ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ヤバイ。
ゼロビヨンド復活のシナリオが全く浮かばない・・・・・・。


二十話 ヨハネであるワケ

 

 

 後日。十千万。

 千歌が堕天使アイドルをやってみるとか訳の分からない事を言い出し、今日はその衣装合わせらしい。

 障子一枚隔てたその先は美少女六人の着替え中と言うエデンの園があるのだが、男の陸が入った瞬間エデンからヘルに変わるので仕方なく廊下で待機中である。

 

(ところで、津島のリトルスターってどんな能力なんだ?)

 

 先日のゼロの話によれば、リトルスターにも個性と言うかそれぞれ違いがあるらしい。

 実際梨子はサイコキネシス、ルビィは発火能力と全く異なるものだった。

 善子のリトルスターの能力によって陸達の対策も変わるので、一応知っておいた方がいいだろう。

 

〈残念ながら現時点じゃ判断できない。何の能力なのかは直接この目で見ないとな〉

 

(でもそれじゃ敵さんにバレるじゃねーか)

 

 能力を知るためにリトルスターを発動させて、それで善子のリトルスターが連中にバレたら本末転倒だ。

 

〈ああ、だからこそ今回は対策が難しい。まあ、あまり人と接触させない方がいい事に変わりはないがな〉

 

(ちなみにお前が追い出された時はどんな感じだったんだ?)

 

〈堕天使キャラを開放した時だな。リトルスターは宿主の感情に呼応して発動するから、津島善子の場合は堕天使に関係する能力なのかもな〉

 

(何だよその能力・・・・・・)

 

 まず堕天使がどんなものなのか分からないのに、それに関連した能力なんか分かる訳がない。

 また苦労させられそうな気がして陸がため息をついた時、閉じられていた襖が開いた。

 

「じゃじゃーん!」

 

 元気に飛び出してきた千歌が着ていたのは、配信動画で善子が来ていたようなゴスロリだった。

 千歌だけじゃない。Aqours全員が黒を基調としたゴスロリに身を包んでいる。

 

「この前より短い・・・・・・。これでダンスしたら流石に見えるわ」

 

「だいじょぶー!」

 

「そういう事しないの!」

 

 何の恥じらいもなくスカートを捲り上げて下に履いてあるジャージを披露する千歌。それを見た梨子が慌ててスカートを抑える。確かに女子として如何なるものかと思う。

 

「はぁ・・・、いいのかなぁ・・・、ホントに・・・」

 

「調べてみたら堕天使アイドルっていなくて、結構インパクトあると思うんだよね」

 

「まず堕天使アイドルってなんだよ」

 

 それをアイドルとしてカテゴライズしていいものか。

 

「確かに昨日までこうだったのが・・・・・・」

 

 曜はファーストライブの衣装と今皆が着ている衣装を見比べ、

 

「こう変わる」

 

「な、何か恥ずかしい・・・」

 

「落ち着かないずら・・・」

 

 皆が恥ずかしがるのも無理はない。まずゴスロリを着慣れていない事と、普段よりも丈の短いスカート。もうちょっとで見えそうだ。

 

「ねえ? 本当に大丈夫なの? こんな衣装で歌って」

 

 特に梨子は抵抗が大きいようだ。

 

「かわいいねー!」

 

「そういう問題じゃない」

 

「そうよ。本当にいいの?」

 

 真剣な表情で千歌に問う善子だが、如何せん格好が格好なのでふざけているようにしか見えない。

 

「これでいいんだよ! ステージ上で堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!」

 

「堕天使の・・・魅力・・・・・・。はっ! ダメダメ! そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!」

 

「大丈夫だよ! きっと!」

 

 千歌の一言で妄想の世界に突入した善子が、膝を抱えながら不気味に笑う。どんな想像をしているかは想像に難くないのが悲しい。

 

「くっくっ・・・・・・、大人気・・・」

 

「えっと・・・、協力してくれるみたいです」

 

「チョロ過ぎるだろ。堕天使キャラを卒業したいとか言ってた奴どこ行った」

 

〈全くだ〉

 

「しょうがないわね・・・・・・」

 

 そう言って梨子は部屋を出て行った。

 その数秒後。

 

「いいいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ‼」

 

「コラ! しいたけ!」

 

 唐突に耳をつんざく悲鳴が響き、全員で廊下に視線を移すと天敵のしいたけに襲われる梨子の姿があった。

 毎度毎度逃げる梨子も大概だが、なぜしいたけも梨子を追いかけるのか。

 

「桜内?」

 

「辞めて! 来ないでぇぇぇぇぇ!」

 

「大丈夫? しいたけはおとなし―――ゔぁっ?」

 

『シェヤァ!』

 

 本来横にスライドするはずの襖が前に倒れてきた。瞬時にゼロに人格を入れ替えた陸は無事だが、千歌はその下敷きになる。

 

「梨子ちゃん!?」

 

「とおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

 襖と千歌を踏み倒した梨子は、驚異のジャンプ力を披露して隣にある自宅ベランダに飛び移った。

 

「「「「「〈おお・・・、飛んだ・・・」」」」」〉

 

「飛翔する・・・・・・堕天使・・・」

 

 皆が思い思いの感想を零した後、梨子は尻から着地した。

 痛みで涙目になる梨子に、全員称賛の拍手を送る。

 

「っ・・・・・・、ちょっ―――」

 

「お・・・、お帰り・・・」

 

 伝説の目撃者はもう一人、梨子の部屋を掃除していた梨子の母親も、その光景を目の当たりにすることになったのだった。

 

「たっ・・・・・・、ただいま~・・・」

 

 梨子はその場にへたり込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁい、伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ! ・・・・・・みんなで一緒に、堕天しない?』

 

『『『『『しない?』』』』』

 

 そこで動画は終わった。

 

「何コレ・・・・・・」

 

〈・・・・・・うむ・・・〉

 

 翌日の放課後。

 帰宅途中にAqoursの新PVが公開されていたので見てみたところ、全員が昨日のゴスロリ衣装で善子直伝の堕天ポーズをとってセリフを決めていた。

 

「何か方向性見失ってね?」

 

〈努力は評価してやりたいが・・・・・・〉

 

 努力が明後日の方向に全力過ぎて評価のしようがない。とりあえず梨子の心から輝きが失われてそうなので後で励ましてあげよう。

 一応これを見た他の人々はどう思っているのだろうと、隣のコメント欄に視線を移す。

 

「すげぇな。効果覿面じゃねーか・・・・・・」

 

 コメント欄を見た陸が驚きと感嘆の声を漏らす。

 コメントは多いし、何故か順位も900位台にまで上がっている。偶然ここまで上がるなんてこと無いだろうし、きっとこの動画の影響だろう。

 

〈・・・・・・陸。俺はだんだん人間と言うものが分からなくなってきたぞ・・・〉

 

「安心しろ。俺もだ」

 

 これの何がここまで受けているのか、陸とゼロには皆目見当もつかなかった。

しかしこの順位の鰻登り、そして爆発的なコメント量。確かに凄いと言えば凄いのだが・・・・・・。

 

〈コメント・・・、ルビィに関するもんばっかじゃねーか〉

 

 そう。コメントの大半をルビィに対するものが占めていたのである。

 「ルビィちゃんと一緒に堕天する」「ルビィちゃん最高!」「ルビィちゃんのミニスカートがとてもいいです」など、基本ルビィコメばかりだ。

 

「変なファンがつかないといいけど・・・・・・」

 

 頼むから宇宙人以外で戦う敵を増やさないでほしい。

 

「おお・・・。思い切ったことしたね彼女達・・・・・・」

 

「ホントに・・・、って、うわっ!」

 

 突然隣に現れた人影に陸が驚き、危うく自転車から落ちかける。

 音もなく陸の隣に現れたのは、ビラ配りやファーストライブ。Aqoursに関する場所にはどこにでも現れる変態、謎の宇宙人オウガだった。

 

「急に出てくるな・・・・・・。心臓に悪い・・・」

 

「あはは。ごめんよ陸君。ついつい脅かしたくなってね。それより堕天使だなんて・・・。ホントに面白いね千歌ちゃんは」

 

 オウガは陸からスマホをふんだくると、再び動画の再生を始めた。

 

『ヨハネ様のリトルデーモン四号・・・。く、黒澤ルビィです・・・。一番小さい悪魔。かわいがってね』

 

 やがてルビィの自己紹介、陸がルビィの将来が不安になりまくったところに突入した。

 

「おぉ・・・。何だこのルビィちゃんとか言う堕天使は・・・・・・。ロリ+ゴスロリ+上目遣い+舌足らずな喋り方+恥じらいの混じるその視線+もじもじとしたポージング・・・。何だ? 彼女は人をキュン死させるために生まれたのか・・・? ・・・・・・・・・ボクも一緒に堕天したい・・・」

 

 どうやらオウガもあっち側の人間らしい。顔を紅潮させて息を荒げている姿とかキモすぎて見ていられない。お巡りさんこいつです。

 

「・・・・・・アホっ子堕天使。元気っ子堕天使。清楚系堕天使。ロリ堕天使。方言っ子堕天使。モロ堕天使・・・・・・。一人を除いて皆堕天使と相反するものがある。だがそれがいい! 逆にモロ堕天使の子がこの場じゃある意味異物感を醸し出しているが、ノープロブレム! それにまた味がある・・・・・・。ふふ・・・最高じゃないか・・・・・・」

 

「ゴメン。お前が何言ってんのか全然分かんない」

 

 鼻を抑える手を深紅に染めながら、オウガがスマホを返却してきた。スマホに血がついていたらこいつどうしてやろうかとか思ったが、どこも汚れていないので一安心。

 

「それに衣装。ミニスカートの見えるか見えないかの瀬戸際もそそられて実によろしい」

 

「あ、それは同意見だわ」

 

〈お前らな・・・・・・〉

 

 とその時、手に持った携帯から着信音が鳴った。

 画面を見ればなんと、黒澤ダイヤ。

 

「おー。女の子からの着信だなんて羨ましいじゃないか陸君。全国の非リア男子の夢だよ?」

 

「・・・・・・安心しろオウガ。この人はそんな夢躊躇わずぶち壊してくる人だから・・・・・・」

 

 そう。全国の男子諸君は女子と言うものにあらぬ理想を抱いているようだが、そんなのは本当にただの理想なのだ。

 現に最近。関わっている女子にまともな奴が一人もいない陸はそう断言できる。

 だからまずはその幻想を、ぶち壊す。

 そう決めた陸は通話をスピーカー設定にしてから、ダイヤからの着信に出た。

 そこで聞こえてきたのは、怒気を含むダイヤの声。

 

『・・・・・・仙道さん? 今すぐ浦女に来ていただけますか・・・・・・?』

 

 携帯越しなのに、まるで飢えたライオンと対峙しているかのような威圧感。

 そんなダイヤにオウガは、

 

「うん。こういうのもいい」

 

 と、右手でサムズアップを決めてそう言った。

 やっぱりこいつは理解できないと、改めて感じた陸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうものは破廉恥と言うのですわ!」

 

 陸が浦女に到着すると、ダイヤ様はやはりお怒りでいらっしゃり、生徒会室には既にさんざん言われたらしいAqousrの屍が転がっていた。

 恐らくついさっきアップされた動画を見たのだろう。オウガには好感触だったが、やはりお堅いダイヤには通用しないらしい。

 

「全く・・・。貴方と言う人がついていながら‥‥‥‥。どうしてこうなったんですの?」

 

「落ち着いてくださいダイヤさん。そもそも俺はこの動画の制作に一切関わっていません」

 

「だまらっしゃい! 監督不行き届きですわ」

 

「そうだよ陸ちゃん。一人だけ言い逃れしようだなんて許さないよ」

 

「貴方は黙ってなさい!」

 

「ひぃぃ・・・」

 

「いや・・・、そいつらそういうキャラでやってみようって事になって、それで・・・」

 

「そもそも! わたくしがルビィにスクールアイドル活動を許可したのは、節度をもって自分の意志でやりたいと言ったからです! こんな格好をさせて注目を浴びようなど・・・・・・」

 

「・・・‥ごめんなさい・・・、お姉ちゃん・・・」

 

 憤慨するダイヤを見て、ルビィが申し訳なさげに頭を下げた。

 

「・・・とにかく、キャラが立っていないとか、個性がないとか人気が出ないとか、そういう狙いでこんな事をするのは頂けませんわ!」

 

「でも一応順位は上がったし・・・」

 

「そんなもの一瞬に決まっているでしょう? 試しに今ランキングを見てみるといいですわ!」 

 

 ダイヤがパソコンを回転させながら机の上を滑らせてこちらにパスし、曜がそれを受け取った。

 そしてパソコンを開いた曜たちの目に映ったのは、既に1500台にまで下がったAqoursの順位だった。

 

「あぁ・・・・・・」

 

「本気で目指すならどういう事か、もう一度考える事ですね!」

 

「は、はい・・・」

 

 お説教を終え、ぞろぞろと生徒会室から出て行く陸達。

 その中で一番暗い顔をしていたのは、津島善子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕空の下、Aqoursは防波堤の上で膝を抱えていた。

 

「失敗したなぁ・・・・・・。確かにダイヤさんの言う通りだよね・・・」

 

 千歌がぽつりと呟く。

 

「こんな事でμ‘sになろうだなんて、失礼だよね‥‥」

 

「千歌さんが悪い訳じゃないです」

 

「そうよ」

 

 最も辛そうに俯いていた善子の言葉に、皆善子の方を振り向いた。

 

「いけなかったのは・・・・・・、堕天使・・・」

 

「え・・・?」

 

「やっぱり、高校生にもなって通じないよ」

 

「それは・・・・・・」

 

 言い返そうとするが、それ以上の言葉が出てこない。ここにいる全員そうだ。

 そしてそれは、善子の言葉を肯定している事になる。

 それを見て善子は儚げに笑う。

 

「何かすっきりした。明日から、今度こそ普通の高校生になれそう」

 

「じゃあ・・・、スクールアイドルは・・・?」

 

 ルビィの問いかけに善子は少し考えるような素振りをし、くるりと背を向けた。

 

「やめとく。迷惑かけそうだし・・・・・・。それじゃ・・・」

 

 軽く手を振り、哀愁漂う背中を向けながら歩き出す。数歩歩くと立ち止まり、再びこっちを向いた。

 

「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれてありがとね。楽しかったよ」

 

 そう言った彼女の笑みは、痛い程悲し気に見えた。

 かける言葉が見つからず、ただ茫然とその背中を見つめる事しかできない。

 夕日に照らされる善子の胸は、確かに光っていた。

 けれども、引き留める気には、なれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして・・・・・・、堕天使だったんだろう」

 

 善子がいなくなった後、不意に梨子が呟いた。

 

「まる。分かる気がします・・・・・・」

 

 それに答える一つの声。幼馴染として、小さい頃から善子を知っている花丸。

 

「ずっと、普通だったと思うんです。まる達と同じで、あまり目立たなくて・・・」

 

 ピクリと、その場にいる何人かの肩が揺れる。

 

「そういう時思いませんか? これが本当の自分なのかなって、元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかって」

 

 花丸の言葉は、皆の心を切実に揺らした。

 

「・・・そっか」

 

「確かにそういう気持ち、あった気がする」

 

「・・・・・・」

 

 そんな気持ちは、陸にも確かにあった。

 陸がゼロと共に戦う事を決めたのは、非力な自分が嫌だったから。

 六年前の様に、大事な人達が目の前で傷つくのを見たくなかったから。

 ・・・・・・失いたくなかったから。

 これは誰にも、一体化しているゼロにすら教えていない事。

 今はゼロと共に戦っているので忘れがちだが、陸も前までただの高校生だったのだ。

 だからこそ力に焦がれた。変わりたいと願った。

 善子だって形は違えど、それはきっと同じなはず。

 普通な自分が嫌だった。

 最初はきっとそこだったのだ。

 千歌がスクールアイドルを始めたいと願ったのが、そうだったように。

 善子のリトルスターは、その気持ちの現れなのだ。

 今の善子の中では、あの堕天使ヨハネが本当の自分で。それを貫き通そうと、ヨハネでありたいと願った時に、リトルスターは発現していた。

 本当の自分を、見失わない為に。

 

「幼稚園の頃の善子ちゃん。いつも言ってたんです。私、本当は天使なの、いつか羽が生えて、天に還るんだって・・・」

 

 花丸のその話を、千歌達はずっと黙って聞いていた。

 




特に書くことなし!

それでは次回で!
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