ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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サブタイが不穏過ぎる・・・・・・。

今回は・・・、まあ、色々と急展開かな・・・?


三十九話 悪魔との契約

 

 

「嘘・・・・・・、ゼロが・・・・・・」

 

 目の前でゼロが敗北し、表情を一気に絶望に染め上げるAqours。

 そんな一同の眼前には、たった今ゼロを葬ったロボット。ギャラクトロンMK3が佇んでいる。

 今までどんな敵だって打ち破ってきたゼロを、何もさせずに圧倒する程の力を秘めた恐ろしい敵。

 今はもうそれを止める者がいない事を悟った瞬間、千歌の身体は震えあがった。

 ゼロが敗北する程の強敵だ。人間の力が通用するとは到底思えない。

 きっと数時間後には、内浦は火の海になっているだろう。

 そんな千歌の予想を肯定するかのようにギャラクトロンMK3は市街地へと体を向け、

 

 そこで停止した。

 

「え・・・・・・?」

 

 どういう訳か、ギャラクトロンMK3は止まったのだ。何の前触れもなく。石造の様にピクリとも動かず、機能が停止したかのように思える。

 

「どうなってるの・・・・・・?」

 

 隣で曜が声を漏らす。

 もしかしたらゼロの攻撃が効いていたのかもしれない。でなければ説明がつかないだろう。

 

「「ダイヤッ!」」

 

「お姉ちゃんっ‼」

 

 ひとまずほっと息をつく千歌の隣を風の様に走り抜けていく三体の影。果南と鞠莉とルビィ。

 それを見て千歌も走り出す。安堵している暇などないからだ。

 あの中にはダイヤが捕まっているのだ。いくらギャラクトロンMK3自体が止まったとはいえ、中のダイヤがいつまでも無事でいる保証はない。

 ただただ彼女の無事を祈って、八人はギャラクトロンMK3へと向けて四肢を動かした。

 やがてその元にたどり着いたAqoursの目に映ったのは、辺り一面の焼け野原と、倒れ伏す一人の少年の姿だった。

 

「っ⁉ 陸ちゃん‼」

 

「陸‼」

 

 その少年の正体が分かるや否や、千歌と曜が慌てて駆け寄る。

 

「陸ちゃん! 陸ちゃん‼」

 

「・・・・・・酷い怪我・・・」

 

 煤まみれになっている陸の怪我は、思わず目を覆ってしまう程に酷い。

 もはや怪我をしていない部分を探す方が難しい程に全身を占拠する切り傷と火傷。青く染まった打撲の跡も垣間見え、早くしなければ命に関わる事は目に見える。

 

「ねぇ陸ちゃん! 起きてよ! ねぇってば!」

 

 いくら身体を揺さぶっても、いくら呼びかけても、陸が目を覚ますことはなかった。必死に叫ぶ千歌の目から零れた涙が陸の頬を叩く。

 

「早く病院に・・・・・・」

 

「でも・・・、お姉ちゃんが・・・・・・」

 

 慌てる花丸とルビィ。梨子と善子に至っては声すら出せないでいる。

 何をすべきなのか分からない。そんな空気が蔓延する中、手を叩く乾いた音が響いた。

 

「ひとまず。役割を分担しよう」

 

 そう言ったのは果南だった。

 それに鞠莉が続ける。

 

「りくっちの怪我も酷いけど、ダイヤを放っておくことも出来ない。だから二チームに分かれるの。ちかっち、曜、梨子、花丸はりくっちを病院に連れて行ってあげて。私と果南。ルビィと善子はダイヤを何とか助けられないか方法を考える。それでいい?」

 

 最年長の三年生二人が混乱する六人に提案し、六人も納得したように首を振る。

 

「行こう。千歌ちゃん」

 

「うん!」

 

 曜と共に意識のない陸を担ぎ、千歌は最寄りの病院に向けて全力で足を前に進ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと目が覚めた。

 一体どれぐらい眠っていたのか。

 頭に響く爆発音と、脳裏に浮かぶ白いロボットの姿。

 いったいこれは何なのか。

 記憶の泥濘から探り、それの正体を引きずり上げた時には、反射的に陸の身体は起き上がっていた。

 

「っ‼」

 

 そこで映った景色が見覚えのない場所だと理解し、きょろきょろと周囲を見渡す。周りにはベッドが置いてあり、自分もまたそこに寝かされている事に気付く。

 白一色の壁や天井から察するに、どうやらここは病院らしい。

 

〈起きたか陸。怪我の感じはどうだ?〉

 

 耳を撫でるゼロの声。試しに片腕を上げてみると、

 

「・・・・・・めっちゃ痛い・・・」

 

 どれだけの衝撃を受けたのか。マガゴモラの時とは比較にならない程傷は痛む。

 でもまあそれはそうだろう。なにしろ今回は手も足も出ずに完全に敗北したのだから。

 

〈良かったな。痛みがあるのは生きてる証拠だ。ほら、だったらそいつ等を早く起こしてやれ〉

 

「あ・・・?」

 

 ゼロに言われて今更腿に重さと温かさを感じ、視線を落とす。

 そこで眠っていたのは陸が最も慣れ親しんだ少女二人。千歌と曜だった。

 

〈そいつ等、頑なにここから離れようとしなくてな。余程心配だったんだろうよ。早く無事だって事を教えてやれ〉

 

「・・・・・・」

 

 寝息を立てる幼馴染の顔を見据える。

 ぐっすり眠っているところを起こすのは申し訳ないが、ゼロの言う通り早く起こして安心させてあげるとしよう。

 

「おい。起きろお前等。重い」

 

 雑に二人の身体を揺さぶると、先に曜が目覚めた。

 

「ん・・・‥?」

 

 曜は顔を上げると、寝ぼけまなこを開く。

 少しの間ぽけーっと虚空を眺めた後、陸の顔が目に入る。すると陸が何か言うより早く飛びついてきた。

 

「陸――――っ‼」

 

「うおっ⁉」

 

 果南の様にハグをしてくる曜。普段はこういう事をするタイプではないので妙に気恥しい。

 

「うぁ・・・? どしたの曜ちゃん、大声出して・・・?」

 

 今のでお寝ぼけ大魔王の千歌も目を覚ました。曜の事を確認しようとしたその赤い瞳に陸が映り込む。

 そして曜と同じ結果になった。

 

「陸ちゃ――――んっ‼」

 

「あだだだだっ‼」

 

 千歌も曜も全力で抱き付いてくるので尋常じゃなく傷や火傷が痛む。だが二人ともそんな事お構いなしに回した腕に力を込めてくる。

 ゼロの言う通り本当に心配してくれたらしい。

 嬉しさ半面申し訳なさもあり、どうしようか迷ったが、やっぱり痛いので二人を引き離す。

 

「・・・・・・良かった、生きてて・・・」

 

 目尻に涙を浮かべてそう呟く曜。

 陸も二人が無事だった事にひとまず安堵する。

 二人が無事だったという事は、他のAqoursのメンバーも無事だろう。そう思った時、あるとんでもない事実を思い出す。

 

「そうだギャラクトロン! いやダイヤさんはっ⁉」

 

 血相を変えて千歌と曜に顔を寄せる。

 陸とゼロが敗北したあのギャラクトロン。あいつの中には、ダイヤが囚われていたはずだ。

 時計を見れば、あれから既に二十四時間以上経ってしまっている。中にいたダイヤは、そもそもギャラクトロンは今どうなっているのか。

 陸の問いに、千歌と曜は首を横に振って答えた。

 

「まだあの怪獣の中・・・・・・」

 

 苦渋に滲んだ声音が、残酷な響きで耳朶を打つ。

 

「ッ!」

 

「ちょっと! その怪我じゃまだ動いちゃ駄目だよ‼」

 

 矢も楯もたまらず飛び出そうとする陸を千歌が慌てて取り押さえる。

 

「放せ! 早く助けに・・・・・・」

 

 陸の怪我こそ酷いが、二十四時間も眠っていればゼロの方は流石に回復しているだろう。

 

〈落ち着け〉

 

 千歌に続いて陸を制したのは、何とゼロだった。

 

〈ギャラクトロンは今活動を停止している。恐らくこの地球上をスキャンしてるんだろうよ。俺との戦闘で少しはエネルギーを消費したはずだから、もうしばらくは焦る必要はない〉

 

 それを聞いて冷静になった陸はおとなしくベッドに戻る。

 確かに今ギャラクトロンが動きを止めているのなら、こちらは行動を起こさない方がいいだろう。

 下手打って早々にギャラクトロンが動き出せば、こっちには打つ手がない。

 だからある意味動きを止めてくれているのは不幸中の幸いだ。その間に何か策を練れる。

 だが神は簡単に思考を巡らせてはくれなかった。

 

「・・・ねえ陸。何であんなところにいたの?」

 

 陸の顔と真正面から向き合う曜。あろうことか最も返答に困る質問の内一つを投げかけてきたのだ。

 その瞳は、憂わし気に揺れているようにも見える。

 

「花丸ちゃんに聞いたけど。前もこんな感じで倒れてたことあったんでしょ?」

 

「・・・・・・まあ、そうだが・・・」

 

「‥・・・それにダイヤさんが捕まってる事も知ってるし」

 

「・・・捕まるのが見えたんだよ。それで心配になって―――」

 

「嘘だ」

 

 筋が通っている様にも思える陸の説明を、千歌は一言で切り捨てた。

 

「陸ちゃん。何か隠してる時の顔してる」

 

「・・・・・・」

 

 予想外の反応に戸惑う陸。困って曜の方に視線を流すと、曜も同じような顔で陸を見ていた。

 流石は幼馴染とでも言おうか。表情の差異で陸の嘘に気付いたらしい。

 

「・・・最近、ずっとそんな顔してるよ」

 

「なんか変だよ陸。東京行ってからあんまり笑わなくなったし。悩んでるみたいな・・・」

 

 まさかそこまで看破されていたとは。

 いや、なんとなく陸も察していたはずだ。彼女達の変化に。

 ここ最近、Aqoursの陸への態度がどこか変わった気がする。

 後から入った三年生を覗き、何故か全員、時折心配するかのような視線を陸に向けるのだ。

 特に千歌と曜は、陸に対して寂しげな表情を浮かべる事が多くなっていた。

 全ては東京、いや、ダークネスファイブに連れ去られてから。

 

「・・・・・・お前等も東京行ってからなんか変だぞ。宇宙人に誘拐されたとか言ってたけど、なんかあったのか?」

 

 連れ去られた翌日、千歌が陸に向けた言葉の真意も気になる。

 ほぼ確実に、千歌達はダークネスファイブに何かされたか、もしくは何か言われている。今まで漠然と陸の中で立てられていた仮説が今、確信へと変わる。

 陸の問いかけに、千歌と曜は少し困り顔を見合わせ、やがて決意したように頷いた。

 

「・・・・・陸ちゃんに関わるなって言われた・・・」

 

「っ・・・・・・!」

 

 怒りにも、寂しさにも似た感情が湧き上がる。

 そんなこと言う奴一人しかいない。

 メフィラス星人魔導のスライ。聞けばAqoursの誘拐を提案したのも奴だったという。

 

「・・・・・・陸?」

 

 途端に顔を歪ませて拳を握る陸の顔を、曜が覗き込む。そこで色々と察したのか、見透かすような視線を向けてくる。

 

「・・・やっぱり何か隠してるでしょ」

 

 答えることなく、陸は俯いたままでいる。

 千歌と曜の言っている事は正しい。何一つ間違ってはいない。

 だからこそ真実を告げるべきなのか迷う。

 いいや違う。伝えるべきなんだ。伝えなくちゃいけないんだ。既に彼女達を危険に晒した陸にはその責任がある。

 それでも怖い。真実を告げる事で、今のこの関係が崩れる事が。

 

「・・・・・・陸ちゃん」

 

 千歌が陸の手を握り、じっと視線を重ねてくる。逸らしたくても逸らせない。

 だから陸もまたじっと見つめた。千歌の顔を、そして曜の顔を。

 すると今までの葛藤が嘘の様にあっさりと答えが出たのだ。

 何故なら分かってしまったから。いや、正確には分かっていたけれどもどこかで納得できなかった答えに、納得しざるを得なくなったから。

 当然だ。自分のワガママと彼女達の安全。そんなもの秤にかけるまでもない。

 

「・・・千歌、曜」

 

「「っ・・・・・」」

 

 目の色が変わった事で、二人共緊張した面持ちで陸を見る。

 

「・・・・・・俺は―――」

 

「先輩!」

 

 意を決した陸が言の葉を紡ごうとした刹那、見覚えのある顔が聞き覚えのある声と共に駆け込んでくるのが見えた。

 

「仙道君・・・・・・。良かった。目が覚めたんだ・・・」

 

 さらにもう一人、病室へと入ってくる見知った顔。

 桜内梨子に、国木田花丸。

 付きっきりの千歌と曜に何か差し入れでも持ってきたのか、片手にはビニール袋をぶら下げている。

 千歌と曜は二人が入ってきたのを見ると、真剣味を帯びた表情で二人と向き合う。

 

「・・・・・・ダイヤさんは・・・?」

 

「・・・・・・」

 

 梨子は何も言わなかったが、代わりに首を横に振って答えた。

 

「そっか・・・・・・」

 

「ゼロもいないんじゃ・・・・・・、どうしよう・・・」

 

「まる達に出来る事、なんにもないずら・・・・・・」

 

 その声音には明らかな絶望が滲んでいた。

 陸は大怪我を負い、ダイヤはギャラクトロンに捕まり、頼みのゼロはいない。彼女達はそう思っているのだろう。

 

「鞠莉さんはこんな状況だけど、皆学校には行くようにって・・・・・・」

 

「・・・・・・そっか」」

 

「まあ、確かにここは任せるところに任せた方がいいのかな・・・・・・」

 

 任せると言っても、異次元の科学技術の結晶であるギャラクトロンに、それより遥かに劣った地球人の科学力がどこまで通用するのか。

 皆それは分かっているが口には出さない。口にしたら終わりな事も分かっているから。

 

「とりあえず仙道君も気が付いたし、今日はもう遅いから帰ろう? 親御さんたちも心配するよ?」

 

「・・・うん」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「じゃあ先輩。お大事にずら」

 

「お、おう・・・・・・」

 

 重苦しい表情のまま、四人が病室から出て行った。

 そしてそれは陸も同じ事。

 ダイヤの安否が心配という事もある。そしてもう一つ。

 

「・・・・・・また・・・」

 

 梨子と花丸の登場によって、前と同じように伝える事が出来なかった。

 真実を告げるのが今の陸の責任。そのはずなのに。

 でも、心のどこかでその事にほっとしている自分もいて、腹が立ってくる。

 

「・・・・・・やっぱダメだなー・・・、俺・・・」

 

 更に闇が深くなるのを感じながら、陸は再びベッドへと潜りこんでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、サイドアース。

 東京、梶尾地区。かつてウルトラマンベリアルが降臨した地。

 

『ハァァァァァ‼』

 

 つり上がった青い目をした巨人が、別宇宙でゼロを倒したのと別型のギャラクトロンに掴みかかっていた。

 

『何でコイツが・・・・・・、倒したはずじゃ・・・』

 

『特徴が一致。間違いなくギャラクトロンMK2です』

 

『てことはギルバリスの兵器って事? ギルバリスは倒したはずじゃ・・・・・・』

 

『ギルバリスは数万年前から各宇宙に大量のギャラクトロンを放出しています。大元のギルバリスを打ち取ったとはいえ、まだまだ多数が健在。恐らくはそのうちの一体かと』

 

『ギャラクトロンってそんなにいるんだ・・・・・・。デヤァ!』

 

 回し蹴りがヒットするが、重く固いその体躯にダメージを与える事は出来なかった。

 逆に振り上げられた大剣が胸を突き上げ、跳ね飛ばされてしまう。

 

『が・・・・・・ぁ・・・・・・』

 

 痛みに悶え、地面を転がりながらも、巨人は両腕をクロスさせた。すると巨人の目が更に青く光り輝き、両腕に赤と黒の雷が集中していく。

 後転の勢いを利用して起き上がった巨人が腕を掲げ、そのまま十字に組んだ。

 

『レッキングバーストォォォォォォォ‼』

 

 放出されたエネルギーは光線となり、ギャラクトロンMK2の赤いコアパーツに直撃する。

 激しく赤と黒の閃光が迸った後に姿を現したギャラクトロンMK2は、全くの無傷。バリアを張って光線を防いだらしい。

 だが戦況が有利であったのにも拘らず。自身の頭上に巨大な魔法陣を出現させ、吸い込まれるようにその中へと消えていく。

 

『待てっ‼』

 

 それを追うように巨人、ウルトラマンジードは地面を蹴り、自らもその魔法陣へと突入していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

 陸が焦燥と落胆を含むため息を漏らす。

 あれから眠らずにずっと思考を巡らせているが、この状況を打破できる策は何も浮かばない。

 千歌達に真実を告げる勇気もなければ、ダイヤを救うことも出来ない。情けなさすぎて笑えてくる。

 

「やっほー陸君。怪我の調子はどうだい?」

 

 病室の入り口から声がする。

 恐らく自分の見舞いに来た者だろうが、気分は穏やかではない。

 何故なら・・・、

 

「随分とこっぴどくやられたみたいじゃないか」

 

 振り向いた場所にいた声の主はオウガ。

 来てくれたことに素直に、と言うか全く喜べる相手ではない。

 

「・・・・・・笑いに来たのか?」

 

「まさか。ボクだって瞬殺されてるんだから人の事言えるわけないだろ?」

 

 そう言えばと、オウガが変身していたペダニウムゼットンもやられていた事を思い出す陸。

 あんな爆発の仕方しておいてケロッとしているのを見るあたり、カド―星人の身体が丈夫だというのは本当らしい。

 

「純粋にお見舞いだよ」

 

 そう言ってレジ袋を投げつけてくる。

 中にはアニメキャラがプリントされたウエハースの袋が入っていた。見舞い品のつもりだろうが、普通に要らなかった。

 

「・・・・・・ホントにそれだけか?」

 

 陸が怪訝に眉を寄せると、オウガは意味深な笑みを浮かべる。

 

「・・・・・へぇ、周りの女の子の気持ちには疎いのに、そう言うのには鋭いんだね」

 

「やっぱなんか企んでやがったか」

 

 身を乗り出す陸を、オウガは両手で制する。

 

「落ち着けよ。ダークネスファイブからの指示がない限りは動く気はないって言ったろ? ちょっと提案を持ち込みに来たのさ」

 

「・・・提案?」

 

「そ」

 

 今度は両腕を腰の後ろに回し、ずいっと顔を寄せてきた。

 

「陸君。ボクと手を組まないかい?」

 

「・・・・・・は?」

 

 一拍の後、陸はようやくオウガが何を言っているのか理解した。

 

「何のつもりだ? ダークネスファイブと組んでベリアルを復活させるとか言う話はどこ行った?」

 

「ああ違う違う。そうじゃなくてだね。あのギャラクトロンを倒すまで一時的にって事さ」

 

 くるりとターンして陸から距離を取ると、腕から黒いオーラを漏らし始める。

 

「ボクは君に力を与える。君はあのギャラクトロンを倒す。簡単な話だろ?」

 

 そのオーラは見ているだけでも気分が悪くなる程にドス黒く、例えようのない瘴気を感じる。

 

「・・・・・・お前にそれをする何のメリットがある?」

 

「それはね」

 

 遂には声音にもドス黒さが滲む。

 

「アイツはボクとゼロ君の勝負の邪魔をした。それ以外に理由はいらないだろ?」

 

「っ・・・・・」

 

 思わず背筋が凍り付く様な感覚に襲われる。

 オウガは笑っている。いつもと同じように笑っている。

 だけれども、その目は全く笑っていなかった。

 始めて見るオウガのそんな表情に、本能的に恐怖を覚えたのだ。

 

「今のボクの数少ない楽しみだってのに、酷いもんだよね・・・・・・。それに、ボクの力を得る事は君たちにも好都合だ」

 

「何・・・?」

 

「助けたいんだろ? ダイヤちゃんを」

 

 焦っていた陸の心境を見透かすような視線を向けるオウガ。

 

「アイツに光の力は通用しない。だからこそ闇の力が必要なんじゃないのかい?」

 

 オウガの言う闇の力と言うのは、今のオウガを作るきっかけとなった者、ベリアルの力の事だろう。

 光の者であるゼロとは、まるで正反対の力。

 まさに悪魔との契約と言ったところか。

 

「・・・どうする?」

 

 正直どうすべきか分からない。

 今の陸とゼロでは、ギャラクトロンに勝てないのは事実。それは悩みに悩んだ末に出した答えだ。

 だがその事でベリアルの力に縋ってしまっては、それこそ本当にベリアルと同じなってしまうのではないだろうか。

 けれども、ダイヤの事は救いたい。

 押し寄せる葛藤の波に陸が苛まれていると、遠くの方から巨大な何かが動いたような重い音がした。

 

「っ・・・・・」

 

 窓からその方向を見てみれば、ギャラクトロンが再び動き出し、市街地に向けて歩を進めていた。

 そしてゼロとの一体化で強化された陸の目には見えてしまったのだ。

 ギャラクトロンの足元にいる、八人の少女の姿が。

 

「・・・時間はないみたいだけど・・・?」

 

 いつの間にかこちら向けていたオウガの腕に向けて、陸は自然の内に手を伸ばしていた。

 

〈陸・・・・・・〉

 

(・・・・・・ここまで来たら光も闇も関係無ぇ。今必要なのはあいつを倒す力だ)

 

 そうして陸は差し出された悪魔の腕を――――――、

 

 

―――掴んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この世界の解析は完了した。人類のみならず、この星の生物は絶えず争い、他者の命を奪って自らの命を繋いでいる』

 

 ダイヤのものであってダイヤではない声が、人々が逃げ惑う町の中を反響する。

 

『宇宙に有り余るエネルギーを利用せず、他者から奪う食物連鎖と言う間違ったシステムを生み出した生態系を私は正す』

 

 Aqoursが足元で眺める中、ギャラクトロンMK3は両腕を掲げ、多くの人々が逃げ込んでいる避難所へと照準を定めた。

 

『この世界を、リセットする』

 

「お姉ちゃん‼」

 

『・・・・・・?』

 

 ルビィが涙ながらに声を張り上げる。

 その声が向けられたのはギャラクトロンMK3ではない、その中に囚われているダイヤだ。

 

「ダイヤッ‼」

 

 果南がそれに続くが、ダイヤからの返事が返ってくることはない。

 その代わりに、ギャラクトロンMK3は無機質な動きでギャラクトロンベイルを手に取る。

 

『感情は生命には不要なものだ。それが故に人々は憎しみ合い、貶め合い、争い合う。感情が完全なる世界の邪魔をする。我が正義は感情を必要としない』

 

「何が完全なる世界よ‼」

 

 理不尽な正義を突き付けるギャラクトロンMK3に、鞠莉が噛みつく。

 

「女の子人質に取っておいて、正義がどうとか語らないで‼」

 

『・・・・・・リセットする』

 

 だが皮肉にもダイヤの声で一蹴され、耳を塞ぐようにギャラクトロンMK3は金色に戦斧を振りかざす。

 

「っ・・・・・・」

 

 思わず目を瞑るAqours一同。

 その刹那に聞こえた大地を裂かんばかりの地鳴り。だがその中に自分達の悲鳴は聞こえない。

 気付けば浮遊感に包まれていた。

 恐る恐る目を開くと、自分達が蒼い光の中にいるのが分かった。

 

「ゼロ・・・?」

 

『・・・・・・』

 

 巨人の顔が見えた。

 掌に自分達を乗せ、ギャラクトロンMK3から距離を取る様に飛び去るウルトラマンゼロの姿が。

 

「・・・・・・?」

 

 自分達、そしてゼロが無事だった事を喜ぶ前に、普段と違うゼロの雰囲気に違和感を覚えるAqours。

 やがてゼロはAqoursの安全を確保し、ギャラクトロンMK3と対峙した。

 

『・・・しぶとい・・・』

 

 極太の光が一閃。

 奴の胸部から放たれた光線が、空気を焦がしながらゼロへと迫っているのだ。

 だがその光は、

 

 

 ・・・・・・黒い、何かによって掻き消された。

 

 

「え・・・・・・?」

 

 その声は誰のものだったのか。

 今の光景を見た、全員のものだったのかもしれない。

 

「何・・・、あれ・・・・・・」

 

「ゼロ・・・・・・、なの・・・?」

 

 人々の視線が集まる中、そこに立っていたゼロの姿は――――――黒かった。

 漆黒に染まった頭部と肩のプロテクター。銀色のラインは存在せず、代わりに血の様な赤の中に黒の模様が走る禍々しい肉体。

 全身から溢れ出る闇。ゼロでありながらゼロでない存在がそこにはいるのだ。

 闇の権化と呼ぶにふさわしい、禁断の姿。

 仲間と言う支えが無かったら誕生していたかも知れない、ゼロのもう一つの可能性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――ゼロダークネス。

 




ジードの参戦が翳むレベルでヤバい奴が登場。その名もゼロダークネス。

ウルトラゼロファイトではゼロにベリアル陛下の魂が乗り移って誕生したゼロダークネスですが、今作ではゼロと一体化している陸にベリアル陛下の力が宿る事で誕生します。

陛下版のゼロダークネスとの違いを上げると、カラータイマーやウルティメイトブレスレットが元の色のままという事と、この状態だと身体の主導権は陸にあるって事ですかね。
ちなみに扱いはオーブのサンブレと同じです。と、いう事はつまり・・・・・・。

それでは次回で! 闇を抱いて、光となる!
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