何かの雑誌でシルエットだけ公開されたとかTwitterで見たけど、あれマジモンなん?
『・・・仙道陸が最近何かやっているようですね』
暗い宇宙船の中、床に投影された映像を見つめる五人。
『何でも取り巻きの女子達がライブ? とかいうのをやるらしいぞ』
陸達の身辺調査に向かわせた諜報員からの情報を五人で共有している最中だ。もっともそれは今、全く別の話題に切り替わろうとしているが。
『ライブ・・・、と言うと、歌って踊るあれか』
『詳しいなお前』
『グゥゥゥゥゥゥゥゥ』
『吾輩の星でもそんな事をやっている輩がいたのでな』
『ケケケ・・・、両腕ハサミの奴が歌って踊ってんのか。それ見てて悲しくならねぇ?』
『お前も両腕刃だろうが』
『あの・・・、グロッケン? ヴィラニアス?』
『・・・聞いていないな』
『グオォォォォォ・・・・・・』
『で、どんなの何だ、それは?』
『何か輝くステージの上で踊っていたぞ』
『ふーん・・・・・・』
三人を置いて、二人で話を進めていく。
『なあスライ。確かシャプレーメタルを使ったバッジがあったよな。周りから見える姿を変えられるやつ』
『ええ、ありますが・・・・・・』
『それ貸してくれ』
『ああ、吾輩にも頼む』
『いいですが・・・・・・、二人共何をするつもりですか?』
バッジを受け取った二人は、部屋の出口に向かって歩き出していた。
『『ちょっとライブ見てくる』』
『・・・・・・・・・・・・好きにしなさい。もう私は何も言いません』
「これは・・・・・・」
〈ああ、想像していたより・・・・・・〉
ライブ当日。
ステージ裏で最後の準備をしている三人に声を掛けた後、自分もステージで踊る彼女たちを見るために体育館の客席となっている場所に来たのだが。
陸とゼロは、あまりの人の少なさに呆然とすることになった。
いるのはルビィと花丸。先日の怪しい少女。浦女の生徒が数人。その他だと、何やらワクワクとしながらライブの時を待ち続けている男性二人と、
「まあ、今日は雨だからねー。そう簡単に人は集まらないでしょー」
オウガだけだった。何でこいつは雨の日にこんなにテンションが高いのだろうか。
会場にいるのは僅かに十数人。満員には程遠い。
オウガの言う通り、今日は生憎の雨だ。ビラ配りの時に来てくれると言っていた人達も、これでは来る気が失せてしまうだろう。
陸が呼んでおいた学友も今だに姿を現さない。話をしたときは鼻息を荒げて絶対に行くと息巻いていたのに。
〈やっぱウルティメイトフォースゼロを呼んだ方が良かったんじゃないのか?〉
(その冗談。マジで言ってたのか・・・)
陸はもうすぐ千歌達が現れるステージに視線を移した。
あの暗幕が上がってこの光景を見た時、彼女たちはどんな顔をするだろうか。
それは正直、考えたくない。
〈大丈夫だ。陸〉
(ゼロ・・・?)
〈信じろ。あいつ等を〉
幕の向こうで「Aqours! サンシャイン!」と、三人の掛け声が聞こえ、会場中の意識が暗幕に向いた。
(だよな。あんだけ頑張ったんだもんな)
だから今は信じよう。彼女達の力を、輝きを。
誰か一人の為じゃない。ここにいる皆の為に。
どういう訳か人がほとんどいない内浦の町の中。釣鐘状の頭をしたそいつは、雨に打たれながらぶつぶつと恨みを呟いていた。
「おのれウルトラマンゼロ・・・。俺の出世街道を・・・・・・」
三面怪人ダダ。先日ゼロによって梨子の誘拐計画を失敗に終わらされた宇宙人である。
電柱にもたれ掛かり、腕にはあるものを握っていた。
「あまり目立つ様な真似はしたくないのだが・・・‥こうなってしまっては仕方ない・・・」
ダダはそう言うとコードらしきものを電線につなぎ、電線から奪った電力を手に持ったそれに注ぎ始めた。
「ウルトラマンゼロ・・・・・・、目に物を見せてやる。この、レギオノイドダダカスタムで!」
幕が上がり、それぞれ三色の衣装に身を包んだ三人の少女が証明に照らされる。
そこで見えた彼女たちの表情は、やはり陸が予想していたものと同じだった。
戸惑いを隠せない梨子。不安げに千歌を見る曜。俯いてしまった千歌。
居た堪れなくて、陸も思わず目を逸らす。
ぱちぱちとまばらな拍手が体育館に反響し、寂寥感を余計に煽ぐ。
やっぱり、こんな田舎でスクールアイドルなど、ただの夢物語だったのだろうか。
〈陸。言ったろ〉
(あ?)
〈信じろって・・・・・・、あいつ等を!〉
(何を―――)
「私達は、スクールアイドル、せーのっ!」
ゼロに言われて顔を上げた陸の目に飛び込んだのは、
「「「Aqoursです‼」」」
精一杯に声を出す、千歌達の姿だった。
〈な? 少なくとも千歌はあれくらいでへこたれるタマじゃねぇ。お前もよく知ってるだろ〉
「・・・・・・」
そうだ、何を弱気になっていたんだ。
昨日曜と約束したばかりじゃないか。皆の為に成功させると。
別に会場を満員にすることが、千歌達の言う成功じゃない。
観客が少なくても、応援が弱々しくても。その見てくれて、応援してくれた人の心に輝きを灯す。それが彼女達が憧れ、目指したもの。
だから、これくらいの事で陸がへこたれていてはいけない。
(悪いゼロ。俺としたことが)
〈なに、俺はマネージャーだからな〉
(よく言うぜ)
とにかく今は見守ろう。彼女達の思いの形を。
「私たちはその輝きと!」
「諦めない気持ちと!」
「信じる力に憧れて、スクールアイドルを始めました!」
三人が前に一歩踏み出し、精一杯に、伝えられる思いを全てぶつける千歌達。
「目標は―――――――」
「「「スクールアイドル、μ‘sです!」」」
そして今、
「聞いてください!」
輝きに魅せられた彼女達の、
「「「ダイスキだったらダイジョウブ!」」」
Aqoursの、ファーストライブが始まった。
―――――――ダイスキだったらダイジョウブ
「おぉ・・・・・・」
Aqoursのライブパフォーマンス。それを見た陸の口から、感嘆の声が漏れる。
陸だけではない。会場の全員が、Aqoursの輝きに魅せつけられていた。
「ほぉ・・・。これは予想以上だったね・・・」
オウガにも好感触のようだ。
会場が満員にならなかったら解散。その事が今となっては惜しい。
もう少し、この先もう少し、この姿が見れたらなと。そう思ってしまう程に魅力的だ。
そして千歌のソロパートが終わり、いよいよクライマックス。その輝きも頂点に達するサビに入ろうとしたその時――――、
――――バチンッ!
「うわっ!」
〈何だ? 何が起こった?〉
突然の暗転。流れていた曲も止まり、観客から戸惑いの声が漏れる。
先ほどまでの輝きが嘘の様に、会場を暗闇が閉ざしてしまった。
「よりによってサビ直前だなんて・・・、ついてないね・・・」
陽気なオウガすら落胆するこの現象。何が起こったかは明確だ。
「停電・・・」
オウガの言葉を借りるが、よりによってこのタイミング。神に見放されたとしか言いようがない。
「何? なんなの?」
「ピギィ・・・」
「ルビィちゃん。落ち着くずら・・・。停電しただけずら」
「闇・・・。堕天の漆黒・・・・・・。これぞ失楽園!」
戸惑いは徐々に人々に伝染していき、やがて会場そのものを包み込んだ。一部何を言っているか分からない者もいるが、戸惑いの声は徐々に増えていく。
「おい、今の・・・」
その最中、周囲の動揺には見向きもせず、目を細める二つの影が。
「あの声。間違いねぇな」
「ああ、行くぞ」
突然の停電に気を取られ、周囲の人々はその影が一瞬で消えた事に気が付かなかった。
一方その頃。停電の原因となったダダは。
『エネルギー充填完了・・・。ふふ・・・、見ていろゼロ・・・』
縮小カプセルの中に入ったレギオノイドを満足気にながめ、復習する己の姿を想像して身震いするダダ。
『ハハハッ、レギオノイドダダカスタムよ。出じ―――』
「やっぱテメーか・・・」
『誰だ!』
レギオノイドをカプセルから出して巨大化させようとしたダダを、怒気を含む声音が制止した。
ダダが声のする方を見ると、そこには二人の地球人。
ギラリと光る眼光でダダを睨むチンピラと、髭を蓄えた中年の男。
『貴様ら・・・、俺の邪魔をする気か? 怪我をしたくなかったらさっさと失せろ』
「・・・失せろダァ・・・?」
「笑止。それはこちらのセリフだぞ。ダダ」
『ッ!? 貴様ら何者だ!』
ダダが銃から光弾を放つが、二人はいともたやすくそれを払い除ける。
「ったく・・・、任務は失敗するわ。ライブの邪魔はするわ。挙句の果てに飼い主に噛みつくわ。とことん救いようのない奴だなお前・・・」
「全くだ。こんな奴を人攫いに任命したスライの気が知れん・・・・・・」
『ぐッ・・・言いたい放題言いやがって・・・』
再び銃を構えたダダだが、二人が胸に付けていたブローチを外した瞬間にかしゃりと銃を落としてしまった。
『あ・・・・・・ぁ・・・・・・』
傲然とした態度から一変。信じられないものを見たように体を震わせ、一目散に逃げだそうと踵を返すが、
『待てよ・・・』
『ひ、ヒイィ・・・』
冷たい何かに張り付けられた足は地面から離れず、ただ身が果てるその時を待つだけになってしまった。
目の前には両腕の鋭利な刃に冷気を纏わせたグロッケンと、同じく巨大な両腕のハサミに膨大な熱を籠らせたヴィラニアスが。
その時の二人の目は、仲間だった者に向けるものではない程に冷たいものだったという。
『お楽しみはこれからだぜェ・・・・・・』
『・・・吾輩達から奪った分、お前の体で楽しませてもらおうか・・・・・・』
『あぁ・・・・・・、ああああああああああああああァァァァァァっ‼』
断末魔を上げたダダを轟雷が撃ち、凍てつく刃が貫いた。同時にレギオノイドも壊れ、奪われていた電力が町に戻り始める。
『全く・・・。帰るぞグロッケン。興が削がれた』
『へーへー。ったく、楽しんでたのによー』
絶命したダダの血が雨で流れていく中、二人は闇へと溶け込んでいった。
浦の星女学院の体育館は、より一層その喧騒が増していた。
突如として訪れた暗闇。途切れたライブ。どよめきを生むには十分すぎる。
千歌達のライブの際に向けられていた時のそれより大きくなったどよめきが、ステージ上で俯く千歌達を襲った。
彼女達の輝きは、所詮は闇に埋もれる運命だったのか。
「・・・・・・こんなのって・・・・・・」
喧騒の中、千歌の小さな呟きがやけに強く陸の鼓膜を打つ。
ここまでくると、陸もゼロも諦めるほかなかった。
震える千歌の頬を光る何かが伝ったその時、
その場に舞い戻ったのは、先刻失われた光だった。
「バカチカァ!」
それと同時に、ステージ上の千歌を呼ぶ声が会場全体に響いた。
見てみれば千歌の姉美渡と、その背後には。
「っ・・・・・・」
この体育館に入り切るかも分からない程の、大勢の人々が。
〈こいつぁ・・・、一体・・・〉
「っ・・・・・・、・・・なんだ、そういう事かよ・・・、くっ・・・、ははは・・・」
驚くゼロをよそに、一人突然笑い始める陸。
〈おい・・・、どうした〉
「今にわかる。おい千歌ぁ‼」
戸惑う千歌に、陸は大声で今何をすべきか教えてやる。
「もう一回だ。もう一回歌え!」
「え・・・、でも・・・」
陸に続き、今度は美渡が、
「アンタ開始時間間違えたでしょー!」
そう。全員開始時間を間違えていたのだ。
正確な開始時間を知らないのは、直接ライブの話を聞いた浦の星の生徒。
そして人の話を全く聞いていないオウガのみ。
それ以外は皆ビラを見たり放送を聞いたりして集まってくれた人達。
つまり千歌達が緊張のあまり時間を間違えたせいで、ライブ開始時間そのものが早くなってしまったのだ。笑うしかない。
「やっぱり私・・・、バカチカだ・・・」
千歌が涙を拭った後、会場を再び輝きが包み込んだ。
「「「ダイスキがあればダイジョウブさ――――っ!」」」
曲が止み、最後のポーズを決めた千歌達に、惜しみのない拍手喝采が送られた。大成功だ。理事長にも文句は言わせない。
「良いじゃないか彼女達。君もマネージャー頑張ってね。チャオ」
オウガが人目を盗んで消えていった辺りで、千歌達による最後の言葉、ライブの締めくくりが。
「彼女たちは言いました!」
「スクールアイドルはこれからも広がっていく! どこまでだって行ける! どんな夢だって叶えられると!」
先日千歌から聞いた、μ‘sの言葉。三人は最後にこれが伝えたかったのだ。
感動ムードの漂う会場の中、一人ずかずかと千歌達に歩み寄っていく人物が。
生徒会長、黒澤ダイヤである。
ダイヤはステージ前で堂々と仁王立ちをすると、
「これは今までのスクールアイドルの努力と! 地域の皆様の善意があっての成功ですわ! 勘違いしない様に!」
「分かってます!」
「ッ!?」
傲然と言い放つダイヤに、千歌は真正面から言い返した。
「でも、でもただ見てるだけじゃ始まらないって! うまくは言えないけど!」
こんなセリフ事前に用意していなかった。つまり千歌のアドリブ。千歌が思っていることそのままの言葉。
「今しか無いこの瞬間だから!」
千歌は曜と梨子の手を取り、二人も察したように次の言葉を紡いだ。
「「「輝きたいっ!」」」
ダイヤ「前回思わせぶりな終わらせ方した割には、アニメと大して変わりませんのね。一部で荒事が起こっていたようですが」
俺「いやー、最初は何か事件起こそうかと思ったんすけど、ここはアニメのあの感動シーンを尊重しようかと。グロさんとヴィラさんのは完全にネタっす」
ダイヤ「ネタで殺されたダダが可哀想ですわね・・・。それとわたくしの献身的なアシストはどこに行ったんですの?」
俺「後々回収するんで安心してください。それより次回からルビィ、花丸加入回ですね」
ダイヤ「やけにウキウキしてますが・・・、まさかルビィを危険な目に遭わせるなどとは言いませんわよね・・・?」
俺「えっ・・・、あっ、いや、そんなまさか・・・(視線泳ぎまくり)」
ダイヤ「・・・少しお話がありますわ」
俺「ヒィィィィ・・・・・・」
と、いう訳で、次回からアニメ四話の話を進めていきます。