ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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何とか(おまけみたいなものとはいえ)最後の戦いまで漕ぎつけました
彼等がトレギアに対し示すものとは……


百七十話 新しい羽ばたき

 

 

『ッ――――!!!』

 

 夜明け前の空に立ち込めた暗雲に無数の目玉が浮かび上がり、その一つ一つから発生する雷撃が九人のウルトラ戦士を襲う。

 そんな様を眺め、まるでコメディでも鑑賞しているかのようにトレギアは高笑いを響かせた。

 

『邪神魔獣グリムド……なるほどな。それがテメェの力の根源かトレギア』

 

『ああそうとも、生命の持つ無意識の海に潜む深淵……私の見つけた答えさ』

 

 本来光の戦士であったトレギアに闇の力を与えたのがこの邪神魔獣グリムド。

 奴を体内に宿すことでウルトラ戦士と相反する力を手に入れ、己の抱いた矛盾を体現するように厄災を振り撒き続けていた。ゼロを介してそんな事実が伝わってくる。

 

『…だが、如何に宇宙創成期の混沌から産まれた邪神と言えども悠久の時の中でその力は弱まりつつある……今のグリムドには˝餌˝が必要なのさ』

 

『……その餌とやらに理亞を選んだということか』

 

『…グリムドは言わば虚無と絶望の化身……失った夢に囚われる彼女は実にいいゴハンだろう?』

 

 だから一時的にグリムドを撥ね退けたところで結末の先延ばしにしかならないと、嘲笑うような態度で表す。

 

『あんな上辺だけの慰めに意味などないさ……グリムドは今も鹿角理亞の心に干渉し続けている。いずれ自ら虚無に身を落とすだろうね』

 

 既に幾つもの宇宙や星でグリムドの餌となり得る者に破滅を齎し、それを守ろうとした光の者に絶望を味合わせてきた。そんな事実を恍惚と語る。

 だがその中で初めて、カツミ達湊兄妹にその魔の手を撥ね退けたと言う。

 

『俺達をこの世界に呼び寄せたのはそのリベンジって訳? ねちっこいね』

 

『なぁに。私はただ君達にもこの素晴らしい絶望の味を知ってもらいたかっただけさ…………まあ、少々お呼びでないゲストまで招待してしまったがね』

 

 トレギアの言動からは、ウルトラマンが正義を語りその力を振るうことに対し並々ならぬ感情を抱いていることが伺える。

 恐らくベリアルの一件を受け、光の国がごたついている現状を狙ったのもそのためだろう。

 

『だがまあ、一応礼を言っておくよニュージェネレーションズ。お前達と言う強大な光の存在に呼応しグリムドは再び目覚めた……今一度それらを原初の虚無へと還すために』

 

 ギンガ達ニュージェネレーションの介入という想定外の事態もあったが、奴はそれすらも己の野望へと組み込んだ。

 全てはその庇護下にあるものの破滅と邪神の復活と言う事実を突きつけ、光の者に絶望と正義への疑念を抱かせるために。

 

『さあ、自らが呼び寄せた厄災にその身を滅ぼし…………絶望を悟れ』

 

 そんなトレギアの思念に共鳴するように、上がったグリムドの咆哮が大気を震わせる。

 途端に発生した衝撃波が四方へと駆け抜け、全身に痺れるような痛みを走らせた。

 

『黙って聞いてりゃ達観した面でゴタゴタ抜かしやがって……目先の状況すら見抜けてない奴がよく言ったもんだぜ』

 

『へぇ……言うじゃないか』

 

 グリムドに続き、トレギアの掌からも発生した雷が迫る。

 その雷槍を片腕の一振りのもとに掻き消したゼロは、不敵に笑った。

 

『ならご教授願おうか。君に見えて、私に見えていないというものを』

 

「……聞こえねぇのかよ。この声が」

 

 インナースペースの中、確かに聞こえてくる声がある。

 

 

――――これよりラブライブ決勝、延長戦を行います!

 

 

 普通なら届きようもないはずの声。

 それでも、聞こえるんだ。その想いに乗って。

 

 

――――それでは、決勝に残った二組を紹介しましょう! まずは浦の星から現れた超新星……初の決勝進出ながら実力はトップクラス! スクールアイドルAqours!!

 

 

 浦の星女学院は無くなったけれど、そこで紡いだ絆は残っている。

 Saint Snowは終わったけれど、共に競い合い高め合ったルビィ達との絆は続いている。

 

 そんな˝これまでに積み上げて来たもの˝が作る延長戦。

 

 

――――そしてもう一組は北の大地が生んだスーパースター! Saint Snow!!

 

 

 いつか交わした約束の続き。叶えられなかった夢を叶えて、次へ向かうためのライブ。

 ラブライブの歴史に刻まれることはないけれど、それでも彼女達の心には永遠に残るだろうから。それがまた、未来へ繋がる想いになるから。

 

 それが皆で見つけた答えだから。

 

『まあ無理に理解しろなんざ言わねぇさ……だが、あれくらいならお前でも見えるだろ?』

 

 真下を指さしたゼロの動きをなぞるようにトレギアが視線を落としたその先。

 Saint Snow……姉妹が紡いだ雪の結晶。その最後の輝きが――――瞬いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Believe again

 

 

 決勝の舞台で披露するはずだった曲、衣装。

 この道を進む中で培ったその想いを、辿り着いた答えを、その全てを光の中で歌う。

 

 旅立つ姉からこれからも進んでゆく妹へ、残し託された雪の結晶は、変わらないその輝きを見せていた。

 

 

 

「……今のこの瞬間は、絶対に消えません」

 

 形こそ違うけれど、友がくれた夢を叶えるためのステージ。

 あの輝かしい舞台とは程遠いはずなのに、それでも満たされている自分がいることに気が付く。

 

「Saint Snowは、私と理亞のこの想いは……ずっと理亞の心に残っている。どんなに変わっても、それは変わらず残ってく」

 

 身体の奥底から沸き上がってくるこの感覚。そして火照る手から伝わってくる姉の暖かさと、その言葉に、ようやく理解する。

 クリスマスの夜に、そしてこのステージで聖良と歌えたのも、これまで積み上げてきたものが今の自分を作っていたから。

 

 形が変わっても、どれだけ時が経っても、それだけはずっと残っていくんだ。

 

「……だから、追いかける必要なんてない」

 

 それが伝えたかったこと。

 Saint Snowとして、スクールアイドルとして最後のパフォーマンスを終え、妹の手を取る姉の胸へとまた飛び込んだ。

 

「姉さま……!」

 

 腕の中で見上げた聖良の頬に、また涙が伝う。

 最後に、二人で作った雪の結晶。

その余韻を抱き留めるように身を寄せ合う姉妹の胸から、また新たな輝きが羽ばたこうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ……? ッッ――――――――!!???』

 

 暗雲が綻ぶ。

 空を覆いつくさんばかりに亜空間を広げ続けていたグリムドは、その遥か真下で瞬いた小さな輝きを前に瓦解してゆく。

 

『馬鹿な……何故……?』

 

『言ったはずだぞトレギア。あまり彼女達の力を侮るなと』

 

 初めて狼狽える様子を見せたトレギアに、七色の光を纏ったエックスの斬撃が叩き込まれる。

 その身に宿すグリムドの異変が奴にも影響しているのか、これまでの余裕や力は見るからに衰え始めていた。

 

『想いは決して消えない。例え形として存在し得なくなろうとも、どれだけ離れようとも、培った絆や思い出はいつまでも心とユナイトし続け、私達を支え続けてくれる!』

 

『そんなものは弱者の縋る幻想に過ぎないとまだ気付かないのか!』

 

 トレギアの叫びを具現化するように青黒い雷撃の群れが押し寄せる。

 奴の根底にある譲れないもの、認めたくないものがそうさせるのか、弱まっているはずの力が繰り出すそれは格段に威力を増していた。

 

『……昔、ある奴が俺に言った。この世で唯一永遠なものは何もない暗黒、誰の中にもある、埋まらない心の穴だと』

 

 抵抗と言わんばかりにグリムドも同調し、より激しさを増してゆく稲妻。

 網のように広がったそれらがゼロ達の身体を打ち付ける中、ただ一人その波を切り抜けたオーブの剣閃がトレギアのプロテクターを掠める。

 

『だが俺はそれを否定した……そしてこう言ったよ。愛こそが永遠だと』

 

『その妄言でどんなに己を誤魔化し続けようと、いずれその虚しさを悟りただ一つ永遠の真理に帰結する……全ての答えは虚無だッ!!』

 

『お前は悲しい奴だな……トレギア』

 

 突き出された黒い腕を身を翻し回避すると、そのまま背後に回り込み振り上げたオーブカリバーが奴の背中を刻む。

 直後に描いた光の輪。そのエネルギーを大剣に収束させ―――解き放つ。

 

『オーブスプリームカリバーッ!!』

 

『グ、オオォォオッッ……!!』

 

 迸った七色の光の束がトレギアを飲み込み、轟音と共に爆ぜた。

 

『確かに愛は時間が過ぎれば終わってしまうのかもしれないが、消えはしない。愛はその形が無くなっても人を支え続けるから、永遠なんだ』

 

『そしてその愛が、命が受け継がれてきた。だから今の俺達がある!』

 

 長く旅を続け、その中で出会いと別れを繰り返したオーブの言葉。

 それを継ぐようにギンガが飛び蹴りの形でトレギアに突貫。

 

『形を保っていつまでも残り続けるから永遠なんじゃない……世代を超えて、形を変えて、未来へと受け継がれていくから永遠なんだ』

 

『貴様が貴様なりの矜持を抱いているならそれでいいだろう。だがこれだけは心に留めておけ……想いの力は、形が無くなった程度で失われるものではない!』

 

 虚無と言う停滞した結論を掲げるトレギアに対し突きつける彼等の見つけた答え。

 その想いが光となり、加勢したビクトリーと重なった。

 

『ギンガ―――、

 

『ビクトリー―――、

 

 

――――――アルティメイタムッッ!!』』

 

 

 

 光の槍と絆の剣。双方より伸びる蒼炎の渦が直撃したトレギアの身体が更に吹き飛ぶ。

 その中で更なる追撃の気配を悟ったか、辛うじて体勢を立て直した奴は雷撃を撒き散らしては反撃を試みんとする。

 

『愛だ絆だ光だ……お前達の賛美するものには反吐が出る! そんなものが正しいなどと誰が決めたァッ!』

 

『正しいかどうかなんて関係ありません! 私達は、私達の大切なものを守るために戦ってるんです!』

 

 だがグリージョの形成する橙の盾がそれらを弾き、刹那に兄二人の光と融合。

 

『俺達家族の絆がどんなに離れてたって繋がってるように』

 

『これまで俺達を支えてくれた人達、この力を遺していった先人達の想いも、今を生きる俺達に受け継がれてる』

 

『ツルちゃん達の想いは、今も私達の中に残り続けているんです!』

 

 それを守るために戦うんだ、その誓いと共に灯ったそれぞれの光。

 

『フレイム―――、

 

『アクア―――、

 

『グリージョ―――、

 

 

――――――ハイブリッドシュートッッッ!!!』』』

 

 

 

 これまでの全てを叩き込むかのように、一つの奔流となった光線が駆け抜けた。

 宿主であるトレギアのダメージと取り込もうと干渉を続けていた理亞の心から逆流してきた光にグリムドの肉体も崩壊を続け、暗雲に閉ざされていた空が顔を覗かせ始める。

 

『だからまやかしだと言っている! 未来に受け継がれるなどと言ったところで、その時を生きる者には何が残る……結局は失ったことを慰めるために出来た都合のいい言い訳に過ぎないと知れッ!』

 

 トレギアの展開したバリアが湊兄妹の合体光線を受け止めるものの、両者の心にある埋まることのない差を表すようにひび割れ続ける。

 奴にも奴なりの信念があり、そのために行動してきたのだってわかっているし、その全てが間違っているだなんて言うつもりはない。

 

『確かに手を離れて行ってしまうものだってあるし、それを取り戻せないのだってわかってる』

 

 だが、トレギアの考えは何も生まないもの。

 歩み続けるその足を止め、自らが変わることも、何かを未来に残すことも放棄した結論だ。

 

『けどその経験はふと思い出した瞬間に僕達の力になってくれる。前に進む力をくれるから……だから今の僕達があるんだ!』

 

 そんな結論の先に存在する未来なんて、きっと何もない。

 愛した者、楽しかった思い出、眩しい輝き……その大切なものを未来へ繋げるためにこの戦いが、この力があるんだ。

 

『レッキングバーストォォォッッ!!』

 

 赤い雷を纏った光線が湊兄妹のものと交わり、完全にバリアを打ち砕いてはトレギアを穿つ。

 徐々にこの厄災が終息に向かっていく中、また重なった少女達の声が聞こえた。

 

「そう言えば、お前は見るの初めてだよな……アイツ等のライブ」

 

 Saint Snowの最後を飾りつけるためだけのライブじゃない。AqoursがAqoursであり続けるためのライブでもあった。

 

 その先に彼女達が見つけ出す答えは、きっとこの戦いの中でウルトラマン達が掲げてきた答えと、同じはずだから。

 

『しかとその目ん玉に焼き付けやがれ……テメェの見下した、人間の姿を。アイツ等の出した答えを』

 

 

 

 

 

 

 

――――Brightest Melody

 

 

 蒼い輝きが羽となって舞い、純白の翼へと還る。

 

 皆で力を合わせ、何かを成し遂げようと走ってきた。

 その何かは叶わなかったけれど、その過程で各々の胸に宿った輝きは、何よりも眩しい宝物となるはずだ。

 

 誰が何と言おうと、彼女達にとってこの瞬間が最も輝いている音色。

 彼女達には、Aqoursにとってはこれこそがずっと心に残っていくもの―――永遠に消えない、輝きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

『…眩しい……』

 

 無意識のうちにそう口にしていた。

 その姿が見えるはずもないのに、その声が届くはずもないのに。確かに見えたその輝きは脳裏から離れようとしない。

 

『ははは……そうか……!』

 

 胸の内で渦巻く混乱の中で、悟る。

 光の者達の主張に屈しようとしているのに、これほど気分がいいのは初めてだった。

 

 

『『見せてやるぜ! 俺達の絆!!』』

 

 

「『ベータスパークソードッッ!!」』

 

 

『三つの光の力……お借りしますッ!』

 

 

『繋ぐぜ……願いッ!』

 

 

『『『纏うは真! 不滅の真理!!!』』』

 

 

 グリムドを、そして自分を打ち滅ぼさんと目の前で眩い光が瞬く。

 けどそんなもの気にもならなかった。今はただ、また一つ真理に近づいたこの高揚感を味わっていたい。

 

『これがお前が否定した力だ……輝きだ。トレギア』

 

「変化して、競い合って、これからも続いていくんだ……そんなアイツ等の未来、絶対に止めさせやしねぇ」

 

 昇る朝日を背に、ゼロの姿がベリアルを打ち倒した際のもの―――ゼロアインへと変わってゆく。

 どこからか奏でられる歌と調和したその輝きは、やはり美しかった。

 

 

『『ウルトラフュージョンシュートッッ!』』

 

 

「『ベータスパークブラスターッッ!!」』

 

 

『トリニティウム光輪ッ!』

 

 

 破滅の足音が聞こえる。

 

 

『クレセントファイナルジードッ!』

 

 

『『『グルービング光線ッッッ!!!』』』

 

 

 忌み嫌った光が、絶大な輝きを伴って迫ってくる。

 

 

『ブライテスト……シンフォニアッッ!』

 

 

 その全てがゼロから奏でられる歌を、光を介して一つになる。

 受け継がれてゆく想いが作る輝きの嵐……そう表現する他ないそれは瞬く間にグリムドを、トレギアの身体すらも包み込んでゆく。

 

『ハハハ……アハハハハハ……!』

 

 邪神が、己の身体が綻んでゆくのがわかった。

 苦しく、屈辱的であるはずのそれも、今なお高鳴り続ける心には敵わない。

 

『アハハハハハハハハッッッッ……!!!!』

 

 最後の瞬間まで高笑いを響かせ、爆散する。

 暗転した視界に最後に映ったものは――――青い羽が紡いだ、輝きだった。

 

 




元々その力が弱まっていたとはいえ、虚無に取り込まれかけていた理亞がまた新たな光を灯したことがグリムドを、そしてトレギアを打ち滅ぼすカギとなりました

トレギアを倒したゼロアイン最後の技は9人のAqours最後の曲からとって˝ブライテストシンフォニア˝。陛下を打ち滅ぼした技と同じものとなります
もともとあの時に技名の出す予定でしたがブラメロの披露を考えた結果最後の最後で開示となりましたね

長く続いたこの連載も残すところ2話です
最後までお付き合いいただければ

それでは次回で
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