すると、静かに、終わりの時を待つ。

 

「…千歌ちゃん」

 

「……千歌」

 

 この学校を守ろうと奔走した九人が代表し、その門へ手を掛けた。

 受け入れたはずなのに、それでも辛さや苦しさが勝る。そんな想いを表すように、門は少し動いてはまた止まる。

 

「……浦の星の思い出は、笑顔の思い出にするんだ……! 泣くもんか……泣いてたまるか……!」

 

 己を鼓舞する言葉とは裏腹に、涙は止めどなく流れた。

 いつしか門を押すその手も離れ、皆身を寄せ合っては、ただただ泣いた。

 

『…手伝うか?』

 

「…いや、出来ないよ」

 

『……だよな』

 

 それでも、別れは笑顔でいる。交わしたその約束を守るように。

 九人は再び顔を上げると、またその門を閉じんと手を掛けた。

 

『……俺達が閉めるには、あの門は重すぎらぁ』

 

 学校を救う。そう誓ったあの日に昇った太陽が、沈む。

 

 舞い散る、桜吹雪の中。

 沢山の愛と、沢山の感謝を受けながら。

 

 

 浦の星女学院は、その歴史に幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大丈夫かね、アイツ等』

 

「…まあ、信じるしかねーだろ」

 

 ラブライブも、ベリアルとの決着も、全て終わった。

 激風のような日々は過ぎ去り、訪れた平穏な時間。そんな時を噛み締めるように、陸は高台の上から街並みを見下ろした。

 

「……そういや、お前これからどうするんだ?」

 

 ゼロがこの地球に滞在していたのは、ダークネスファイブやベリアルという脅威があったから。

 それらを打ち払った今、ゼロが光の国に帰還する時ももうすぐそこまで迫っているはずだ。

 

『もうしばらくは残るつもりだ。まだ俺の身体も全快した訳じゃねーし、今回の騒ぎの後処理もあるしな』

 

 そうは言うが、ベリアル軍の残党の処理は殆ど宇宙警備隊が終えているらしい。

 どうであれもう、コイツがここにいる時間ももう長くないのは確かだった。

 

『ああそういや、お前の身体の方ももう心配はいらないってよ。ベリアルの力は残っちまうが、普通に生活する分には問題ないらしい』

 

「それだけ聞けりゃ十分だよ」

 

 戦いの直後、宇宙警備隊に連行されて光の国で治療と検査を受けたのは記憶に新しい。

 正直あの星の光景と超技術に肝を抜かされてばかりでそちらの方はあまり印象に残っていないのだが。

 

『しっかし、大隊長と話してる時のお前の顔……傑作だったな』

 

「仕方ねーだろ! なんかあの人だけ他と圧が全然違かったんだよ……!」

 

 今回の騒動の渦中にいた者として、宇宙警備隊のお偉いさん方から事情聴取も受けた。

かつての戦友であるベリアルが絡んでいたからなのか、ウルトラの父が自ら話をしに来た時は陸やゼロはおろか周囲の宇宙警備隊員までもが驚きを見せていたが。

 

『まあ、あのウルトラの父に称賛されたんだ。誇っていいと思うぞ』

 

「そういうもんなのか……?」

 

 ちなみに騒動自体のことは光の国全体に報道されるが、陸の出自に関してはウルトラ兄弟と一部の者にしか知らされないらしい。

 混乱と、ないとは思うが偏見の目を減らすためと、メビウスとヒカリが提案してくれたことだそうだ。

 

「…色々あったよなぁ……」

 

『ああ。俺にとっても、体験したことのないことばかりだった』

 

 マネージャーとしても、ウルトラマンとしても。

 どちらもなし崩し的に巻き込まれたことだけども、気付けば夢中になっていて。がむしゃらに走り続けていた。

 

『お前達には、色々貰ったよ』

 

「こっちのセリフだっつの」

 

 その日々がいつしかかけがえのないものになっていて、今の自分を作ってくれた。

 そうやって歩んでこれたのも全部コイツが、皆がいたから。

 

「……あと、テメーにもな」

 

 その場に植えたのは一本の低木。

 やがては大木に育つであろうそれに、()()()()である真っ黒な布切れを括りつけた。

 

「ったく、拝む墓増やしやがって」

 

 アイツがこんなことを求めているかなんてわからないけど。

 これもまた一つのケジメであり、陸なりの礼儀だ。別にアイツも悪い顔はしないだろう。

 

「……こっからなら、よく見えるだろ」

 

 見ててくれ。そう言うように。

 ほんの少しだけ口角を釣り上げて見せると、それ以上は止まらずにその場を去ろうとする。

 

 

――――楽しみにしてるよ。君達の、新しい輝き。

 

 

「……おう、目ん玉かっぽじってよく見とけ」

 

 自分自身、どこへ向けたかも知らない返答が風に流れてゆく。

 若葉を揺らすその木はどこか気持ち悪く、笑っているように見えた。

 




前書きに書いた通りこの話で第三部は終了となります
とりあえずアニメ本編の話はこれで終わりましたね

次回からはおまけがてら劇場版の話をやる予定です
前にちらっと出てきて帰っていったあの人が再登場します

それでは次回で
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