ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ヨハネ・・・・・・、堕天‼


十九話 堕天降臨

 

 

 

 闇の中、蝋燭の炎が妖しく揺れる。

 

「感じます。聖霊結界の損壊により、魔力高層が変化していくのが世界の趨勢が、天界議決によって決して行くのが・・・・・・」

 

 その蝋燭を前に、全身を黒い衣装で包み羽を生やした少女が、右目に手をかざしながら何か語っている。

 彼女の眼前。起動しているパソコンの画面には自分の姿が映り、カワエエ、また会いに来ます、楽しかったなどの言葉が流れていく。

 

「かの約束の地に降臨した。堕天使ヨハネの魔眼が、その全てを見通すのです!」

 

 扇風機の風にたなびく羽と衣装。そして長く伸ばした艶のある黒髪。

 

「全てのリトルデーモンに授ける! 堕天の力を!」

 

 彼女は目を見開き、眼前の蝋燭を吹き消した。それと同時にパソコンに表示される、放送終了の文字。

 

「ふふ・・・」

 

 消えた蝋燭の煙が立ちあがる中、彼女は愉快そうに笑った。

 そして―――、

 

「やってしまったぁぁぁぁっ!」

 

 勢いよくカーテンと窓を開き、その年相応の可愛らしい声で叫びを上げた。

 

「何よ! 堕天使って! ヨハネって何? リトルデーモン? サタン? いるわけないでしょう? そんなモーン!」

 

 早朝、マンションのベランダからそんな事を叫んだ彼女は、部屋の中に戻ると立て掛けてあった鏡に自分の姿を映した。

 黒いゴスロリに、背中に生やした模造の黒い羽。頭上には黒い輪っかの様な物がぴょこぴょこと揺れている。

 

「もう! 高校生でしょ津島善子! いい加減卒業するの!」

 

 鏡に映った自分を説得するように、自分自身を戒める様に鏡に向かって語り続ける。

 

「そう! この世はもっとリアル! リアルこそが正義!」

 

 彼女はくるりと鏡に背を向けるとガッツポーズをとった。

 

「リア充に~・・・、私はなる!」

 

 そう宣言した彼女の脳裏に浮かぶのは、ある意味鮮烈なデビューを飾った高校の入学式の記憶。

 

 ―――堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンに・・・・・・、なってみない?

 

 教室の前に出て、変なポーズをとりながらそんな恥ずかしい事をのたまう自分。

 そしてそんな自分に向けられた、ぽかんとしたクラスメイトの表情。

 

「うあぁぁぁぁん! 何であんなこと言ったのよ! 学校いけないじゃなーい‼」

 

 ゴロゴロと床を転げ回り、こつんと蝋燭を立ててあった台に頭をぶつけた後。彼女、津島善子は頭を抱えて悲痛な叫びを上げた。

 そして偶然、通学中善子の住むマンションの前を通りかかっていた陸とゼロは、

 

「・・・・・・ホントに何だよ。ヨハネって・・・」

 

〈さあ? 知らん〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、浦の星女学院スクールアイドル部部室。

 

「うーむ・・・」

 

 パソコンとにらめっこしている千歌が唸った。

 

「今日も上がってない・・・」

 

「昨日が4856位で、今日が4768位」

 

「まー、落ちてはないけど・・・」

 

「一日で一気に上がるって方が無理だろ。下がってないだけ幸せと思え」

 

 部室にいるのはスクールアイドル部部員である五人と、もはや普通に浦女に入れるようになった陸。そろそろ鞠莉が何かを仕掛けてきそうで怖い。

 現在この六人で、今Aqoursが全国のスクールアイドルの中でどのくらいの順位にいるのか調べていたところである。

 全国のスクールアイドルがどの程度いるかは知らないが、4768位となると、まだまだ下の方だろう。

 

「ライブの歌は評判いいんですけど・・・・・・」

 

「それに新加入の二人も可愛いって」

 

「そうなんですかっ!?」

 

「特に、花丸ちゃんの人気が凄いんだよね」

 

「花丸ちゃん応援してます・・・・・・、花丸ちゃんの歌っている所が早くみたいです」

 

「ね? ね? 大人気でしょ?」

 

 

 陸がその中の一文を読み上げると、何故か千歌が胸を張る。そんな中花丸がフラフラ~とパソコンの前に移動してきて、

 

「これが・・・・・・、パソコン・・・?」

 

「そこっ!?」

 

 曜が立ちあがってツッコむ。

 

「もしかして・・・、これが知識の海に繋がっているという・・・・・・、インターネット~?」

 

「まあ、そうだな。・・・‥知識の海に繋がっているかは置いておいて・・・」

 

「おぉぉ~~・・・」

 

 キラキラと目を輝かせ、目の前のパソコンをまじまじと見つめる花丸。

 そんな彼女を見た千歌が、ルビィに耳打ちをする。

 

「花丸ちゃん。パソコン使った事無いの・・・?」

 

「実は実家が古いお寺で、電化製品がほとんどないらしくて‥‥」

 

「そうなんだ」

 

「この前沼津行った時も・・・・・・」

 

 ルビィの話曰く、花丸は自動センサーの蛇口や、ハンドドライヤーを見たり使っただけで大興奮していたそうな。しかもハンドドライヤーに至ってはそれで髪を乾かそうとしていたらしい。よもやここまで文明に置いて行かれた女子高生がいようとは。

 

「よし、今日からクニキダ原人って呼ぶか」

 

「流石に失礼すぎるでしょ・・・・・・」

 

「さ、触ってもいいですか?」

 

 陸の失礼な発言など微塵も聞いていなかったらしい花丸が、興奮気味に千歌にパソコンを触る許可を求めた。

 

「もちろん!」

 

「わあぁぁ~~‥‥」

 

 千歌が快く承諾すると、花丸はパソコンに手を伸ばしていった。

 

「・・・ん?」

 

 やがて花丸の目に留まったのは、キーボード右上にある光るボタン。

 

「ずらっ」

 

 花丸がそのボタンを押すと、パソコンの画面がブラックアウトした。

 

「何押したのっ!? いきなり・・・?」

 

「え・・・、あ、えへ・・・? 一つだけ、光るボタンがあるなーって・・・」

 

 花丸が言い終わる前に、風の様な速度でパソコンの前に移動した曜と梨子。

 

「大丈夫!?」

 

「衣装のデータ、保存してたかな~・・・?」

 

 慌てだす二人を見て、花丸が泣きそうな顔で周りに意見を求めた。

 

「ま、まる何かいけないことしました・・・・・・?」

 

「アハハ・・・、大丈夫大丈夫・・・・・・」

 

「ううぅぅ・・・・・・」

 

 苦笑いをしながら慰める千歌を見て、花丸は余計に泣きそうな顔になった。

 ちなみに衣装のデータは何とか無事だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉー・・・。こんなに弦法法師、空海の情報が?」

 

「うん。ここで画面切り替わるからね」

 

「未来ずらー・・・」

 

 屋上。

 練習しに来たはずなのに、何故か曜が花丸にパソコンの使い方をレクチャーしている。

 

「もうっ! これから練習なのに」

 

「少しぐらいいいんじゃない?」

 

「それよりランキング何とかしなきゃだよねー・・・」

 

「毎年スクールアイドル、増えてますからね」

 

「そうなのか?」

 

「はい。年を重ねるにつれて人気も増してますから・・・」

 

 ただでさえ多いのにこれ以上増えるとなると、ますますAqoursが人気になれる可能性が薄くなるだろう。千歌の言葉を借りると、前途多難すぎる。

 

「しかもこんな何もない場所の地味&地味&地味! ・・・なスクールアイドルだし」

 

「全内浦民に謝れこのヤロー」

 

「やっぱり目立たなきゃ駄目なの?」

 

「人気は大事だよ」

 

「何か・・・、ないかなぁ・・・」

 

「そうね・・・、名前をもっと奇抜なやつに変えるとか?」

 

「奇抜って・・・‥、スリー・・・・・・、マーメイド?」

 

「っ!」

 

「あ、今ならファイブか」

 

「それは忘れてって言ったでしょ~~」

 

〈ファイブマーメイド・・・・・・。こんな感じか?〉

 

 梨子が千歌の胸倉に掴みかかっている中、ゼロがファイブマーメイドのイメージを陸に見せてくる。

 人魚の格好をしたAqours五人が並んでいて、千歌、曜、梨子、ルビィの四人がそれぞれポージングを披露する中、花丸は一人だけパソコンを弄っていた。

 

「ファイブ、マーメイド・・・・・・」

 

 ゼロの想像のせいで陸は完全に引き気味だが、ルビィはお気に召したらしい。

 

「何で蒸し返すのよ~・・・」

 

「って、その足じゃ踊れない!」

 

「じゃあ、皆の応援があれば足が生えるとか?」

 

「でも代わりに・・・、声が無くなるという~~~‥‥」

 

「ダメじゃねぇか」

 

「だからその話は忘れてって言ってるでしょ~~~・・・」

 

「悲しい話だよねー。人魚姫」

 

「・・・ん?」

 

 五人で梨子の黒歴史を蒸し返す中、ずっと会話に参加せずに一人でパソコンを弄っていた花丸が何かに気付いたように視線を映した。

 陸もそれに気が付き花丸が向いた方を見るとそこには、身を隠してこちらの様子をうかがっている、最近どこかで見たような少女の姿が。

 

〈っ・・・、あいつ・・・〉

 

(ゼロ。知ってるのか?)

 

〈お前も見ただろ。ビラ配りの時に怪しいカッコで梨子からビラをふんだくって行った奴だよ〉

 

 ゼロに言われて陸はその時の光景を思い浮かべた。確かにどことなく似ているが、すぐにイコールで結べるかと言われればそうではない。

 なにせ雰囲気が違い過ぎるのだ。ビラ配りの時の少女は怪しさマックスの不審者だったが、あの少女はそんな雰囲気纏ってはいない。むしろ華やかさすらあった。

 赤い瞳に白い肌。長く伸ばした艶のある黒髪を向かって左側の側頭部をお団子にまとめている。一言で言うと美少女。

 

「善子ちゃん・・・?」

 

「ずら丸っ!?」

 

 花丸に見つかると、その子は咄嗟に逃げて行った。

 花丸はそれを見るとパソコンを弄るのを辞めて陸の手を取った。

 

「仙道先輩。ちょっと付き合って欲しいずら」

 

「え? ちょ、おい・・・」

 

〈ついてけ。俺も気になる〉

 

 千歌達が不思議そうにこちらを見る中、陸は花丸に手を引かれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり屋上から堕天してしまった‥‥・・・」

 

 廊下に立て付けられた戸棚の中で、善子は膝を組んで隠れていた。

 ちょっと学校に行く練習をしてみようと思い、放課後の屋上ならば誰もいないだろうといざ行ってみたら人がいた上に、幼馴染の花丸。あと何故か男がいた。

 

(ずら丸はまだ分かるとして・・・、何で男がここにいるのよ・・・・・・)

 

 もしかして自分が不登校をやっている間に共学に――――、

 

「学校来たずらか」

 

「ひょぇぇぇぇっ!」

 

 いきなり戸棚の戸を開けられ、馴染みのある顔が中を覗いてきた。その隣には件の男もいる。

 

「ききき来たって言うか、たまたま近くを通りかかったから寄ってみたって言うか・・・」

 

 善子は勢いよく戸棚から飛び出ると、そのままバランスを崩して転んだ。

 

「そっ・‥、それより! クラスの皆・・・・・・、何て言ってる!?」

 

「ずら?」

 

 凄い剣幕で詰め寄る善子に花丸がたじろぐ。

 

「私の事よ! 変な子だねーとか、ヨハネって何? とか、リトルデーモンだって、ぷぷっ、とかぁ!」

 

「はぁ・・・」

 

(ヨハネって・・・、この娘もしかして今朝の・・・)

 

〈声質も一致するし、間違いないだろうな〉

 

 花丸の反応を見た善子は頭を抱え出した。

 

「そのリアクション! やっぱり噂になってるのね! そうよねぇ‥・・・、あんな変なこと言ったんだもん。終わった! ラグナロクよ!」

 

 そして再び戸棚の中へと帰っていく。

 

「まさに、デッドオアアライブ!」

 

「それ、生きるか死ぬかって意味だと思うずら」

 

 善子の入った戸棚に寄りかかり、花丸が優しく語り掛ける。

 

「誰も気にしてないよ」

 

「でしょ~・・・、って、え?」

 

「それより、皆どうして来ないんだろう、とか、悪いことしちゃったかなーって心配してるずら」

 

「本当・・・?」

 

「うん」

 

「本当ね? 天界堕天条令に誓って嘘じゃないわね?」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 完全に蚊帳の外な陸。

 

〈天界堕天条令ってなんだよ〉

 

(知る訳ねぇだろ)

 

 天界堕天条令とやらが何かは知らないが、陸は一つだけ確信付いて言えることがあった。

 この善子とか言う少女。中二病を患っている。

 花丸の話だと入学式の自己紹介での失敗が原因だと言っていたが、恐らくそのヨハネとか言うキャラで登場してしまったのだろう。

 善子には悪いが痛い。高校生にもなって痛すぎる。

 

「行ける! まだやり直せる! 今から普通の生徒でいければ!」

 

 陸が失礼な事を考えているとは露知らず、花丸の返事を聞いた善子は勢いよく戸棚から出てきてガッツポーズをした。

 

「ずら丸っ!」

 

「な、なんずら・・・?」

 

 驚いて尻餅を付く花丸に善子がずいっと顔を近づけた。

 

「ヨハネたっての頼みがあるの」

 

 多分普通の生徒に戻る為の手伝いをしてほしいとかそんな感じだろうが、自分で自分の事ヨハネとか言ってる時点でアウトな気がする。

 まあ、それは置いといて、だ。

 

(俺、来た意味あったか・・・?)

 

〈知らね〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

〈何で俺がこんな事を・・・・・・〉

 

 文句を垂れるゼロが憑依している身体は、陸の身体ではなかった。

 登校中の女子高生の視線を集める、清楚でおとなしそうな少女。胸の黄色いリボンと長い黒髪を揺らし、悠々と歩くその姿は、昨日堕天使がどうのこうのとか言っていた少女と同一人物だとは思えない。

 そう、津島善子である。

 どうしてゼロが善子に憑依しているかの経緯は、昨日に遡る。

 昨日善子は、花丸に気が緩んだ時にどうしても堕天使が顔を出すから、監視をしてほしいと頼んでいた。

 しかし高校生にもなって中二病を引きずっている奴が監視程度でそれを克服できると陸は思わなかったらしく、危なくなったらお前が体を支配して止めろ。と言われたのだ。

 何というか、人道的にセーフなのだろうかこの方法。

 

〈つかコイツえらく雰囲気変わったな。天界堕天条令とか言ってた奴はどこ行った・・・〉

 

 周りの生徒は不登校だった善子が登校している事か、はたまた入学式の日と全く違うその雰囲気にか、まあどちらにしろ注目を浴びている。

 

(ふふ・・・。見てる見てる・・・。花丸の言った通り、皆前の事は覚えてないようね)

 

〈いや・・・、そんな訳ないだろ・・・・・・〉

 

 ちなみに善子の考えている事はゼロに筒抜けである。

 そう思った善子は、背後で善子を見ていた三人の少女の方を向いた。

 

「おはよう」

 

「「「お、おはよう・・・・・・」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして教室。

 不登校明けの善子の周りには、当然人だかりが出来ていた。

 

「雰囲気変わってたから、びっくりしちゃった」

 

「皆で話してたんだよ。どうして休んでるんだろうって」

 

 皆一様に、善子の変わりようや不登校の理由などへの疑問を口にしている。

 

「ふふ・・・、ゴメンね。でも今日からちゃんと来るから。よろしく」

 

〈キャラ変わりすぎだろコイツ・・・。あとちょっとあざといな・・・〉

 

 本当に昨日の痛いキャラはどこに行ったのやら。

 

「こちらこそー。津島さんって・・・、名前、何だっけ・・・」

 

「えっ・・・?」

 

「酷いなー、あれだよ。あれー・・・・・・」

 

「確か・・・・・・、よ・・・、ヨハ・・・・・・」

 

「っ!」

 

 クラスメイトが件の名前を言いかけた瞬間に善子が勢いよく立ち上がった。

 

「善子! 私は、津島善子だよ」

 

 善子が名前を教えると、そうだよねと納得してくれた。それを見て善子も安心したように笑う。

 

〈この分なら大丈夫なんじゃねーの?〉

 

 どうやら自分の出る幕はなさそうだ。ゼロがそう思った時だった。

 

「津島さんって、趣味とか無いの?」

 

「しゅ・・・、趣味?」

 

 善子の周りに集まっていた少女の一人が、そんな質問を口にしたのは。

 まあ、こういう時の質問としては定番中の定番なのだろうが、今の善子にとっては埋め込まれた地雷を爆発させかねない質問だ。

 

〈耐えろ津島善子・・・。ここであれを出したら全てが終わるぞ〉

 

 ゼロとしてはあまり体を支配して善子を止める様な事はしたくなかった。善子が自分の意志で克服しなければ、これは解決しない問題だと思ったからだ。

 そんなゼロの思いが通じたのか。

 

「と・・・。特に何も・・・」

 

善子は耐えた。と、思われた。

 この直後だったのだ、善子の脳裏にとある考えが浮かんだのは。

 

(いやこれは・・・、クラスに溶け込むチャンス? ここで上手く好感度を上げて・・・)

 

〈え、ちょ、お前・・・〉

 

「う・・・、占いをちょっと・・・」

 

 占いと言う、実にこの年の女子が引き付けられる趣味。

 当然浦の星女学院と言う田舎の高校もそれは例外ではない訳で。

 

「え? ほんと? 私を占ってくれる?」

 

「私も私も」

 

 善子の周りで生まれた喧騒がどんどん大きくなっていく。

 それを受けて善子は調子に乗ったのか、

 

「いいよ。あ・・・、えっと、今、占ってあげるね」

 

 善子を囲っていた女子からやったぁと歓声が上がり、近くで見ていた花丸が「もうダメだこいつ」的な視線を向けた。

 そして善子がバッグを開け、ゼロの目に飛び込んだのは―――、

 大量の、何というかそれっぽいグッズだった。

 

〈お前‥・・・、流石にこれはマズいだろ!〉

 

 やむなくゼロが善子の身体から支配権を奪い取る。

 

〈っ!?〉

 

 だが善子の動きを止めることが出来たのは一瞬だけだった。

 善子の胸が薄く紫に光り出したその瞬間、強烈な浮遊感がゼロを襲い、支配権が善子に戻る。

 

〈まさかっ・・・〉

 

 次の瞬間。ゼロの魂は善子の身体から切り離されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どーして止めてくれなかったのよぉ‼ せっかくうまく行ってたのに~~‼」

 

「まさかあんなもの持ってきてるとは思わなかったずら・・・・・・」

 

 放課後。

 何故かスクールアイドル部の部室に来た善子が、ど真ん中に設置された机の下で蹲っている。

 花丸から聞いた話だと、クラスメイトに占いをしてくれと頼まれ、勢いのままに堕天使キャラを開放してしまったらしい。

 それを横目に見ていた陸が、頭の中で役に立たないウルトラマンに気持ちジト目を向ける。

 

(おい。どうしてこうなった)

 

〈いや・・・、その・・・、スマン・・・〉

 

 確か一時間目が始まった直後だったろうか、ゼロが陸の元に戻ってきたのは。

 やけに疲弊した様子だったので一応何があったか聞いてみたところ、何と身体から追い出されたと言うのだ。

 何でも善子の胸が光を帯びて、その瞬間に身体から切り離されたとか。

 

(つーか・・・、それって・・・・・・)

 

〈ああ、多分だがリトルスターだ〉

 

(またかよ。最近そればっかだな)

 

 ルビィがリトルスターを発症して、まだ一週間も経っていない言うのに。

 

〈つっても俺が感じたのは発現の兆し。まだ完全に発現したわけじゃねぇ〉

 

(つーこた、まだ連中にゃ津島のリトルスターはバレてないって事か?)

 

〈多分、な。あの程度じゃ感知できないだろ〉

 

 という事は、まだそこまで警戒しないでいいという事だろう。

 ひとまず安心した陸は、善子を中心に行われている会話に聞き耳を立てる事にした。

 

「・・・・・・分かってるの。自分が堕天使のはずないって。そもそも、そんなものいないんだし」

 

 やっと机の下から出てきた善子が、いきなり堕天使を否定していた。

 

「だったら、どうしてあんなもの学校に持ってきたの?」

 

 机に広げられた数々の堕天使グッズを目に質問をする梨子に、善子は少しぐぐもりながら答えた。

 

「それは、まあ、ヨハネのアイデンティティみたいなもので・・・。あれが無かったら、私が私でいられないって言うか・・・はっ!」

 

「何か・・・、心が複雑な状態にあると言う事は、よく分かった気がする・・・」

 

「ですね。実際今でもネットで占いやってますし・・・・・・」

 

 そう言ってルビィがパソコンで開いたサイトには、堕天使っぽいコスプレをした善子がそれっぽいポーズをとって映っていた。

 

『また、ヨハネと堕天しましょ‥‥‥‥』

 

「わぁっ! 辞めて!」

 

 それを見た千歌を除く四人がジト目を向け、善子が慌ててパソコンを閉じる。

 

「とにかく私は普通の高校生になりたいの! 何とかしてぇ~~~」

 

 涙目で懇願する善子をよそに、千歌がぽつりと呟いた。

 

「可愛い・・・・・・」

 

〈「「「「「「へ・・・?」」」」」」〉

 

 合計六人+ゼロの、豪華な「へ?」の後。

 

「これだ! これだよ!」

 

 何を思ったのか、先程のサイトを再び開いてその場の全員に見せつける。

 

「津島善子ちゃん! いや、堕天使ヨハネちゃん! スクールアイドル、やりませんか?」

 

 机に身を乗り出し、善子に顔を近づけてそんな事を言う千歌に、善子は目を細めて、

 

「何・・・?」

 

 

 




善子「ようやくちゃんと登場できた・・・」

俺「お疲れ。怪しい人」

善子「それよ! あの時の私の表現悪意しかなかったじゃない!」

俺「文句なら公式に言え。別に間違ったことは書いてない。まあ、活躍の機会は設けるから安心しなさい」

善子「今までの流れから不安しかないんだけど・・・・・・」





当然のことながら何かやらかすぜ。
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