ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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アニメ二期分のシナリオが浮かばなくて困ってる作者です。
どうしても頭がトラウマ展開に持っていきたがるんだよなー。二期はそれに持っていける要素多いし。
まああれですよね、それよりさっさと一期分の話を終わらせろって感じですよね。
・・・・・・多分後二十話くらい一期やってると思うけど。



五十一話 海に還るもの

 棘皮怪獣ウニラが出現するほんの少し前。

 

「大切なもの?」

 

「それが歌詞のテーマ?」

 

「うん。まだちょっとしか書けてないんだけど・・・・・・」

 

〈・・・・・・?〉

 

(どしたのゼロちゃん?)

 

〈いや、何かお前の身体落ち着かねーなーって・・・・・・〉

 

 千歌、梨子、果南。そして勝手に千歌の身体に憑依したゼロは、梨子の部屋にてダンスの相談。の前に千歌の作った歌詞についての話題に触れていた。

 

「・・・・・・大切な、もの・・・・・・」

 

 千歌から手渡された歌詞に目を通した後、不意に梨子の視線が机の上に移る。千歌とゼロがそれを追うとそこには束ねられた数枚の紙があった。

 

〈あれは・・・・・・〉

 

 ゼロにはそれに見覚えがあった。

 海の音を元にして作ったピアノの曲。合宿前日にここを訪ねた際に彼女に教えた貰ったものだ。

 

(・・・ねえゼロちゃん。もしかしてあれって・・・)

 

〈もしかしなくてもピアノの譜面だ。海の音を元にして作ったんだってよ〉

 

(・・・てことは、本当はあの曲でピアノコンクールに出たかったって事かな?)

 

〈どーだか・・・〉

 

 ラブライブを理由にピアノコンクールを蹴った時、梨子はそれを口実にピアノから逃げているようにも感じられた。

 彼女の過去に何があったかは陸や千歌を通じて知った。

 つまりまだ、梨子は人前でピアノを弾く事に恐怖を抱いている可能性があるのだ。

 

「――――――歌」

 

〈・・・逃げてちゃなんも変わらないと思うけどな・・・・・・〉

 

(? ゼロちゃん。何か言った?)

 

〈いや。何でもない〉

 

「千歌!」

 

「うぇ⁉ 何? 果南ちゃん」

 

 ピアノの譜面とゼロとの会話に意識を向けていた千歌は、果南の声に反応するのが遅れる。

 

「話聞いてた?」

 

「う・・・、うん。勿論聞いてた――――――」

 

「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」」」

 

 苦し紛れにいい訳を返そうとした瞬間、海の方から何人もの人間の悲鳴が聞こえた。

 

「え・・・? 何・・・?」

 

 ただ事ではない事を察した果南が窓を開けると、海上に巨大な黒い物体が出現していた。

 

『昨日の隕石⁉ 何であんなトコに⁉』

 

「・・・ゼロちゃん、居たんだ・・・・・・」

 

『ちょっと行ってくる! お前等は他の連中が無事か確認してこい!』

 

 そう言うとゼロは千歌の身体を抜け、一体化している少年の元へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈陸!〉

 

「っ! ゼロか・・・」

 

〈何だこの騒ぎは。つか何であの隕石が上陸してやがんだ!〉

 

「・・・怪獣だったんだとよ。そこの宇宙人が連れてきたな」

 

 いまいち状況が飲み込めていないゼロが理解できるように、足元で転がっている逆人魚を指さした。

 

〈っ! インスマス星人・・・・・・。つーこた侵略目的か・・・・・・〉

 

 それなりに名が知れた宇宙人なのか、奴らの事はゼロにも知られていた。という事は、過去に何度かこうして他の星を侵略した事があるという事だ。

 

「・・・なら、あのウニみてーな怪獣の事も分かるか? ウニラっつーらしいんだが」

 

〈インスマス星人は侵略の際に使役する怪獣のレパートリーが豊富でな、宇宙警備隊でも全部は把握できてねーんだ〉

 

「つまり知らねーって事ね・・・」

 

〈まあ、俺達の敵じゃねぇよ。さっさと片付けようぜ〉

 

「だな。こんなんじゃ客もこねーし。また売れ残った堕天使の涙を食うのは嫌だ」

 

 怪獣を使役する宇宙人があまりにも珍妙な見た目をしているからか、いつに無い程落ち着き払いながら陸はウルトラゼロアイを装着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ごあっ・・・・・・‼」』

 

 登場と共に猛スピードでウニラに突っ込んだゼロだが、奴の全身からミサイルの様に放たれた棘が直撃して海中に墜落する。

 

「あの棘発射できるのかよ⁉」

 

『みてーだな・・・。迂闊に近寄れねーぞ・・・・・・』

 

 光線技が効かなかった事から予想はしていたが、やはりウニラの棘もかなりの硬度を誇っていた。その一撃はやはり重い。

 

『フハハハハハ! どうだウルトラマンゼロ! 我がインスマス星が誇る最強怪獣、ウニラの力は!』

 

 ゼロが奴等を知っていたように、奴等もゼロの事を知っていた。どうやら自称宇宙警備隊のスーパーエリートと言うのはあながち間違いではなかったらしい。

 

「っ! おいゼロ前!」

 

『ぐおぁっ・・・・・・・・・!』

 

 よそ見をしていたところに更に三本の棘が襲いかかり、吹き飛ばされて海沿いの町中をゼロが転がる。

 

『っ・・・・・・』

 

 起き上がると、ウニラはその形状が変化していた。

 あのウニのような外装はやはり殻だったらしく、今はそれを展開して内部に海水を補給している様に見えた。

 ただ、今の姿はどう見てもウニではない。

 殻を三つに分けて展開した事で露出したウニラの内部は、眼球。眼球そのもの。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 どうやらあの眼球が本体らしい。

 

「気持ちワリィ・・・・・・」

 

『・・・? 身体を冷やしてるのか・・・? ・・・・・・っ!』

 

 何かに気付いた様にゼロは空の太陽を見上げる。

 

『・・・・・・なるほどな』

 

 声音に勝利への確信を含ませた後、ゼロは身体を赤く煌かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふはっ・・・、あのウルトラマンゼロですら手に余るとは傑作だ』

 

 がらりと人がいなくなったビーチの中。先程から馬鹿の一つ覚えの様にウニラへと炎を浴びせ続けるゼロを見て、インスマス星人はあざ笑うように目を細めた。

 そして目の前に広がる内浦の海に視線を移す。

 

『もうすぐだ。もうすぐこの美しい海が我らの物に・・・・・・』

 

 インスマス星人は水が無いと生きる事が出来ない種族だ。

 だがインスマス星の海は、過度な環境汚染によって生物が住めない程に汚れてしまった。ウニラは、汚れた海とインスマス星固有の生物が化学反応を起こして生まれた生物だ。他の生物兵器もほとんどはその結果誕生している。

 奴ら生物兵器は汚れた海の環境に適応できたからいい。だが星の支配者であるインスマス星人は今の海の環境に適応出来す、このままでは絶滅してしまう。

 だから元のインスマス星のような清らかな水を湛えた星を見つけなければならないのだ。

 地球は、まさしく打って付けの環境と言えよう。

 しかしこの星に住まう人類はかつてのインスマス星人の様に海の環境を汚し続けている。それではここを新たな生活の場所とした意味がない。

 だから、地球人は支配、ないしは滅ぼさなければならないのだ。

 

『っ・・・・・・?』

 

 勝利を確信し、ゼロを倒した後地球で過ごす華やかな日々に思いを馳せていたインスマス星人だが、ここでウニラの様子がおかしくなっている事に気が付く。

 

『まさかっ・・・・・・!』

 

 その理由に気が付いたが、時すでに遅し。

 ウニラはだらしなく殻を展開すると、派手な音を立ててその場に倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・? どうなってんの・・・?」

 

 固い殻のせいで攻撃が通用しない事からウニラ優勢と思われていたのにも関わらず、突如としてウニラは露出させた眼球から湯気を立ち昇らせて伸びきってしまった。

 ゼロがやっていた事と言えば、ただガルネイトバスターをぶっ放し続けていただけ。

 

『覚えてないか? 陸。アイツはさっき殻の中に籠った熱を冷ますために殻を開いて中身を海水で浸しただろ?』

 

「・・・・・・それがどうかしたのか?」

 

『つまりな。いくら頑丈で攻撃を防ぐことは出来ても、熱までは防げないってこった』

 

 ゼロのその説明でようやく納得する。

 言われてみればそうだ。あんな密閉空間に炎の攻撃を喰らえば、そりゃ中の温度も上がるだろう。

 地球の太陽光だけで給水しなければいけない程の熱が籠るのだ。太陽光の何百倍も熱いガルネイトバスターを喰らい続ければ、中の温度は耐えきれない程の高温になっていたはずだ。

 

『ば、馬鹿な・・・、我ら最強の兵器が・・・・・・』

 

 愕然とするインスマス星人を尻目に、ゼロは再び右腕の温度を上昇させていく。

 

『死にたくねぇ奴はさっさと失せな・・・・・・。ハイ3、2、1・・・・・・』

 

『『『ヒイィィィィィ・・・・・・!』』』

 

 おおよそ正義の味方のそれとは思えないゼロの言葉を聞いたらしいインスマス星人達が一斉にウニラの中から飛び出してくる。

 ゼロが奴等のデスカウントを刻んでいる事もあって、皆我先にと逃げる事に必死だった。

 

『0・・・・・・。ガルネイトォ・・・・・・バァスタァァァァァァァァァァ‼』

 

 一応全員が脱出するのを見届けてから、ゼロは爆熱の奔流をだらしなく全身を投げ出しているウニラに叩き込んだ。

 柔らかい本体の部分に光線を直撃させられ、全身炎に包まれながら棘皮怪獣ウニラは爆発を起こした。

 

『あ・・・・・、あぁ・・・・・・』

 

 目の前で最強と謳っていたウニラを破壊され、茫然自失とするインスマス星人達。

 

『・・・・・・・・・お前等焼いたら美味そうだな・・・・・・、ちょっと焼いてみっか』

 

『ヒイィィィィィィィィ⁉』

 

 しゃがみ込んだゼロが右腕に炎を宿すと、インスマス星人達は大慌てで海の中へと駆け込んでいく。

 そして脱出用にでも持ってきていたのか、ウニラとは別の怪獣に乗り込むと、ゼロから逃げる様に大空へと飛び立っていった。

 

「お前別にもの食わないじゃん」

 

『冗談だよ。じょーだん』

 

「お前のナリで言われると冗談に聞こえないんだよな・・・・・・」

 

 見た目って結構大事だと思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はあぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」」

 

「今日も・・・・・・売れなかったんだね・・・・・・」

 

 本日も大量に余ったシャイ煮と堕天使の涙を前に、鞠莉と善子が肩を落とす。

 どちらとも昨日に比べれば少しは売れたのだが、ウニラの出現以降全く客が入らなくなり、今日も大量の在庫を出す結果となってしまった。

 ちなみにヨキソバの方は今日も完売だったらしい。神は曜に何物を与えたら気が済むのだろうか、

 

「出来た! カレーにしてみました!」

 

 そんな完璧超人よーそろーが本日の夕飯として作ったのは、シャイ煮と堕天使の涙が投入されたカレーだった。

 

「船乗りカレー・with・シャイ煮と愉快な堕天使の涙達」

 

「死人出す気かお前」

 

 曜の料理の腕は理解しているし、実際美味い事も重々承知しているのだが、これだけは度し難かった。

 カレーと魚を混ぜるととんでもない事になるという暗黙の了解をぶち破った上に、それだけで核爆弾となりかねない堕天使の涙がゴロゴロ。

 正直こんな殺人カレーをすき好んで口に入れる奴がいるとは思えない。

 

「じゃあ梨子ちゃんから召し上がれ」

 

 最初の犠牲者に選ばれた哀れな子羊は梨子だった。

 プルプルと震えながら、その船乗りカレー・with・愉快な堕天使の涙達を口に運び・・・・・・、

 

「・・・・・・美味しい。凄い! こんな特技あったんだ!」

 

 予想外の感想を紡ぎあげた。

 すると落ち込んでいた鞠莉が凄い速度で船乗りカレー(以下略)を手に取り、それを口にする。

 

「ん~・・・、delicious!」

 

 どうやらお気に召したらしい。

 

「パパから教わった船乗りカレーは、何にでも合うんだ!」

 

「ふふ・・・、これなら明日は完売ですわ・・・・・・」

 

「お姉ちゃん・・・?」

 

「・・・ん?」

 

 皆がワイワイやっている中、ただ一人千歌だけが浮かない表情をしている事に気がつく陸。

 

「どうした? 食わないのか?」

 

「・・・ああ、うん。ちょっとね・・・・・・」

 

 声を掛けたのが陸だと分かると、千歌は視線だけで訴えてきた。

 視線の先には梨子。それだけでなんとなく言いたいことは分かる。

 

「・・・コンクールの事か?」

 

「・・・うん。やっぱりまだ悩んでるみたいで・・・・・・」

 

 皆に聞こえない様に、互いに小さな声で言葉を交わす。

 

「わっ! 二人共どうしたの?」

 

 そんな陸と千歌に気が付いたのか、曜がいつもの笑みを浮かべて駆け寄ってくる。

 

「・・・ううん。何でもないよ・・・」

 

「・・・・・・気にしないでいいぞ。ホントに何でもないから・・・」

 

 気にしてないと言いつつ、梨子の方に視線を戻す。

 

「っ・・・・・・」

 

 陸と千歌としては、話してしまうのは梨子に悪いし、曜にも変に考えさせないためにした行為だった。

 だが二人は知らない。見え透いた嘘をついたことで、曜が何かを察したように目を見開いた事。そして、

 

 

 曜の身体に、黒い影のようなものが入り込んだ事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんぎゃああぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

『っ⁉ 何だ⁉ 何事だ⁉』

 

 突如響いた悲鳴を聞き付け、ゼロが陸の身体を乗っ取り、大慌てで千歌の部屋に駆け込む。

 するとそこには声の主と思われるダイヤが床に倒れていた。

 

『おい! 一体何があった⁉』

 

「あはは・・・・・・」

 

 苦笑いでルビィが指さす先には、片目にシールを張り付けながら寝ている鞠莉が。傍らには剥がれたらしいシールの片割れが墜ちていた。

 

「・・・お姉ちゃん、それ見て鞠莉さんの目が墜ちたと勘違いしたらしくて・・・・・・」

 

『・・・っんだよ・・・、驚かせるな全く・・・』

 

「きょ、今日は遅いからもう早く寝よ!」

 

 ゼロが脱力して座り込むと同時に、千歌が妙に早口でそう皆に呼びかけてきた。

 

「? どうした千歌。お前昨日はこの時間散々喋り倒し―――」

 

 普段なら率先して夜更かしを進めてくるような千歌の妙な提案を不思議に思い、その事を問おうとした陸だが、すぐにその理由を理解することになる。

 千歌が皆を説得しながら時折ちらちらと視線を配る方向。そこには少し開いた襖の間からこちらを覗いてくる目が一つ。どうやらダイヤの悲鳴を聞き付けたらしい。

 旅館の神様、高海美渡の降臨である。

 ちなみに登場と同時に相手の尻子玉をひっこ抜くという恐ろしいスキルを持っているという。

 

「・・・確かに引き上げた方がいいかもな・・・・・・」

 

 陸の言葉を皮切りに皆(主に千歌)は尋常じゃない速度で布団を敷き、眠りについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「りーくちゃん」

 

 慣れ親しんだ声が、閉ざされていた意識を急速に呼び起こしていく。こんな事昨日にもあった気がする。

 目を開けば、やはりそこには千歌がいた。

 

「・・・今日は何だ・・・?」

 

「ちょっとついて来て」

 

 千歌にそう言われ、今日は監視役として同じ部屋に配置された曜を起こさない様にそっと布団、そして部屋から出る。

 部屋の外には既に千歌によって起こされたらしい梨子がおり、眠そうに欠伸をしていた。

 

「・・・仙道君・・・?」

 

「・・・・・・お前もか」

 

 ここにいる面子的に千歌が何をしたいのかはなんとなく分かる。十中八九梨子のピアノコンクールについてだろう。

 

「ゼロちゃんゼロちゃん」

 

『ああ?』

 

 必要な人間が揃うと、千歌は陸の中にいるゼロに耳打ちをした。耳に触れる彼女の息遣いが妙にくすぐったい。

 

(は・・・・・・? お前何言って・・・)

 

『・・・今日だけ特別だからな』

 

「・・・うん。ありがと」

 

(おい待てお前――――――)

 

『シェヤァ!』

 

 ゼロは初めて陸の了承を得ずに変身すると、人間大のまま千歌と梨子を抱えて開いた窓から飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら、思いっきり弾けるでしょ?」

 

 千歌がゼロに頼んで連れてきてもらったのは、深夜の浦ノ星女学院の音楽室だった。

 

「梨子ちゃんが自分で考えて、悩んで、一生懸命気持ち込めて作った曲でしょ? だから、聞いてみたくて」

 

 千歌は音楽室に鎮座していたピアノに歩み寄ると、いつの間にか手に持っていた楽譜らしきものを梨子に差し出した。

 

「・・・でも・・・」

 

「おねがーい、少しだけでいいから・・・・・・」

 

 せがむ千歌の視線から逃れる様に陸の方を見てくる。きっと何とかしてくれと訴えているのだろう。

 だが、

 

「・・・俺からも頼む」

 

『無論、俺もな』

 

 陸とゼロは千歌の意見に乗った。

 梨子が千歌の頼みにはい、ともいいえ、とも言わないのは弾きたい気持ちはあるのだけれど、まだどこかで迷いがある証拠だ。

 

「・・・・・・そんなに、いい曲じゃないよ?」

 

 梨子は少し考える素振りを見せた後、自信なさげにそう言った。

 三人の頼みを聞き入れると、梨子は蓋を開けて椅子に座り、覚悟でも決める様に息をついた。

 そして鍵盤に手を伸ばし、一瞬ピクリと拒絶するかのように手を止める。

 

〈やっぱりまだ抵抗があったか・・・・・・〉

 

 千歌の話を聞く限りだと梨子一人の時に弾く分には普通に弾けていたらしいのだが、人前となるとまた違うらしい。

これもコンクールの際、大勢の前でピアノを弾けなかった事が影響しているのか。

 しばらく間を置いた後、梨子は意を決して鍵盤に触れた。

 

「「〈・・・・・・・・・」」〉

 

 そこからは無言の時間が続く。

 深夜の音楽室に溶け込んでいくのは、梨子の奏でるピアノの音色。

 陸もゼロも、魂が抜き取られたかの様にその音色に耳を傾けていた。

 ふと、隣の千歌に視線を移す。

 千歌もまた無言で、目を輝かせながらピアノを演奏する梨子を見つめていた。

 しばらくの間、心地の良い感覚を現出した後、梨子はピアノを弾く手を止めた。

 

 

 

 

 

 

「いい曲だね・・・」

 

 朝日が昇りつつある駿河湾を眺めながら、千歌は正直な感想を紡いだ。

 

「すっごくいい曲だよ。梨子ちゃんがいっぱい詰まった」

 

 梨子が内浦に越してきてからの日々が詰まっている様に思えた。そう思わせてくれる程、梨子にとってここでの日々やAqoursの皆が意味のあるものになっていたという事だ。

 

「梨子ちゃん」

 

 少し離れた場所で二人を見守る陸の前で、千歌は梨子の名を呼ぶ。

 

「ピアノコンクール出て欲しい・・・・・・」

 

「っ・・・!」

 

 千歌の唐突な申し出に目を見開いたのは梨子だけだった。陸とゼロは、なんとなく千歌がやりたかったことを察していたからだ。でなければこんな時間に梨子を呼び出してピアノを弾かせる訳がない。

 

「こんな事言うの変だよね。滅茶苦茶だよね。・・・スクールアイドルに誘ったのは私なのに・・・、梨子ちゃん、Aqoursの方が大事って言ってくれたのに。でも、でもね―――」

 

「私と一緒じゃ、嫌・・・・・・?」

 

「違うよ! 一緒がいいに決まってるよ!」

 

 悲し気に梨子が口にした言葉を、千歌は強く否定した。

 

「・・・思い出したの。最初に梨子ちゃん誘った時の事。・・・あの時私、思ってた。スクールアイドルを続けて、梨子ちゃんの中で何かが変わって、またピアノに前向きに取り組めたら素敵だなって。そう思ってたって・・・・・・」

 

「・・・・・・でも」

 

 梨子は口籠る。恐らくまだ気持ちが揺らいでいるのだろう。そんな彼女に、千歌は静かに手を差し出した。

 

「この町や学校、皆が大切なのは分かるよ? 私も同じだもん。でもね、梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?」

 

 ハッと目を見開く梨子。

 

「・・・・・・その気持ちに、答えを出してあげて?」

 

 千歌だって、梨子がピアノよりもスクールアイドルを優先してくれたことは嬉しいに決まっている。

 だがそれではダメなのだ。梨子がここでピアノコンクールを蹴るのは、スクールアイドルを通じて彼女を前向きにピアノに取り組ませたいという千歌の当初の理念に反する。

 だからこそ、もう分かっている梨子の真意を、彼女の口から聞こうとしているのだろう。

 

『梨子』

 

 そしてゼロもそれに続く。彼もまた梨子に対して思う所があったからだ。

 

『今のお前がピアノじゃなくてラブライブを選ぶのは、ピアノからの逃げ以外の何でもない。お前はその口実にラブライブを使ってるんだよ』

 

 ゼロはあえて厳しい言葉を梨子にぶつける。

 

『そんなのひたむきにラブライブと向き合ってるAqoursの連中への侮辱。・・・・・・そんで今までピアノを頑張ってきたお前自身を否定する事だ』

 

 ここまでくると少し偏見も混ざってくるが、誇張気味とはいえ大筋は間違ってはいない。

 

『本気でピアノもスクールアイドルも愛してるんだったら、どっちも成功させるくらいの気概でやれ‼』

 

 ゼロはずかずかと梨子に歩み寄ると、限界まで顔を寄せてそう強く言い放った。

 梨子の表情にはまだ戸惑いの色が滲んでいる。それはまだ、ピアノに対しての恐れがあるから。

 だったら、ここはマネージャーとして背中を押してやるべきだろう。

 

「・・・桜内。お前がAqoursの皆を大切に思うのは自由だけど、自分のやりたい事まで皆に委ねちゃ駄目だ。自分の道は自分で決めなきゃならない」

 

 かつて自分が、先輩ウルトラマンに背中を押された様に。

 

「道に迷ったら、仲間の事を思い出せ。過ごした時間を、夢を、・・・・・・自分が何故、ここにいるのかを」

 

 ゼロからジード、ジードから陸に受け継がれてきた言葉を。

 

「お前も、俺達も一人じゃない。・・・・・・それを俺に教えてくれたのは、お前等だぜ?」

 

 そしてAqoursの皆に教えてもらった事を、改めて伝え返す。

 

「私待ってるから! どこにも行かないって、ここで皆と待ってるって約束するから・・・・・・、だから!」

 

「っ!」

 

 千歌が言い終わるよりも早く、梨子はその言葉を遮って抱き付いてくる。

 千歌、陸、そしてゼロに。

 

「・・・・・・ホント、変な人達・・・」

 

 突然の事に戸惑いながらも、涙ぐむ梨子を見て千歌も陸も笑う。

 

「大好きだよ・・・・・・」

 

 

 道なんてのは、どれが正しいなんて誰にも分からない。

 進んだ後に後悔を呼ぶ道、これでよかったと思える道、それはそれぞれ違うだろう。

 だったら今は、自分の心に正直に進めばいい。

 未来が平等に約束されたものでないのなら、自分の気持ちに素直になった方がいいに決まっている。

 光の差す方へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方。

 

(・・・・・・陸・・・、千歌ちゃん・・・・・・)

 

 渡辺曜は、十千万の一室から朝焼けの海辺を見つめていた。

 そこにいるのは三人の少年少女。幼馴染である仙道陸と高海千歌。・・・・・・そして桜内梨子。

 

「・・・・・・」

 

 海の家でのやり取りの際、二人は何でもないと言いながらも気に掛ける様な視線を梨子に向けていた。

 合宿が始まってから、陸も千歌も梨子を気に掛けているような仕草をする事が多くなった。

 きっと梨子には何か悩みがあって、その事を二人は案じているのだろう。それは友達思いの千歌、何だかんだで困っている人を放っておけない陸だからこそだろう。

 でもなぜか、その事。二人が自分以上に梨子と仲良くなっていくのが快く思えない。

 

 

――――――憎いか?

 

 

「・・・・・・え・・・?」

 

 ふと脳裏に声が響く。

 部屋には曜以外誰もいないので空耳と思い流すことにした。が、

 

 

 不快にも、その声はいつまでも頭の中で反芻していた。

 

 




ウニラの倒し方は、ちょっと前に読んだラノベのワンシーンを参考しました。分かる人は僕のお友達。

さあ、次回から遂に僕の押し、渡辺曜メイン回の「友情ヨーソロー」の話に入って行きます。今回の話の終わり方からして全く平穏に終わりそうな気配はございませんが。

一応少しだけ解説を入れておくと、

作者は二年生(特に曜ちゃん)押し。
作者は好きなキャラ程虐めたくなる歪んだ性格の持ち主。
曜ちゃんの中に入り込んだのは相当ヤバい奴。

ってことぐらいですかね。
あとバリバリ僕の個人的見解が入りまくります。


千歌、曜、梨子「「「不安だ・・・・・・」」」



それでは次回で!
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