かなり完成度の高い濃密な映画なのでその味を崩さぬよう頑張ります……!
百五十九話 新たな予感
『レッキングバーストォォォッッ!!』
「『ザナディウム光線ッ!!」』
果てなく続く宇宙空間の中、薄暗い闇を切り裂くように雷を纏った光線が疾走する。
その向かう先には仮面や拘束器具のようなものを身に着けた闇の巨人が一人。そんな奴を取り囲うように舞うのは、正反対の性質を持つ光の巨人達。
『フフフ…………ハァッ!』
『ギンガサンダーボルト!』
音の伝わらない空間の中で、代わりに光が散華する。
五対一という圧倒的に不利な状況にも関わらず、その巨人は不敵に、かつ愉快そうに笑い続けていた。
『ニュージェネレーションズ……だったかな? 如何に世界を救った勇者達といっても、まだまだ青いな』
『その余裕、いつまで続くか見物だな』
また幾つもの光線が伸び、それらを掻い潜るように闇の巨人が舞う。
そんな応酬の繰り返しに終焉が訪れたのは、唐突だった。
『ビクトリウムスラッシュ!』
『ぐおぉ……ッ!』
金色の鏃が命中し、その身体がたまらず吹き飛んだその瞬間、
『オリジウム光線!』
これで終わりだと言わんばかりに伸びた光の筋。
だがそれは炸裂する寸前に発生した赤黒い魔方陣に吸い込まれてゆき、微塵の手応えも生むことのないまま消えることとなる。
『フフフ……お楽しみはこれからだよ』
パチンと、指を鳴らしたような、音ではない何かが鳴る。
瞬間にどこか遠くの時空が歪んだような振動がし、同時に蟠っていた闇も霧散してゆく。
『…!? 奴はどこに…?』
『逃げられたか……』
魔方陣と共に消えた標的の姿に生まれる動揺。
一瞬のうちに静まり返った宇宙空間には、そんな波紋だけが残されていた。
涙の閉校式から数週間が経った。
悲しみは癒え切っていないものの、いつまでも下を向いてはいられない。
そうして新たに踏み出そうとしていた……そんな折だった。
「練習……どこでするの?」
新しい学校に行ってもスクールアイドルを、Aqoursを続けていく。
それが卒業した三人も含め、皆で出した結論。
「どこでって、いつもの……あっ」
そんな新生Aqoursのスタートは、また壁にぶち当たるところから始まるらしい。
これまでのように練習へ励もうとした六人は、ふと思い出したように互いの顔を見合わせた。
「学校、ついこの前閉校したばっかだろ」
「駅前の練習スペースは?」
「あれは、ラブライブが終わるまでっていう約束で……」
これまでずっと練習場所として使ってきた浦の星の屋上も、渡辺家の伝手で借りていたスタジオももう使えない。
学校も練習場所も変わった、六人でのスタート。
改めて、これから新しい場所へと踏み出していくことを実感させられる。
「え、じゃあどうするずら?」
「鞠莉にでも聞いてみる? どこか当てはないかって」
そう提案したのは善子だった。
今考えられる手段で最も現実的なのはそれだろう。下手に悩んで時間を浪費するよりは、彼女に頼ってしまった方が手っ取り早い。
けれど―――、
「自分達で探そう」
納得しかけた空気の中、千歌が一人そう言う。
そんな彼女の瞳は、まだ陸達には見えていないような何かを見据えているようだった。
「なんかね、頼ってたらダメな気がする。この六人でスタートなんだもん。この六人で何とかしなきゃ」
これから新しい場所で活動するのはこの六人。
だからこそ初めから自分達の力で解決しなければならない。千歌はそう語る。
「あと、陸ちゃんもね」
まあ正確には六人+一人か。
今度の学校には陸もいる。力になれることは、これまでよりもずっと増えるだろう。
と、まあそんな訳で早速力になりたいところなのだが、言われてすぐに思い浮かぶほど優秀じゃないのが現実であり。
「閃いた!」
結局、最初の貢献は幼馴染に譲ることとなる。
「新しい学校、行ってみるのはどうかな。私達が春から通う」
「…新しい、学校…」
曜の提案に怖気づいたような顔を見せたのは一人や二人ではなかった。
差異こそあるが、皆どこかしらに不安を抱いている……そんな顔。
「…通う前からそんなんでどうすんだよお前等」
そんな中、一人賛成の意を示すように陸は言葉を綴る。
「どのみち春には通い始めんだ。早いうちから行っておくのに越したことはねーだろ」
未来が楽しみだとは言ったけれど、いざそれを目前にするとやはり恐怖が生まれる。
けど踏み出す以上は逃げる訳にもいかない。そう決めたのも彼女達だ。
「…そうだね」
「フフ……このヨハネの新たな城、我が位に相応しいかこの目で確かめてやろうじゃない」
「さっきまでビクビクしてたのは誰ずらかー」
「うっさいわい!」
幼馴染漫才を皮切りにまた笑いが生まれ、少しだが不安や緊張の糸が解れていくような感覚がした。
―――――大体これが、一時間くらい前の話。
「……は?」
バスから降りた陸達の前に佇んでいた建物を見て腑抜けた声が出る。
呆気にとられているのは陸だけではなく、皆も一様にぽかんとその場に立ち尽くしていた。
「おい……まさかこれが学校とか言わんよな」
あの後皆も賛同し、練習場所の捜索がてら新しい学校である静真高校を見に行くことになったのまでは良かった。
だがどういうことか、指定された場所で出会ったのはこのオンボロ校舎。
辛うじて学校だったのはわかるが、腐りかけ蔦に覆われている木版の壁やひび割れた窓ガラスを見るに使われなくなってから相当時間が経っているのは火を見るよりも明らかである。
「……てか、静真の校舎ここじゃねーだろ」
「ちょっと曜! 間違えたんじゃないの!?」
「えぇぇ……でも、学校から送られてきたメールだよ?」
曜の言う通り、彼女のスマホにはその旨が記載されたメールと添付された地図が映し出されていた。
地図の指し示す場所は確かにここであり、現にこうして辿り着いた以上間違いはないと言える。
『…もっと立派な校舎だったよな、あそこ』
「…少なくともこんな廃屋寸前じゃなかったのは確かだ」
謎ばかりが深まる。
事実バスに乗っていた時点で何かおかしいとは思っていたのだ。こちらの方面に学校があった記憶はないし、何度か行ったことのある静真の校舎からもかなり遠い。
「ああぁぁ――――――ッ!!」
とにかく一度確認を取ろうとしたその時、何かを発見したようにルビィが声を上げる。
「見て!」
指さされた先にあったのは一枚の古びた看板。
そこには確かに静真高等学校の文字が彫られていたが、その下に小さく付け加えられていた二文字に全員の視線とリアクションが集中する。
―――――分校ぉぉぉッ!!??
『―――って、むっちゃん達が言うにはそういうことらしくて……』
「…なるほど」
一旦千歌達と別れた後、浦の星の皆と合流したらしい彼女に電話越しで事情を聞く。
なんでも静真の方で他の学校だった生徒が同じ校舎に通うことに対し否を唱える声があり、しばらく分校で様子を見ることになったそうな。
「村八分かよ……今何時代だと思ってんだ」
『まあ、流石に無茶苦茶だよな……』
あのオンボロ校舎は浦の星の生徒の一時的な受け皿として旧校舎を利用した結果らしい。
元々別の学校だった生徒等が合流することで生じる混乱を防ぎたいのはわかるが、だとしても少々横暴が過ぎる。
『で、お前んとこはどうなるって?』
「まだ知らん……だからとりあえず、講義がてら月に聞きに行くんだよ」
何度か顔を合わせている渡辺月は曜の従姉妹であると共に静真の生徒だ。
静真のことは静真の生徒に聞くのが一番。まして月は生徒会長、これほど適した相手は他にいないだろう。
『ま、統廃合になって廃校になった学校に移っちゃ意味ねーわな』
「さっき連絡したら月もちょっと思うところがあるっぽかったからな。とにかく詳しいことは直接会って聞く……って」
ふと違和感を覚え、月との待ち合わせの場所に向けていた足を止める。
『…どうした?』
「いや……ここ、こんな風だったかなと思って……」
通りの喧騒や行きかう雑踏は普段と何ら変わりはない。
ただ何というのだろうか、この街並みに見覚えがないような、そんな感覚。
『おいおい、その年になって迷子か』
「そういう訳じゃないと思うんだが……」
首を捻りつつ歩みを再開すると、また慣れ親しんだ街並みへと戻る。
あの場所だけ工事でも行ったのだろうかと、それでも拭いきれない違和感の正体を探っていた―――その時だった。
『ッッッッ―――――!!!!』
突如空に開いた暗黒の穴に、その内部に描かれる赤い魔方陣。
そこから海上に落ちた雷と共に現れた巨獣が、咆哮を散らした。
『コッヴだと…何故ここに……!?』
両腕の鎌や胸部の水晶体、そして鎧のように突出した全身の皮膚はまるで戦いそのもののために生まれた生物かのよう。
コッヴと呼ばれた怪獣はその眼光を瞬かせると、人に引きつけられているのか街を目指して上陸せんと侵攻を開始する。
『ベリアル軍の残党……って訳じゃなさそうだが、どうであれ地球には存在しない怪獣だ。恐らく呼び出した奴がいる』
「ベリアルの後釜でも狙ってんのか……?」
『さあな。とにかく、アイツの処理が最優先だ。学校のことも大事なのはわかるが今はこっちに集中してくれ』
「わかってるよ」
悲鳴を上げる人々の間を駆け抜け、建物の陰に隠れてはブレスから取り出したゼロアイを装着。
赤と蒼の閃光が舞い、巨人の姿となってコッヴの前へと立ちはだかる。
『さぁて…、どいつの差し金か知らねーがこっちもこっちで立て込んでてな。ぱっぱと片付けさせて―――』
『ハッピー!』
いざ戦闘へ移らんと身構えた直後、真横から聞こえた緊張感のない声に思わず面食らう。
『皆を苦しめる悪い怪獣さんは、この私が懲らしめちゃいますよー!』
隣にいたのは、淡い橙の体色を持つ巨人。
ゼロに比べると小柄であるが、胸に宿った輝きは確かにウルトラ戦士のものだ。
『お兄ちゃん達がいなくても、この街は私がまも…り……』
しかしこれまでに出会ったウルトラ戦士と比べるとどこか異質というか、言うなれば女の子っぽさを感じるその姿。
そちらも違和感に気付いたのか、ゆっくりとこっちを向いたその双眸と視線が合い―――、
「『『……え?」』』
緊迫していた空気の中に、腑抜けた声が重なった。
冒頭とラストでお察しかもしれませんがゲスト出します
原作を崩さないようにと言ったのをもう忘れたんでしょうかこの作者は
ゲストの紹介はそれぞれ名前が出てからするとして、ここからOver the Rainbow編スタートですね
実はここに繋がる伏線と言うか種的なアレは巻いてたので時間がある方は探してみてください
それでは次回で