ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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やりすぎ都市伝説を見た結果、怖くて眠れなくなってるがじゃまるです。
見るんじゃなかったわ。全然テスト勉強集中できねぇ。


三十六話 光る未来 繋がる絆

 

 

 数分前。

 

「・・・鞠莉ちゃんが一人になったか。てことはそろそろゼットンの奴も動き出すかな? あいつに情報ちゃんと伝わってるといいけど」

 

 降りしきる雨に打たれながら、オウガは常人には見えない距離から浦の星女学院スクールアイドル部部室を見つめていた。

 部室の中には、先程黒澤家を飛び出して来た鞠莉が一人。

 

「ダメだよゼロ君。リトルスター保持者をあんなところで一人にしちゃ。早く助けに行かないと、ゼットン星人はもうそっちに向かってるよ? ・・・・・・と言っても、ボク今から足止めするんだけどね」

 

 そう言うと、懐から何本かの黒いカプセルを取り出す。

 怪獣カプセル。

 かつて伏井出ケイとベリアルがウルトラカプセルを元にして作り上げた、怪獣の力が秘められた代物。

 

「・・・・・・どれにしようかな~。なんてたって初召喚だから、迫力のある奴がいいよね・・・。よし! 君に決めた!」

 

 やがてオウガは一つのカプセルに目を付け、そのスイッチを入れた。

 二つ穴の開いた黒いナックルにそれを装填し、ライザーでそれをスキャンする。

 

[ザイゴーグ]

 

「エンドマークを打ってこい。・・・・・・なんてね」

 

 ライザーを空に掲げると、怪しく光るシリンダー部分から闇が放たれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レボリウムスマッシュ!』

 

『グゥゥゥゥウィィッ‼』

 

 ルナミラクルゼロの掌から放たれた衝撃波が、浦の星女学院に向けてその巨体を進めていた怪獣を押し戻した。

 

『ハアッ‼』

 

 重ねてタイプチェンジ。ストロングコロナゼロの炎が、雨などもろともせずに怪獣に襲いかかった。立て続けに繰り出される拳が胴を捉える。

 だがその皮膚は、殴打の衝撃をものともしない程の頑丈さを誇っていた。

 

『グゥゥゥウィィガァァァァ‼ ガハハハ・・・・・・』

 

『「っ・・・・・・!』」

 

 怪獣の胸部から放たれた火炎弾が直撃し、悶えたゼロの腹部を頭突きの衝撃が貫く。

 

『・・・・・・閻魔獣ザイゴーグ・・・。戦うのは初めてだな・・・』

 

「・・・・・・随分と仰々しい名前だな。強いのか?」

 

『めっちゃ強い』

 

 割と重要な事をあっさり言った後、距離を取ったゼロは、目の前で猛るザイゴーグを見据えた。

 数え切れない程多く剣山状の背びれが生えた赤と青の毒々しい体躯。前に向かって湾曲した刃状の二本角。三対の複眼に加えてその後ろにも点々と並ぶ無数の目を備えた頭部。鬼の棍棒の様な形をした右腕。

 金切り声と、閻魔大王の高笑いにも聞こえる音が混じった鳴き声。

 その地獄を体現した様な禍々しい風貌は、まさしく閻魔獣の名を冠するにふさわしいと言っていいだろう。

 

『ガァァァァ‼』

 

『フッ!』

 

 迫りくる剛腕をパワフルな回し蹴りで弾き、晒された胸部に照準を定めた。ゼロの右手の温度が上がる。

 

『ガルネイトバスタァァァァァァ‼』

 

『グゥゥゥゥウィィガァァァ‼ ガハハハ・・・』

 

 ガルネイトバスターと同時にザイゴーグが口から放った真赤な光線、ヘルズレリーブが衝突し、血の様な赤黒い閃光を散らす。

 双方の力は拮抗していると思われた。が、

 

『っ⁉』

 

 二つの光線がぶつかり合う一点、そこから濛々と煙が上がっている。

 

『まさか・・・』

 

 これは熱量が原因で発生した煙ではない。

 ヘルズレリーブが、ガルネイトバスターを腐食させているのだ。

 

『「がぁっ・・・、あああぁぁぁぁぁぁっ‼』」

 

 それを察するが時すでに遅し。爆熱の奔流を貫いた深紅の破壊光線が、焼け爛れる様な痛みと共にゼロを吹き飛ばした。

 

「あっつ・・・・・・」

 

『・・・エックスもジードも、よくこんな奴とやり合ったもんだぜ・・・・・・。だが!』

 

 通常形態に戻ると同時に、ゼロツインソードを構える。

 

『アイツ等に出来て、この俺に出来ねーはずがねーんだよ‼』

 

 次々と放たれる火炎弾を切り裂きながら、ゼロは咆哮を上げる閻魔獣へと突撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浦の星女学院。スクールアイドル部部室。

 鞠莉はその中でホワイトボードに頭を打ち付け、ここに来るまでにずぶ濡れになった身体から水滴を垂らしていた。

 無言で見つめる先には、

 

『いつもそばにいても 伝えきれない思い出

 心迷子になる 涙 忘れてしまおう

 歌ってみよう 一緒にね』

 

 以前陸が発見した、部室のホワイトボードに書かれた掠れた文字。

 

――――――ちゃんと伝えてましたわよ。貴方が気付かなかっただけ・・・。

 

 ダイヤの言葉が、頭の中で反芻する。

 それに続き、

 

――――――離ればなれになってもさ、私は鞠莉の事、忘れないから。

 

 二年前、別れる前に果南が掛けてきた言葉。

 そしてホワイトボードに綴られた文。

 ・・・・・・本当に自分が気付いていないだけだった。果南はちゃんと伝えていた。自分が勝手に果南の気持ちを分かり切ったつもりになっていただけだったのだ。

 

「馬鹿・・・・・・」

 

 果南に、そして自分にも向けた愚痴を漏らす。

 

(・・・・・・何で、こんな方法で・・・)

 

 きっと果南も、考えていた事は鞠莉と同じだったのだろう。

 言葉なんかなくたって、わざわざ口にしなくたって、お互いの気持ちは伝わり合うって。

 そう思い続けた結果、二年もの月日が流れてしまった。

 あの時ちゃんと思っている事を伝えていれば、今もまだ二人と一緒に歌っていられたのだろうか。

 後悔は尽きない。

 だがいくら過去を悔やんだところで後の祭りだ。だから今思っている事を伝える。隠すことなく、全部。

 その為に果南を呼び出したのだ。

 

(いい加減。話をつけないとね・・・・・)

 

 ピチャリと、入り口付近で水に浸った様な音がした。

 ようやく来たかと、その方を向いた鞠莉の目に飛び込んだのは、

 

 果南では、無かった。

 

『ふふ・・・・・・。一人でいるとは愚かな・・・・・・』

 

 墨の様に真っ黒な細い全身に、気味の悪い一つ目の宇宙人。

 以前、リトルスターを狙って善子の身体を乗っ取ったゼットン星人がそこにはいたのだ。

 

『これでリトルスターが手に入る・・・・・・。くははっ・・・』

 

 そして不幸にも、鞠莉の胸に輝くのはまごうことなきリトルスターの輝きだった。

 乾いた笑い声の後、ゼットン星人の身体を黒い霧が包んだ。

 危機感を感じた鞠莉が逃げようとするが、それよりも早くゼットン星人は全身を霧へと変え、リトルスターごとその身体を飲み込まんと襲いかかってくる。

 

「鞠莉!」

 

 そこに割って入る影が一つ。

 青紫色の瞳に、ポニーテールに束ねた青い髪。

 

「果南⁉」

 

 その影は、黒い霧に抱かれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『らあぁぁぁぁぁっ‼』

 

 裂帛の気合と共に振り抜いた太刀がザイゴーグの背中を切り裂き、長く伸びた棘が幾つも周囲に飛び散る。

 反撃の裏拳を屈んでかわすと、懐にもう一太刀。

 

『グァァァァ‼』

 

 武器を持ったのは正解だった。

 ストロングコロナの鉄拳をものともしないこの皮膚でも斬撃は通る。

 袈裟懸けに振り下ろしたゼロツインソードが更に懐を刻み、激しく火花を上げた。

 

『シャオラァ‼』

 

『グゥゥゥゥ・・・・・・!』

 

 くぐもった悲鳴を上げるザイゴーグの側頭部に、ウルトラゼロキックが炸裂。ザイゴーグは体勢を崩して地面に倒れ伏す。

 そんな隙を見逃すゼロではない。

 

『ウルトラハリケーン‼』

 

 ストロングコロナに変わると素早く掴み上げ、竜巻に乗せてその巨体を天高く放り投げた。

 

『ガルネイト――――――』

 

『グゥゥゥゥウィィガァァァ‼ ガハハハ・・・・・・』

 

 しかしゼロがガルネイトバスターを叩き込むより早く、ザイゴーグはヘルズレリーブを解き放った。

 

『ちっ・・・』

 

 ガルネイトバスターでは押し負ける事は既に分かっている。ゼロは手を止め、地面を転がってヘルズレリーブの軌道から外れる。

 までは良かった。

 

『グゥゥゥゥウィィガァァァ‼ ガハハハ・・・・・・』

 

『っ⁉ 何だとっ⁉』

 

 突如ザイゴーグの胸部が蕾が開くようにX字に展開される。もう一つの口の様にも見えるそこから伸ばされた触手が、拘束するようにゼロの身体を絡めとった。

 そして、

 

『「があぁぁぁっ・・・、あぁぁぁぁぁぁっ⁉』」

 

 強烈な脱力感と共にエネルギーを吸われ、ゼロはがくりと膝を折る。

 ピコン、ピコンと、赤く点滅するカラータイマーが残り時間のカウントを始めた。早く

脱出しなければエネルギーを吸いつくされてしまう。

 

「ぐ・・・、うぅ・・・、・・・・・・っ⁉ 姉ちゃん⁉」

 

『何っ⁉』

 

 ふと視界に入った浦の星女学院スクールアイドル部部室。

 丁度それは、果南を包んだ黒い霧が消えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・チッ・・・』

 

 果南の身体を乗っ取ったゼットン星人が舌打ちを鳴らした。

 それは大雨の音に掻き消されることもなく、不気味な響きで部室の中に溶け込んでいく。

 

「・・・か、果南・・・・・・?」

 

 鞠莉は果南であって果南でないその存在に歩み寄ろうとするが、彼女ならば絶対に放たないような異質な気配を感じ、その足を止める。

 そんな鞠莉を見たゼットン星人は、邪悪に笑みを零した。

 

『・・・・・・思わぬ邪魔が入ったが・・・、この娘の身体ならば追い出されることもあるまい。ゼロの始末を優先するか・・・』

 

 首だけ動かし、ザイゴーグとの戦闘中であるゼロを見据える。

 

『・・・ザイゴーグの触手に捕まった時点でほとんど結果は見えているが・・・・・・、あのゼロだ。念には念を押そう』

 

「待って!」

 

 部室に背を向け。果南を人質としてゼロに見せつけようとしたゼットン星人を、固まっていた鞠莉が呼び止める。

 

「アンタが誰だか知らないけど・・・・・・、果南の身体を返して!」

 

 声音と、禍々しい表情からそいつが果南ではない事を見破ったのだ。

 

『ハァッ‼』

 

「きゃあぅ・・・!」

 

 片腕が振るわれた空間から黒い波動が発生し、鞠莉は長机を巻き込みながら吹き飛んでいく。

 

『そこで寝ていろ。ゼロを始末し次第この娘は開放する。・・・・・・まあ、それでも貴様は逃がしはせんがな。せいぜい最後に友人の顔でも眺めておけ』

 

 果南の顔で酷く歪んだ笑みを鞠莉に見せつけると、ゼットン星人は踵を返して再び部室の外へと向かおうとする。

 

「・・・・・・まだ・・・、伝えてない・・・」

 

 が、腰に回された手がそれを敵わせない。

 

「・・・言いたかった事・・・、思ってた事・・・、まだ何も果南に伝えてない・・・」

 

『この・・・・・・』

 

 引き剥がそうと殴ったり蹴ったりしているが、その手を離そうとする気配はない。その身体をずるずると引きずったまま部室の外へと出た。

 

「か・・・なん・・・」

 

 鞠莉にこうもさせるのは、一途に果南を思うが故なのだろう。

 一方ゼットン星人は、諦めない鞠莉と計画が思い通りに進まない事に苛立ちを覚え始め、徐々に冷静さを欠いていく。

 

『放せ!』

 

「あうっ・・・!」

 

 腹部を蹴り飛ばすが、それでも鞠莉は腕に力を籠め、眉を鋭く釣り上げた。

 

「っ・・・・・・、果南を返してっ‼」

 

 鞠莉の叫びと共に輝きを増したリトルスターの光がゼットン星人を襲い、一瞬だが以前善子の身体から追い出された時のような感覚を覚える。果南の意識を閉ざしておいたのは幸いだった。

 

『ぐっ・・・・・・、何故だ・・・、何故いつも・・・』

 

『へっ・・・、分からねぇのか・・・?』

 

 背後から掛けられた声に反応してゼットン星人が振り返ると、肩で息をするウルトラマンゼロの姿があった。

 

『‥・・・お前は、人と人との結束の強さを舐め過ぎなんだよ!』

 

 今なおエネルギーを吸われ続け、もがき苦しむ奴の言葉になど、本来ならば耳を貸す道理もないはずなのに、何故か追い詰められたような気がして狼狽えるゼットン星人。

 ゼロの言う、人と人との結束。

 ウルトラ戦士が人間を信頼する理由でもあり、光を嫌う者が最も恐れるもの。

 時にこれはとてつもない力を発揮し、如何なる逆境をも覆してきた。

 かつて宇宙を混沌に陥れたエンペラ星人やダークルギエルすらも、この力の前に敗れ去ったのだ。

 現にゼットン星人も、一度この力の前に敗北を喫している。

 

「アンタもいつまでも寝てねーでさっさと起きろ‼」

 

 先程とは違う声がゼロから発せられた。

 そしてそれがゼットン星人ではなく、その身体の持ち主、果南に向けられたものである事にそう時間はかからなかった。

 

「アンタはずっとその人の事を思ってきたんだろ! 決別してまでもその人の未来を願い続けてきたんだろ! その未来が今まさしく奪われようとしてるんだぞ! そんな時にアンタがいつまでも寝てんじゃねーよ! 姉ちゃ、・・・・・じゃねーや、松浦果南‼」

 

 ザイゴーグの触手を振り払うと共にゼロ、否陸が叫び、空気が震える。

 そしてその声は、眠っていた果南の意識に届いた。

 

「・・・・・・陸・・・?」

 

『っ⁉ 何っ⁉』

 

 抑えこんでいた果南の意識が戻り、弱々しくはあるが、確かにその声は耳に滑り込んできた。

 

「果南・・・?」

 

『伝えろ!』

 

 戸惑う鞠莉に、今度はゼロが言葉を重ねる。

 

『今まで伝えられなかった想いを! すれ違った時間の中で募った感情を! 今なおお前の中で燻っている願いを! 全部言葉にしてそいつにぶつけてやれ‼ それがそいつを救う力になる! 今それが出来るのは世界中でただ一人、小原鞠莉しかいねーだろうが‼』

 

 

 

 

「っ・・・・・!」

 

 救う・・・。

 自分が、果南を。

 鞠莉の脳裏に過るのは、幼き日の記憶。

 内浦にやってきたばかりだった鞠莉に、真っ先に声を掛けてきたのは誰だった?

 何もかも不慣れだった鞠莉と迷わず友達になってくれたのは誰だった?

 あの時の鞠莉を救ってくれたのは、誰だった?

 ダイヤと・・・・・・、果南ではないか。

 だから今度は、鞠莉の番だ。

 方法は簡単。ただ自分が果南に対して思っている事を伝えればいい。

 いつの間にか忘れてしまっていけど、それは、

 

 かつて自分が、最も得意としていた事のはずだから。

 

「・・・・・・ダイヤから聞いた。あの時果南が思っていた事・・・、ずっと私の事、思っていてくれてたんだよね?。・・・・・・でも」

 

 決して離そうとしなかった手をようやく解き、ゆっくりと立ち上がる。

 

「どうして言ってくれなかったの・・・・・・? 思ってる事ちゃんと話して、果南が私の事考えている様に、私も果南の事考えてるんだから・・・・・・」

 

 少し離れた所から聞こえる、ゼロとザイゴーグが衝突する音。でも今はそんな事気にもならない。

 

「将来なんか今はどうでもいい! 留学? 全く興味なかった! 当り前じゃない! だって・・・・・・、果南が歌えなかったんだよ? ・・・・・・放っておけるはずない‼」

 

 これが鞠莉の思い。

 そう言い放った後、何を思ったか鞠莉は、

 

「っ‼」

 

 突如響いた乾いた音。

 何と鞠莉は邪悪な悪意の支配する果南の頬に平手打ちをしたのだ。

 

「私が果南を思う気持ちを、甘く見ないで‼」

 

 これが、鞠莉の怒り。

 ずっと考え続けてきた果南への、純粋な感情。

 

『っ・・・・・・、この・・・・・・っ?』

 

 突然のビンタに憤慨し、手を上げたゼットン星人の動きが突如止まる。

 そして口が言う事を聞かずに勝手に動き始めた。

 

「・・・・・・だったら・・・、だったらそう素直に言ってよ! リベンジだとか負けられないとかじゃなくて、ちゃんと言ってよ!」

 

 紛れもなく、松浦果南自身の言葉だったのだ。

 そしてそれは、闇による支配が弱まったという事。

 

『馬鹿な・・・・・・、何故対抗できる・・・・・・、っ⁉』

 

 自分を追い出そうとする力に抗うゼットン星人の目に映ったのは、鞠莉のリトルスターに負けない程に輝く、果南の胸の光だった。

 

『ッ・・・・・・! リトルスターッ⁉』

 

 鞠莉のリトルスターを奪う事に必死になり過ぎて、スライの話をほとんど聞いていなかったゼットン星人は知らない。

 実は鞠莉よりも早く、果南がリトルスターを発現していた事に。

 

『クソッ・・・! クソッ・・・・・・! 覚えていろっ・・・!』

 

 血眼で呪詛を振り撒きながらゼットン星人の身体は七色の光に飲み込まれ、霧は霧散していった。

 

「だよね・・・。だから・・・」

 

 叩いてくれと言うように、鞠莉は果南に自分の頬を差し出した。

 気持ちを伝えなかったのは果南だけではない。鞠莉も一緒だ。

 だから果南にも鞠莉を殴る権利はある。そう思っているのは、言葉にしなくてもハッキリと伝わる。

 

「・・・・・・」

 

 完全にゼットン星人の支配から脱した果南は手を掲げ、痛みを堪える準備をするように鞠莉が目を瞑る。

 だが果南は、一向にその手を振り下ろすことはなかった。

 

「・・・・・・?」

 

 それに気付いた鞠莉が目を開いた時には果南は既に両腕を広げていて、目尻に涙を浮かべながら、優しく笑いかけた。

 

「ハグ・・・・・・、しよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『へっ・・・、ちゃんと言えたじゃねーか・・・』

 

 すれ違い続けた二人の少女が抱擁を交わすのを見て、ゼロは安堵したように息をついた。

 そしてそれは陸も同じ。

 

「・・・・・・良かったな。・・・姉ちゃん」

 

『やっぱ嬉しいのか?』

 

「まあ、そりゃあな」

 

『グゥゥゥゥウィィガァァァ‼ ガハハハ・・・・・・』

 

 その咆哮に視線と意識を戻せば、ザイゴーグは再び触手を解き放っていた。あれだけエネルギーを吸い取ってもまだ足りないとは。

 

『さっさと終わらせるぞ。怪獣が出てたんじゃ雰囲気が台無しだ』

 

「おう」

 

 刹那剣閃が煌き、殺到する二本の触手を断ち切った。悲鳴を上げるザイゴーグに一瞬で肉薄すると、ゼロツインソードが眩い光を纏う。

 ザイゴーグの皮膚は固い。

 斬撃も通るとはいえ、致命傷になるまでには至らないのだ。

 ただ一カ所を除いては。

 触手を繰り出す際に、ザイゴーグは胸部を開く。流石に身体の内部までは体表の様に頑丈ではあるまい。

 だったら、その一点に攻撃をブチ込んでやればいい。

 

『プラズマスパークスラッシュッ‼』

 

 開かれた胸部が閉じるよりも一瞬早く、弧を描くゼロツインソードが到達。深々と斬撃を刻み込んだ。

 

『ギャアァァァァ・・・‼』

 

『オォォォォォ‼』

 

 ストロングコロナに変わり、剃刀の様に鋭く、地面を翳めるまでに深く踏み込んだアッパーをたった今刻んだ斬痕へと叩き込む。

 

『ガルネイドバスタァァァァァァァァァァァァ‼』

 

 爆熱の炎を放出すると同時に拳を振り上げ、ザイゴーグの身体はロケット弾が如し速度で天へと昇っていく。

 やがて分厚い黒雲を穿った獄炎はザイゴーグを貫き、空一面が雲一つない青空になってしまう程の大爆発を起こした。

 内浦全体に差し込んだ陽光が、雨に濡れたゼロの身体を照らす。

 そして導かれるようにゼロの元へと飛来した二つの光の球が、カラータイマーに吸い寄せられる。

 

 果南のリトルスター。

 

『ショウラァ!』

 

 ――――――可能性を信じ、未来を切り開く力―――ウルトラマンギンガ。

 

 鞠莉のリトルスター。

 

『イィィッサ!』

 

 ――――――光を結び、絆で繋がる力―――ウルトラマンエックス。

 

 同時に二つのウルトラカプセルが修復される。

 リトルスターを受け渡した二人の少女は、いつの間にか手を繋ぎ、ゼロを眺めていた。

 もうリトルスターはないというのに、二人は眩しい程に輝いて見えた。

 

『やっぱ、こんな日には晴れ空が一番だよな・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイヤさんって、本当に二人が好きなんですね♪」

 

 夕空の下、校門の戸締りをするダイヤに、いつの間にかそこにいた千歌が笑いかけた。

 

「・・・・・・それより、これから二人を頼みましたわよ? ああ見えて二人共繊細ですから」

 

「じゃあダイヤさんもいてくれないと」

 

 あの後果南と鞠莉の二人は、正式にAqoursへ加入をしたのだ。

 だから千歌がここにいるのには訳がある。

 それでは、一人足りないから。

 まだ一人、二年間の空白を埋めていない人がいる。

 

「えぇ? わたくしは生徒会長ですわよ? とてもそんな時間は・・・・・・」

 

「それなら大丈夫です」

 

 ひょこりと、隠れていたAqoursメンバーが顔を出した。そこには果南と鞠莉もいる。

 

「鞠莉さんと果南ちゃん・・・・・・それに皆もいるので!」

 

 そこからルビィが一人出てきて、ダイヤに衣装を差し出した。

 

「親愛なるお姉ちゃん! ようこそ、Aqoursへ!」

 

 満面の笑みを浮かべる妹に対し、ダイやは、

 

 その衣装を受け取る事で、答えを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――未熟DREMER。

 

 

 そして迎えた夏祭り。

 花火に彩られた夜空の下で歌う彼女達は、九人となっていた。

 果南の想い、ダイヤの想い、鞠莉の想い。

 どうしていいか分からず気持ち迷子になり、言葉だけでは足りず、分かって欲しかったが故に傷つけ、すれ違い続けた三人の想いは重り、一つとなった。

 止まっていた三年生の時が動き出し、一年生、二年生の時と重なり合い、九人の時間となったのだ。

 

〈・・・・・・分かり合っているからこそ伝えられない、か・・・。確かに、そう言う想いもあるんだな〉

 

 ステージ上で歌う九人の少女達は、内に秘めた想いを伝えあったからこそ繋がり合えた。だからこそ輝いて見える。

 何もかも自分で抱え込んでしまう陸とは違う。

 

「・・・・・・眩し・・・」

 

 少しだけ、心の闇が深くなった気がした。

 




よーやくAqoursが九人になった! 長かった!
アニメの方でもこの話は屈指の名シーンですよね。当時僕も中学年ながら感動を覚えた記憶があります。まあ、アニメに宇宙人は出てこないんだけどね。
ちなみに果南のリトルスターはギンガエスペシャリー。鞠莉のリトルスターはアタッカーエックスをイメージしています。
次回からはしばらくオリジナルが続きます。色々ネタは仕込んでいるのでお楽しみに。

それでは次回で! 銀河の光が、我を呼ぶ!
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