ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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いつからアニメ十二話の話をやると錯覚していた?
残念、オリジナル回だ!

ちなみに善子回でーす。余計な事してないでさっさとストーリー進めろよなこのクソ作者。


五十八話 堕天使の遊戯

 

 

 

 東京某所。

 夜による暗闇に包まれ、閑散とした街の中、二人の男女が向き合っていた。

 

「じゃあね」

 

「ああ、おやすみ」

 

 別れの挨拶を済まして去ろうとする男だが、女が服の袖を掴んで離そうとしない。

 

「何だよ?」

 

 女は答えなかったが、代わりに目を瞑って背伸びをし、男に唇を向けてきた。

 言うまでもないが、この二人は恋人同士である。

 

「・・・・・・」

 

 男は照れくさそうに頬を掻きながらも、自らも女へ唇を近づけていく。

 静けさの中に街灯の灯りが溶け込み、二人の時間を祝福するかのような幻想的な情景を生み出す。

 そして二つの唇が重なろうとした時、

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 

 悲鳴と共に、女の姿が消えた。

 

「え・・・?」

 

 男は一瞬反応が遅れたが、すぐに何が起きたかを理解する。

 

「オイ! 手を伸ばせ!」

 

 女は、突然彼女の真下に発生した巨大な蟻地獄に吸い込まれていた。

 男は必死に自分の彼女へと手を伸ばすが、もはや手の届かない程深くまで女は飲み込まれてしまっていた。

 

「――く――――――」

 

 女が完全に飲み込まれると共に蟻地獄は消滅し、何事もなかったかのような静寂が舞い降りる。

 

「うわぁぁ―――――――ッ!」

 

 その静寂を切り裂く慟哭が響くが、彼女が戻ってくることはなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろ――ッ‼」

 

「ぐふっ・・・・・・‼」

 

 突然腹部に走った激痛によって意識が急激に覚醒し、陸は悶えながらベッドから転げ落ちた。

 

「にひひー♪ おっはヨ―ソロー! 陸―」

 

 仰向けに倒れた陸の視界に、憎たらしく笑う曜の顔が映り込む。

 

「お前・・・・・・、もうちっと優しく起こせんのか・・・・・・」

 

 ダークザギとの一軒以降、「俺を叩き起こせるのはお前だけだ」とか言ったせいで曜は調子に乗り、夏休み中の今でも練習がある日はこうして起こしに来るようになった。

 彼女がああいってもらえて嬉しかったのは分かるが、陸としてはいい迷惑である。

 

(・・・殴るはないだろ殴るは。ゼロも止めてくれよ)

 

〈早朝寝起きドッキリ大成功~~♪ だとよ〉

 

(グルかテメェ)

 

 ゼロは元々お調子者なところがある為、Aqoursの皆と仲良くなった今、こうして悪乗りする事も多くなってきた。

 

「・・・・・ん?」

 

 ふと窓の外に視線を流すが、異様に暗い。

 疑問に思って時計を確認すると何と三時半。いつもならまだ夢の中である。

 それに今日は練習も休み。時間の事も相まって、曜が起こしに来るはずは無いのだが・・・。

 

「おいよ・・・・・・」

 

 ここで更に違和感を覚える陸。

 陸と曜以外にも人の気配がする。

 だが別段怪しい訳ではなく、むしろ親しみすら覚える感覚。

 

「・・・・・・何やってんだお前・・・」

 

 気配の正体は、長く艶のあるダークブルーの髪と、それをまとめたシニヨンが特徴の少女。

 つまりは、津島善子だった。

 

「お目覚めのようね」

 

「なんか善子ちゃん。陸に用があるって言ってたけど」

 

「・・・・・・何の用だ」

 

 今気づいたが、善子は東京遠征の時と同じ服装だった。しかもやけに大荷物である。

 

「クック・・・・・・、決戦の時は来たわよリトルデーモン。今こそ混沌渦巻く魔都に降り立ち、我の欲するグリモワールをこの手に掴む時! つまり‼」

 

 朝っぱら、しかも人の家だというのに、善子は大声を張り上げて陸を指さした。

 

 

「夏コミよ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・つ・・・、かれた・・・・・・」

 

 すし詰め状態だった満員電車からよろめきながら脱出し、陸は盛大にため息をつく。

 

「この程度で音を上げてるんじゃまだまだねリトルデーモン。本当に辛いのはここからよ?」

 

 善子は毎回来ているらしいので慣れたものだが、田舎の内浦故にガラガラの電車しか知らなかった陸は既に心身ともに大疲弊していた。

 

〈・・・相変わらず満員電車は凄まじいな・・・・・・、やはり精神の修行にはもってこいだ〉

 

 ゼロですらこれである。やはり都会は恐ろしい。

 だが善子の言葉通り真に辛いのはここからであった。川の急流のような人の波に流されるようにして改札を抜け、陽炎に揺れる逆三角推の建物を眼前に臨む行列の中へと突入した。

 

「・・・・・・で、よう津島。何故に俺はここに召喚されたんだ」

 

 どうしてその手の物に興味が薄く、何か食いつくようなネタもない陸が連れてこられたのか。

 

「決まってるでしょ? 荷物持ちよ」

 

「は?」

 

「今回は欲しい本が多いのよ。私一人じゃ持てないからアンタを呼んだって訳。ウルトラマンなら造作もない事でしょう? まあ、一応それ以外にも理由はあるけど」

 

 どうしてこう、自分の身の周りにいる女子は皆陸の扱いが雑なのだろうか。

 来てしまった以上帰ると言い出すつもりはないが、だとしても少し考えて欲しいものだ。

 

「はぁ・・・・・・」

 

 今一度大きく溜息をついてから、目の前に広がる地獄絵図を見据えた。

 狩猟者のように目を光らせる者、コスプレイヤーを発見しては恍惚とした表情を浮かべる者、あまりの暑さに膝を折る者、トイレが間に合わなくなり大惨事を起こしてしまった者。色々いる。

 ここに集結した者は皆何かを掴むために戦う覚悟を胸に秘めた者達。

 気力の尽きた者や準備を怠った者は淘汰され、光を拝むことのないまま力尽きる。

 この困難を乗り越えた強者のみが、その先に広がる世界へと足を踏み入れる事が許されるのだ。

 強い一つの信念のもとに戦いに身を投じるこの者達は、大切なものを守るためにウルトラマンとして戦う陸とも通ずるものがある。

 

「さあ! ラグナロクの開戦よ‼」

 

 善子の声の後に会場のゲートが解放され、

 

「「「「「うおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉッ‼‼」」」」」

 

 戦士たちは、一斉にその中へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・エッ・・・ロ・・・」

 

 善子が弾丸のように雑踏の中に突撃していってしまった為、彼女の買い物が終わるまでちょっとその辺の本にでも目を通そうと手に取ったはよかったのだが。

予想を遥かに超えるその過激な内容に、陸は軽い戦慄を覚えることになった。

 

〈度し難い異物だな・・・・・・〉

 

 ゼロも首を捻っていた。

 こんな本が、学校の体育館の何倍もの面積を誇るだだっ広い空間に所狭しと並べられた長机の上に陳列している。

 いずれも陸がこれまでの人生で目にした事も無い体裁の薄い本であった。そして表紙は過激の一言である。

 

〈ダイヤの反応が見てみたいもんだ。アイツぜってー顔真っ赤にすんぞ〉

 

 きっと彼女がここにいれば、「こっ・・・、こんな破廉恥な・・・・・・! ブッブーですわ‼」という事間違いなしだろう。

 かくいう陸も思春期真っ盛りだ。こういうエロティックな創作物に興味がないと言ったら嘘になるが、ゼロに何を言われるか分かったものではないので平静を保つことにする。

 

「・・・ん?」

 

 オタクの群れの中に、陸は見知った顔を発見する。

 砂漠に咲いた一輪の花。とでも言おうか。

 周囲の人々とは明らかに違った華やかな雰囲気を纏い、所作一つ一つが様になっている長髪の少女。

 紫檀色の髪とつり上がった黄色い目が何よりの特徴だ。

 

〈・・・梨子じゃねーか。何でこんな所にいんだ?〉

 

「知らね。本人に聞きゃわかるんじゃねーの? おい桜う――――――」

 

 梨子に声を掛けようとした陸だが、彼女が満足気に抱えていた代物を見て思わず硬直する。

 彼女に腕の中には本がある。当たり前だろう。同人誌即売会なのだから。

 問題はその表紙だ。

 それは俗に言う壁ドンと顎クイが組み合わさったものであった。まあ梨子も女子だし、そういうものに憧れがあっても何ら不思議ではないのだが・・・・・・。

 その組み合わせが、女の子と女の子なのでだ。

 意地悪く笑う少女が、気弱そうな少女に壁ドンをしながら顎クイを執行していると言うもの。

 いわゆる百合本と言うやつである。

 

「ふっふ~~~ん♪」

 

 梨子はご機嫌そうに鼻歌を歌いながら、その本を手に持っていた紙袋に入れた。

 その中にも、同じような本が大量に入っていて――――――――――、

 

 

 ・・・・・・何も・・・、見なかったZE。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 善子がお目当ての代物を買い揃えた後、二人は昼食にハンバーガーのチェーン店に入っていた。

 そこで善子から、何か不穏な噂があるとの話が。

 

「巨大蟻地獄?」

 

「そうよ。最近人が突然その蟻地獄に飲み込まれて帰って来なくなるって事件が連発してるらしいの」

 

「・・・・・・なんだそれ。都市伝説じゃないよな」

 

「ちゃんとニュースにもなってるわよ。防犯カメラにその瞬間が映ったんだって」

 

 そう言って善子は自身のスマホの画面を見せつけてきた。

 そこには確かに突然足元に出現した蟻地獄に飲み込まれる女性と、その彼氏らしき男性が慌てている映像が映っていた。

 被害者は何故か血液型がO型の女性に集中しているそうだ。

 

「ゼロは何か心当たりないの? ウルトラマンなんでしょ?」

 

『これは・・・・・・』

 

「何か知ってんのか」

 

 ウルティメイトブレスレットが修復された事で、ゼロはそれを媒介に会話する事が可能になり、いちいち陸の身体を借りて話すというまどろっこしい真似はしなくて済むようになった。

 まあ、だからと言ってこういう人の目がある場所でやたらめったら声を出すのは辞めて欲しいが。

 

『・・・・・・似たような話を聞いたことはあるが、流石にヤプールが関わってるとは思えないしな・・・』

 

「やぷ・・・、なによそれ?」

 

『異次元人ヤプール。詳しい説明は省くが・・・、まあろくでもない奴だとだけ言っておく』

 

 それだけ言われても全く分からないのだが、いつもの事なのでスルーしておく。

 

「・・・お前、まさかこのために俺の事連れてきたのか?」

 

「仕方ないでしょ。私O型なんだから」

 

「ああ、そゆこと・・・」

 

 言われてようやく納得する。単に荷物持ちだけだったら、彼女と親しい花丸達でも良かっただろう。それでも陸を連れてきたのは万が一の事があってはいけないから。

 正直善子はAqoursの中で最も関りが薄く、陸が本来あの部活にいない男子いう事もあってあまり快く思われていないものかと思っていたが、多少は頼りにされているらしい。

 

「・・・それならさっさと帰ろうぜ。面倒事は御免だ」

 

「正義のヒーローのセリフじゃないわね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クク・・・・・・。見つけたぞウルトラマンゼロ・・・』

 

 禍々しいまだら模様が果てしなく続く、異次元空間の中に響く不気味な声音。

 

『キュキュリュリィィィィィィ‼』

 

『こいつも十分に成長した。今こそ憎きウルトラマンへの復讐を果たす時。貴様はその最初の犠牲者だ』

 

 異次元空間を別の空間と結合させたことで巨大な揺れが発生する。

 そんな中脳裏に浮かぶのは、自身の主である者の姿。

 

『もうじきマイナスエネルギーも集まり、貴方様は御復活なされるでしょう。その時は必ずや私がウルトラマンゼロの首を差し出すと誓います――――――』

 

 徐々に、次なる犠牲者たちはこの場所に危険が潜んでいるとも知らずに向かってきている。

 

『――――――我が偉大なる主・・・・・・、ヤプール様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クック・・・、実に充実した一日だったわ。褒めて使わす!」

 

「そりゃどーも」

 

 善子の購入した大量の本やよく分からない装飾品の入った袋を両腕から下げ、陸は地下鉄に揺られていた。

 帰りは行きと違って空いており、車両の中を見渡せる程度には余裕が出来ていた。

 

「・・・・・・本は分かるとして・・・、お前このコスプレアイテム何に使うんだよ」

 

「決まってるでしょ? 生放送よ」

 

「・・・・・・あぁ、それまだやってたのかお前・・・」

 

 もう堕天使を卒業したがっていた過去の善子はいなくなってしまったらしい。

 

「それにしてもアンタ。せっかく東京来たのに何も買わないってどういう事よ」

 

「・・・まあ、今回はお前の付き添いだったからな」

 

 実際は善子の話を聞いて以降、いつ出現するかも分からない蟻地獄に対し常に警戒の糸を張っていた為、そんな余裕はなかったというのが事実だ。

 まあ陸自身何か欲しいものがあったり、Aqoursの連中にお土産を買ったりしてやる義理はないので別にいいのだが。

 

「リトルデーモンの集いはいいわよ。アンタも一度見て見たらいいわ」

 

 生放送の醍醐味とか言う全く理解できない事を延々と語る善子は無視し、窓の外へと視線を移す。

 当然地下鉄なので映るのはコンクリートの壁ばかり。ただただ黒だけの光景が横へ横へと流れていく。

 とは言え地元に地下鉄が走っていない陸にとっては結構珍しいものであり、それを眺めているだけで暇は潰せるものだ。

 だがそんな景色が唐突に一変する。

 

「え・・・・・・?」

 

 黒一色だった窓枠の外は、赤や緑が混ざり合うようにして不気味な配色を彩っている空間へと変わる。

 

〈何だこれは・・・?〉

 

 刹那、車体が大きく揺れた。

 

「「「わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」」」

 

 車内に響く乗客の悲鳴。陸はバランスをよろめいた善子を抱き寄せると、瞬時に車両の隅へと移って揺れを堪える体勢に入る。

 

「大丈夫か? 津島」

 

「・・・う、うん。ありが――――――とお⁉」

 

 さらに車体が大きく揺れたと思った次の瞬間、轟音と共に陸達の乗っている車両の前方の車両が巨大な何かによって叩き潰されるのが連結地点の通路から見えた。

 それに対して乗客が更なる悲鳴を上げる中、連結部の穴から中を覗いてくる巨大な目が一つ。

 

「怪獣⁉」

 

〈ちぃ・・・・・・、よりにもよってこんな時に・・・〉

 

 車内は人目が多い為、ここではゼロに変身することは出来ない。目の前に怪獣がいるというのに、何というもどかしさだ。

 陸がその事に対し歯嚙みをすると同時に、怪獣は鋭い牙のついた口を向けてきた。

 そしてそこから霧状の白い液体が噴出される。

 

『くっ・・・、ウルトラゼロディフェンダー!』

 

 咄嗟にゼロが主導権を奪い取り、左腕のウルティメイトブレスレットに触れる。

 すると光がゼロの右腕に集約していき、盾の形となった。

 

『善子! 動くなよ!』

 

 自身と善子を盾の裏に隠し、謎の液体の襲撃を防ぐ。車両の隅に居座っていた事は不幸中の幸いだった。これならば盾と壁で全方位をカバーすることが出来る。

 ズドン。と、巨大な揺れを最後に乗客の悲鳴と霧が収まり、主導権が戻ってきた陸は顔を上げ、何か考えるよりも早く善子の両目を覆った。

 

「ちょ⁉ 何よいきなり⁉」

 

「・・・・・・いいから。絶対目ぇ開けるなよ・・・・・・」

 

 今の車内を支配した光景は、彼女にはショッキング過ぎる。見てしまったら彼女の精神がどうなってしまうか分からない。

 

「とにかく外に出るぞ。津島、しっかり俺に掴まってろ。目は絶対に開けるな」

 

「・・・う、うん・・・」

 

 善子が首肯してのを見て、陸は足を車両の外へと進める。

 二人の足元に転がるのは、骨。

 今の霧の影響で、陸と善子を覗く乗客全員は白骨のみを残して消滅してしまったのだ。

 

〈・・・・・・まさか・・・〉

 

 そんな地獄絵図の中を注意しながら進み、二人は車両の外へと脱出した。

 

 

 




しっかりウルトラマンエースのトラウマ回を踏襲していくー。

冒頭でカップルを狙ったのはウルトラマンエースのリスペクトですから!
別に作者がリア充を僻んでるとかそういう訳じゃないですから・・・・・・ね?

夏コミなー、得られるものも多いけど、失うものもそれなりにあるんだよなー・・・。毎回参加してる善子はガチ尊敬。
作中で使用シーンがあったので説明しておくと、ウルティメイトブレスレットに収納されているゼロランスやゼロディフェンダーは陸の状態でも使用可能です。

そして何やらヤバい奴が復活していそうですが・・・。



それでは次回で!
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