ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ようやくゼロビヨンド登場のシナリオがハッキリと決まりました。一気に書き上げねば。
定期テスト一週間前? 知らんな。


三十五話 明かされた想い

 

 

『では、この娘を捕らえて来いと』

 

『ええ』

 

 暗闇の中向き合う、メフィラス星人魔導のスライと、ゼットン星人。

 二人の間には、豪奢な金髪の少女の姿が映し出されている。

 

『余計な情報は与えません。貴方は以前、リトルスターを自分のものにしようとした前科がありますからね』

 

『はっ・・・・・・』

 

 ゼットン星人が消えていったのを見て、スライは短く息をついた。

 

『もう一人の方は・・・・・・、マグマ星人に任せるとしますか。ゼットン星人には任せられません』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから! 東京のイベントで歌えなくって!」

 

「その話はダイヤさんから聞いた」

 

 放課後。

 千歌により強制的に揺れてこられた三年生三人は、長机を隔てて鞠莉陣営と果南陣営に分かれていた。

 果南陣営には果南とダイヤ。鞠莉陣営には鞠莉と千歌。

 そしてそれを緊張した面持ちで見つめるその他の五人と陸。

 

「けど、それで諦める果南ちゃんじゃないでしょ?」

 

「そうそう! ちかっちの言う通りよ! だから何度も言ってるのに!」

 

 話し合うという名目で三人を連れてきたはずなのに、実際は三人の口論に千歌が加わっただけだった。

 

〈さっきからずっとこんな調子だ。一向に話が進まん〉

 

(全員子供か。この人達高校生だよな?)

 

 同じ質問と同じ回答が寄せては返すだけ。かつてこれほどまでに無駄な時間があっただろうか。

 

「何か事情があるんだよね?」

 

 千歌の言う通り、歌えなかった事以外にも理由がある事はもはや明白になっているのに、果南は一向に口を割ろうとしない。

 

「・・・・・・ね?」

 

「・・・・・・そんなもの無いよ。さっきも言った通り、私が歌えなかっただけ」

 

 これの一点張りだ。

 腹に一物抱えているとわかっている分、余計にもどかしいのだろう。千歌は頭を抱えて歯嚙みをする。

 

「あぁ――! イライラする――っ‼」

 

「その気持ち、よぉーく分かるよ! ほんっと腹立つよね! コイツ!」

 

 鞠莉に至っては果南をコイツ呼ばわりする始末である。

 

「勝手に鞠莉がイライラしてるだけでしょ?」

 

 自分を指さす鞠莉に噛みつき返す果南。ダイヤも果南の肩をもってばかりでこちらに有益な情報を一切開示しようとしない。

 異様な強情っぷりを見せつける果南。脳内硬度10のダイヤ。

 正直言ってこの二大巨頭を攻め落とせる気がしない。

 

「でも、この前弁天島で踊ってた様な・・・・・・」

 

「っ・・・」

 

「ピギィッ!」

 

 その指摘が恥ずかしかったのか、果南が顔を真っ赤に染めて声の主であるルビィを睨んだ。何気に初ダメージだ。

 

「おぉー、赤くなってるー♪」

 

「うるさい!」

 

「やっぱり未練あるんでしょー?」

 

 目ざとく鞠莉が追撃を入れると、果南は勢いよく立ち上がり、今度は鞠莉を睨みつけた。

 

「うるさい。未練なんてない! とにかく私は、もう嫌になったの! スクールアイドルは・・・・・・、絶対にやらない!」

 

「おい・・・・・・、姉ちゃん!」

 

 そう言い残した後部室を出て行った果南を陸が追いかけていき、部室に静寂が訪れる。

 Aqoursが少し不安気に陸が去って行った出入り口を見つめた後、全員の一斉に視線がダイヤに向いた。

 

「ダイヤさん。何か知ってますよね」

 

「い、いえ・・・、私は何も・・・・・・」

 

 明らかに狼狽えたダイヤに、問うた梨子の視線が鋭くなる。

 

「じゃあどうしてさっき、果南さんの肩を持ったんですか?」

 

「そ・・・、それは・・・・・・。ッ‼」

 

「あ、逃げた!」

 

「善子ちゃん!」

 

「ギラン!」

 

 逃げ出すダイヤに、善子が襲いかかる。

 

「だから・・・・・・」

 

「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ヨハネだってばぁっ!」

 

 先日ルビィにも決まった堕天流鳳凰縛が炸裂し、ダイヤは妹と全く同じ悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「果南姉ちゃん‼」

 

 部室を飛び出て、むすっとした顔のまま帰路を進む果南の背中を追いかける。

 

「ちょっと話を聞いてくれ!」

 

「・・・・・・・」

 

 だが果南が振り返る事はない。

 それどころか追いかけてきたのが陸だと認識すると走り出してしまった。

 

「ああもう!」

 

 陸もそれを追って走り出す。

 ゼロを八人の所に置いてきたので一体化による身体強化は解除されている。モンスター級のスタミナを誇る果南相手にいつまで持つか分からないが、それでもこの足を止める訳には行かない。

 果南にはリトルスターが宿っているのだ。今彼女を一人にする事は出来ない。

 果南は千歌にとっても曜にとっても、勿論陸にとっても大切な姉なのだ。

 そんな彼女が傷つく事など、誰も望んでいない。

 

―――――そんな決意の元、走る事三十分。

 

「っ・・・・・・、っ・・・・・・、っ・・・・・・」

 

 止まる事なく走り続けた二人は、淡島にある果南の家のダイビングショップ付近まで来てしまった。

 血の気の引いた顔で息を荒げる陸に対し、果南はまだまだケロッとしている。

 

(・・・・・・マジで体力どうなってんだあの人・・・・・・)

 

 ゼロがいなければ一介の高校生にすぎない陸だ。当然もう体力なんて底を尽きた。それでも気力と根性で足を動かし続ける。

 ここまで陸にさせるのは、偏に果南を思う気持ち故だ。

 そんな陸の気持ちが通じたのか信号が赤になり、果南が足を止めた。

 

「っ・・・・・・、今だっ・・・・・・!」

 

 乳酸の溜まり過ぎで疲れたんだか痛いんだかよく分からない足に力を籠め、信号が青に切り替わる前に果南に追い付こうと速度を上げる。

 だが無情にも信号は青に切り替わり、果南の肩に届こうとしていた陸の手は空を切った。

 

「うっ・・・・・・、おおぉぉぉぉぉぉぉっ‼」

 

 火事場の馬鹿力とでも言おうか。余力を全て二の脚に叩き込んで果南に追い付くと、その肩を掴むことに成功した。

 

「・・・・・・頼むからっ・・・」

 

「うるさい! スクールアイドルはやらない! 放してっ!」

 

 どうやら陸がスクールアイドルの勧誘をしに来たと思っているらしい。

 勘違いのまま手を払った刹那、リトルスターと同時に果南の身体が七色に光り輝く。

 

「ぉぉっ⁉」

 

これが果南のリトルスターの能力なのか、発生した衝撃波が陸を軽々と吹き飛ばした。

 五メートル程宙を舞った後落下し、それでも勢いを殺しきれずに地面を転がる。

 

「ちょっ・・・! 陸! 大丈夫!?」

 

 迷わず陸に駆け寄る果南。自分の身に起きた事は二の次らしい。

 倒れる陸を抱き起すと、不安気に顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ・・・、一応・・・、って・・・!」

 

 顔を上げた陸の目に、前回同様果南に向かってサーベルを振り下ろそうとするマグマ星人の姿が映り込んだ。

 睨んだ通り、やはり監視されていたらしい。

 

「姉ちゃんっ!」

 

「え?」

 

 疲れも忘れて瞬時に起き上がり、果南を突き飛ばしてサーベルの軌道から逸らす。

 が、

 

「ぎっ・・・!」

 

 サーベルは陸の右腕を翳め、僅かながらも鮮血が迸った。

 

「陸っ!」

 

『チッ・・・、また貴様か・・・』

 

 傷を抑えて地を舐める陸を見降ろすマグマ星人。ちゃっかりマスクは修復されている。

 

『・・・・・・ゼロはいない様だな・・・。丁度いい。死ね!』

 

「ダメッ!」

 

 振り下ろされたサーベルの切っ先から庇うように、果南が陸を抱き上げた。

 瞬間、再びリトルスターが煌き、七色の光がマグマ星人を直撃する。

 

『ぐおっ・・・!』

 

 きりもみ回転をしながら海に落下したマグマ星人が派手に水飛沫を上げ、付近にいた人々が何か何かとそちらに視線を移す。

 

『っ・・・・・・、このっ・・・』

 

「おいっ・・・、何だあれ!」

 

『ぬぅ・・・、ちっ・・・・・・!』

 

 視線が集まり始めた事に気が付き、森の中へと駆け込んでいくマグマ星人を野次馬達が追っていった。

 

「陸! 大丈夫⁉」

 

 マグマ星人が消えたのを確認すると、青ざめた顔で血が滲む右腕に触れる果南。

 

「とりあえず手当・・・・・・。ウチに来て!」

 

「ちょっ・・・、姉ちゃん・・・」

 

 よほど心配なのか、強引に手を取る果南にされるがまま、陸は果南の家へと引きずられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸と果南が飛び出して行った後、八人は黒澤家へと話し合いの場所を移していた。

 

「わざと⁉」

 

 善子の堕天流鳳凰縛が効いたのか、ダイヤはようやく口を割ってくれたのだ。

 そんなダイヤの口から告げられた事実。

 それは、東京のイベントで果南は歌えなかったのではなく、わざと歌わなかったと言うものだった。

 

「どうして・・・・・・」

 

「まさか・・・、闇の魔術―――わっ・・・!」

 

 ふざけて水を差す善子を、お前は場違いだと言わんばかりに花丸が一瞬で拘束する。

 

「・・・貴方の為ですわ」

 

「私の・・・?」

 

「・・・・・・覚えていませんか? あの日・・・、鞠莉さんは怪我をしていたでしょう?」

 

〈・・・なるほど・・・〉

 

 再び梨子の身体に憑依したゼロが、納得したように気持ち頷く。

 

「・・・そんな・・・、私は、そんなことして欲しいなんて一言も・・・」

 

「あのまま進めていたら、どうなっていたと思うんですの? 怪我だけでなく、事故になってもおかしくなかった」

 

 咎める様に言葉を連ねるダイヤ。

 

「・・・・・・でも・・・」

 

「だから・・・、逃げた訳じゃないって・・・・・」

 

「でも・・・・・・、その後は?」

 

「そうだよ。怪我が治ったら、続けてもよかったのに」

 

「そうよ・・・・・・」

 

 震える拳を窓に添え、誰の顔も見ずに鞠莉が呟く。

 

「花火大会に向けて、新しい曲作って・・・、ダンスも衣装も完ぺきにして・・・・・・、なのに・・・」

 

 どうやら当時の三人にも、Aqoursと同じように花火大会のオファーが来ていたらしい。果南とダイヤがどうだったかは知らないが、鞠莉は今の様子からして相当気合を入れていたように見える。

 

「・・・・・・心配していたのですわ。貴方、留学や転校の話がある度に、全部断っていたでしょう?」

 

「そんなの当り前でしょ‼」

 

 突如声を荒げた鞠莉の叫びが、雨の音をかき消して部屋の中に響き渡る。

 Aqoursがそれにビクつく中、ただ一人ダイヤだけが落ち着き払っていた。

 

「果南さんは、思っていたのですわ。自分達のせいで、鞠莉さんから未来のいろんな可能性が奪われてしまうのではないか、と。・・・・・・そんな時」

 

 そんな時、鞠莉に再び留学の話が持ち込まれたそうだ。

 鞠莉の両親も、先方も、是非彼女を留学させてほしいと言っていたらしい。

 もし向こうで卒業できれば、大学の推薦もとれたそうな。

 その誘いを、鞠莉はスクールアイドルを始めたという理由で一蹴した。

 偶然それを知ってしまった果南は、密かにダイヤと共にスクールアイドルを辞める決心をしたとの事。

 全ては、鞠莉の為に。

 

 ――――――姉ちゃん。昔から滅茶苦茶優しくてさ。

 

〈・・・・・・そう言う事か・・・〉

 

 あの時の陸の睨みは間違っていなかった。

 鞠莉の事だ。正面から留学の為にスクールアイドルを辞めろと言っても、頑として譲らなかっただろう。

 だからこその気遣い。

 例え嫌われても、決別してしまっても、果南は親友の未来を作ろうとしていたのだ。

 

〈・・・・・・ホントに、優しいんだな・・・〉

 

「まさか・・・、それで・・・・・・。っ・・・!」

 

「どこへ行くんですの!」

 

 部屋を離れようとした鞠莉を、鋭いダイヤの声が制した。

 鞠莉は拳を構える。

 

「ぶん殴る! そんな事・・・、一言も相談せずに・・・!」

 

「お辞めなさい。果南さんは、ずっと貴方の事を見てきたのですよ。・・・・・・貴方の立場も、貴方の気持ちも。・・・・・・そして、貴方の将来も。・・・誰よりも考えている」

 

「・・・・・・そんなの分からないよ・・・。どうして言ってくれなかったの・・・?」

 

「ちゃんと伝えてましたわよ。貴方が気付かなかっただけ・・・」

 

「・・・・・・。ッ・・・!」

 

「鞠莉さっ・・・・・・⁉」

 

 駆け出した鞠莉を止めようとしたダイヤの動きが、突如止まる。

 

〈もういいだろ。行かせてやれ〉

 

「・・・・・・え?」

 

 ゼロがダイヤの身体に乗り移り、その動きを止めたのだ。それと同時に諭す様にダイヤに語り掛ける。

 

〈・・・・・・これ以上。あの二人をすれ違わせちゃ駄目だ。・・・そんなの残酷すぎるだろ〉

 

「・・・・・・これは・・・?」

 

 突然の事に困惑するダイヤをよそに、鞠莉は雨の中黒澤家を飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ただいま〉

 

「うおぉっ⁉」

 

 果南の家にて傷の治療を受けていた陸が、突然のゼロの帰還に驚き跳ね上がった。

 

「ちょっと! おとなしくして!」

 

 果南が怒り気味に陸を押さえつける。

 

「深くはないけど、悪化したら大変でしょ。千歌達の事心配させたいの?」

 

「・・・・・・ゴメンナサイ」

 

 釈然としないまま謝り、意識をゼロへと向けた。

 

(いきなり戻ってくんな。心臓に悪い・・・)

 

〈ワリィワリィ・・・。つかその怪我どうした?〉

 

(・・・またマグマ星人に襲われてよ。何とか姉ちゃんは守れたけど、ちょっとサーベルが掠ってな)

 

〈何? やっぱり監視されてやがったか・・・〉

 

(・・・・・・そっちはどうだった? なんか収穫あったか?)

 

 ゼロを八人の元に残した理由は二つ。

 一つは八人の安全の為。

 もう一つは陸がいない間に何か事実が判明するかもしれないので、その諜報員として。

 今ゼロが八人の元を離れたのはいささか不安ではあるが、学校にいる事を考えればそこまで危険はないだろう。

 

〈・・・・・・果南がスクールアイドルを辞めた理由が、ようやく判明した〉

 

(マジか。俺のいない間に何があった)

 

〈色々あってダイヤがようやく口を割ってな。それで―――――〉

 

 ゼロによって過去にあった本当の事を伝えられた後、陸は消毒を終えた傷口に包帯を巻いてくれている果南を、悲し気に見つめた。

 

(・・・・・・そんな事が・・・)

 

 果南が本当は鞠莉を嫌っていなかった事に安堵しつつも、同時に今まで果南が背負ってきたものの重さに言葉を失う。

 

〈・・・・・・お前の信じた姉は、やっぱり優しい奴だったよ〉

 

(・・・・・・うん・・・)

 

「はい、これでよしっ、と」

 

 最後に解けない様に包帯をきつめに絞めると、果南は小さい頃からずっと慣れ親しんできた笑顔を浮かばせて陸の腕から手を離した。

 とてもその笑顔の裏に、ゼロの言ったような過去が隠されていたとは思えない。

 親友の未来の為にわざわざ憎まれ役を買って出る様な果南だ。きっと陸達には悟られまいとしていたのだろう。

 そこまで他人に配慮できるところには感服するが、逆に自分の事はどうでもいいような彼女に少し腹も立った。

 

「・・・・・・どしたの?」

 

「・・・いや・・・、何でもない・・・」

 

 そんな陸の視線に気付いた果南が首を傾げたその時、果南の携帯が鳴った。ピロリと画面に映し出されたのは、小原鞠莉の名前。

 

「・・・・・・鞠莉・・・?」

 

 果南は少し訝し気に、机に置いたまま画面をタップして届いたメールを開く。

 そのメールには、短く『スクールアイドル部の部室に来て』とだけ書かれていた。

 

「・・・・・・どうすんの?」

 

 陸が問うと、果南は部室で見せたようなしかめっ面に戻る。

 

「・・・行かない。どうせまたスクールアイドルになれって―――」

 

「違うと思う」

 

 言葉を途中で遮り、陸は真っ直ぐ果南の目を見据えた。

 

「・・・・・・多分鞠莉さんは、いい加減このすれ違いに終止符を打ちにきたんだよ」

 

「何言って・・・?」

 

「・・・姉ちゃん。実は俺、二年前に姉ちゃん達の間で何が起こったか全部知ってる」

 

 陸がそう言うと、果南は信じられないといった様に眼を見開いた。当然だろう。この事を知っている者は、本来ならば果南とダイヤだけ。

 先程部室を飛び出て言ってしまった果南は、ダイヤがAqoursと鞠莉にその事を打ち明けた事を知らない。

 ましてや、ゼロを通じてその事を陸が知った事を。

 

「・・・・・・どうやって・・・」

 

「・・・その事を詳しくは言えない。でももう皆知ってる。千歌も、曜も、他のAqoursの連中も。・・・・・・・・・勿論鞠莉さんも」

 

 陸も先程知ったばかりの事実を伝えると、果南の瞳に戸惑いの色が滲んだのがハッキリと見えた。

 だがそれも束の間。果南はすぐにしかめっ面に戻り、腕組みをして鋭い視線を陸に突き付ける。

 

「・・・・・・陸だって分かるでしょ。これが鞠莉の未来の為だったんだよ。私達が勝手に引き込んだスクールアイドルの為に、鞠莉の将来が奪われるなんて・・・・・・、いい訳がない」

 

 果南の言う事は間違ってはいない。確かに留学や転校を蹴る度に、鞠莉の将来の可能性が狭められていた事は言うまでもないから。

 

「・・・・・・でも姉ちゃんはそれを鞠莉さんは伝えなかった」

 

「当り前でしょ! だって言ったら鞠莉・・・、絶対留学しないって・・・」

 

「それは俺だって分かってるよ。けど鞠莉さんにそう言わせるのは、果南姉ちゃん達が無理矢理スクールアイドルに引き込んだからじゃない。鞠莉さんも姉ちゃん達とスクールアイドルをやることが楽しかったからだ」

 

「でも鞠莉はそんな事一言も言ってなかった!」

 

「それは姉ちゃんも一緒だろ」

 

「え・・・?」

 

「・・・・・・姉ちゃん達がハッキリそう言わなかったから、鞠莉さんは姉ちゃんが東京で歌えなかった事をずっと引きずっていると思ってた。だから自分が支えてあげる。自分だけは前を向いてスクールアイドルを続けることが姉ちゃんとダイヤさんの為になるって、そう思ってたんだぞ。・・・・・・そして鞠莉さんもそれを口にはしなかった」

 

 果南も鞠莉も、互いに親友の事を思っての行動だった。

 その形が果南は鞠莉の将来の為にスクールアイドルを辞める決断をする事で、逆に鞠莉は果南の為にスクールアイドルを続ける決意をする事だった。

 

「・・・・・・あのな、姉ちゃん」

 

 でも互いにそれを口にする事はなかった。果南は鞠莉は留学すべきだと、鞠莉は思っている事は口にしなくても伝わるって、本気でそう思っていたから。だからこそ、今回のすれ違いが発生してしまったのだ。

 

「いくら幼い頃からの付き合いだからって、どんだけ長く一緒にいたって・・・・・・。ちゃんと言葉にしないと、伝わらない事だってあるんだぜ」

 

 そう言って陸は自虐気味に微笑んだ。

 千歌達には、伝えるべきなのに自分がウルトラマンゼロである事を伝えていない。

 これこそ本当に、口にしないと、実際に行動に移さないと伝わらないはずなのに。

 ・・・・・・何を自分が偉そうに説教を垂れているのだろうか。

 

「・・・・・・っ!」

 

 果南は立ち上がると、何も言わずに部屋を飛び出して行く。先程まで蟠っていた気持ちを振り払うように、胸のリトルスターは強く光り輝いていた。

 

「姉ちゃん!」

 

〈追え陸! 今果南を一人にする訳には行かねぇ! つか考えてみたら鞠莉も今一人じゃねーか!〉

 

「はぁっ⁉ 何で早く言わないんだよ!」

 

 果南同様勢いよく立ち上がると、その後を追うようにして陸も部屋を飛び出した。

 外に出ると、既に果南の背中は遠くを進んでいた。まるで二人が和解することを拒むように強く打ち付ける雨をものともせず、強く、早く、その足を動かしている。

 かなり距離は開いているが、ゼロが戻ってきた今ならばすぐに追いつける。

 そう思い果南を追おうとした陸を、突如発生した地響きが襲う。

 

『――――――――ッ‼』

 

 咆哮と共にその体躯を現す巨大な影。

 紛れもなく、果南と鞠莉のリトルスターを狙って連中が繰り出した怪獣だろう。

 現に、その双眸はハッキリと果南を捉えている。

 

「・・・ゼロ・・・」

 

〈ああ、さっさと決めるぞ!〉

 

 誰も見ていない事を確認してから、陸は出現したウルトラゼロアイを装着した。

 

「〈デェヤァ!」〉

 

 




思った。最近ダークネスファイブをスライさん以外出してなくね?
しばらくスライさん以外出す予定無いんだけどなー。
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