結構好きだったんだけどなー、鷲尾兄弟。難波会長は知らん。
あと内海・・・、去年も見たような事すんじゃねーよ。
やっぱビルドは面白いですね。
『ヴア“アァァァァァァァァァ‼』
雄叫びを上げたゼロダークネスが大地を蹴り、魔法陣と共に宙に浮かぶギャラクトロンへと飛翔する。
『ダオラァ‼』
ムーンサルトを決め、歪んだ正義の執行者を地面に蹴り落とす。その動きにゼロの面影は無く、さながら怒り狂う獣の様にも見える。
『フッ!』
掌から放たれたデスシウムショットが雨の様に降り注ぎ、撃墜されたギャラクトロンの機体をズタズタに切り裂いてゆく。右腕、ギャラクトロンシャフト、そして心臓部にあたるコアパーツを撃ち抜かれ、そこで爆散。
『ヴウゥゥゥゥゥゥ・・・・・・』
『・・・・・・父さん・・・?』
爆散しなかったギャラクトロンシャフトを踏みにじるゼロダークネスに、父ベリアルの姿を重ねたジードが言葉を零す。
それもそのはず。
このゼロダークネス。本来はベリアルがゼロの身体を乗っ取った事で誕生した闇の戦士なのだから。
『ゼロさ―――があぁっ‼』
ゼロダークネスに駆け寄ろうとしたオーブを、残存していた他のギャラクトロンが襲う。ジードも別の残存兵を処理するのに手一杯だ。
その間に、ゼロダークネスはスカルゴモラと対峙していた。
『はははははははははははっ! いい! いいよ陸君! その闇の力‼』
両角に赤雷を纏わせながら、スカルゴモラはその巨体で突進を仕掛けてくる。
『その力がベリアルを――――――』
『デェェェヤァァァァ!』
その横を、闇が駆け抜けた。
スカルゴモラの背後には、黒いゼロスラッガーを逆手に持ったゼロダークネス。
そして、
『あぇ・・・・・・?』
切り落とされた、スカルゴモラの両角があった。
腑抜けたオウガの声など全く意に介さず、ゼロダークネスはカラータイマーの左右にゼロスラッガーを装着、途端に黒い光が集約していく。
『ダアアァァァァァァリャァァァァァ‼』
『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼』
迸るダークゼロツインシュートがスカルゴモラを直撃し、食い込むような音と共に肉片が飛び散る。
『・・・は・・・・・・はは・・・、まさかこれ程とはね・・・・・・』
光線が止み、胸部の意匠が完全に吹き飛んだスカルゴモラはゆっくりと真後ろに倒れ、
『・・・流石は、―――だ・・・・・・』
奴を見て蘇った内浦の人々のトラウマと共に、爆散していった。
『これが・・・・・・、ゼロダークネス・・・・・・』
ジードが啞然として呟くのと、ゼロダークネスが残存しているギャラクトロンへと襲いかかるのは同時だった。
「・・・・・・んん・・・」
千歌は爆音で目が覚めた。
その音が近い事を理解すると、身体は反射的に起き上がった。
「・・・皆・・・・・・?」
周囲を見渡してみれば、千歌と同じように起き上がったばかりのAqoursのメンバーが。
まだ明瞭にならない思考で、何があったのかを記憶の泥濘から探る。
『オォォォォォ・・・・・・シャッ‼』
「わあっ⁉」
少し離れた場所でオーブがオーブカリバーを手にギャラクトロンと戦っているのを見て、意識を失う直前に何があったかを思い出した。
確か自分達は、爆発に巻き込まれたはずでは・・・・・・。
『っ・・・・・・、っ・・・・・・、っ・・・・・・』
すぐ近くで荒い息の音が聞こえた。
振り向くとそこには、
『ったく・・・・・・、まーたやっちまった・・・・・・』
仰向けになって地面に転がる一体の魔人が。
「っ・・・・・・!」
千歌達が咄嗟に身構えたのを見ると、魔人は上半身だけ起き上がり、やれやれと肩を竦めて見せた。
『おいおい。命の恩人にその態度はないだろ? ・・・全く、ナターシャの時と言いナオミの時と言い、何で俺はこんな奴等助けちゃうのかね』
暗いトーンの色調に、細く光る鋭い目。武具に見える胴体に、兜、腕当て、膝当てのようなパーツ。そしてそれらを止める縄のようなモールドがあり、鎧を着こんでいるようにも見える。
魔人は立ち上がると闇に包まれ、ある意味魔人よりも怪しいかもしれない男の姿になった。
「ジャグラー・・・・・・さん・・・?」
その顔に心辺りがあった千歌が名前を口にすると、男、ジャグラーはぬるっとした動きで千歌に歩み寄り、鼻先が触れ合ってしまう程に顔を近づけてきた。
そして気味悪く笑う。
「一つ貸しだぞ。ゼロと一体化してるあのガキに伝えといてくれよな」
「っ! そうだ陸ちゃ―――」
『ダアアァァァァァ‼』
千歌の声をかき消す様に猛々しい咆哮が響く。
「え・・・・・・」
それが何なのか理解するのに、時間はかからなかった。
ほとんどトラウマと言ってもいい記憶が脳裏を過る。
何故なら、この声の主は、
「・・・・・・ゼロ・・・・・・」
一週間前のあの日の様に、黒く染まったウルトラマンゼロの姿だった。
あの日同様。理性など吹き飛んだように暴れ続け、引き千切ったギャラクトロンシャフトで敵を横殴りにしている。
「・・・また・・・・・・」
ゼロの正体が陸だと理解はしつつも、心に刻み込まれたトラウマはやはり恐怖心を優先させてしまう。
「・・・・・・悲しんでる・・・?」
「・・・え?」
そんな中、陸とは一番付き合いの長い曜が前回とは違う点に気付く。
曜の言う通り、暴走しているというよりは、怒りと悲しみに任せて敵を破壊しているようにも見える。
「ギャラクトロンがお前ら事を吹き飛ばした途端にああなった。多分お前等が殺されたと思って怒り狂ってるんだろうよ」
何故か恍惚とした表情で、ジャグラーがゼロダークネスを見やる。
その瞳には底知れぬ狂気が宿っていたが、今Aqoursにジャグラーに意識を向けている者は誰もいない。
「陸ちゃぁぁぁぁ―――――――んっ‼」
声を張り上げ、千歌が幼馴染の少年の名前を呼ぶ。
「陸――――――――――ッ‼」
それに続いて曜。
自分達が死んでしまったと思って怒り狂っているのなら、無事だと分かればきっといつものゼロに、陸に戻ってくれると信じて。
『ッ・・・⁉』
その想いが通じたのか、ゼロダークネスは動きを止めた。
ゆっくりと、殊更にゆっくりと、スローモーションで再生しているかの様な動きで首だけを千歌達の方へと向ける。
「・・・・・・千歌・・・? 曜・・・・・・?」
そしてゼロダークネスから発せられた陸の声を、九人は聞き逃さなかった。
両腕に纏っていた赤黒いオーラは消え、棒立ちをしてAqours九人を見下ろしている。
正気を取り戻したようなその姿に、心弛びした雰囲気がAqoursの間に舞い降りる。
だがそれを打ち壊す者がいた。
『ガァァァァァ⁉』
立ち尽くすゼロの胸部を打ち抜く光が一閃。
「っ・・・・・・・・・」
思わず口元を手で覆う千歌。
何故なら、その光はウルトラマンの命とも言える器官。カラータイマーを打ち抜いていたのだから。
『ヴゥ・・・・・・、ア〝・・・・・・・・・』
目から光りを失い、力なく転倒したゼロはピクリとも動かなくなった。
『ゼロさん‼』
『こん・・・のぉぉぉぉぉぉぉ‼』
ゼロを倒された事が二人の導火線に触れたのか、オーブとジードは相手取っていたギャラクトロンを破壊すると、間髪入れずにゼロを倒した機体に向けて大剣を構える。
『オーブスプリーム・・・・・・カァァリバァァァァァァァァァァ‼』
『ロイヤルエェェェンド‼』
二大戦士が放った怒気の奔流はギャラクトロンの硬質なボディをいとも簡単に穿ち、三十体以上いたギャラクトロン軍団最後の一機は跡形もなく粉砕された。
それと同時にオーブとジードは消え、九人は倒れ伏すゼロへと向けて地面を蹴った。
「ゼロさん!」
「ゼロ!」
千歌達がゼロの元に辿り着くと、既にガイとリクはその傍らにいた。
ゼロはカラータイマーこそ点滅はしているものの、まるで死んでしまったかのように瞳にはいつもの輝きはない。
やがてその胸の輝きすらも失われ、
「あ・・・・・・」
ぼやけ始めたゼロの身体は、徐々に光の粒子となって消えていく。
その光はとある一点に収束していき、やがて一人の少年の姿になった。
「陸ちゃん!」
「「陸!」」
たまらず駆け出す千歌と曜、そして果南。
陸は気を失っていた。全身に伺える傷や火傷の跡。その姿に、千歌は既視感を覚える。
これは、前に怪獣の足元に倒れていた時と同じ。
つまりはあの時も、こうやって怪獣と戦って傷ついていたという事。
「陸ちゃん! ねえ陸ちゃん! しっかりしてよ!」
顔を涙で濡らし、必死に陸の身体を揺さぶるが、あの日同様返事は帰ってこない。
代わりに、
「ごぼっ・・・・・!」
陸が咳き込むと共に血が吐き出され、頬を伝って地面に滴り落ちていく。
「ピギィッ⁉」
「っ! 陸!」
今の事を受けて、ガイが慌てて駆け寄って陸を担ぐ。
「ゼロさんと一体化しているから命には関わらないだろうが・・・・・・、安静にした方がいい事に変わりはない。一番近い病院まで案内してくれ」
「はい!」
『陸』
意識の隅をつつくように、戦友の声が闇の中で響く。
目を開けば、何もない真っ暗な空間の中にいた。上も下も分からない底なしの闇。
その中に一人、赤と青の、目つきの悪い戦士が佇んでいる。
「・・・ゼロ・・・?」
『よう、陸。こんな感じで会うのは初めて会った時以来だな』
ゼロに言われ、そう言えばと思い出す。
陸にとっては全てが始まった日。ゼロと出会い、一体化したあの時も、こんな空間の中にいた。
「・・・で、何でいきなりこんなとこに・・・・・・」
戸惑う陸に、ゼロは背を向けた。
『お別れだ』
「・・・・・・は?」
言葉の意味を理解できずに、思わず間抜けた声を上げてしまう。
『陸』
それを無視し、ゼロは言葉を重ねる。
『すまなかった』
「え?」
『俺のせいで、本来戦う必要もないお前を戦いに巻き込んじまって』
ゼロがどんな顔をしてその言葉を紡いでいるのかは分からない。
だがその背中からは、隠しきれていない程の自責の念を感じる。
『・・・・・・じゃあな・・・』
振り返る事は無く、ゼロは底のない闇の向こうへと歩き出していった。
「おいっ! ゼロ‼」
必死に四肢を動かし、必死にその肩を掴もうと手を伸ばすが、歩いているはずのゼロには全く追いつくことが出来ない。
「ゼロ! ゼロォッ‼」
ゼロとの距離がどんどん離れていく一方、陸のいる闇の空間には光が満ちてゆく。
あまりに眩しく、思わず目を瞑る。
「待ってくれよ――――――
――――――ゼロッ‼」
再び目を開くと、そこにもうゼロの姿は無かった。
それどころか闇もなく、目の前には前にも訪れた病室の光景が広がっている。
陸はそのベッドの上で、手を伸ばしながら上半身のみを起き上げていた。何故だか身体が重い。
そしてそんな陸を見つめる。九人の少女と二人の青年。
「・・・・・・陸。大丈夫・・・?」
一番近くにいた果南が、憂いに滲んだ声音でそう問いかけてくる。
「あぁ・・・、大じょ――――――」
下げた手の指先が、固い何かに触れた。
どうしてか手に馴染むその感触に、引き寄せられる様に視線を落とすと、そこには。
「・・・・・っ!」
――――色を失い、石のようになってしまった、ウルトラゼロアイがあった。
「・・・・・・大事そうに握ってたから・・・、一応そこに置いておいたけど・・・」
果南の言葉も、今は耳に入ってこない。
陸は両手でウルトラゼロアイを掴み、全ての意識をそれへと向けていた。
「おい‼ ゼロ⁉ ゼロッ⁉」
悲痛に叫ぶ陸の声が、病室の中で反響する。
脳内でも呼びかけを続けるが、答えが返ってくることは無かった。
「・・・・・・・・・返事しろよ・・・・・・、ゼロォ・・・・・・」
遂には俯いてしまった陸。
「・・・・・・元々怪我してボロボロだった体に、父さ・・・‥、ベリアルの力が侵食して・・・・・・、それで・・・」
重々しくリクが発した声が、今度はしっかり耳朶を打つ。
そこから先は言われなくとも理解できた。
つまりゼロは、・・・・・・・・・死んだという事。
「・・・・・・そんな」
Aqoursの皆も、気まずそうに視線を落とす。
千歌と曜の、二人を除いて。
「・・・・・・いつから、戦ってたの・・・?」
しばらくは戸惑いながら二人の顔を見つめていたが、やがて言葉の意味を理解する。
そうだ。自分は変身したんだ。彼女達の前で、ゼロに。
「ねえ! 答えてよ!」
ものすごい剣幕で詰め寄ってくる千歌に気圧され、言葉に詰まる。
「・・・話してやれ。お前の言葉でな」
少し離れた場所で腕を組むガイが、一人だけ落ち着いた口調で諭してくる。
「・・・・・・ダイビングに行った日から。ゼロと一体化したのは、花丸達を庇って死んだ時だ」
ハッキリと自分の口で、過去に一度死んだことを伝える。
そして全て話した。
死んだ自分を、ゼロが一体化して命を共有することで救ってくれた事を。それから今まで、ゼロと共に戦ってきた事を。
そしてそのせいで、陸と一緒にいるAqoursが宇宙人に狙われているという事。だから皆から離れようとした事。
「・・・何で、そうやって一人で抱え込んじゃうの‼」
全て吐き出して下を向いた陸に、曜も声を荒げて詰め寄ってくる。それに陸は俯いたまま答える。
「・・・・・・当たり前だろ。巻き込める訳――――――」
ぱぁん、と乾いた音が響いた。二つ重なって。
それと同時に頬に走る痛み。どうやら引っ叩かれたらしい。
「いっ・・・・・・何――」
陸は非難めいた目で二人を見て、言葉を失う。
「だからって陸ちゃんが傷ついていい訳じゃない‼」
気付けば、千歌と曜はいつの間にか目元に涙を浮かべて泣いていた。
「馬鹿っ‼」
曜がそう吐き捨てると共に、二人そろって荒々しく病室を出て行く。
後に残ったのは圧倒的な沈黙と気まずさ。そんな病室の中、陸はウルトラゼロアイを見つめた。
今まで散々戦って、これよりも遥かに強い力で殴られたりしてきたはずなのに。
今のビンタは、これまでの人生で一番痛かった気がする。
「・・・なあゼロ。・・・俺はどうすりゃ良かったんだよ・・・・・・」
それでもやはり、ゼロからの答えが返ってくることは無かった。
おかしい。ゲストウルトラマンが出演してるのにどうしてこんなに暗くなるんだ。ゼロ退場しちゃったし。
おまけに幼馴染からのビンタ。陸のメンタルボロボロですね。俺なら絶対立ち直れねぇ。
次回は溜め回になりそうですね。やっと先輩方が光る時が来る。
それでは次回で!