ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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この前書きが読まれているという事は、既に私はAqoursのライブを見に埼玉に君臨しているのでしょう。

楽しんできます。雨よ。降るな。


四十八話 桜色の悩み

 

『・・・・・・情けない』

 

 一度ダークネスファイブが拠点としている宇宙船に戻ったオウガに、ヴィラニアスが真っ先に放った言葉はこれだった。

 だが、今のオウガの耳にその言葉は全く届いてはいない。

 

『まあまあ、今回の事は流石に私も予想外でした』

 

 スライがヴィラニアスを諫めても、オウガは俯いたまま顔を上げようとしない。

 

(・・・・・・陸君の本質は、闇じゃなかった・・・?)

 

 あの時、陸とゼロが見せた光。

 あれは、オウガが陸に求めたものとは真逆な物。

 おかしい。彼は闇の者で間違いなかったはずなのに。

 だからこそスライは陸にベリアルの力を植え付ける事でそれを開放し、計画の邪魔となるゼロと引き離そうとした。

 スライと目的の違いはあれど、オウガにとっても陸にベリアルの力を植え付ける事は計画の一端だったはずだ。

 根本的に見誤っていたのは、とある事だけで陸の本質は闇だと決めつけていた事。

 

(・・・・・・だったらボクも・・・。いやいや、それはありえないか・・・)

 

 一瞬頭に浮かんだ自分も光になれるのではないのかと言う益体の無い妄想を振り払う。

 陸もそういう運命だった。今回の事はそういう事に他ならない。

 

『まあ、オーブとジードがこの地球に来ちまうなんてのは、流石に予想もつかねーわな』

 

『ゥゥゥゥゥゥ・・・』

 

『ギャラクトロンの方は光の国の連中が掃討したようだが・・・・・。どうする、スライ』

 

『・・・少し、作戦を練り直す必要がありますね。オウガ。貴方は引き続き地球で彼等の動向を監視していてください』

 

「・・・・・・分かったよ」

 

 オウガに指示を出した後、スライはふと宇宙船の外に視線を向けた。

 

『・・・・・・はて? あの宇宙船は一体・・・・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――歌詞は?

 

 梨子はSNSのツールを使って、千歌に作詞の新着状況を尋ねた。

 すると千歌から泣いている犬のスタンプが送られてきた。スタンプにはゴメンとも書かれている。

 それに続き、

 

――――――明日には必ず・・・。

 

「・・・はぁ・・・・・・」

 

 ベッドに寝そべりながら、梨子はため息をつく。

 スクールアイドルを始めて、もう何度このやり取りを交わしただろうか。そしてこのスタンプも何回見ただろうか。

 

――――――そのスタンプ見飽きた。

 

 少し嫌味交じりに返信すると、千歌から別パターンのゴメンスタンプが帰ってきた。

 

「・・・・・・」

 

――――――そんなもの用意する暇があるなら早く書いて。

 

 更に怒っている幽霊のスタンプを送り付け、早くしろと千歌に催促をする。

 千歌が歌詞を書いてくれなければ梨子も曲が作れないし、皆も衣装や振り付けを決める事が出来ない。

 ダイヤにも早くしろと急かされているので、梨子からもしつこく言っておかなければ。

 しばらく待っても返信が帰って来なくなったので、作詞に取りかかったのだろう。

 そう思い携帯の電源を落とそうとすると、着信音が鳴る。

 

「っ・・・・・・」

 

 届いたメールを確認してみると、それはピアノコンクールの出場登録期限が迫っているという知らせだった。

 

「・・・・・・」

 

 しばらく携帯の画面を見つめたまま考え込んだ後、梨子は電源を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~つ~い~~~」

 

「ず~ら~・・・」

 

「・・・天の業火に闇の翼が・・・・・・」

 

「その黒いの脱ぎゃいいだろが」

 

 夏真っ盛り。

 太陽がじりじりと身体を照りつけ、耳障りな程に蝉が喧しく鳴き続ける。屋上にはロクに日影が無いのでこれから逃れることは不可能だ。しかも熱せられたコンクリートが発する熱が体感温度を余計に上げる。

 そんな地獄の様相を呈してきた世界の中、Aqoursは全員集合していた。

 

「どうしたんですか? 全員集めて」

 

 早くも暑さにやられた三人を一瞥した後、曜が全員に召集を掛けたダイヤに動向の理由を尋ねる。

 するとダイヤは悪役っぽい笑い方をした後、カッと目を見開く。隣では鞠莉も同じような笑い方をしていた。

 

「さて、今日から夏休み!」

 

「Summervacationと言えばー?」

 

「はい貴方!」

 

「うぇ⁉」

 

 無駄に息ピッタリのノリを披露した後、ダイヤが千歌に答えを要求する。

 

「えぇ・・・と・・・。夏休みと言えば・・・・・・、やっぱり・・・、海だよね?」

 

「夏休みは、パパが帰ってくるんだ!」

 

 自信なさげな千歌とは対照的に、曜は聞いてもいないのに心底嬉しそうに答えた。

 

〈やけに上機嫌だな。曜の奴〉

 

(・・・・・・アイツ生粋のパパっ子だからな・・・)

 

 中一まで父親と一緒に風呂に入ろうとしていた事は、曜の名誉のために言わない様にしておこう。

 

「まるはおばあちゃん家に・・・・・・」

 

「夏コミ!」

 

 それに花丸と善子が続く。

 各々の回答を聞いた後、ダイヤはプルプルと身体を震わせ始める。

 

「ブッブー! ですわ!」

 

「おぉ、久々に聞いた」

 

〈黒澤姉妹って独自言語多いよな〉

 

 呑気にその光景を眺める陸とゼロを一切気にする様子もなく、ダイヤは千歌に詰め寄っていく。

 

「貴方達、それでもスクールアイドルなのですか⁉ 片腹痛い! 片腹痛いですわ!」

 

 ダイヤの剣幕を目の当たりにし、もう既に色々と察しているらしい鞠莉とルビィを除いた全員がゴクリと喉を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上は暑かったので部室に移動。何故初めからここにしなかったのだろうか。

 

「いいですか皆さん。夏と言えば・・・・・・、はい、ルビィ!」

 

「ん~・・・・・・。多分、ラブライブ!」

 

「さっすが我が妹・・・・・・。可愛いでちゅね~、よくできまちたね~」

 

「頑張ルビィ!」

 

〈・・・・・・何故俺達は姉妹コントを見せられている〉

 

(知らん)

 

 ダイヤのシスコンっぷりに若干引き気味になりつつも、陸は最近出番が増えているホワイトボードに意識を向けた。

 そこには、全員に冷ややかな視線を注がれる黒澤姉妹がせっせと張り付けていた、恐らくどこかのグループの練習メニューであると思われる資料。

 

「夏と言えばラブライブ! その大会が開かれる季節なのです!」

 

 ダイヤの言う通り、夏にはラブライブ。その予選が開催される。

 それに加え背後の資料。

 そして夏休み前にダイヤが組んだ地獄の練習メニュー。

 きっと嫌な予感がしているのは陸だけではないだろう。

 

「ラブライブの予選突破を目指して、Aqoursはこの特訓を行います! これはわたくしが独自のルートで手に入れたμ‘sの練習メニューですわ!」

 

「凄い! お姉ちゃん!」

 

 ノリノリなのは黒澤姉妹だけ。陸と果南は苦笑いでそれを見守り、あとの六人は青ざめた顔でダイヤの言うμ‘sの特訓メニューとやらに視線を固定していた。

 

〈なあ陸。ダイヤの言うμ‘sってなんだ?〉

 

(・・・・・・伝説のスクールアイドルらしいぞ。自信無くなってきたけど・・・)

 

 あの練習メニューを見ただけではボディビルダーの集団かと勘違いしてしまう。あんなメニューこなしてたら全身の筋肉がとんでもない事になってしまいそうだが。

 

「ランニング・・・・・・、十五キロ?」

 

「腕立てに・・・、腹筋ニ十セット・・・?」

 

「遠泳・・・・・・、十キロ・・・?」

 

 ちょっと情報の出所を調べた方がいいかもしれない。

 最近ポンコツ化してきたダイヤならば、どっかの怪しいサイトから引っ張ってきていても何の違和感もない。ホントに初対面の時のお堅い生徒会長キャラはどこに消えたのだろうか。

 仮にこの練習メニューを実行したら、間違いなく果南以外は遠泳の途中で海の底に沈むことになるだろう。

 

「熱いハートがあれば何とかなりますわ!」

 

「ふんばルビィ!」

 

 さりげなくルビィが○○ルビィ系統の新技を披露した後、曜が顔を顰める。

 

「前も思ったけど・・・・・・、何でこんなにやる気なの・・・?」

 

 恐らく全員が思っているだろう事を曜は口にした。

 そんな曜に、先程までダイヤ側だった鞠莉が苦笑いをしながら近寄っていく。

 

「ずっと我慢してただけに、今までの思いがShinyしたのかも」

 

「何をゴチャゴチャと! さあ外にいって始めますわよ!」

 

「うゆ!」

 

『おい待て。そこのポンコツ姉妹』

 

 ノリノリで部室から出て行こうとするダイヤとルビィをゼロが制止する。

 正体がバレて以降、ゼロは開き直って堂々と人格を表に出すようになった。

 

「何ですのゼロさん。と言うか、ポンコツ姉妹とは聞き捨てなりませんわね」

 

 ダイヤに鋭い眼光を向けられてもゼロは一切意に介さず、ビシッと黒澤姉妹考案の練習メニューを指さした。

 

「・・・ゼロちゃん・・・!」

 

 きっとその練習はキツ過ぎると言ってくれるのだろう、誰もがそう思った時だった。

 

『メニュー、それじゃ足りなくないか?』

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 ゼロに期待していた全員が間抜けな声を上げる。

 

『お前等の目指してるラブライブってのがどんなもんなのかは知らないが・・・・・・、そんな甘っちょろい練習で突破できるもんなのかよ』

 

(おい・・・・・・お前な・・・)

 

 思わず陸も自分の耳を疑った。いきなり何を言い出すのだろうかこのバトルサイボーグは。頭の中まで筋肉でできているのだろうか。

 が、ダイヤは何故か意味深に笑みを深める。

 

「ふ・・・・・・、流石ですわねゼロさん。実はわたくしも物足りないと思っていたので――――――」

 

「そう言えば千歌ちゃん! 海の家の手伝いがあるとか言ってなかった⁉」

 

 ダイヤとゼロがただでさえ無茶のある練習メニューを更に強化しようと会合を始める前に、曜が大慌てでそれを遮る。

 

「ああ! そうだ! そうだよ! 自治会で出してる海の家を手伝うように言われてるのです!」

 

 言い訳と共に、千歌と曜の幼馴染コンビがビシッと敬礼を決めた。

 今この場においては白々しく聞こえなくもないが・・・・・・、

 

「あ、私もだ」

 

「・・・そーいや、俺等毎年海の家手伝わされてたな。すっかり忘れてたわ」

 

 直接自治会に言われているのは千歌と果南だけなのだが、幼い頃からの付き合いという事で陸と曜も毎年付き合わされているのだ。

 

「そんなぁ~・・・。特訓はどうするんですの⁉」

 

「残念ながら・・・、そのスケジュールでは・・・・・・」

 

「勿論サボりたい訳ではなく・・・・・・」

 

 サボりたがっているのは目に見えていた。

 

「んふ・・・・・・」

 

「「ヒィ・・・・・・!」」

 

 二人の意図を看破したらしいダイヤが気味の悪い黒い笑みを浮かべ、ビビった二人が同時に身を震わせる。

 

「じゃあ、昼は全員で海の家手伝って、涼しいモーニングアンドイブニングに練習って事にすればいいんじゃない?」

 

「それ賛成ずら!」

 

「ヨハネの名に誓って!」

 

 鞠莉の提案に、千歌達と同じく練習をサボりたいらしい花丸と善子が便乗する。

 

「ですが・・・・・・、それでは練習時間が・・・・・・」

 

 海の家を手伝っていたら時間が少なくなるのはもちろんの事、Aqoursはそれぞれ住んでいる場所が違うので集合にも時間がかかる。

 ちなみに一番家が遠いのはさりげなく陸と曜だったりする。

 

「じゃあ、家で合宿って事にしない?」

 

 唐突な千歌の提案に、皆口をそろえて「合宿?」と聞き返す。

 

「ほら、家旅館でしょ? 頼んで一部屋借りれば皆泊まれるし」

 

「そっか! 千歌ちゃん家なら、目の前海だもんね」

 

「移動ない分、早朝と夕方、時間取って練習できるもんね」

 

 千歌にしては珍しく理にかなった事を言った気がする。それならば練習の鬼のダイヤも納得してくれるだろう。

 

「でも、急に皆で泊まりに行って大丈夫ずらか?」

 

「何とかなるよ! じゃあ決まり! 陸ちゃんも参加してね!」

 

「え~・・・・・・」

 

 合宿という事は、必然的に早朝から練習するという事だろう。

 何故せっかくの休みに朝も早くから起きて自分が躍る訳でもない練習に参加しなければいけないのだろうか。

 

「・・・・・・逃げちゃ駄目だよ?」

 

「・・・へい」

 

 果南に釘を刺されて渋々承諾する。

 恐らく、これはもうなし崩し的に夏休み中毎日朝から叩き起こされるパターンだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは明日の朝四時、海の家に集合という事で!」

 

「「「「「「「お・・・、おー・・・」」」」」」」」

 

 合宿のあれこれも決まったので、今日はもう解散という事になった。

 

「ん・・・・・・?」

 

〈お・・・?〉

 

 皆がぞろぞろと帰っていく中、梨子だけがただ一人何か考え込んでいる様に立ち止まっている事に千歌とゼロが気付く。

 

「梨子ちゃん。どうかした?」

 

「え? ああ、うん。何でもない」

 

 千歌が声を掛けると、梨子はいつもの様に笑って返した。

 

〈・・・・・・・・・陸。ちょっと行ってくるわ〉

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 帰宅して自室に戻った梨子は、物憂げな表情でピアノに置いた紙を見つめていた。

 それは、ここ内浦に来る前には無かったもの。

 

〈・・・・・・梨子。なんだそれ?〉

 

「ふえっ⁉」

 

 自分以外誰もいないはずの部屋の中で声を掛けられ、思わず驚いた梨子だが、すぐにその声の正体を理解する。

 

「・・・なんだゼロちゃんか・・・、もう。脅かさないでよ」

 

〈ゼロちゃ・・・・・・、まあいい。何なんだそれ〉

 

「見て分からない? 楽譜よ」

 

 梨子は楽譜を手に取ってひらひらと揺らして見せる。

 

〈楽譜・・・・・・、楽器の歌詞みたいなもんか?〉

 

「・・・まあ、そんな感じかな。それよりどうしたの? いきなり私の所に来て」

 

〈・・・‥いや、何か悩んでるように見えたからよ。ちょっと気になってな。なんかあったのか?〉

 

 ゼロの問いに梨子は少し迷ったような仕草を見せた後、

 

「・・・・・・ゼロちゃんになら話してもいいかな。・・・皆には内緒ね?」

 

 梨子は薄暗い部屋の中ベッドに腰かけると、同じ部屋に置いてあるピアノに視線を移した。

 

「・・・・・・私が内浦に来る前に、ピアノをやってたのはゼロちゃんも知ってるよね?」

 

〈ああ。確か海の音だったか? それを聞こうと思ったのもピアノの為だったんだろ?〉

 

「うん。・・・で、これはその時の海の音をイメージして作った曲」

 

〈ふーん・・・・・・。で、それがどうかしたのか?〉

 

「これ見て」

 

 形態の電源を入れ、液晶画面に羅列された文字をゼロに見せてくる。

 

〈・・・・・・スマン。俺地球の文字は読めん〉

 

 地球に滞在するウルトラマンは任務の前に地球の文字やら文化やらを勉強するのが宇宙警備隊では一般的なのだが、ゼロはいつも行き当たりばったりで地球に滞在しているのでそのような教養を積んでいない。

 

「・・・・・・ピアノコンクールの出場登録の申込期限が近いんだって。それで、ちょっとね・・・」

 

〈・・・出りゃいいじゃねーか。せっかく曲もあるんだし。詳しくは知らねーけどスクールアイドル始めたのもピアノの為なんだろ?〉

 

「・・・・・・そうなんだけど・・・、この日、ラブライブの予選の日だからさ」

 

〈・・・・・なるほど〉

 

 確かにそれは悩ましい所だろう。

 

〈・・・ま、じっくり考えて決めろや。それじゃな〉

 

「うん。また明日」

 

 携帯の画面を見つめたまま返す。

 

「・・・・・はぁ・・・」

 

 ゼロが去って行った部屋の中で、梨子は深くため息をついた。

 

 




内容が平和なのはいつ以来だろうか・・・・・・。
そして主人公よりヒロインたちの変化に敏感なゼロさんマジイケメン。
今回の話はちょっぴり自己解釈も入ってきますのでご了承ください。




それでは次回で!
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