ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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近々ちょっとしたご報告が出来るかもしれないと思いつつ今回も劇場版編進めていくぜい


百六十一話 踏み出すために

 

 

「全く、部活動でアイドルの真似事なんて……」

 

「それをこの場に招くなんて何考えてるのあなた、生徒会長でしょう?」

 

「……すみません」

 

 父兄に対し頭を下げる月の傍らで、今すぐにでもぶん殴りに行きたい衝動を必死に堪える。

 何もわかってない奴等がゴタゴタ抜かすな。そんな黒い感情ばかりが蟠る。

 

「…あはは、怒られちゃった」

 

「……悪いな。何から何まで」

 

「りっくんが誤る必要なんてないよ。勿論、曜ちゃん達も」

 

「いや、これに関しちゃ完全にこっちが悪い」

 

 結果から言うと、千歌達のパフォーマンスは失敗に終わった。

 輝きなんて程遠い、今までの彼女達ならあり得なかったような初歩的なミスまで犯す始末……苛立ちはしたが、父兄がああ思うのも何となくわかる。

 

『まあ、アイツ等にとっても初めての体験だろうしな。普段通りにいかないってのも無理はないと言えばそうなんだろうが……』

 

 実際、その父兄達が失敗の一因でもあるのだろうが。

 

 これまでAqoursがパフォーマンスを披露してきた会場にいたのは、いずれも彼女達やスクールアイドルに興味を持つ者達だった。

 けどあの場にはAqoursや浦の星の味方も、ましてスクールアイドルが好きな者すらいなかった。

 

 如何にラブライブで優勝したグループといえども、スクールアイドルをよく知らない者からすればただの異質な集団。先の言葉のように、ただアイドルの真似事をしてふざけているようにしか見えていなかった可能性もある。

 

 そんな考えはその視線を通し千歌達にも伝わり、更なる緊張や恐怖を生み出していたのかもしれない。

 

「……何もしてやれなかった」

 

 ステージに立つ前の六人の姿が鮮明に浮かぶ。

 不安、違和感、喪失感……あの時の彼女達はそんな感情に呑まれているように見えた。

 

 何か、せめて何か一言掛けていられれば何か変わっていた可能性があったのに、その感情を少しでも和らげることが出来たかもしれないのに。無力感と共に、そんな後悔が胸を抉る。

 

「…大丈夫、だよね」

 

「……」

 

 月の声に返すことは出来なかった。

 陸まで不安になんてなっちゃいけないのに。せめて自分だけでも、前向きにその背中を押す……そうあの三人とも約束したのに。

 

 けど、何度そう言い聞かせても現状への疑問が、先の見えない未来への不安ばかりが勝ってしまう。

 

「……とりあえず、今日はもう帰ろっか」

 

 月に連れられる形で、敗走するかのように廊下を進む。

 疎らに残った父兄からの視線は冷たく、痛みすら感じるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…なんだ?」

 

 先に帰らせた六人に合流しようと静真の校舎を出ようとしたその時、何やら校門の辺りに人が集まっていることに気が付く。

 騒がしさもあるが、それは大勢の声が重なっているという訳ではなく、何やら言い合っているように見えた。

 

「ちょっとイサ兄! 流石に学校の前でそれはマズいです! 通報されちゃいますよ!」

 

「いいじゃんかよ別に迷惑かけてる訳じゃないんだし。それにここからすっげぇ強いバイブス波が出てんだよ」

 

 人波を掻き分けて騒ぎの中心まで辿り着くと、予想通り言い合っている男女が二人。

 というよりはむしろ、少女が青年の方を止めようとしている構図だが。

 

「……何やってんすかアサヒさん」

 

「あ! 陸君もイサ兄止めるの手伝ってください!」

 

「おお!? なにこれスゲー、もっとバイブス波強くなってんじゃん!」

 

 その片方に知れた顔を見つけた陸がギャラリーの意を代表して述べると、イサ兄と呼ばれた青年……恐らくアサヒの兄であろう彼が謎の機械片手に陸に詰め寄ってくる。

 そしてその機械の反応が陸に対するものだと理解すると、顔を覗き込んで来ては首を傾げた。

 

「あっれー? おかしいな何で人間からこんな反応が……」

 

 しばらく考えた後に何か心当たりでもあったか次の瞬間―――、

 

「もしかしてウルトラマ――――」

 

「「わぁぁ―――っ!!??」」

 

 大衆の面前でその名を口にしかけた青年の声を月と共に慌てて遮る。

 危なかったと胸を撫で下ろす暇もない。何故この短時間で陸がウルトラマンと断定できたのか、何故それを平然と口に出来たのか。

 

 アサヒの兄……という点から、自ずとその答えは導き出される。

 

「ちょっと、アサヒさんと一緒に来てください。月わりぃ、先帰っててくれ」

 

「あぁ…うん……」

 

 未だ人々の視線が集まる中、半ば引き摺るような形で湊兄妹を連れてその場を離れる陸。

 寸刻前まで抱いていた不安や無力感はどこへやら。次々と目の前に現れてくる問題は悩む暇すら与えてくれないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「…アンタもウルトラマンなんですよね?」

 

 人気のない路地裏で、弾き出した答えを単刀直入に口にする。

 先日コッヴを倒した後、アサヒとの会話の中で彼女の兄二人もウルトラマンだという話を聞いた。

 

 現にアサヒから兄と呼ばれていた以上、二人いる兄の双翼その人に間違いないのだろう。

 

「へえ、結構鋭いじゃん。そうだよ、湊イサミ。よろしくウルトラマンゼロ」

 

「…仙道陸っす。んで、こっちがゼロ」

 

「知ってる奴と名前一緒でややこしいね」

 

「悪かったですね」

 

 イサミが口にした˝リク˝と言う名前だという知り合い。

 少なからず陸の知っている中で名前が同じ人といえば一人しか思い浮かばない。

 

『……思い出した。前にジードから聞いたことがあるな……O-50の兄妹ウルトラマン』

 

「お、知ってるなら話が早いじゃん。その中の˝ウルトラマンブル˝ってのが俺」

 

 どうやら知り合いというのは陸の想像していた朝倉リクだったようで、何でも以前共に戦ったことがあるとか。

 一先ず互いの情報を共有することが出来たのなら聞くことは一つだ。

 

「…それで、イサミさんはもう気付いてるんすか……この世界のこと」

 

「うんまあ……少なくとも俺達の世界じゃないっぽいね」

 

 先程用いていた謎の装置から何となく想像はついていたが、研究者気質であるイサミは既に自身が置かれている状況に気が付いていたらしい。

 

「なんか朝起きたら大学消えてるし知り合いとも連絡つかねーし? それで一旦日本に帰ってきたけど綾香市も地図から消えてるからマジでどうしようかと思ったよ、ホント」

 

『…どうやってここまで辿り着いたんだよお前』

 

「丁度怪獣とウルトラマンがここに出現したってニュースが目に入ってさ。アサヒなのは見てすぐわかったから飛んできたって訳」

 

 実家ごとこっちに来ててよかったよー、とお気楽そうに笑うイサミ。

 ちなみに全然笑い事じゃない今の状況を整理すると、何かしらの要因でイサミ達がこちら側に飛ばされてきた、ということになる。

 

「何とか戻る方法探してるんだけどさ、なかなかね」

 

『……ただ戻るだけならイージスで一っ飛びなんだがな。周辺の建物までこっちに来てるとなるとそうもいかねーしな』

 

「そもそも、どうしてイサミさん達がこっちの世界に飛ばされてきたのか、だよな」

 

 

『それは私から説明しよう』

 

 

「え?」

 

 思考に入り込んでくるエコー掛かった電子音。

 その()()()()()()()()が流れてくるイサミのポケットに自然と目がゆく。

 

『あ、ちょ、早く出してくれ何も見えない』

 

「あーはいはい」

 

 取り出されたイサミのスマホに映し出される人型のシルエット。

 見紛うはずもないその影は、かつて自分達と共に戦ったウルトラマンの姿で―――、

 

「エックス!?」

 

『おま……どうしてここにいる?』

 

 エックス。ウルトラマンエックス。

 以前ダークネスファイブの一角を共に倒したサイバーウルトラマンであり、本来は別宇宙で活動しているはずの彼までもが何故……そんな視線をゼロと共に向ける。

 

『それも含めて説明しよう。とにかく、合流できたようでよかった』

 

「なかなか役に立つでしょ、俺の作った装置」

 

『ああ、大地に話せばXioの装備として採用されるかもしれないぞ』

 

「……話が見えねーんだけど」

 

 ジード以外のウルトラマンとの面識はなかったとの話だったが、既にイサミとエックスは打ち解けているように見える。

 そもそもエックスには大空大地と言うパートナーがいたはず。それがどうして既にウルトラマンであるイサミと共にいるだろうか。

 

『ああすまない。脱線してしまった』

 

 咳払いという相変わらず人間臭い所作で話の腰を戻した後、エックスは自身の宿るスマホにとあるデータを表示する。

 

『実はここ最近、この地球で妙な時空を歪みを観測したんだ』

 

「時空の歪み?」

 

『ああ、恐らくイサミ君達がこの世界に飛ばされてきたのもその影響だと思われる。どうやら特定のエネルギー周波が高い者……つまりウルトラマンだけを呼び寄せている、と言うのが大地の見解だ』

 

 現状それが確認されているのはこの地球とイサミ達の地球だけらしいが、この先さらに広がってゆく可能性も考えられるらしい。

 そうなるとどんな影響が出るかわからない。だからこそ今こうして調査している最中だそうだ。

 

『聞く限りじゃ大地も調査に加わってるらしいが……どうして一緒にいねぇんだ』

 

『元々私と大地は別なものを追っていてな。その過程で今回の異変に気付き、一度君達とコンタクトを取った方がいいと思ったんだ』

 

「で、エックスと合流した俺が君達をこれで探したって訳」

 

 また例の装置が陸に向けられ反応音を鳴らす。

 つまりイサミが校舎前で不審者同然の装備をしていたのはエックスの頼みを受けて陸とゼロを探していたから、ということらしい。

 

「それで、元の世界に戻るにはどうすればいいんでしょうか」

 

『それも含めて今大地達が調べている。なにせ今回の異変、引き起こしたのは私達が追っていた˝奴˝だからな』

 

「大地……()…?」

 

 何気なくエックスが口にしたその言葉を陸は聞き逃さなかった。

 その言葉が正しいのなら、今回の異変に動いているのは大地とエックスだけではない……ということになる。

 

『ああ、そう言えば言ってなかったな。この異変、関わっているのは私と大地だけではない――――――ニュージェネレーションズ全員が、今この地球にいる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明かりも点けぬままにベッドに沈み込む。

 特別何かをした訳ではないというのに、倒れ込んだその瞬間にどっと疲れが湧き上がってくるような感覚がした。

 

「……」

 

 ニュージェネレーションズと言うのは大きな功績を残した若い世代の戦士達を総称する言葉であり、現状ではギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ、ジードがそれに該当する。

 

 そんな戦士達全員が今この地球に降り立ち、ある一人の強大な敵を追っている……エックスはそう言った。

 

「……どうすべきなんだろうな」

 

 あんなことを聞いてしまって以上知らん顔をすることは出来ないが、Aqoursの方の問題にも向き合わなければいけない。

 板挟みにされたのは、どちらもそんな、無視出来ない問題。

 

『…エックス達も強要はしねぇつってたしな。変に使命感に囚われるこたぁねーだろ』

 

「別に使命感とかそういう訳じゃないんだがな……」

 

 ただそれにより自分の大切なものが脅かされるのなら阻止したいだけ。その心持ちはずっと同じだ。

 

 今回の異変はニュージェネレーションズ全員が動いているという安心感もあるが、逆に言えばそうならざるを得ないほどの敵がいる、ということになる。そうなると猶更無視できない。

 

『ま、これに関しちゃ俺は口出ししねーよ。お前の選択を尊重する』

 

「それが一番困る気もするんだがな……」

 

 あまり時間もないというのが余計に決断を焦らせる。そんな焦燥に駆られていると、ふと放り投げていた携帯が音を鳴らした。

 

「……千歌か?」

 

 グループ通話のようで、数名の声が聞こえる。

 その声音が暗い者なのは、やはり昼間のことを引き摺っているからなのだろうか。

 

『…皆、今日ステージに立った時、なんて思った?』

 

 千歌の第一声はそれだった。

 皆思うことはあっただろうけど、それでも誰も口にしようとしなかった。口にしたら、何かが変わってしまう気がして。

 

『……私は、急に不安になった。鞠莉ちゃん達に六人でも続けてって言われた時は、よーしって、気合入ってたのに……あのステージに立った瞬間、気付いちゃったんだ』

 

 それでも千歌は口にした。

 その問題と向き合わない限り前には進めない。彼女にはそれが見えているから。

 

『…もう、鞠莉ちゃんも、果南ちゃんも、ダイヤちゃんもいないんだって』

 

 けど、今出てくるのはそんな不安ばかり。

 

『新しいAqoursってなんだろう……三人がいない、Aqoursって』

 

 向き合わなければいけない。だからこそ皆で話すべきだ。

 そんなところまでは辿り着いたけど、そこからどうすればいいかはわからなかった。そう言う様子だ。

 

『……スクールアイドルって、他の部活に比べて誤解されやすいと思うの』

 

 そんな千歌に返したのは梨子だった。

 直接的に今の悩みに関係してる訳ではないけれど、それでも大事なことだからと。それは陸が先程考えていたことと重なった。

 

 舞台上で楽しそうな笑顔を振りまくスクールアイドルは、それを知らない者からすればふざけているようにも思えるのかもしれない。

 

 でも実際は辛そうだったり不安なところを見せれば見てる人も楽しめなくなる。スクールアイドルは人を楽しませるものだから、絶対にそんなところは見せてはいけない。

 

 そんなステージ上で彼女達が背負っているものも、今日の父兄達のような関心を持たない者には誤解を招くものとなるのだから皮肉なものだろう。

 

『だからこそ、諦めずに伝えていくしかないと思うの。私達だって、真面目に頑張ってきたんだって、新しい学校の部活に負けないくらい努力してきたんだって……今ならまだ、間に合うと思う』

 

『ライブでの失敗は、ライブで取り戻せってこと?』

 

『うん。今度こそちゃんと出来るってことを、反対してる人達にも見て貰おう』

 

 迷いはなかった。

 スクールアイドルに触れて変われた彼女だからこそ、自身をもってそう言えるのだろうか。

 

『私達の答えは、前に進みながらじゃないと見つからないと思う……不安でも、やろうよ、ラブライブ』

 

 これまで通りやってきたことをやるだけ。梨子のその言葉に、どこか頓悟するような感覚がした。

 

 そうだ。陸だって同じ。皆を支えるだとかウルトラマンだとかそれ以前に、ただ前に進んできただけのはずだ。

 

 だったらこれからも、やることは変わらないんじゃないだろうか。

 

「…どっちに集中するべきとかじゃねぇ、どっちもだよな」

 

 だってこれまでもずっとそうしてきたから。少し異質な問題に気弱になっていたけれど、ただそれだけでよかったはずだ。

 

「その敵とやらもぶっ飛ばして新しいAqoursの形も見つける……何も変わりやしねぇじゃんか」

 

 通話の向こうで練習の場所や時間などの段取りが決まっていく一方。

 密かに、静かに、陸もまた一人その覚悟を固めた。

 

 




引き続きウルトラマンR/Bからウルトラマンブル。そしてウルトラマンXからウルトラマンエックスの参戦だルブー(だから語呂)
エックスが言っていた通り劇場版編ではタイガ組を除くニュージェネ全員集合ですので実質ニュージェネクライマックスです()

分岐世界なのをいいことに現在時点ではまだR/B組はニュージェネ入りしてないことにしてますね

それにしても肝心の劇場版の話が進まねぇ進まねぇ……

それでは次回で
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