ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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私事ですが体育の授業で指骨折しました。
キーボード打ちずらいったらありゃしない。


二十三話 夢で照らす夜空

 

 

 

『以上! がんばルビィ! こと、黒澤ルビィがお伝えしました!』

 

 翌日、浦の星女学院理事長室。

 千歌達に手渡された動画を、鞠莉はこくりこくりと首肯しながら細目で眺めていた。

 

「・・・・・・」

 

 動画が終わった後、鞠莉から一向に反応がなく、理事長室はしばらくの間静寂に支配された。

 

「・・・・・・どうでした・・・?」

 

 静寂に耐えたねた千歌が、緊張気味に鞠莉の顔を覗く。

 だが鞠莉から返事はない。赤べこのように首肯を続けるだけ。

 そして一際大きく彼女の頭が揺れた後、

 

「‥‥‥‥ォウッ!」

 

 だらしなく弛緩した顔をする鞠莉が、眠そうに眼を開いた。

 どうやら眠りの世界にいたらしい。

 それを見てAqours全員がよろける。よろけなかったのは理事長室の隅で腕を組んでそれを見ていた陸だけだ。

 

「もう! 本気なのに! ちゃんと見てください!」

 

 たまらずツッコんだ千歌に、鞠莉が眉を寄せた。

 

「本気で・・・?」

 

「はい!」

 

 千歌の返事を聞いた鞠莉はパソコンを閉じると、寄せた眉を軽く釣り上げた。

 

「それがこのテェイタラァクですか?」

 

「て・・・? 体たらく・・・?」

 

〈発音おかしいだろ〉

 

(ツッコむな)

 

「それは流石に酷いんじゃ・・・?」

 

「そうです。これを作るのにどれだけ大変だったと思ってる・・・・・・」

 

 梨子がそこまで言った辺りで鞠莉が机を叩き、陸以外の六人が身を震わせる。

 

「努力の量と結果は比例しません! 大切なのはこのタウンやスクールの魅力を、ちゃぁーんと理解してるかどうかデェース!」

 

「それってつまり・・・・・・」

 

「まる達が理解してないって事ですか・・・?」

 

「じゃあ、理事長は魅力が分かってるって事?」

 

 善子がそう聞くと、鞠莉はその表情を保ったまま六人を眺め入った。

 

「少なくとも、あなた達よりは。・・・・・・・・・聞きたいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PVは作り直すことにし、七人は帰ろうと昇降口に来ていた。

 

「どうして聞かなかったの?」

 

 結局鞠莉からアドバイスを聞かなかった事を、梨子が尋ねた。

 

「なんか、聞いちゃダメな気がしたから」

 

「何意地張ってんのよ」

 

「意地じゃないよ。・・・それって大事な事だもん。敵を知るにはまず己から、だよ」

 

「うん。ちょっと違うな」

 

 だが言っている事は間違っていない。人にものを教える時は、自分はその三倍理解していないといけないとも言う。

 だからまず、自分達がこの町の事をもっとよく知らないといけない。

 千歌はそう言いたいのだろう。

 

「自分で気づけなきゃPV作る資格ないよ」

 

「・・・・・・そうかもね」

 

「ヨーソロー♪ じゃあ今日は千歌ちゃん家で作戦会議だ!」

 

 その言葉で梨子が体を強張らせたのを見て、曜が意地悪くにやにやと笑う。

 

「喫茶店だってタダじゃないんだから、梨子ちゃんもかんばルビィして!」

 

「はぁ・・・・・・」

 

 そのやり取りを見ていた千歌の表情が緩んでいき、やがて笑い始めた。

 

「ふふっ・・・‥、ふふふふ・・・・・・、あははははっ!」

 

 その笑い声は全員に伝染していき、やがて全員の頬が緩む。

 

「えへへ・・・・・・、よーし!」

 

 千歌はそう言うと右手を上げ、

 

「・・・・・・あ、忘れ物した」

 

 ズコッ、と全員がよろめく。締まらない事この上ない。

 

「ちょっと部室見てくるー」

 

 やけに嬉しそうな表情で千歌が走り去って行った。

 

〈・・・‥‥凄いな。あいつは〉

 

 そんな千歌を見て、ゼロがポロっと所感を零した。

 

〈あいつには不思議と人を引き寄せる力がある。輝きなんつー曖昧で形のないモンを追いかけて、何を始めるにも躊躇わずに突き進める。あいつは自分の事を普通だなんて自嘲しちゃいるが、それは簡単にできるもんじゃない〉

 

(・・・・・・ああ、わかってるよ)

 

 陸は千歌が走り去って行った後の廊下を一瞥し、千歌を待つ五人を見据えた。

 

(そんな千歌だから、皆こうして集まったんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、遅いなあいつ等・・・・・・」

 

 忘れ物を取りに言った千歌はおろか、その後を追った五人もまだ帰ってこない。

 

〈宇宙人でも出たか?〉

 

(だからその発言はフラグになりかねないから辞めろ)

 

 ゼロの縁起でもない発言は大体その通りになってしまうのが怖い所だ。

 学校内だし、そう簡単には宇宙人も入っては来れないだろうが、元リトルスター所持者が三人もいることを考えるとあり得ないとも言い切れない。

 そう思い、一応念の為に自分も体育館に向かう事にした陸。

 最近浦女の生徒が陸を見て何も反応しなくなってきたのは、皆徐々にこの光景に慣れてきているのだろう。

 まさかこれも鞠莉の計画の一つなのだろうか。こうして浦女の生徒に陸への抵抗を失くして一気に引きずり込もうとしているのか。

 

(まさかな・・・・・・、流石に冗談だろ・・・)

 

 そう思いながら角を曲がり、体育館へと続く通路に出た陸の目に映ったのは、ダイヤと鞠莉の姿だった。

 

「ダイヤ。逃げていても、何も変わりはしないよ・・・・・・? 進むしかない。そう思わない?」

 

 通路を進むダイヤを鞠莉が呼び止め、ダイヤの考えてる事はお見通しだよ、と余裕気な表情を見せる。

 

「逃げてる訳じゃありませんわ・・・・・・。わたくしも、果南さんも。あの時だって・・・・・・」

 

「ダイヤ・・・?」

 

 そう言い残して再び歩き出すダイヤに、鞠莉が怪訝そうに表情を崩す。

 柱の陰に隠れ、その会話に聞き耳を立てていた陸は。

 

(何でここで果南姉ちゃんの名前が・・・・・・)

 

 同級生なんだし知り合いでもおかしくはないが、このような雰囲気で名前が出てくるような間柄なのだろうか。

 

〈なんか裏がありそうだな〉

 

 別にスクールアイドルが嫌いな訳じゃないのに、それを拒み続けたダイヤ。

 Aqoursに辛辣な発言を続ける鞠莉。

 そして今の会話と、不意に名前が出てきた果南。

 そう言えば果南は、前に千歌がスクールアイドルの話題を出した時に少し様子がおかしかった気が。

 

(・・・・・・・・・)

 

 何か引っかかる。

 どうもこの三人。スクールアイドルに対する反応が普通じゃない。

 

「あっ、陸ちゃーん」

 

 顎に手を当てこの違和感の正体を探る陸に、ようやく体育館から出てきた千歌が駆け寄ってきた、後ろには五人もいた。

 

「遅かったな。何かあったのか?」

 

 ゼロの発言がフラグにならなかった事はひとまず安心だが、それでもやたらと長かった事に変わりはない。

 

「それが・・・、ステージでダイヤさんが躍っててさ」

 

「・・・・・・? どういう事だ? あの人スクールアイドルが・・・・・・」

 

「前は・・・・・・、ルビィより大好きでした・・・」

 

 ルビィのその言葉で、陸の中である仮説が立てられた。

 

(・・・・・・ひょっとして・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の午前四時。

 曜の目覚ましナックルによって早朝から文字通り叩き起こされた陸は、陸の首根っこを掴んだ曜に引きずられながら千歌の家の近くの砂浜に来ていた。

 今日は海開きの日。

 毎年恒例の行事として、海開きの日は住民で砂浜の掃除をするという伝統があるのだ。

 既に砂浜には十千万の提灯を持った人々が大勢おり、どうして皆朝からこんなに元気なんだろうと思う。

 ちらほらと知っている顔も見受けられ、いつの間にか陸の傍からいなくなっていた曜は千歌と梨子と一緒にいる。他だと一年生ズの花丸ルビィ善子。三年生だとダイヤ鞠莉、そして果南が一緒に行動していた。あの三人。やはり何かしら関りがあるらしい。

 

〈起きてるか? 陸〉

 

 さっきからゴミも拾わずにただボーっとしている陸に、ゼロが起きているかの確認を取った。

 

(眠い・・・‥‥。何故沼津寄りの俺まで参加せにゃいかんのだ)

 

〈毎年やってんだろ? 今更文句言うな。だがしかし・・・・・・、この町、こんなに人間がいたんだな・・・・・・〉

 

(まあ、何だかんだでデカいイベントだからな。町中の人が来る・・・・・・。ねみぃ・・・)

 

 

「あの! 皆さん!」

 

 

 陸がゼロのウルトラ念力によって覚醒させられるのと同時に、千歌が砂浜に集まっていた人々に呼びかけた。

 

「私達! 浦の星女学院でスクールアイドルをしている! Aqoursです!」

 

 人々の視線が集まる中、千歌は更に声を張り上げた。

 

「私達は、学校を残すために! ここにたくさん生徒を集めるために! 皆さんに協力して欲しい事があります!」

 

 千歌は最後にすぅー、と息を吸い込み、

 

「皆の気持ちを形にするために‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おし。もういいぞ!」

 

 浦の星女学院屋上。

 いくつかのポイントにカメラを設置し終えた陸が、赤と青、そして紫のドレスの様な衣装に身を包んだ六人にサインを出す。

 少しその三色に既視感を覚えながらも、陸はカメラに写らない場所まで移動した。

 そこでサインをすると六人が立ち位置に着き、それぞれでポージングを取る。

 

「いくぞ!」

 

 合図と共にカメラは回り、作曲したての音楽が流れだす。

 

 

―――――――――夢で夜空を照らしたい

 

 

 ゆったりとしたテンポの曲に合わせ、手の動きに重きを置いたダンスを披露していく。

 

〈あいつも思い切った行動に出たもんだな〉

 

(ああ、まさか町中の人間に協力を仰ぐとは・・・・・・)

 

 あの時、千歌が集まった人々に頼んだ事。それはスカイランタンの制作を手伝って欲しいというものだった。

 この数日間。時間があればランタンを製作し、今や数多くのランタンがスタンバイ済みだ。

 

〈タイミング、うまくいくかね〉

 

(安心しろ。サイン出すのは俺だから)

 

〈余計不安だわ〉

 

(どういう意味だって・・・、今だ!)

 

 曲の盛り上がりがピークに達するタイミングを見計らい、陸はスタンバイして頂いている皆様にサインを出した。

 それと同時にスカイランタンが空に放たれ、バックに富士山を構える空と町を赤く照らす。

 曲の情緒も相まって、PVと呼ぶにふさわしき光景が目の前に広がる。

 空に浮かび上がる優しく温かい光の中で歌う彼女達は、内浦の町皆の想いに包まれたスクールアイドル。Aqours。

 気持ちは形になった。

 千歌の想いが伝わって、町の人皆の夢がこの空を照らしたのだ。

 

『守らないとな。この夢を!』

 

「・・・・・・ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撮影が終わった後、千歌は駿河湾に沈む夕日を眺めていた。

 

「陸ちゃん・・・」

 

「あ?」

 

「私、心の中でずっと叫んでた。助けてって、ここには何もないって・・・、でも、違ったんだ」

 

 背後の五人に笑いかけた後、千歌は赤く染まった街並みを見下ろした。

 

「追いかけてみせるよ。ずっと、ずっと! この場所から始めよう!」

 

 今日、改めて分かった事がある。

 内浦の本当の魅力、それは人の心にあった。

 見栄えのある景色や、便利な都会などが町の魅力の全てじゃない。

 内浦もそうだ。美しい自然。雄大な富士山。どこまでも広がる海。確かに魅力的だが、これが内浦の全てじゃないんだと。

 人と人が寄り添い、支え合い、共に紡ぎあげていく温かさ。

 Aqoursだって、決して今の六人だけで成り立ってきた訳じゃない。

 この町の、いろんな人の温かさに包まれ、今のAqoursがある。

 その事を胸に、千歌は、Aqoursは新たに決意する。

 

「できるんだ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、複数の宇宙人に連れていかれた男は、暗い空間の中で五体の巨大な影に囲まれていた。

 

「で? 何の用だいスライ。こんな手荒にボクを呼び戻したって事は、それなりに重大な案件だって事だろ?」

 

 自分よりも遥かに巨大な存在達が自分を見下ろしているにも関わらず、男は陽気な声と共にその内の一人を見上げる。

 

『まあ、そう判断してくれて構いません』

 

 軽快な男の口調とは正反対に、スライは淡々と答えた。

 

『それで、どうでした? 例の彼は』

 

「リククンの事かー! って、なんてね。まあ、ボク個人としては結構好ましく思ってるよ。彼は面白い。出来れば別の出会い方をしたかった。運命って残酷だよね」

 

『お前個人の感想は聞いていないぞ』

 

「まあまあ、そうかっかするなよジャタール。人を好ましく思う事は悪い事じゃないだろ?」

 

『ふっ、変な情などが移らなければよいがな。仙道陸は元より死ぬ運命。それは貴様も重々承知の上で奴と接触したのだろう?』

 

「ヴィラニアス。君はもう少し仲間ってものに情を持った方がいいと思うよ? それに決められた運命の中でどう生きるかは彼の勝手さ。そこはボク等が口出しする事じゃない」

 

『ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ』

 

「君は相変わらず何を言っているのか分からないね。デスローグ」

 

『俺達の、と言うか、陛下の障害になる可能性はあるかってよ』

 

「通訳ありがとグロッケン。そうだなぁ、そもそもゼロ君と一体化してるんだし、ほぼ確実に邪魔してくるでしょ。陸君も幼馴染の女の子に危害が及ぶなら、迷わず戦いを選ぶと思うよ。それが陸君の戦う理由っぽいからね。と言うか、彼が戦い続けた方が君等にも都合がいいんだろ? 何企んでるかは知らないけど」

 

『そうですか・・・・・・』

 

 男から得た情報を咀嚼し、スライが思考を巡らせる。

 

『では、まずはその少女達から始末するとしますか。そうすれば仙道陸も戦う気力を失うでしょう。それに例の力も―――』

 

「あー、それはちょっと待った方がいいと思うよ」

 

 早速その少女達を始末すべく刺客を差し向けようとしたスライを、男が制する。

 

『どうした。まさか本当に情が移ったとでも言うのではあるまいな』

 

「まさか。情ならとっくに移ってるよ。でなきゃダダから彼女を助けようとするわけがない。まあ、これにはちゃんとした理由があるんだけどね」

 

『? ダダの作戦邪魔したのお前だったのか? 何で?』

 

「別に、ボクとしてはリトルスター所持者の子はどうでも良かったんだけどね。ダダがあの子まで連れて行こうとしてたから」

 

『貴様、それだけの為にみすみすリトルスター所持者を見逃したというのか!』

 

「だから落ち着けってジャタール。理由があるって言ったろ?」

 

 男はそう言うと指を鳴らし、自らの足元にミカン色の少女の姿を映しだした。

 

「ボクの勝手な推測だけど、多分この子が君等の探している物を持っていると思うよ」

 

 全員が映し出されたその少女を凝視する。

 

『では。この少女があの光を宿している。そう貴方は言いたいのですね?』

 

「まあそうかな。ボクとしてもその子を始末されちゃうと悲しいかも」

 

『貴様、その為に話をでっち上げたのではあるまいな』

 

「まさか。これが嘘を言っているような目に見えるかい? ほら見て、まるで生まれたての純真無垢な子供の様に澄み切ったこの目を!」

 

『澄み切っているかどうかはさておき、まあ、貴方がそこまで言うのならもう少し様子を見ましょう』

 

「そうしてもらえると助かるよ」

 

『ですが、与えられた仕事はしっかりこなしてもらいますよ』

 

「・・・・・・ふっ、分かってるって」

 

 赤く光る五人の双眸に照らされ、男―――、オウガは心底愉快そうに笑った。

 




オウガと例のあの方々に繋がりがある事が判明しましたね。
でもってちかっちが狙われるっていう。まあ、メインヒロインだし仕方ないよね。

千歌「私が持ってる例の物って?」

俺「この先明かしていくでござる」



そこが物語の重要なカギになるって事だけ言っておきます。
次回から少しオリジナル入ります。花丸回だぜ。
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