ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

166 / 173
間が空いてしまいました……
果たして今月中に終われるのか……


百六十五話 求める答え

 ある程度の情報を共有した後、一度先輩方と別れ鞠莉達に指定された場所へと向かう。

 

「トレギア……」

 

『…まさか、アイツの仕業だったとはな』

 

 トレギア。ウルトラマントレギア。

 自ら光の国を抜け出した元科学者であり、今は宇宙に混沌を齎す仮面の悪魔。

 

 以前鞠莉や花丸に手を出し、聞いた話では千歌にも囁き掛けていたという。

 

「何しに戻ってきたんだ……?」

 

『それ含めヒカル達も調べてたらしいがな……そもそも、トレギア自体わかってないことが多すぎる。正直、何を企ててるかなんてわかりやしねぇ』

 

「定期的に洒落にならねぇ問題児排出するの何とかしろよ光の国……」

 

 ベムスターを討伐した直後のゼロとブルをイタリアの地に叩き落したのもトレギアとみて間違いないだろう。それ以前にコッヴやクレッセント、ベムスターと言った最近出現する怪獣も恐らく奴の仕業だ。

 

 複数の世界からウルトラマンを呼び寄せ、それらに怪獣を仕向ける……確かに何が目的なのかが見えてこない。

 

『だからこそ宇宙警備隊も追っちゃいるんだがな。ったく、今回のベリアル絡みで光の国がゴタついてる隙に大それたことしやがって』

 

 トレギアの目的がわからなくとも、奴もろともその目論見をぶっ潰すことに変わりはない。

 それにアイツは陸の大切なものに手を出した……許しておく義理はなかった。

 

『トレギアは心に闇や迷いを抱く奴に選択を持ち掛けて破滅に導くような奴だ。またアイツ等に手を出してこないとも限らねぇぞ』

 

「……させねぇよ。絶対」

 

 壁にぶつかり、新たに歩み出せずにいる現状。確かにトレギアにとっては格好の獲物かもしれない。

 けれどまた同じことは繰り返させない。そう改めて心に決めたその瞬間に、ようやく本日の終着点となる建物が見えた。

 

『こりゃまた豪勢な……』

 

「やっぱすげぇな金持ちって」

 

 既にどっぷりと暗くなった夜空の下にぼんやりと浮かぶ白。

 海外のドラマなどでよく目にする絵に描いたような洋風の別荘が目の前に現れた。

 

「…アイツ等も追い付いたっぽいな」

 

 ベランダと思しき場所でおかしなポーズをとっている中二病が見えた。

 ここまで辿り着いた時は中にいる自分達に声を掛けてくれとの話だったし、別にその相手は善子だっていいだろう。

 

「おい、よし―――」

 

「い゛ッ!?」

 

 その間下まで行き正面口の開錠を求めようとしたその瞬間。

 手摺部分に立ち調子に乗っていた善子が足を滑らせて落下してくるのを視認し―――、

 

「善子ちゃん!?」

 

「あ、陸ちゃんいたんだ」

 

「…ちょっとは心配しやがれお前等……!」

 

 文字通り堕天使となった善子の体重が背中に圧し掛かる反面、久方ぶりにも思えるこのノリにどこか安堵していた。

 次なる驚異の足音が、すぐそこにまで迫っていることも知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? ちゃんと会えた?」

 

「一体何が起こってるんですの?」

 

「まあ、無視できない問題なのは確かですけど………それより今はそっちでしょ。千歌達にはもう?」

 

「話したよ。千歌達も巻き込んじゃったから、ちゃんと考えないとね」

 

 無事鞠莉の知り合いが保有しているという別荘に上がり肩の力を抜いた。なんやかんやずっと動いていてためやっと一息つける。

 けれど神様はまだ陸に過剰労働を強いるようで―――、

 

「やっと見つけマシタ」

 

 一難も去っていないのにまた一難。

 叩きつけるように開かれた戸の向こうから現れたのは、他の誰でもない、小原鞠莉の母その人だった。

 

「ま…ママ!?」

 

「こんなところに隠れているなんて……またハグゥの入れ知恵デスか?」

 

 鞠莉や千歌達の話では特定や尾行をされないように注意してきたという話だったが何故ここがわかったのか。

 その答えを探る間もなく部屋の中へと踏み入ってきた鞠莉の母は、娘を連れ去らんと迫る。

 

「それともそこの婚約者サマと駆落ちか何かデス? あの時の縁談も滅茶苦茶にしておいて今度は何を……」

 

「違うわ! 私が考えたの……ママが、しつこいから」

 

「しつこくしてこなかったから、こうなったのです! 小学校の頃、家から飛び出した時も、学校を救うために浦の星へ戻った時も、パパに言われてぐっとこらえてきました……けど、その結果がこれデス!」

 

「これって……」

 

 反論の余地も与えぬままにまくし立てる。

 その様は果南やダイヤに、色々なものに出会って鞠莉が変わっていくのが好ましくないように見えた。

 

「わからないのデスか? 何一ついいことはなかったではありませんか。学校は廃校になり、鞠莉は海外での卒業資格を貰えなかったのデスよ」

 

「待って! でもスクールアイドルは全うした! 皆と一緒にラブライブは優勝したわ!」

 

「それが?」

 

 自身のやってきたことの意味を主張する鞠莉に対する母の反応は冷徹なものだった。

 

「一体、スクールアイドルとやらをやって何の得があったのです?」

 

 何も残せなかったくせに。そう言わんばかりの鞠莉の母がどこか静真の父兄と重なる。

 

「…くだらない」

 

 その一言が、全てを物語る。

 

 この人も同じなんだ。

 全国大会で優勝したとか、そんな実績を認めない……そもそも意味を持たない。

 

 スクールアイドルというもの自体を、遊びとしか思っていないから。

 

「くだらない……?」

 

 スクールアイドルを通し自分達の輝きを、これまでの歩み全てを肯定できた彼女達だからこそ、その言葉が聞き捨てならないのか。

 そんな異議を唱えようと千歌が一歩前へ乗り出すも、何か言葉を発する前にダイヤに留められる。

 

 皆気持ちは同じ。彼女の目はそう訴えているように見えた。

 

「……こういう人なのデース」

 

 そんなダイヤに賛同するように、わざとらしく肩を竦めてみせる鞠莉。

 

「…だから、私達が鞠莉を外の世界に連れだしたの」

 

「Shut up! とにかく、鞠莉の行動は私が―――」

 

 

 

 

「――――くだらなくなんかない!!」

 

 

 

 

 

 束縛しようと手を引く母親に対し、親友二人に手を取られ彼女は叫ぶ。

 

「スクールアイドルは……くだらなくなんかない!!!」

 

 母が一言でスクールアイドルに対する印象を物語ったように、鞠莉もまたその一言で自身にとってのスクールアイドルが何たるかを訴えた。

 誰よりもあの瞬間を楽しみ、大切に思っていた彼女のその声は、必然と重みを帯びる。

 

「…もし、スクールアイドルが素晴らしいものだって証明することができたら……ママの前で、スクールアイドルが人を感動させられるって証明することができたら、私の自由にさせてくれる?」

 

 自分自身がスクールアイドルに感銘を受け、実際にそれを通してかけがえのないものを得たからこそ、頭ごなしにそれを否定して欲しくないと。

 せめてそれがどういうものなのか知ってから答えを出してほしいと、鞠莉は言う。

 

 奇しくもそれは、講堂でのライブで新生Aqoursが成しえなかったことだった。

 

「……いいでしょう」

 

 少しでもその熱意を感じてくれたのか、はたまたどうせ上手くいかないと達観しているだけなのか。

 それは定かではないが、それでも鞠莉の母がチャンスを与えてくれたのは事実だ。

 

「ただし、ダメだったら私の言うことを聞いてもらいマス!」

 

 去り際に最後の勧告を残して。

 不穏な空気はそのままに、嵐は一先ず過ぎ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、それが何で観光になる訳?」

 

「…まあ、せっかく来たんだしということで……」

 

「元々わたくし達がこちらに来たのも卒業旅行が目的でしたから……」

 

「それにライブする場所も見つけないとだしね」

 

 あの後、鞠莉の母親にスクールアイドルについて理解してもらうにはライブをするのが一番だというのが満場一致での答えだった。

 そのライブを披露するための場所を決める……とかいう話だったが、いつの間にやら普通に観光している次第である。

 

「…どうだ? いい場所あったか?」

 

「うぅ~ん……」

 

「どこも素敵だけどいまいちピンとこないずら~」

 

「ふふ……このヨハネの神格を布教するサバトに相応しい場所なぞ……」

 

「…カツ兄、あの子何言ってんの?」

 

「俺に聞くな。てか失礼だろ」

 

 そしてそのライブの場所を自分達に決めさせて欲しいと訴えたのが一年生組三人。

 今まで同級生に頼ってばかりだったからこのライブの場所は任せてほしい。踏み出すために少しずつでも何をすべきか、彼女達なりに考えて出した答えらしい。

 

「……それで、なんか反応ありました?」

 

 話を聞かれぬようAqours一行から離れ、遠巻きからこちらを覗いていた湊兄弟と小声を交わす。

 

 トレギアの性格上、今の彼女達は標的となる可能性が高い……そう陸がこの二人が情報収集がてら護衛を名乗り出てくれたのだ。

 

「いんや。今のとこ何も」

 

「……そもそも、トレギアの奴がイタリアにいるとは限らないんじゃ」

 

「それは十分あり得るんだがな……でも考えてみてくれ」

 

 未だトレギアの狙いは不明瞭。どこにいるのか、何を狙っているのかすらも明らかとなっていないのにも関わらず現状ウルトラマンは全員ここイタリアに集結している。

 分担して捜索範囲を広げた方がいいのでは……そう憂う陸にカツミがある可能性を示唆する。

 

「今までの怪獣の出現の仕方、まるで俺達をイタリアに導いてるみたいじゃなかったか?」

 

『……お前も感じてたか』

 

 それはベムスター討伐後にゼロも感じていたことだった。恐らくあの直後にゼロとブルと叩き落した攻撃もトレギアによるものだろう。

 

「…でも、ベムスターが出現する前からこっちにも怪獣現れてたじゃんかよ」

 

「それはまだよくわからないけど……多分、陸やあの子達がイタリアに来る動機を強めたかったからじゃないのか? 現にあの子達がこっちに来るって決めた直後にあの怪獣が現れたんだろ?」

 

 確かに行方不明という時点でかなり不安だったところに重ね掛けする形でクレッセントが出現し、更なる不安を煽った。

 カツミの言う通り、あれにより更に陸や千歌達の動機が強まったのは事実だ。

 

「それで彼女達……Aqoursだっけ?がイタリアに来るのに合わせて陸とイサミもこっちに来るよう仕向けたんだろ。ベムスターを使ってな。多分彼女達がこっちに来ないなら俺達が日本まで誘導されていたと思う」

 

「じゃあ、俺達をイタリアに集合させるのがトレギアの目的ってこと?」

 

「でもトレギアの狙いがアイツ等だったら、俺等は邪魔にしかならないんじゃ……」

 

「いや、アイツの場合はそうでもないんだよ」

 

 聞く話によると、湊兄妹のいた地球にもトレギアは現れたことがあるらしい。

 その際奴はカツミの友人の心に付け込み災厄を齎した……その経験からか、彼にはある程度その動機が見えているらしい。

 

「アイツは人の心を弄んで楽しむような奴だ…………敢えてここに俺達を集めたのも、陸や俺達に彼女達が戸井のようになるのを見せつけるためだと思う」

 

 つまりトレギアの目的はAqoursそのものではなく、守るべきものである彼女達が崩れ行く様を見せつけ陸達ウルトラマンに絶望を味合わせること。

 回りくどいようにも思えるが、以前奴が現れた際の所業を考えるとあり得なくはない話だった。

 

「カツ兄、なんだかんだでトレギアの一番の理解者なんじゃない?」

 

「冗談でもやめろ」

 

「それにしても、そんなことして何がしたいんだろうねアイツ」

 

「さあな……どうであろうと、今俺達に出来るのはそうなることを防ぐだけことだろ」

 

 陸は一度トレギアに負けている。直接対決をした訳ではないが、千歌がベリアルに飲み込まれるトリガーを引いたのはトレギアであり、その存在に気が点けなかった陸の完敗だった。

 

 だからこそもう二度と同じことは繰り返さない。そう固く誓う。

 

「……まあそもそも、彼女達の問題が解決すればそれで終わる話なんだけどな」

 

「なあ陸、今あの子等何のことで悩んでんの?」

 

 あの時は状況が状況だったとはいえ一人で抱え込んでしまったのが全ての要因だった。

 少しでもこの人達を頼ることであの繰り返しを防げるなら……そう思った。

 

「…なるほど」

 

「確かに簡単な問題じゃないな」

 

 とはいえダメ元。スクールアイドルというものを知らないこの人達がどの程度理解してくれるかは明瞭ではなかったが、通ずるものがあったのか案外頷いてくれるもので。

 

「…俺達もあったよな、お前達なんか認めなーい、なんて言われたこと」

 

「ああ、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュワルツ?」

 

「シュワルツじゃなくてシュバルツな」

 

 結局全部黒じゃねーかとかいうツッコミはさておき、苦々しい思い出を語るような二人の瞳に千歌達と近い何かが映る。

 

「…あれとはまた違うんだろうけどさ……認めてもらうって、結構大変だよな」

 

「まあ、別に俺達は認めてほしくてウルトラマンやってた訳じゃないし、アイツにも認めてもらう必要はなかったんだけどさ」

 

 それは千歌達も同じだ。彼女達は認めてもらうためにスクールアイドルをやってきた訳じゃない。

 でも、今回はそうもいかない。スクールアイドルを認めない人達に認めてもらわなければいけないんだ。

 

 そのためにまたライブをすると決めたが、今のAqoursではそのために必要な何かが足りないのは明白。

 

 以前のAqoursならいざ知らず、今は六人。これまで中心にいた三人がいなくなったAqoursの形とは何なのか……それをずっと模索している。

 

「……この町の景色、昔からずっと変わってないんだよ。だから˝永遠の都˝だなんて呼ばれてる」

 

 何か力になれれば、そう吐露した陸に、ふと古風な街並みを眺めながらカツミが零す。

 

「でもそれはここにいる人達が永遠に生きてるってことじゃない。代を重ねる度に次の世代の人達に想いを託して、この町の景色と伝統を守ってきたんだ」

 

「お? 何カツ兄イタリアかぶれ?」

 

「こっちでお世話になってる人から聞いたんだよ……とにかく、そんな風に終わりと始まりを繰り返したから、この町はずっと変わらないでいるんだってさ」

 

 カツミのいうことは、直接的にはスクールアイドルに何の関係もないもののように思える。

 でもそれはどこか、今のAqoursが求めているものと重なるような気がした。

 

「……まあ、要するにだ。例え形が変わったりしても、それまでに培った想いはずっとそこに残ってるってことだよ」

 

 スクールアイドルを認めない人達の前で、三人がいない喪失感の中挑んだライブで失敗し、これまで積み上げてきたものがまたゼロに戻ったような気がしていた。

 

 けれど、仮にそうでないとするならば……、

 

「…なんか、トレギアが嫌いそうだねそれ」

 

「だからこそ、だろ」

 

「それを見せつけるためにわざわざ俺達呼び寄せたとか性格悪すぎない?」

 

「そう言う奴だって言ってるだろ……なあ陸、前にトレギアが現れた時、アイツが何したかわかるか?」

 

「…あんま振り返りたくないっすけどね」

 

 卑劣な手段で千歌を追い詰め、鞠莉の精神を壊しかけ、花丸にもその魔の手を伸ばした。

 おまけにスライの計画に加担するような真似まで……、

 

「……!」

 

 瞬間、電流が走る。

 天啓のように舞い降りたそれは、揺ぎない確信を含んだものだった。

 

「…………時空の歪みの原因、わかったかもしれません」

 

 

 




新しいAqoursを探すための舞台として永遠の都の名を冠するイタリアに行ったの凄く好きなのでイタリアで修行してるのをいいことにカツ兄に解説して頂きました
バリバリに自己解釈入れるの楽しいですね

こんなですがイタリア編あと2話続きます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。