評価をして下さった方々やお気に入り登録者の方々もひっくるめ、この作品を閲覧して下さっている皆様。心から感謝申し上げます。
今後ともウルトラゼロライブサンシャインでお楽しみ頂けたら幸いです。
・・・タイトル変えようかなとか思い始めた今日この頃。
コンビニ前での延長練習も終わり、陸と曜は二人並んで赤く染まった帰路を進んでいた。
「・・・・・・お前さぁ・・・、あれでよかったのか? ダンス」
「・・・?」
そんな中、陸は気になっていた事を自転車のハンドルに顎を乗せながら問いかける。
「・・・・・・さっきの振り付け、桜内のやつだよな」
何十回も二人が失敗する様子を見てきた陸には分かる。
初めて成功した時の曜の振り付け、歩幅、リズム。それらは全て本来そこのポジションだった梨子のものだ。
別に成功するならそれに越したことは無いのだが、陸の中でその事がどこか引っ掛かっているのだ。
「・・・いいんだよ」
諦めにも聞こえる、溜息混じりの声音。
「もともと千歌ちゃんと梨子ちゃんで作ったダンスだもん。・・・私はそれに合わせないと・・・・・・」
そして自分自身も納得させるように、曜は儚げに笑った。
まあ、筋は通っているだろう。
曜の言う通り、あの振り付けは千歌と梨子が作ったものだ。それを今更曜と合わせるとなると時間がかかるのは否めないし、他の事にもやることは色々あるのであまりそこばかりに時間は割けない。
よって彼女の判断は妥当ともとれる。
が、
「・・・それってさ、お前じゃないじゃん」
「え・・・?」
曜が自分のスタイル、輝きを捨ててまで尽力することは、Aqoursにとってはいい事だろう。
だがそれはAqoursの発起人、千歌の理念に反するものだ。
「・・・・・・お前自身はどうなるんだよ。今のままじゃ、お前は渡辺曜じゃなくて桜内梨子の代わりの人間、なんだぞ」
「・・・・・・・・・」
曜はその言葉を肯定するでも否定するでもなく、黙って下を向いてしまった。
きっとそれは曜も分かっていた事なのだろう。だからこそ返答に困っている。陸にはそう見えた。
「・・・・・・いいんだよ。私はこれで――――――」
「うりゃっ!」
「「っ⁉」」
何か言いかけた曜の胸の膨らみを鷲掴みにする影が現れる。
「オーウ! これは果南にも劣らな――――――」
「とおぉぉりゃぁぁぁ‼」
「い・・・?」
「え・・・?」
陸がその正体に気付いた時には、既にその影は宙を舞っていた。そしてその金色の髪を持つ少女は、何と陸に向かって飛んできているではないか。
「ぐえっ・・・・・・!」
「アウチッ!」
かわして怪我をさせる訳にもいかないので、仕方なく受け止めようとし、結局転倒した陸を重い衝突の衝撃が襲う。
「・・・・・・え? ま・・・、鞠莉ちゃん⁉」
「・・・・・・何やってんだよアンタ・・・」
「えへへ・・・・・・。ついつい・・・」
突然曜にセクハラを仕掛けた犯人―――小原鞠莉は、陸を下敷きにしたまま苦笑いを浮かべた。
「千歌ちゃんと?」
鞠莉と曜は場所を変え、駿河湾に沈む夕日を眺めながら話し合っていた。
ちなみに陸は鞠莉がガールズトークがしたいとの事で追っ払ってしまった。
「ハイ~。上手くいってなかったでしょ~」
「あ・・・ああ・・・・・・、それなら大丈夫! あの後二人で練習してうまくいったから」
陸と似たような事を言われて一瞬戸惑ったが、すぐに曖昧な笑みを浮かべてそう言い返す。
しかし鞠莉はその答えに対して首を横に振る。
「いーえ。ダンスの事じゃなく・・・」
「えっ・・・?」
「ちかっちやりくっちを梨子に取られて、ちょっぴり嫉妬ふぁいやぁ~~~~♪が、燃え上がってたんじゃないの?」
「嫉妬⁉ いや・・・、まさかそんな・・・」
合宿以来ずっと静かに、されど確かに燻っていた感情を抑え込みながら、曜は取り繕って答えた。
すると鞠莉は曜の頬を抓って引っ張り出す。
「ひゃあぅぅぅぅ~~!」
「ぶっちゃけトーク♪ する場ですよ? ここは」
解放された頬に手を当てながら彼女を見つめる曜に優しく微笑みかけると、近くの椅子に座る。
「話して。こんなのあの二人にも、梨子にも話せないでしょ? ほ~ら~」
ポンポンと自分の隣の席を叩く鞠莉に、曜は観念したように隣に座った。
「・・・私ね。昔から千歌ちゃんと一緒に何かやりたいなーって、ずっと思ってたんだけど・・・・・。その内中学生になって・・・」
曜は水泳部に入り、その時に千歌もどうかと誘ったのだ。
けれども千歌の答えはNOだった。
その後も何度か誘う機会はあったのだが、その度に尽く断られてきたのだ。
「・・・・・ちなみにりくっちは?」
「陸は・・・・・、そもそも集団行動が好きじゃなかったから・・・」
「・・・・・・りくっちらしいわね・・・」
「・・・だから、千歌ちゃんが私や陸を誘って、一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれた時は、凄く嬉しくて、これでようやく一緒に出来るって・・・・・・」
だがそのすぐ直後に梨子が入り、気付いた時には皆が集まって九人になっていた。
始めた当初は自分達二人だけだったから付き合ってくれていると思っていた陸も、何だかんだで今もAqoursに寄り添ってくれている。
もともと大勢で行動するのが好きではない陸をそうさせるのは、Aqoursの皆が陸を変えたから。
「もしかしたら千歌ちゃん。・・・私と二人は、嫌だったのかなって・・・・・・。陸も、他の皆といる時の方が楽しそうだし・・・・・・」
前に梨子が皆千歌の為にスクールアイドルをやっている訳ではないと言っていたが、曜はスクールアイドルをやる理由をある程度あの二人に依存している。
だからこそ、千歌と陸に必要とされていないかもと言うこの状況が不安で堪らないのだ。
周りからは容量がいいと思われがちだが、実は全然そんな事はなく、むしろこういう事になると誰よりも、そしてどこまでも不器用なのだ。そういう自分とはやりにくいのかなと、そう思う事も時折ある。
「とりゃ」
「いたっ⁉」
そこまで言い募った辺りで、頭に鞠莉からの手刀が落ちる。
「何一人で勝手に決めつけてるんですかっ⁉」
「・・・だって・・・・・・」
「えい!」
「ふやぁぅぅぅぅぅ・・・・・・」
鞠莉は再度曜の頬を弄んだ後、立ちあがって彼女に背を向けた。
「曜は、二人の事が大好きなんでしょう?」
「ええっと・・・・・・、そのっ・・・」
頬を赤く染めて慌てる曜に、鞠莉は振り返らずに言った。
「いいよ素直に言って。何のためにりくっちを追っ払ったと思ってるの?」
夕日を背にサムズアップを決める鞠莉。どうやら初めからそれを聞き出すことが目的だったらしい。
「・・・・・・・・・・・・うん・・・」
「・・・だったら、本音でぶつかった方がいいよ」
耳まで真っ赤に染め上げる曜を彼女は冷やかすでも馬鹿にするでもなく、そう優しく言葉を投げかけた。
「大好きな友達に本音を言わずに、二年も無駄にしてしまった私が言うんだから、間違いありませーん!」
少しばかり自虐が混じるその声は、どこか物悲しい感覚で胸に染みた。
「・・・・・・本音、ねぇ・・・」
曜は自室のベッドに寝そべると、鞠莉に言われた言葉を思い出しながら呟いた。
陸と千歌に対して本音、つまり自分の気持ちを伝えろという事は・・・・・・、告白しろという事だろうか。
「・・・・・・いやいや。無理だって・・・」
考えただけでも身体が火照ってくる。告白って一体なんの罰ゲームなのだろうか。
「・・・・・・けど・・・」
千歌にその心配はないだろうが、陸の方は少し怪しいかもしれない。
鞠莉との話題に出てきた梨子はもちろんの事、この頃千歌の陸に対する視線も少し変。何というか、女の子のそれだ。他だと花丸も、妙に陸に懐いているし。
いつ誰が何かの弾みでそういう関係になってもおかしくないのは確かだ。
「・・・・・・でもどうせ私が・・・その・・・、あれしたって・・・」
陸がダイヤを殺しかけたショックで、しばらくAqoursを遠ざけていた時。
曜が何度練習に顔を出してくれと訴えても来てくれなかったのに、千歌が頼んだら一発で聞き入れてくれた。
千歌も久々に陸と顔を合わせてからは、失っていた笑みを取り戻していた。
二人が曜よりも互いを特別視してるのは確かだ。
それに二人共梨子と一緒にいる時の方が、自分といる時より楽しそうに見える。
きっと二人の中では自分は・・・、
『ただ近くにいるだけの存在。その程度の認識だろうな』
「え・・・・・?」
深層意識の底を打つように、何者かの声が不快な響きで脳裏に響く。
『いい加減受け入れろ。自分は誰からも必要とされていない事を』
「・・・誰・・・・・・?」
『お前をこんな状況にしたのは誰だ? 分かるだろう?』
合宿の時にも聞こえたこの声。
聞いていると気がおかしくなってしまいそうで思わず耳を塞ぐが、その声は変わらず語り掛けてくる。
『恨め。憎め。お前から大切なものを奪っていく者を・・・・・・』
「・・・・・・なんなのぉ・・・」
不覚にも頭に浮かんでしまったある少女の顔を振り払うと、曜はその声から逃げる様に布団の中に潜り込んだ。
「これでよしっと・・・」
梨子は東京の街を散策し、そこで購入した物をAqoursの皆に送った。
自分を笑顔で送り出してくれた皆への、自分なりのサプライズだ。
「・・・・・・ちょっと練習しておこうかな・・・」
せっかく部屋にピアノを置いてもらっているのだ。これで練習しないのは少しもったいない気がする。
何より皆が背中を押してくれたのだ。自分に出来得る限りの最大の演奏をするために、出来るだけピアノに触れていたい。
『ククク・・・・・・』
「っ⁉」
突然耳朶を打つ邪悪な笑い声に反応し、咄嗟にその方を向く。
「えっ・・・・・・」
そこで見た見覚えのある顔に、梨子は思わず硬直してしまう。
顔も姿も変わらないはずなのに、身に纏っている雰囲気がまるっきり違う。
『・・・次はお前だ』
「きゃああぁっ‼」
その影が振るった腕から闇が放たれ、梨子を飲み込んでいく。
「くぅっ・・・! ぁ・・・・・・、あぁ・・・!」
闇に蝕まれ、床を転がりながら苦しむ梨子を見下ろしながら、その影は嗜虐的に笑みを深める。
『・・・・・・後は・・・』
気を失った梨子が力なく四肢を投げ出すと同時に、その影は闇となって消えていった。
翌日。
「―――――ぉい! 曜!」
「ふぇっ⁉」
心をどこかに置いてきたかのように上の空だった曜が、陸の呼びかけでようやく意識を目の前に引き戻す。
今はラブライブに向けての練習の為、学校へと向かっている最中だった。
だったのだが、昨日部屋の中で聞こえた声をどうしても払拭することが出来す、ずっとその事について頭を悩ませていたのだ。
「・・・・・・大丈夫かお前。今日ずっとそんな感じじゃんか」
「・・・う、うん。大丈夫大丈夫・・・・・・」
誤魔化すように笑うが、そんな上辺だけの笑いは幼馴染には通用するはずがなく。余計に陸の疑いを深める事になった。
「体調悪いんなら今日は休んどけよ。千歌達には俺から言っておくから」
「ホントに! ホントに大丈夫だから!」
別に体調に問題がない事を訴えるためにぴょんぴょんと跳ね、それでもまだ眉を寄せる陸の背中を押す。
「ほらほら。早くしないとダイヤさんに怒られちゃうよ~」
「・・・・・・まあ、別に大丈夫ならいいんだけどよ・・・・・・」
誤魔化し方が露骨なので余計に怪しまれただろうが、多少強引にやらないと陸は聞き入れてくれないので仕方ない。
「・・・それよりさ・・・」
「んあ?」
陸の背中に当てた手を握ると、上目遣いで彼の顔を覗く。
昨日鞠莉にあんな事を言われた後だと、互いに顔を見つめているこの状況が妙に恥ずかしく思えてくる。
目つきは悪いし格好はだらしないし寝癖を直そうともしないし、本当にどうしてこの少年だったのか。
「・・・何?」
「ええっとね・・・・・・、その・・・・・・」
状況を作ったはいいものの、何を言ったらいいのか分からなくなる。
そもそも自分は、この気持ちを伝えてどうしたいのだろうか。
別に何か特別な関係になりたいとかそういう訳ではない。今の様にただ一緒にいられればそれでいい。そしてそれは千歌とも同じ。
幼い頃からずっとそうで、これからもずっとそのまま。そう思っていたのだが。
――――――お前は誰からも必要とされていない。
幻聴のように頭に響いたこの声が、素直にそう思わせてくれない。
だからせめて、陸と千歌の二人にどう思われているのくらいは知っておきたいのだ。そうすればこんな声に惑わされることも無くなる。
「・・・・・・あのさ。陸って、私の事どう思ってる?」
こんな事告白してるのとほぼほぼ同義だが、彼ならば問題ない。超鈍感の陸だからこそ使える荒業だ。
「・・・あ? どうした急に?」
「いいから! ・・・・・・答えてよ・・・」
陸なら勘付かれる事はないと分かっていても、やはりこういう質問はしていて恥ずかしい。
「・・・急に言われてもな・・・・・・」
赤くなる顔を見られない為に曜が俯くと、陸は頭を掻いて考える様な素振りを見せる。
「・・・・・・まー、そうだな・・・」
「・・・・・・」
やがて答えが見つかったのか、後頭部に手を回すと曜の顔を見据えた。
「俺は――――――」
ヴー、ヴー、ヴー。
だが携帯のバイブレーションが陸の答えを遮る。鳴ったのも彼の携帯だ。
「・・・桜内・・・?」
「え・・・・・・」
胸がざわつく様な感覚に襲われる。
まるで邪魔でもしているかのようなタイミングだ。そしてよりにもよって梨子。
『良かったじゃないか。答えを聞かずに済んで』
「っ・・・・・・」
そしてまた謎の声が囁き掛けてくる。
『答えなど決まっている。お前など必要ないと言われるだけだ』
「・・・そ、そんな事・・・・・・」
自分が抱いていた不安をピンポイントで突いてくる気味の悪い声音。聞きたくない。聞きたくないのに、どうしてもこの声が耳に潜り込んでくる。
『いや、必要ないどころか――――――』
「曜。ちょっと行ってくる!」
「えっ⁉」
陸の声で我に返る。
謎の声が邪魔をして陸と梨子の会話を聞き取ることが出来ず、気付けば二人の通話は終了していた。しかも陸は慌てているように見える。
「ちょ・・・! 陸!」
「シェア!」
そしてその理由を聞けることのないまま陸はゼロへと変身し、一瞬で見えなくなる程遠くへ飛んで行ってしまった。
「・・・ほーん・・・・・・。彼は人を追い詰めるのが上手いなー」
ぽつんと一人残された曜を陰から眺め、オウガは感心したように息をつく。
曜はしばらく呆然とゼロが飛び去って行った方向を見つめていたが、やがて浦女に向けて足を進め出した。
「どれ、じゃあそろそろボクも協力してあげるとしますかねー」
オウガは最後に曜の背中を一瞥し、森の影の中に消えていった。
結局、陸は自分の事をどう思っていたのか。
答えをもらえなかった事で、本来は耳を貸す義理もないあの声が徐々に自分の中で大きくなっていく。
今となっては答えをもらえなかった事に軽く安心し出してもいて。
「・・・・・・必要ない・・・・・・。ううん!」
頭をブンブンと振るい、益体のない想像を振り払う。
こうなったら陸は後回しだ、先に千歌にあたろう。
そう思い、勢いよく部室のドアを開く。
「おはよー!」
「あっ! 曜ちゃん!」
曜が部室に入った途端、幼馴染の少女が元気よく駆け寄ってくるのが見えた。心なしか機嫌がよさそうである。
「それより見て見て! これ! ほらぁ!」
千歌は興奮気味に自分の右手首に着けたシュシュを見せてきた。彼女の髪と同じみかん色で、とてもよく似合っている。
「わはぁ! 可愛い! どうしたのコレ⁉」
「皆にお礼だって送ってくれたの! 梨子ちゃんが!」
彼女の名前が出てきた瞬間、今の今まで笑顔だった曜の表情が硬くなる。
部室を見渡してみれば善子、花丸、ルビィの一年生もそれぞれ異なった色のシュシュを付けており、三人とも元気よくそれを掲げた。
「いいでしょ~・・・。梨子ちゃんもこれ付けて演奏するって! 曜ちゃんのもあるよ、はい!」
「あ・・・、ありがと・・・」
千歌に手渡された水色のシュシュを受け取ると、体育館側の扉が開かれた。そこから顔を出してきたのはダイヤ。
「特訓、始めますわよー!」
「「「はーい!」」」
「曜ちゃん着替え急いでね!」
「千歌ちゃん!」
渡されたシュシュに視線を落としていた曜は、ダイヤの呼びかけに応ずる千歌を呼び止めた。
「ん?」
呼び止めたはいいが、先程と同じ状況が発生する。
いざ顔を見てしまうと、なんて言ったらいいのか分からないのだ。千歌も鈍感とは言え流石に陸ほどではないので、あの質問をするのはマズいだろうし・・・。
「・・・・・・がんばろうね」
「うん!」
結局それしか言えず、曜は自身の不甲斐なさに肩を落とすのだった。
『必要とされていないお前が何を言ったところで無駄だ。その証拠に、直に皆お前の事など忘れる』
今なお語り掛けてくる。謎の声に苛まれながら。
何かヤバい事になってきたなー。
謎の声に囁かれ続ける曜。何者かに襲われた梨子。そしてその梨子から着信を受け、どこかへ行ってしまった陸とゼロ。なにやら動き始めたオウガ。波乱の予感がするぜい。
次回の話は既に書いてあるのですが・・・・・・、作者は暴走しました。
押しが梨子ちゃんの方、好きなカップリングが曜×千歌の方は少し気を付けた方がいいかもしれませんね。
ちなみに作者は千歌×曜が成立した上で、どっちも梨子ちゃんに美味しくいただかれちゃうって展開が一番好き。百合っていいよね。
それでは次回で!