いやね、現国の問題量多すぎ。五十分で解くような量じゃねーよ。
翌日。
「皆さん! 心をしっかり! 負けてはなりませんわ! 飲み込まれないよう‼」
地元じゃまずありえない人口密度を誇る雑踏の中で、何故かダイヤがメンバーに注意を促していた。
東京に着くや否やいきなりこれである。
「大丈夫だよー。襲ってきたりしないからー!」
「貴方は分かっていないのですわ‼」
いつも以上に真剣、尚且つ鬼気迫った面持ちで千歌に詰め寄るダイヤ。
それを見て陸はこっそりルビィに耳打ちをする。
「なあ、なんでああなってんの?」
「お姉ちゃん・・・、昔、東京で迷子になったらしくて・・・・・・」
「はーん・・・」
恐らくその時の事が軽いトラウマになっているのだろう。まあ、高校生にもなってそれは如何なるものかとは思うが。
「それで? 桜内はどこなん?」
「ここで待ち合わせだよ」
梨子は今回の為にわざわざ帰るのを一日遅らせてくれたらしい。
昨日千歌が皆に話したことは、μ‘sが何故音ノ木坂学院を救えたのか、何がすごかったのか、自分達とどう違かったのかをこの目で見て、皆で考えたいと言うものだった。
似たような境遇にあったからこそ、先人であるμ‘sから何か学べるものがあるかもしれない。千歌はそう言いたかったのだろう。
「・・・あれか?」
少し歩くと、立て付けのコインロッカーに必死に何かを詰め込んでいる梨子の姿が確認でき、それを見て千歌が駆け寄っていく。
「梨子ちゃん?」
「ひゃあう⁉ ち・・・、千歌ちゃん?」
「何入れてるのー?」
「ええと! お土産とか、お土産とか、あとお土産とか~~~」
全力で目を泳がせて言い訳をする梨子。それほどまでして荷物の事を知られたくないのだろうか。
だが千歌は本当に梨子がお土産を詰め込んでいると解釈したらしく、興奮気味に彼女に詰め寄っていく。
「わーっ! お土産⁉」
「わあぁ⁉」
今ので手が滑り、梨子が必死に押し込もうとしていた何かが雪崩のように落下してしまった。
「わあぁぁぁ⁉」
「なに・・・・・・?」
荷物の中身を確認しようとした千歌の目を、梨子が必死の形相で塞ぎにかかる。
「あれは・・・・・・」
陸には紙袋から少しだけ顔を覗かせる薄い書物に見覚えがあった。
あれは先日善子に連れられて参加した夏コミ。そこで見た梨子が購入していた同人誌。
どうやらあの趣味は人に知られたくないものらしい。
〈・・・・・・なんか本の量増えてないか・・・?〉
(触れるな)
「んっ・・・、しょ・・・! さあ、じゃあ行きましょうか!」
無事に同人誌達をロッカーの中に押し込んだ梨子が笑顔で振り向く。
「とは言っても・・・、最初はどこに?」
「Tower? Tree? Hills?」
「遊びに来たんじゃありませんわ」
「そうだよ、まずは神社!」
余程強い力で押さえつけられたのか、目元にくっきりと跡が残ってパンダ化した千歌が答える。
「神社って・・・、神田明神か?」
「うん! 実はね、ある人に話し聞きたくて、すっごい調べたんだ! ダメ元でメール送ってみたんだけど、そしたら会ってくれるって!」
「ある人? 誰ずら?」
「それは会ってのお楽しみ! でも、話を聞くにはうってつけのすごい人だよ」
「「東京・・・、神社・・・、凄い人・・・、ッ! まさか‼」」
千歌の言葉を聞いて、黒澤姉妹が目を輝かせ始める。
〈何を期待してんだアイツ等は・・・〉
(・・・・・・期待通りにならないに三千ペ〇カ)
「よーし! じゃー行こー‼」
千歌に続いて皆ぞろぞろと足を進ませていく。
『ククク・・・・・・。まさかそっちから来てくれるとはな・・・・・・』
まさか異次元から脅威が迫っているとは、この時は誰も予想だにしていなかった。
「お久しぶりです」
「「なあ~んだ~・・・・・・」」
「〈げっ・・・・・・」〉
神田明神で自分達の事を待っていた二人の少女を見て黒澤姉妹が落胆し、陸とゼロは若干顔を引きつらせる。
以前ここ東京で行われたスクールアイドルのイベント。そこで出会った北海道のスクールアイドル、Saint Snowだ。
〈おいおい。何でよりによってあいつ等なんだよ⁉〉
(俺が知るか)
確か鹿角聖良と鹿角理亜だったか。
別に悪い人ではないのだが、前の一件もあって彼女達の印象はあまり良くない陸とゼロ。
〈ぜってーなんか嫌味言いに来やがったぞ! どうせまた諦めろとか言ってくるんだろ!〉
(落ち着け。そんなんでわざわざ北海道から来るわけねーだろ)
〈大体な――――〉
「それでは、行きましょうか」
聖良の声で、皆次の目的地へと進み出す。
正直陸の中でももやもやしたものが蟠っているが、ここは正直についていくことにした。
「わあぁぁぁ・・・・・・、なんかすごいところですね・・・・・・」
場所は移り、UTXと言う学校のカフェスペース。学校の施設とは思えない程中は煌びやかに装飾が施されており、田舎者の陸としてはそわそわして落ち着かない。
と言うか一般の人間でも利用できるとか、そこからもう学校らしくない。
「予備予選突破おめでとうございます」
「COOLなパフォーマンスだったね♪」
「褒めてくれなくて結構ですよ? 再生数は貴方達の方が上だったんですし・・・・・・」
梨子と鞠莉から向けられた称賛の言葉に対し、聖良は微塵も表情を変えずに答えた。
「いえいえ・・・」
「それほどでも~~」
それに対し曜とルビィはしっかりと喜んでいた。この時点で心構えと言うか風格と言うか、色々なもので負けている気がしてならない。
「でも、決勝では勝ちますけどね」
傾けていたティーカップをテーブルに戻すと、どこか余裕を含んだ声音でそう言った。
「ぁ・・・・・・」
その絶対的な自信を前に、場の空気が若干張り詰めたものへと変わる。
「私と理亜は、A-RISEを見てスクールアイドルを始めようと思いました。だから私達も考えた事があります。A-RISEやμ‘sの何がすごかったのか、何が違うのか・・・」
「答えは・・・、出ました?」
「いいえ。・・・・・・ただ、勝つしかないって」
〈・・・・・・〉
聖良の言葉に、ゼロが少し反応したようにブレスが震えた。
「勝って、追いついて、同じ景色を見るしかないのかもって・・・・・・」
μ‘s、A-RISE。彼女達王者の事を知るには、自らもまた頂に立ち、同じ景色を望むしかない。
それがSaint Snowなりに考えて出した答え。
「・・・・・・勝ちたいですか?」
「え?」
ただ、何故だろうか。
「ラブライブ。勝ちたいですか?」
素直に、その考えが正しいと思う事が出来ない。
不意に千歌が零した言葉に、今まで黙っていた理亜が不機嫌そうに眉をひそめる。
「・・・・・・姉様。この子バカぁ?」
勝ちたいという気持ちは、ラブライブに参加したグループの者ならば誰しもが抱いている願望のはずだ。
ラブライブは遊びじゃないと言い放てるほどの理亜だ。当然彼女もその感情を抱いている者の一人。
そしてそれは姉である聖良も同じ。
「・・・・・・勝ちたくなければ、何故ラブライブに出るのです?」
「・・・それは」
「μ‘sやA-RISEは、どうしてラブライブに出場したのです?」
少し落ち着きを失ってきたのか、立ち上がって千歌に質問を連ねる聖良。
『・・・分かる訳ねぇだろ。そもそもその理由を求めるのが間違ってるんだよ』
考えがうまく言葉にならず口籠る千歌の代わりに、何とゼロが声を発した。
そして真っ直ぐ聖良の目を見据える。
『逆に聞くぞ。何故同じ景色を見るために、そのA-RISEとやらに追い付く必要がある』
そう問うゼロは、心なしか不機嫌なようにも感じられた。
「・・・・・・さっきも言ったでしょう? 私達はA-RISEに憧れてスクールアイドルを始めたんです。追い付きたい、そして超えたいと思うのは当然の帰結だと思いますが」
『・・・・・・だからもっと練習して、技術を上げて、力を欲して、強くなって勝ち進みたい。そう言う事だろ?』
「・・・・・・ええ」
『だったら尚更だ・・・』
聖良の肯定を、ゼロは嘲るでも否定するでもなく、ただただ真正面から受け止めた。
『お前等はまだ小手先の力しか信じちゃいねぇ。・・・・・・だが、そんなモンは本当の強さとは言わない』
「・・・だったら、貴方は知っているんですか? その本当の強さと言うものを」
立ち上がって睨み合う二人の視線が衝突し、火花でも散っているような錯覚を覚える。
一拍の沈黙の後、ゼロがゆっくりと口を開いた。
『・・・・・・それは――――――』
ここにいる誰もがその言葉に耳を傾けようとした瞬間だった。
「えっ・・・・・・?」
『ッ⁉ 何ッ⁉』
テーブルの真下。
つまりゼロと聖良の足元に、巨大な亀裂が走ったのは。
(あれは・・・・・・!)
亀裂の奥に広がるまだら模様の空間には見覚えがあった。
あれは先日、善子と共に乗っていた地下鉄が吸い込まれた異次元空間だ。
「陸ちゃん⁉」
「姉様⁉」
不意打ちで全く反応することが出来ず、足場もないので踏みとどまることも出来ない。
「クソッ・・・・・・!」
「きゃあぁぁぁぁぁ⁉」
陸と聖良の二人が異次元空間へと落下していった後床の裂け目は閉じ、何事もなかったかのように穴は消えてしまった。
「え・・・・・・?」
残されたAqoursと理亜は、呆然と二人がいた場所を見つめる事しか出来なかった。
「デェヤァ!」
ゼロの力を使っていち早く着地した陸は、すぐに地面を蹴って自分と同じく落下してきた聖良を受け止めた。
「・・・大丈夫ですか?」
「え・・・、ええ・・・、ありがとうございます・・・・・・」
聖良を下した後、突如自分達を吸い込んだ空間を見渡す。
やはりアリブンタの時と同じで、気味の悪いまだら模様がどこまでも続いている。
(・・・おいゼロ。もしかしてここ・・・)
〈もしかしなくてもヤプールの異次元空間だな。まんまと閉じ込められた訳だ〉
(よりによってこのタイミングでか・・・・・・)
ヤプールが既に復活しているというゼロの予想は正しかったらしい。
自分達も無事とは言える状況ではないが、向こうに取り残された千歌達は無事なのだろうか。
(・・・・・・どっかに出口とかないのか?)
〈・・・さあな。だが、ここで何もしないよりは出口を探した方がいいだろうな。こういう時こそジードだ〉
(だな。ジーっとしてても、ドーにもならない)
とりあえず行動の方針を固めた後、怯えながら周囲をきょろきょろとしている聖良の方を向いた。
「えっと・・・鹿角さん、でしたっけ? 立った上で歩けますか?」
「・・・は、はい・・・・・・」
差し出された陸の腕を掴んで立ち上がった聖良は、不思議そうな視線を向けてきた。
「・・・・・・雰囲気変わりましたね。・・・随分と落ち着いてるようですが・・・」
「まあ、慣れてるんで」
こんな果てのなさそうな空間に出口があるかなんて見当もつかない。
だがここでただじっとしているという訳にも行かないのだ、そんなことをしていても助け何か来ないし、何より残された千歌達の事が心配だ。
「とりあえず出口を――――――」
『その必要はない』
「「っ⁉」」
突如謎の声と共に目の前の空間が歪み、陸は咄嗟に聖良を自身の背後に隠した。
『・・・・・・ヤプールか』
人格を表に出したゼロがブレスレットからゼロランスを取り出し、歪みの奥にいるであろうヤプールに向かって突きつける。
『ご名答。我らが異次元空間にようこそ。ウルトラマンゼロ』
「え・・・・・・?」
ヤプールの言葉に、聖良が弾かれた様に陸の方を向く。
「・・・・・・今のどういう・・・、ウルトラマンって・・・・・・」
『チッ・・・』
ゼロは舌打ちを打って悪態付くと、改めてヤプールを睨み返した。
『何のつもりだ・・・、何て野暮なことを聞くつもりはねえ。さっさとここから出せ』
『その要求の方が野暮と言うのではないか? 出せと言われて出してしまうならわざわざここに閉じ込める訳がなかろう』
『だよなー。・・・・・・だったら今ここでテメェをぶっ飛ばす!』
ゼロが宣戦布告をしても、ヤプールは飄々とした口調で続けた。
『クハハ・・・、やり合ってしまっては意味がない。貴様はここで指を咥えて見ていればいいのだ』
次元の歪みが広がっていき、その中から赤い甲殻類のような人影が現れる。
アレがヤプール人の意識集合体にして、全てのヤプール人が合体、巨大化した姿――――巨大ヤプール。
『全ては憎きウルトラ戦士へ復讐の為・・・・・・、このヤプール、今ここに復活せん!』
『っ! 待ちやがれ‼』
ヤプールはゲートを開くとそこに向かって飛翔していき、ガラスを割った様な甲高い音と共にその中へと消えていった。
ゲートはすぐさま閉じられ、完全にこの空間に幽閉された事が伺える。
〈陸、行くぞ!〉
「当り前だ。ずっとこんなとこにいられるかってんだ」
だがこちらには次元の壁を超える方法がある。
始めは次元の裂け目でも探すつもりでいたが、望まぬ形とは言えヤプールが聖良に正体をバラしやがったのでその手間は省けた。
「鹿角さん! 手ぇ放さないでくださいよ! ついでにこの事内緒でお願いします!」
「えっ⁉」
陸は聖良の手を取ると、ブレスから出現させたウルトラゼロアイを装着した。
「〈デェヤァ!」〉
『クハハハハハ‼ 愉快! 痛快!』
東京の街に出現したヤプールは、召喚した複数の超獣と共に高笑いをあげていた。
『恐れろ! 慄け! 人間共! 貴様等の負の感情が我が力となる‼』
ヤプールを背に逃げる人間達を見下ろしながら、更に恐怖を煽るべく次元を歪めてビルを一つ消して見せた。
「怪獣⁉」
「こんな時に・・・・・・」
外の騒ぎを聞いてUTXから飛び出してきたAqoursと理亜も、禍々しい巨人を前に驚きを隠せないでいた。
「とにかく私達も逃げよう!」
「でも姉様が・・・・・・」
「陸ちゃんが一緒だから大丈夫!」
姉の聖良を心配して立ち止まる理亜の手を、千歌と果南が同時に引いて走る。
『ここにヤプール、そして我が超獣軍団の復活を宣言する!』
それと同時にヤプールが右腕を大きく掲げ、UTX目掛けて三日月型の斧を振り下ろそうとした時、空に穴が開く。
『デェェェヤァァァァァ‼』
『ッ⁉』
一瞬で首元に迫ってきた銀色の切っ先を飛びのいてかわすと、ヤプールは自身に剣を向けた青い戦士を見据えた。
「ゼロちゃん!」
『思いのほか早かったな。ウルトラマンゼロ』
『・・・・・・どっかの誰かが正体バラしてくれたおかげでな』
ウルティメイトイージスを身に纏ったゼロは地上に降り立つと同時に、掌に乗せた少女を千歌達の元へと降ろす。
聖良は目をぱちくりさせて、陸が変身したゼロとAqoursを交互に見ていた。
『怪我はねぇか。小娘』
「・・・え、ええ・・・」
『そうか。・・・・・・ならさっさとそいつらと一緒に逃げな』
ゼロは立ち上がるとイージスの装着を解除し、自身もまたヤプールを見据えた。
『姑息な真似しやがって・・・・・・、殴らせろヤプール‼』
『フハハ・・・・・・。いくらウルトラ戦士と言えど、一人でこの数の超獣を相手取るのは厳しいだろうよ』
ヤプールが手を動かすと、奴の後ろで控えていた六体の超獣が前へと出てくる。
満月超獣ルナチクス。蛾超獣ドラゴリー。大鳩超獣ブラックピジョン。古代超獣カメレキング。さぼてん超獣サボテンダー。殺し屋超獣バラバ。
どれもヤプールが誇る強力な超獣兵器である。
『ケッ・・・、タイマン張る自信もねーのかお前は・・・・・・、そんなんでウルトラ兄弟倒そうとか片腹いてーぞ』
『何とでも言うがいい。どんな手を使おうと勝てばいいのだ』
『御大層に悪役みてーなことを・・・・・・、テメェがでけぇ顔すんのはな・・・・・・、二万年早いぜ‼』
盛大に啖呵を切ったゼロが、ゼロツインソードを構えて超獣軍団へと立ち向かっていく。
『デェェェヤ!』
剣線が円を描き、六体の超獣を一気に吹き飛ばす。が、
『ハハハハハ!』
「『ぐあっ・・・・・・!」』
遠巻きからそれを眺めているヤプールからすれば、それはどうぞ攻撃してくださいと言っているようなものだ。
波状光線が脇腹を直撃し、悶えるゼロに起き上がったバラバとルナチクスの蹴りが迫る。
『チッ・・・』
『ピュウィィィィィ!』
それは何とか回避したものの、上空から襲いかかってきたブラックピジョンの嘴がクリーンヒット。
『キュオォォォ!』
『キアァ!』
「『がはっ・・・・・・!」』
更にサボテンダーの棘とカメレキングの翼の衝撃が胴を抉る。
『グアァグルルルル!』
吹き飛んだ先にいたドラゴリーが振り下ろした毒牙をすんでのところで回避し、腹部に回し蹴りを叩き込んだ。
だが数が多すぎる。再びヤプールが放った光線を受け、周囲のビルと共に派手に倒れ込んでしまう。
『く・・・・・・そ・・・・・・』
「・・・キリがねぇ・・・・・・」
『クハハ・・・‥、先程までの威勢はどこに消えた?』
今まで単独で複数体の敵と同時に戦った事は何度かあったが、せいぜいが二体。ギャラクトロン軍団の撃退も、オーブとジードの力添えがあったからこそ成し得たものだ。
七体同時、しかも怪獣を超える超獣が六体と、それを統べる超人を相手取るとなると、流石に分が悪すぎる。
しかもまだヤプールには触れてすらいない。
『ゴォゴアァァァァ!』
『フハハハハハ!』
「『がっ・・・・・・、ごあっ・・・!」』
ヤプールとルナチクスの火球が立て続けに殺到し、起き上がりざまに着弾。再び地面を転がることになる。
『このまま始末することは容易い。・・・だが時にウルトラマンゼロよ。貴様こちら側に着く気はないか?』
『・・・・・・なんだと・・・?』
果てのない連続攻撃を受け続け、激しいエネルギー消費故にカラータイマーが点滅を始めたゼロに、ヤプールは手招きするように語り掛けてきた。
『貴様のその進化し続ける肉体をここで滅ぼすのは惜しい。こちら側に来れば、我々が超獣として更なる強さを与える事を約束しよう。・・・・・・強さを求めているのだろう? 貴様のその力は、全宇宙を支配するに相応しいものだ』
圧倒的な物量差で力の差を見せつけてから仲間に引き込むという、卑劣かつ陰湿で狡猾なヤプールの策略。
追い詰められた時、人は冷静な思考を奪われ、迷いが生じる。それはウルトラ戦士とて変わらないはずだ。
今のヤプールの言葉は、危機的状況に陥ったゼロの深層意識を突くものであっただろう。
ヤプール自身もそれが分かっているのか、不気味な笑いを漏らし続けている。
そんな中ゼロが出した答えとは――――――、
『・・・・・・行くわけねーだろ。バーカ・・・』
『何だと・・・・・・?』
ゼロは立ち上がると、屈託なくそう答えた。
『確かに俺は強くなりてーし、更なる強さを得られるならそれに越したことはねぇ・・・』
『なら・・・、何故我等の誘いを断る?』
『・・・俺は知っている。力に溺れる怖さを』
「っ・・・!」
その言葉は、陸にも少しくるものがあった。
ゼロが言っているのは、力を渇望したが故にプラズマスパークに手を出し、危うく道を踏み外しかけた事。
陸の脳裏に過るのはゼロダークネスとして暴走し、ダイヤを殺しかけた戒めの記憶。
『俺は知っている。守るべきものの尊さを!』
ゼロは語る。
『ただ積み重ねただけの、上っ面の力に価値はねぇ。貴様の言う力はそういうものだ。・・・・・・だが俺は違う! たくさんの想いを背負って、大切なものの為に戦う! それが本当の強さだ‼』
先程の聖良の問いに、答えを出すように。
『・・・・・・それは・・・、コイツ等が改めて俺に教えてくれた事。これが俺の進む道だ‼』
Aqoursの皆に、感謝を伝えるように。
『だから俺は戦う! どんな時でも諦めず、不可能を可能にする! それが俺達ウルトラマンだ‼』
『よく言った』
その時。
威厳のある声と共に、空から舞い降りた六つの光。
『かつてお前は力しか信じず、強大な光を求めて禁忌を犯したな・・・』
『輝いた者の栄光はいつだって後世の者に道を示す。時に希望の火を灯し、時に救いの手を差し伸べ、時には夢を与える』
『先駆者達も初めはそうだったのだ。輝く夢に魅せられ、自らもまたそうなりたいと願った』
『だがいつか気付く。同じ輝きは二つとしてないと。自分達の道を歩まなければいけない時が来ると』
『それは決して一人で進める道ではない。仲間と共に、たくさんの者の想いを背負って駆け抜けるからこそ、その先にある光を掴むことが出来る』
『そしてその想いが、次の世代へと受け継がれていく。・・・それは、我々ウルトラマンとて変わらない』
それは紛れもなく、ウルトラマンの姿だった。
『なッ・・・・・・⁉ 貴様等は・・・!』
明らかに狼狽えて後退するヤプールの視線の先には、因縁深きウルトラ戦士達。
『未熟だったお前が、仲間と共にそれを理解することが出来た』
その内の一体。真紅の肉体と、頭部に付いた刃が特徴的な巨人が振り向き、ゼロの肩に手を置く。
『流石は・・・・・・、俺の息子だな』
『・・・・・・親父・・・』
「えっ・・・・・・? じゃあこの人が・・・・・、ウルトラセブン・・・」
現れた巨人は、ウルトラセブンを含め六体。
光の国のウルトラマン達に与えられる名誉の称号、ウルトラ兄弟。
その中でも特に特別視され、宇宙警備隊最強の戦士達と謳われるエリート集団―――、
――――――栄光の、ウルトラ六兄弟の姿だった。
ヤプールが復活し、聖良に正体がバレ、更にウルトラ六兄弟まで登場とか。今回色々と盛り沢山だなー。
今回はヤプールについて解説。
基本的にM78ワールドで悪事の限りを尽くしているヤプールですが、普通にギンガSにも出てた事だし登場させてみました。ヤプール人の科学力をもってすれば次元移動とか朝飯前ですよね。きっと、恐らく、多分、十中八九(不安)
次回はヤプール軍とウルトラ兄弟の決戦。そしてアニメ十二話の話のラストです。
それでは次回で!