ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ジードが遂にグランドフィナーレを迎えましたね。劇場行きたかったなー。
ジードは本当に傑作でしたよね。ルーブにも期待です。


さて、ジードとゼロからブルとロッソにバトンが渡されましたが、こっちはまだまだゼロに活躍して頂きますよ。
今回はゼロが活躍するかどうかは怪しいですけど・・・。


それは、受け継がれゆく魂の絆。



五十六話 君のいる場所

 

 

 

「・・・・・・出ないなぁ・・・、陸ちゃん・・・」

 

 高海家。

 千歌は強制的に通話を終了させられた後、何度も陸に対して通話を試みていた。

 彼に対して聞きたいことがあるからだ。

 

「・・・・・・」

 

 千歌は今日ある原因で擦りむいた掌の傷に視線を落とす。

 昼間訳の分からない事を言ったと思ったら自分を突き飛ばし、泣きながら走り去って行った渡辺曜と言う少女。

 理由は分からないが、先程からこの少女の事が気掛かりで仕方が無いのだ。

 そんな矢先、陸は彼女の事を自分達の「幼馴染」だと言った。

 自分がおかしいのか、陸がおかしいのかは分からない。けれども、

 

―――――・・・そんな・・・、何で・・・・・・、千歌ちゃん・・・。

 

 あの時彼女が自分に見せたあの泣き顔。

 あの悲しそうな表情を思い出す度に、何故だか物凄く胸が痛むのだ。

 少しでも、今何が起こっているのか知りたい。けれども何回電話を掛けても一向に陸が出る気配はない。

 

「・・・こうなったら果南ちゃ―――」

 

『ヴアァァァァァァ‼』

 

『ぐおっ・・・・・・!』

 

「わあっ⁉」

 

 獣のような叫び声の後に地響きが生じ、バランスを崩して尻餅を付いてしまう。

 

「・・・何・・・・・・?」

 

 不思議に思って窓から外を見やれば、幼馴染の少年が変身するウルトラマンゼロと取っ組み合っている黒い巨人が。

 

「・・・・・・ウルトラマン・・・、なの・・・?」

 

 ゼロとは正反対の禍々しさを感じる謎の巨人。しかしそれと同時にどこか見覚えのあるような気もする。

 

「・・・とにかく避難しないと・・・、美渡姉ぇー! 志満――――――」

 

『ヌゥアァァァァァァァァァァ‼』

 

「うわわ・・・・・・」

 

 再び地面が揺れ、千歌は窓枠に掴まって何とか転ばないように堪える。だが机や棚に置いてあったものは音を立てて床に落下していく。

 

「っ・・・・・・!」

 

 その中の一つに、千歌の意識は全て向けられた。

 

「・・・・・・これって・・・・・・」

 

 揺れがおさまった後床に落ちた写真立てを手に取り、しげしげと見つめる。

 落下の衝撃でフレームが外れた事により、表の写真に裏にあったもう一枚の写真が露出している。

 そこに写っていたのは幼き日の千歌、陸、果南。そして・・・・・・、

 

「・・・・・・さっきの・・・」

 

 千歌とくっ付きながら満面の笑みで笑う、銀髪の少女の姿だった。

 

「っ!」

 

 何故だかとんでもない事をしてしまったような気がして、気付いた時には部屋を飛び出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ぐっ・・・・・・!」』

 

 一方的、そうとしか言いようがなかった。

 このダークザギと言う闇の巨人、昼間に戦ったダークファウストとは比べものにならない程に強い。

 ストロングコロナより力強く、ルナミラクルよりも素早い。

 ダークファウスト戦で負ったダメージが無かったとしても、善戦できるかどうかだ。

 そんな桁違いの強さを誇った化け物が、今目の前にいるのだ。

 

『・・・その程度か? 光の者よ・・・』

 

『チッ・・・、陸。こっちも本気で行くぞ』

 

「・・・ああ」

 

 ダークザギと向き合い直したゼロに、四人のウルトラマンの姿が重なっていく。

 

 

「『俺に限界はねぇ‼」』

 

 

 ウルトラマンゼロビヨンドが大地を蹴り、薄紫のオーラを拳に纏う。

 

「『ハアァァァ!」』

 

 音速に近しい速度で繰り出した拳は受け止められてしまったが、そのまま腕を取って顔を突き合わせる。

 

「おい曜! 返事しろ‼」

 

 頭突きと共に張り上げた声に曜からの答えはない。代わりにダークザギが声を発する。

 

『無駄だ小僧。既にこの娘の意識は俺の支配下にある』

 

『・・・梨子の時と言い汚い真似ばっかしやがって・・・・・・、そもそも何故お前がこの時空にいる!』

 

 ダークザギは別宇宙で生まれた存在。本来この世界にはいないはずなのだ。

 時空を超える能力を持っているという噂も確かに存在するが、それでも何故この宇宙に飛来したのか。

 

『俺は奴を追ってきただけだ。他の誰でもない、俺自身の復讐の為にな』

 

『なんだと・・・?』

 

『だが肉体を失い、実体化もままならない状態だった。・・・そんな時、この娘を利用してみたらどうかと言ってくる奴がいてな』

 

『何・・・・・・? そいつは誰だ⁉』

 

『・・・別次元の者の事などいちいち覚えてはいないが・・・・・・、確かゼットン星人とか言っていたか』

 

「っ・・・・・・! あの野郎が・・・!」

 

 これまで何度もAqoursを襲い、時に善子や果南の身体を乗っ取ってまでリトルスターを奪おうとしてきた宇宙人。

 奴が今回の事を仕向け、梨子を、そして曜をこんな目に遭わせていたという事。

 

『奴の言った通りだったな。この娘の妬み、嫉み、そしてダークフィールドを介して貴様から奪った光は俺の身体を蘇らせるには十分だった!』

 

『その為に梨子と曜を利用したってのか!』

 

『言っただろう? 全ては俺が元の姿を取り戻す為の・・・・・・、道具だと!』

 

「『っ!」』

 

 ゆらりと倒れ込んできたかと思うと次の瞬間、一瞬で距離を詰めてきたダークザギは、暗黒の炎を纏った拳を叩き込んでくる。

 咄嗟に腕をクロスして打撃は防いだが、拳から噴き出したとんでもない熱量の炎の柱がゼロを吹き飛ばした。

 

『ぐっ・・・』

 

「あちぃ・・・、ゼットン並みだな・・・」

 

 宙返りを決めて体勢は立て直したが、ダークザギは間髪入れずに次の行動に移っていた。

 唸り声をあげながら、両腕に黒雷を集中させている。

 

「『オオォォォォォ・・・・・・!」』

 

 いち早く奴のやろうとしている事を察し、こちらもエネルギーを高める。

 

『ヌウゥァァァァァァァァ‼』

 

『ワイドビヨンドショット‼』

 

 奴が叩きつける様にして十字に組んだ腕から赤黒い光線―――ライトニング・ザギが放たれ、それと同時にゼロも光線を放つが、

 

「『ぐあぁぁぁぁぁぁぁ‼」』

 

 数秒と持たずに押し返され、疾走する闇の奔流が胸部を直撃してしまう。

 

『がっ・・・・・・はっ・・・・・・!』

 

「くそっ…・・・」

 

 曜がいるので全力を出せないとはいえ、ゼロビヨンドすらも通用しない圧倒的なまでの力の差。

 正直このまま戦っても、勝てる確率は限りなくゼロと言っていいだろう。

 

「『ぐ・・・おぉぉぉ・・・」』

 

 だがそれを口にしてしまったら終わりな事は、陸もゼロも分かっている。それでは曜を救い出すことが出来ない。

 

「『うおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ‼」』

 

 二の脚に限界まで力を籠め、二人は裂帛の気合と共にダークザギへと突進を仕掛けに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・・・・! っ・・・!」

 

 荒い呼吸で肩を大きく上下させながら、千歌はダークザギと戦う陸とゼロの元を目指して駆けていた。

 その手には、先程自室で見つけた四人の少年少女が映る一枚の写真が握られている。

 きっと自分は知っている。この写真に写る、見ず知らずの少女の事を。

 ずっと自分の近くにいて、いつも隣に寄り添ってくれて、陸とはまた違う温かい感情を抱かせてくれた、大切な親友。

 それなのに、彼女に関する記憶のみに靄が掛かったように思い出すことが出来ない。それがたまらなく苦しくて辛い。

 

『ヴアァァァァァァァァァァァァ‼』

 

「『があぁぁぁぁぁっ・・・!」』

 

「あうっ・・・!」

 

 二体の巨人の戦闘に呼応するかの如く大地が響きをあげ、千歌の身体をいともたやすく転倒させてしまう。

 

「いたっ・・・・・・!」

 

 盛大に膝を擦り剝き、その痛みに顔を顰める。

 それと同時に昼間に負った掌の傷、そして心も痛んだ。

 きっと彼女の心は、これよりももっと痛かったはずだ。親友に忘れられて、深く傷付いたはずなんだ。

 だから自分がこんな痛みに負けてどうする。

 

「んん・・・・・・!」

 

 千歌は痛みを堪えて立ちあがった後、でもやはり次の地響きによって再び転倒させられてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼女を、森の木陰から窺う者が一人。

 

「・・・・・・」

 

 千歌の記憶を弄った張本人であるオウガは、何やらもやもやしたものが蟠った心境で千歌の事を見つめていた。

 いくら千歌が曜の事を思い出そうとしても、か弱い地球人の力ではベリアルの力によって閉ざされた記憶の蓋をこじ開ける事は不可能だ。

 

(・・・見ただけで面影を見出すってだけでも凄い事だよ千歌ちゃん。流石は光の継承者って感じかな・・・)

 

 千歌が曜の事を思い出すには、彼女の中に秘められたとある光を呼び覚まさなければ無理だ。

 今回オウガがゼットン星人やダークザギに手を貸したのも、全ては彼女の光を目覚めさせるため。

 あの光は、絆を糧に輝きを増していくものだから。

 だから千歌の記憶に細工をした・・・・・・。そのはずなのに。

 

(・・・・・・クソッ・・・、どうしてこんな事を考える・・・・・・)

 

 今大切な親友の事を思い出せずに苦しむ千歌の姿を見ていると、たまらなく胸が痛む。

 彼女が光の継承者だと分かってから、オウガはずっと彼女の事を見てきた。

 だからこそなのだろうか。心のどこかで、彼女の苦しむ姿を見たくないと思っている自分がいる。

 

(おい待て? 辞めろ? 何を考えてるんだボクは・・・?)

 

 ここで千歌の記憶を元に戻すという事は、計画の頓挫を意味する事だ。

 彼女が光を発現しなければ、計画は何も進まないというのに。

 そうしなければ、自分が真の意味で生きる事は出来ないというのに。

 どうせ千歌は後に死ぬことになる。

 それはベリアルが全宇宙を支配しようが、ゼロに倒されようが変わらない。ベリアルが復活した時点で、彼女だけは死ぬことが決まっている。

 だからそんな彼女に同情、感化されて、計画を頓挫に追い込む義理なんてないというのに。

 まるで光の者のように痛むこの心が、せめてこの一時でもと訴えかけてくる。

 でもそれはベリアル復活計画自体を破滅に追い込みかねない行動であって―――、

 

「なんでっ・・・、なんで思い出せないの⁉」

 

「・・・・・・!」

 

 それを認知した時には、ほとんど無意識に手を動かしていた。彼女の記憶の蓋を、密閉状態ではなく少し隙間を作ったのだ。

 でもそんな事、彼女にとっては蓋を全開にする事に等しい。

 

「っ!」

 

 その証拠に、彼女は先ほどまでとは全く違う表情で再び走り出して行ってしまった。

 

「・・・・・・何がしたいんだろうね・・・、ボク・・・」

 

 その呟きに微かに陽の気が混じっている事に気付くと、オウガは逃げる様に闇となって姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・解せんな。なぜそこまでしてこの娘を救おうとする』

 

 ポキポキと首の関節を鳴らしながら、ダークザギは地を舐めるゼロと陸を見降ろす。

 その赤い双眸には蔑みと言うよりは純粋な疑問が秘められており、攻撃の手を止めて答えを待っていた。

 

「・・・さっきも言ったろ・・・、そいつが・・・、俺にとって大切な奴だからだ・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

 ゼロツインソードを杖代わりにして立ち上がり、ふらつきながらダークザギと対峙する。

 

「曜を・・・・・・、返せ‼」

 

『そいつは出来ない相談だな。肉体は取り戻したとはいえ、まだ完全復活には至っていない。もうしばらくこの娘は利用させてもらうぞ』

 

『そんな身勝手な理由が通用すると思ってんのか⁉』

 

『ならば俺を倒してみろ。それ以外に道はない』

 

 話は終わりだと言わんばかりにダークザギが目の前まで肉薄し、風を切るような音と共に鋭い上段回し蹴りを繰り出す。

 それは上体をのけ反らせて回避するが、続く右ストレートが下腹部を捉え、重い衝撃が全身を貫いた。

 

 

――――――ほっといてよ!

 

 

「え・・・・・・?」

 

 聞き馴染みのある声が脳裏に響き、思わず動きを止める。

 

――――――どうせ私の事なんて・・・、誰も必要としてないんだから!

 

『・・・これは・・・・・・』

 

――――――私に居場所なんてないんだよ!

 

「・・・・・・曜・・・?」

 

 ダークザギの攻撃が到達する度に、曜の声が頭に響く。奴の拳に乗って彼女の心が伝わってくる。

 

『・・・自我を保っているのか・・・?』

 

 ダークザギの闇と同調しているのか、それに抗っているのかは分からない。

 確実に言えるのは、まだ奴の中で曜の意識は残っているという事。

 

――――――私のやってる事なんて皆すぐにできるようになる事なんだ! 私の代わりなんて誰でもできるんだよ!

 

「・・・アイツ・・・、こんな事思ってたのか・・・・・・」

 

 誰一人として感付かれる事なく、一人で悩み続けてきた彼女の叫び。

 いつの間にかこんなになるまで追い詰められていた、渡辺曜自身の心。

 

――――――どうせ皆すぐに私の事なんかいらないって―――

 

「『馬鹿言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」』

 

 ダークザギの拳を、曜の言葉を全身全霊で受け止め、その上で殴り返して全てを否定する。

 

『何一人で何もかも決めつけてんだ‼ この前この馬鹿に一人で抱え込むなって言ったのはどこのどいつだ⁉』

 

『ぐおっ・・・』

 

 肘打ちが鳩尾を捉え、黒い巨人が苦しそうな呻き声を漏らす。

 

『居場所なんていつでも見つけられる・・・・・・、いくらでもあるだろうがァァァァァ‼』

 

 身を翻して今度は裏拳を叩き込む。

 

「確かにお前がいつもしてる事は、練習すりゃあ誰でもできる事かも知れねぇ! けどお前言ってたよな⁉ それが楽しいんだって!」

 

 懐に潜り込んで、百裂ラッシュを繰り出す。

 

「大体何で今いる場所に、自分がいる意味とか資格を求める必要があるんだよ⁉」

 

 ありったけの力と、ありったけの想いを込めて、まるで子供同士の喧嘩のように、顔面へと拳を突き出す。

 

「ここにいたいから居る! それで十分だろ‼」

 

『があぁぁぁぁぁ‼』

 

 ゼロの腕から光の奔流が放出され、ダークザギは地面を抉りながら吹き飛んで行く。

 

「・・・・・それに、お前にしかできない事あるだろ・・・」

 

 初めて地面を転がった黒い巨人を見据えると、その中の少女に向かって言葉を投げかける。

 

「・・・・・・朝っぱらから俺を叩き起こせる人間は・・・、お前だけだ・・・」

 

「・・・・・・り・・・・・・く・・・」

 

 よろよろと起き上がるダークザギから漏れる、明らかに奴の者ではないか細い声。

 

「曜・・・・・・!」

 

 今度は幻聴のように脳に響いた不明瞭なものではない。弱々しいながらも、ハッキリと曜が口にした言葉。

 思いが通じ、ほっと心弛びする陸とゼロ。弛緩した空気が舞い降りかけ、

 

 それを、邪悪なる暗黒破壊神は許さなかった。

 

『アアァァァァァァァァァ‼』

 

「『あがぁぁぁぁぁぁぁ!」』

 

 油断した一瞬の隙にライトニング・ザギを放たれ、防御も間に合わず直撃してしまう。

 

『ぐ・・・・・・ぁ・・・・・・』

 

 膝をつくゼロに、ダークザギはゆっくりと歩み寄ってくる。

 

『・・・まさか意識を保っていたとは驚いた・・・。だが、だからと言ってこの俺が倒せるわけではない』

 

 手を翳すと、そこに禍々しい暗黒のオーラが集約していく。

 

『・・・・・・終わりだ』

 

 そしてそれが放たれる寸前だった。

 

「曜ちゃぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――んっ‼」

 

 突然張り上げられたあどけなさを残す叫び声。

 親しみを覚えるその響きに引き付けられ、事前と声のした方へ流した視線の先には。

 

「千歌⁉ 記憶が戻ったのか⁉」

 

『・・・だが・・・・・・、何だあの光は・・・・・・』

 

「ゴメン・・・。ゴメンね曜ちゃん‼ 千歌・・・、大切な友達の事・・・」

 

 ダークザギに取り込まれた曜に謝り、涙を流す千歌の身体からは、眩い光が溢れ出していた。

 

「曜ちゃん・・・・・・、曜ちゃんなんでしょ⁉」

 

 リトルスターとは違う。温かくて力強い。まるで千歌の存在そのものを現しているような輝き。

 そしてそれを視界に定めた瞬間、ダークザギの様子が一変する。

 

『貴様・・・・・・、その光はァァァァァァ⁉』

 

 奴は憎しみや怒りを全身から放つと同時に、ゼロに向けていた腕を千歌へと向けた。

 

「だっ・・・めぇ・・・・・・!」

 

 奴の中で曜が必死に抵抗するが、所詮はか弱い地球人の子供。ウルトラマンをも凌駕する闇の巨人に抗える訳がない。

 非情にも、千歌目掛けて漆黒の光弾が放たれてしまう。

 

「『千歌ァァ‼」』

 

 そこからはスローモーションのように時間が流れていた気がする。

 千歌に死の危険が迫っているのを悟った陸とゼロは、無理矢理四肢を動かして光弾と千歌の間に割って入り、そして。

 

「『あ・・・・・・があぁ・・・・・・」』

 

 自身が盾となって光弾を受け止めたゼロがそのまま地面に倒れ伏し、遂にその瞳から輝きが消える。

 

「陸ちゃん! ゼロちゃん‼」

 

 千歌の呼びかけにもゼロから返答が帰ってくることはなく、死んでしまったかのようにピクリとも動かない。

 

『愚かな・・・・・・』

 

 今度は明確な蔑みを滲ませた声音をゼロに吐き掛けるダークザギ。

 

『・・・そんなに死にたいのなら・・・、お望み通り先に死なせてやる』

 

「だめぇぇ‼」

 

 叫ぶ千歌には目もくれず、暗黒の光は徐々に膨れ上がっていく。

 

「っ・・・・・・!」

 

 もうダメだ。遠巻きから戦いを見ていた人間達も思わず目を瞑ったその刹那―――――、

 

 

 

『グアアァァァァァァァ⁉』

 

 

 

 突然空に昇った光の柱に、ダークザギが吹き飛ばされた。

 燦然と煌く銀色の光が花開く蕾のように広がり、内浦に舞い降りた夜の帳を切り裂いていく。

 そしてそこから現れた、銀色の巨人。

 

『っ・・・! 貴様はァァァァァァ⁉』

 

 愕然としつつも、ダークザギは確かな殺意をもってその巨人を睨みつけた。

 

『シュア!』

 

『グ・・・、ヌウゥァァァァァァァァ‼』

 

 銀と黒の巨人は同時に駆け出し、光と闇を衝突させる。

 

『ハアァァ!』

 

 銀色の巨人は軽快なフットワークでダークザギの猛攻を回避し、うまく懐に潜り込もうとするが奴にも隙が無い。

 

『ヴアァァァァァァ!』

 

『アァ⁉』

 

 ようやく一発叩き込んだものの大した効果は見受けられず、逆にカウンターを喰らって悶えてしまう。

 

『フハハ! どうやらまだ不完全な状態らしいな・・・。丁度いい、今この場で貴様の光を喰らいつくして完全に復活を遂げてくれる!』

 

『シュアァァァァァァ⁉』

 

 ダークザギが巨人の胸に手を当てると、途端に巨人はもがき苦しみだす。

 見れば奴の腕から光が吸収されているのだ。

 

『グゥ・・・・・・、ンンン・・・・・・、シェアァァァァ!』

 

『ヴヴ⁉』

 

 巨人の胸にあるY字の発光器官が強く光り輝き、腕を払うと同時にダークザギを三、四歩後退させる。

 

『シャァァァ!』

 

『グウゥ⁉』

 

 巨人の腕から光の帯が伸び、しなりを利かせながらダークザギの胸部へと突き刺さった。

 それを鞭のように引き戻すと光が収縮し、ダークザギの体内から救出した曜が巨人の掌に乗る。

 

『シュァァァァァ・・・・・・』

 

 気を失っている曜を地面に降ろすと、自分の役目は終わったといった瞳をゼロに向け、自らに残ったエネルギーをゼロに譲渡していく。

 

『うぅ・・・・・・』

 

 ゼロの双眸とカラータイマーに再び光が宿り、身体がぼやけ始めた銀色の巨人を視界に映す。

 

「・・・・・・何だあれ・・・?」

 

『っ・・・・・・! ウルトラマンネクサス・・・・・・!』

 

『フゥゥゥ・・・・・・』

 

 ゼロに対し巨人―――ウルトラマンネクサスは後を託すとでも言うように頷くと、光の粒子となって大気に溶け込んでいった。

 

「・・・・・・え・・・?」

 

 消えていくネクサスにぼんやりと親近感を抱いたのは、陸だけだった。

 

 

 




唐突に登場し、早々に帰ってゆくネクサスさん。
これで出番終わり? とお思いの方、安心してください。ネクサスの出番はこんなもんでは終わりません。
詳しくはネタバレになるので言えませんが、必ず再登場するという事だけ言っておきます。

そして千歌の光がリトルスターではない事が明らかになりましたね。
ダークネスファイブやオウガはこの光を利用してベリアル陛下を復活させようとしている訳ですね。まあ、オウガは何やらおかしなことになってますが・・・。

さて、ネクサスに受け渡されたエネルギーで再び立ち上がったゼロですが、別段何か強くなったわけではありません。まだ全然ザギ様の方が強いです。
まあ、それでも諦めませんけどね。ウルトラマンだし。

その諦めない心が、奇跡の巨人を誕生させる! なんか前回も言ったなこんな事。



それでは次回で! 本当の戦いは、ここからだぜ!

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