ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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BD買って「キセキヒカル」のfull聞いたんすけど、ヤバくないっすかあれ。
歌詞カード見ながら聞いたら涙腺決壊しましたよ俺。神曲過ぎる。エモい。尊い。
歴代ラブライブシリーズの楽曲第二百曲目って言うのがまた尊い。尊いしか言ってねーな。

そんな尊さは微塵もない第五十五話。どうぞです。


五十五話 黒き王の喝采

 

 

 

「―――う君! 仙道君!」

 

 必死に自分を呼ぶ声が、暗闇の底から意識を引きずり上げていく。

 目を開けると、心配そうに陸の顔を覗く少女の姿があった。

 

「・・・桜内・・・、よかった、無事だったか・・・」

 

 ダークファウストと化していた際の洗脳は解けたらしく、瞳の色も元に戻っている。

 

「・・・ゴメンね。私のせいで・・・・・・」

 

 どうやら操られていた際の記憶は残ってしまっているようだ。罪悪感からか、梨子は申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「・・・気にすんな。それより、お前をこんな事にしやがった犯人の事。分かるか?」

 

 梨子の事を操り人形呼ばわりした謎の声。

 奴が梨子をダークファウストへと変え、東京にグランテラを召喚した張本人だ。

 ふつふつと湧き上がるこの怒りは、その腐れ外道の顔面を一発殴り飛ばしてやらないと収まりそうもない。

 

「・・・・・・その事、なんだけどね・・・・・・」

 

 陸が問うと、何故か梨子は気まずそうに視線をずらす。

 

「別に覚えてないならそれでいいぞ?」

 

「ううん。顔は見たよ! 気を失う前に顔は見たんだけど・・・・・・、その・・・・・・」

 

「?」

 

 いまいち煮え切らない梨子に、陸は首を傾げる。一体何があったのだろうか。

 やがて梨子は決心したように息づき、陸の目を真っ直ぐに見据えた。

 

「・・・・・・その時に見た顔なんだけど――――――」

 

 次の瞬間、陸は自分の耳を疑う事になる。

 

 

 

 

「――――――曜ちゃん、だったんだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『言っただろう? どうせすぐお前の事など忘れると』

 

 今来た道を、曜は全力で四肢を動かしながら駆ける。

 

『お前は誰からも必要とされていない。その証拠にお前の親友はお前の事を忘れていただろう?』

 

 千歌の元から飛び出して以降、謎の声は途切れる事を知らずにずっと曜に囁き掛けてくる。

 

『所詮お前はその程度の存在だったという事だ。存在価値のない、偽りの自分を演じる事しか出来ない哀れな道化だ』

 

 いくら走っても、いくら頭を振っても、この声から逃げる事は出来なかった。

 まるで曜自身が自分にそう訴えているかのように、意識の奥隅から這い上がってくる。

 

『さあ、受け入れろ。お前の心の中でのたうち回る、強大な闇を・・・・・・』

 

「・・・いやぁ・・・・・・あっ―――!」

 

 謎の声を否定した際に足がもつれ、勢いよく転倒してしまう。

 

「え・・・・・・?」

 

 顔を上げた時にはもう、そこは自分の知る内浦の町ではなかった。

 空も、海も、全てが赤黒く染まっている。

 

『・・・あなたは何を望んでるの?』

 

 そしてその中に立つ人影が一つ。

 

「・・・だ・・・、だれ・・・・・・」

 

『私は・・・・・・、あなた自身だよ・・・・・・』

 

 その影が顔を上げ、曜の目に映ったのは、その言葉の通り紛れもない渡辺曜の顔だった。

 

「私自身って・・・・・・、どういう・・・」

 

『言葉の通りだよ』

 

 曜と向き合うもう一人の曜は、不気味に笑いながら赤く染まった瞳を向けてくる。

 

『もう気付いてるんでしょ? 誰にも求められてないって』

 

 その声音は、先日からずっと自分に語り掛けてくる声と全く同じものだった。だが徐々にそれは曜の声に変わっていき、更に言葉を連ねてくる。

 

『だってさ、ずっと私が親友だって思ってた千歌ちゃんに、忘れられちゃったんだよ? きっと私、千歌ちゃんにとってその程度の存在だったんだよ』

 

「・・・違うよ。・・・・・・千歌ちゃんはそんな・・・」

 

『それが何でか分かる?』

 

「・・・え?」

 

 そう言えば何でなのだろうか。

 どうして千歌は、幼い頃からずっと一緒にいた自分の事を忘れてしまったのか。

 スクールアイドルになってからも、衣装を作ったり、ダンスについて相談したりと色々やってきている。

 少なくとも役に立っていなかった訳ではないのに。

 

『だって、役に立たないじゃん。私』

 

「っ・・・?」

 

 考えていた事と全く逆の事を言われて困惑する曜。

 

『例えばさ、梨子ちゃんがいないとAqoursの活動は続けられないでしょ? 作曲できるのは梨子ちゃんしかいないんだから。他の子も皆それぞれ個性があって、すっごく輝いてるよね? ・・・でもさ』

 

 もう一人の曜は、普段から自分の得意とする人懐っこい笑みを作り、

 

『私って、なんにもないよね』

 

 まるでそれが真実であると決めつける様に言い放ってきたのだ。

 

「・・・そ、そんな事ない! だって私、ライブの衣装作ってるし。それに海の家でも料理作って―――」

 

『それってさ、私である必要なくない?』

 

「っ・・・・・・!」

 

 自身の言葉に割り込んできたその声に、思わず押し黙ってしまう。

 

『確かに私は、衣装を作れるし、歌もそれなりに歌えるし、料理も出来るよ? でもそれってさ、他の人よりは出来るってだけでしょ? 私が普段やっていることは、他の皆だって少しやればできる様になる事なんだよ』

 

「・・・それはっ・・・・・・」

 

 否定したいのに、全く言葉が出てこない。

 でも確かにそうなのだ。千歌や梨子が担当している作詞や作曲はある程度元の感性が必要となってくる。

 だが曜が担当している衣装作りの裁縫は、ある程度努力すれば誰だってできる様になる事なのだ。

 衣装デザインは皆で話し合って決めているので、曜の力ではない。

 だから目の前にいる自分が言っている事は、紛れもない事実。

 曜じゃなくたっていい。曜がいなくてもAqoursは活動が出来るのだ。

 

『千歌ちゃんが私の事忘れちゃったのも、きっともう必要ないって思われちゃったからだよ』

 

 もう反論する気力も失われていた。自身の不安を的確に突いてくるその言葉。そして語り掛けてくるのが自分自身という事もあり、もう何を言われてもすんなりと受け止めてしまうようになっているのだ。

 そんな状態になってしまった曜を見て、もう一人の曜は優しく言葉を投げかけてきた。

 

『・・・・・・いっぱい苦しんだよね? もう疲れたでしょ? 楽になりなよ・・・・・・』

 

 果南のように大きく腕を広げる目の前の自分の輪郭が歪んでいく。声音もずっと自分に囁いて来ていた時のものに戻っていた。

 

『さあ、身を委ねろ。俺はお前を一人にしない。お前を必要としている・・・』

 

 その時にはもう目の前の少女は渡辺曜の姿ではなく、赤い目の黒い巨人の姿に変貌していた。

 ドクンと心臓が跳ね上がった様な感覚の後、曜の瞳から光が消え、巨人に向かって倒れ込む。

 

『ククク・・・・・・・・・、フフフハハハハハハハハハハハハ‼』

 

 曜を抱き留めた黒い巨人は、瞳を一層赤く煌かせながらけたたましい高笑いをあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで・・・・・・、何で曜がっ!」

 

〈急げ! もしかしたら他のAqoursの連中にも危険が及んでるかもしれねぇ!〉

 

 沼津駅から飛び出した陸が、すっかり暗くなった町の中を疾走する。

 ダークファウストやグランテラとの戦いで負ったダメージは大きく、すぐにはゼロに再変身が出来ずに電車で戻ってくる羽目になってしまった。

 梨子の言葉を信じるのなら、曜も何者かに操られているか、憑りつかれている可能性が高い。

 現に梨子を襲った際の曜の目は赤かったという。

 

〈思えばここ数日様子がおかしかったからな・・・・・・〉

 

「クソッ・・・・・・、何で気づかなかった・・・!」

 

 もしかしたらあの時から曜は苦しんでいたのかもしれない。

 だとしたら、それに気付いてあげる事が出来なかった自分は大馬鹿だ。

 ・・・後悔するのは後だ。まずは曜を見つける事を優先しなければ。移動中に何度も電話を掛けても曜が出る事は無かったので、何かに巻き込まれている事は間違いないだろう。

 

「・・・・・・そうだ」

 

 そうなると他のAqoursメンバーの安否も気になる。

 無事なら無事で家から出ない事を促すことが出来るので一石二鳥だ。

 そう思い、まずは千歌との通話を試みる。内浦に残っていた中では、最も曜と親しい彼女に。

 

『・・・もしもし? 陸ちゃん?』

 

 まずは彼女が電話に出た事にほっとしつつ、次の確認作業へと移る。

 

「なあ、今日曜に何かおかしなとこなかったか?」

 

 梨子が襲われたというのが昨日の夜。

 そうなると今朝陸と話していた曜と、Aqoursの練習に顔を出した曜はその時には何らかの異変が起きていたはずなのだ。

 誠に不甲斐無いながらも陸は全く気が付くことが出来なかったので、彼女達Aqoursの面々に聞いてみることにする。

 

『・・・・・・曜・・・ちゃん? ああ、さっき練習中に会った子か・・・・・・』

 

「・・・? で、何かいつもと違うなと思うところなかったか?」

 

 何故か他人行儀な彼女に疑問を覚えつつも質問を投げかける。様子が変だった等の返答は覚悟していたのだが、それ以上に大きな衝撃を持った言葉が電波に乗って陸の耳に届く。

 

『・・・いつもも何も・・・、私その曜ちゃんって子と、今日初めて会ったよ?』

 

「は・・・・・?」

 

 思わず、曜の家へと向けていた足を止めてしまう。

 

『なんか私の事は知ってる感じだったけど・・・・・・、陸ちゃんのお友達?』

 

「・・・何言ってんだお前・・・・・・、曜だよ! 俺等の幼馴染の渡辺曜!」

 

「・・・陸ちゃんこそ・・・、何言ってるの・・・?」

 

「っ・・・・・・!」

 

 ふざけたりしている訳ではないのはすぐに分かった。本当に、千歌の記憶から渡辺曜と言う少女の事が消えている。

 

〈・・・こりゃあ・・・、かなりヤバい事になってるかもな・・・・・・〉

 

(これも桜内を襲った奴の仕業なのか?)

 

〈間違いないな。恐らく梨子をダークファウストにしたのは陽動。俺等がいない間にまんまとしてやられた訳だ〉

 

(・・・狙いは曜か・・・・・・)

 

 Aqoursではなく、曜個人を狙ったという事は、彼女に狙われる理由があるという事。

 

「クッソ・・・・・・。誰か覚えてる奴いねーのかよ!」

 

 千歌との通話を終了させると、今度は果南の携帯に電話を入れる。

 何でもいい、何か手がかりが欲しい。

 

『・・・陸? どうかしたの?』

 

「姉ちゃん! 今日曜を最後に見たのっていつ⁉」

 

『・・・曜?』

 

 疑問形で返ってきた果南の声を聞いて、聞く順番を間違った事を悟る。

 曜に関する記憶工作が、彼女にまで及んでいる可能性があるのに。

 

『・・・最後に見たのは・・・、今日練習が終わった時だけど・・・・・・』

 

「っ⁉」

 

 本来はこちらの返答が正しいはずなのに何故か驚いてしまう陸。

 

「・・・・・・姉ちゃんは・・・、覚えてるのか? 曜の事」

 

『? 何言ってんのさ陸。曜も千歌も妹みたいなもんだからね。忘れるわけないよ』

 

 果南が曜の事を覚えていた事にほっと安堵するのと同時に、疑問も覚える。

 

『・・・なんか焦ってるみたいだけど・・・、曜に何かあったの?』

 

「・・・・・・いいや、何でもない」

 

 下手に今起こっている事を教えて果南まで巻き込むの訳には行かない。友達思いの彼女なら尚更だ。

 陸は通信を切り、再び曜の家へと向けて足を進め始めた。

 

「・・・・・・何で姉ちゃんの記憶はいじらなかったんだ・・・」

 

〈逆に千歌の記憶だけに細工を仕掛けたと考えるのが妥当だろうな。恐らく、曜を追い詰めるために〉

 

「何のためにそんな事・・・」

 

〈分からねぇ。でもだからこそ急がねぇといけないだろ〉

 

「言われるまでもねえ」

 

 ふつふつと怒りが込み上がってくるのが分かる。

 千歌と曜の絆は、繋がりは、二人が小さい頃から築き上げてきたものだ。

 何の理由でこんな事をしたのかは知らないが、それらを奪う事は絶対に許される事ではない。

 

「〈っ・・・・・・⁉」〉

 

 曜の家の前に辿り着いた瞬間に、辺りに黒い瘴気が立ち込めだす。

 

「こいつは・・・!」

 

〈・・・梨子を操ってたのと同じものだな・・・。ビンゴか―――っ!〉

 

 何かの気配を察したのか、瞬時に身体の主導権がゼロに切り替わる。

 

『そこにいる奴! 隠れてねぇで出て来やがれ‼』

 

 ゼロは激昂と共に、渡辺家の屋根の上を指さした。

 怪しく、妖艶に光を発する月の下。そこには一つの人影が。

 

「・・・・・・曜・・・」

 

『・・・・・・まんまと時間稼ぎに掛かってくれたようだな・・・』

 

 曜の姿をしたそいつは、彼女のものではない低い響きで声を発する。

 その目は赤く、彼女の身体を支配しているのが曜でない事はすぐに分かった。

 

『・・・誰だテメェは・・・』

 

 身構えながらゼロが投げかけた問いには答えず、そいつは屋根から飛び降りて悠然とこちらに歩み寄ってくる。

 そして次の瞬間。

 

『フッ!』

 

『「っ⁉』」

 

 奴は地面を蹴り、曜の身体で攻撃を仕掛けてきた。

 研ぎ澄まされた殺意の籠った回し蹴りを屈んで回避し、立ち上がりざまにゼロはアッパーを繰り出そうとするが、

 

(待てゼロ! 曜が!)

 

『ぐおっ・・・・・・』

 

 陸がベリアルの力を開放し、無理矢理主導権を奪い返した事でその拳は奴に到達する前に停止させられた。

 

『ッ!』

 

「がっ・・・・・・!」

 

 その隙を突いた右ストレートが鳩尾をクリーンヒットし、尋常ならざる力で吹き飛ばされて陸は家の塀に叩きつけられる。

 

『・・・攻撃されているのに手を止めるとはな。そんなにこの娘が大事か』

 

「っ・・・・・・、当たり前だろうが‼」

 

 よろよろと起き上がり、曜の身体を支配する者に明確な敵意を向ける。

 だが奴はそんな陸を嘲る様に鼻を鳴らした。

 

『はっ・・・、こんな簡単に壊れてしまうような弱い娘が大切な者か。つくづく人間とは愚かな生き物―――』

 

「そんな事ぁどうでもいいんだよ‼」

 

『何・・・?』

 

 吠えかかってくる陸を見て、奴は眉を寄せる。

 

「そいつがどんなに弱くても、俺の大事な人間だって事は変わらねぇ! ・・・・・・サッサと・・・、曜を返せよ‼」

 

 痛む身体に鞭を打ち、陸は全身で掴みかかろうと突進を仕掛ける。

 

『くだらん』

 

 だが言葉も陸自身も文字通り一蹴され、重い衝撃と共に地面を転がる事に。流石に人間の身体能力のままでは抗いようがない。

 それでも顔を上げた陸に、奴は曜ならば絶対に浮かべる事のない歪んだ笑みを向ける。

 

『お前の大切な者も、その内に眠る光や闇も、全ては・・・、俺が元の姿を取り戻すための―――――――――道具だ!』

 

「・・・んだとっ・・・・・・」

 

『さあ! 復活の時だァァァァァァァァァァァァ‼』

 

 野獣のように両腕を広げて叫びを上げると、周囲に漂っていた瘴気が奴に集約し、膨れ上がった絶大な量の闇が夜の内浦を黒く照らす。

 

「なっ・・・・・・!」

 

 漆黒の光が空に向かって柱を伸ばし、その中から黒い巨人が姿を現す。

 全身黒色の禍々しき姿の巨人で、ウルトラマンに酷似したその肉体には漆黒と深紅のラインが走っている。

 何より目を引くのは闇夜でも煌々と赤く光り輝く双眸と、胸に光るY字型の発光体。

 

『ヴア˝アァァァァァァァァァァァァ‼』

 

 邪悪なる暗黒破壊神―――ダークザギは、夜の帳が舞い降りた内浦に咆哮を轟かせた。

 

 

 




ネクサス本編に負けないレベルの策士としての手腕とドSっぷりを見せつけた後、満を持してネット紳士ザギ様ことダークザギ降臨。

前回の梨子ちゃんのキャラ崩壊といい今回の曜ちゃん虐めといいサンシャイナーらしからぬ行動が続いておりますが安心してください。作者は別にアンチではありません。ライブに参戦する程度にはこの作品を愛してます。

さあ、心をポッキリ折られた上にザギ様に取り込まれてしまった曜の運命は?
そして千歌の記憶は戻るのか?
友情が蘇る時、絆の光が奇跡を呼ぶ!



それでは次回で! 
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