ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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ここかーらーは~♪ Next Stage~♪
挑む覚悟~♪ No Damage~♪



つー訳で、本日よりSecond SeasonのStartデース!


第二部 輝きのAqours 前編
七十話 Next Stage


 

 

 暗く閉ざされた世界を、私は一人で彷徨っていた。

 

―――輝きって、一体どこから来るんだろう。

 

 一筋の光が差し込み、私の身体を照らした。

 そしてそこに向かって飛ぶ紙飛行機が一つ。

 知らずの内に、私は導かれるようにその紙飛行機を追いかけていた。

 届く気がした。あの輝きに。

 

「あと・・・、ちょっと・・・」

 

 必死に伸ばした手がその光に届こうとした時、紙飛行機は消え、周りの世界が音を立てて崩れた。

 

「・・・え?」

 

 暗い世界から一変して、周りには夕日に染まる砂漠と、砂の中に沈む遺跡のような物があった。

 

『シェア!』

 

「わわ・・・・・・」

 

 突然地面が唸りを上げ、バランスを崩して転倒してしまう。

 何かと思って顔を上げると、前に内浦に現れたらしい銀色の巨人―――ウルトラマンネクサスが黒い巨人と戦っている。

 

『ヘアァァァ‼』

 

 赤くつり上がった目に、血のような真紅のラインが走る筋肉質な漆黒の肉体。

 長く伸びた鋭利な爪やその風貌などは全く異質なものだが、それは間違いなくウルトラマンだった。

 

『その程度か⁉ 絆の戦士‼』

 

『グアァァァァァァ⁉』

 

 黒い巨人が放った赤黒い光線が直撃し、ネクサスは大きく後方に吹き飛ばされてしまう。

 

『ジュ・・・・・・アァ・・・・・・』

 

 膝を付いたネクサスの輪郭がぼやけたと思った次の瞬間、その身体は光の粒子となって虚空に霧散していった。

 

『フハハハハ・・・・・・、・・・あぁん?』

 

 ネクサスを倒して笑いを漏らしていた黒い巨人が、身を縮こまらせて今の戦いを見ていた私の存在に気が付く。

 

『・・・なるほど、奴がここに呼んだ訳か・・・』

 

 何故か納得するように頷いた後、目の前でしゃがみ込んで私にその赤い双眸を向けてきた。

 

「ひっ・・・・・・」

 

『まあそう怯えるな。どうせその内受け入れる時が来る。・・・・・・だが、まだ早い』

 

 巨人が地面に爪を突き立てるとそこから亀裂が走り、世界は再び砕けた。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 

 闇の底へと落下していく私を一瞥すると、巨人は背を向けて逆方向へと歩き出す。

 

『・・・高海千歌。そう遠くない未来に、お前の運命は尽きる。だからせいぜい残された時間を楽しめ。・・・・・・そしてよく覚えておけ、この俺――――――

 

 

 

――――――ウルトラマンベリアルの名を』

 

 

 

 

 

「うわああああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁッ‼」

 

 喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げながら千歌は飛び起きた。

 

「っ・・・・・・、っ・・・・・・、っ・・・・・・」

 

 乱れる呼吸を整え、まだ胡乱の中にある脳みそでぼんやりと思考を巡らせる。

 

「・・・・・・ウルトラマン・・・ベリアル・・・・・・?」

 

 まだ混乱しているが、今見たものがただの夢でない事はすぐに理解できた。

 あの銀色の巨人―――ネクサスは、自分に何かを伝えようとしている。

 

『フフフフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼』

 

「きゃぁああぁぁぁ⁉」

 

 突然頭の中でベリアルの笑い声が反響し、思わずベッドから転げ落ちてしまう。

 

「いたたぁ~・・・」

 

 痛む頭を擦り、再度自分のいる場所を見渡す。

 ここが自分の部屋である事を認識すると、千歌は安堵の息をついた。

 だが静寂と共に舞い降りた落ち着きは、すぐに打ち破られることになる。

 勢いよく戸が開けられ、千歌の姉である美渡が怒声を浴びせてくる。

 

「あんたまだ寝てたの⁉ 早くしないと遅刻するよ‼」

 

「え・・・・・・?」

 

 姉の言葉で現実に帰り、うっすらと明瞭になりつつある視界で確認した置き時計が見せてきたものは・・・・・・もう既に遅刻が確定した残酷な現在時刻だった。

 

「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Hello.Everybody‼ 本日より、Second SeasonのStartデース‼」

 

 全校生徒が集まる浦の星女学院の体育館に、マイクの拡声器に乗った鞠莉の声音が響き渡る。

 

「セカンドシーズン?」

 

「二学期って事よ」

 

 首を傾げる曜に、何故か不機嫌そうな表情をした梨子が答える。

 

〈・・・おい果南。千歌はどこだ〉

 

 普段の二年生三人組が一人欠けている事に気が付いたゼロが、陸が学校に行っている間身体を依り代にさせてもらっている果南に問いかける。

 

(まだ来てないみたいだけど・・・、どうせまた寝坊でしょ)

 

〈一人で起きるって言った矢先にそれか・・・・・・〉

 

 きっと今頃大慌てで通学路を突っ走っているのであろう。あのだらしなさで学校を救おうとするスクールアイドルグループのリーダーだというのだから驚きだ。

 

「理事長挨拶だと言いましたですわよね? そこは浦の星の生徒らしい節度を持った行動と勉学に励むのだと―――」

 

「セツゾウを持つ・・・・・・?」

 

 舞台袖に隠れて指示を飛ばすダイヤだが、肝心の鞠莉は聞き取れていなかったようだ。

 

「節度ぉ‼」

 

「あ・・・はは・・・・・・」

 

 全校生徒の前だというのに普段と何ら変わらないやり取りをする二人に、果南も苦笑いである。

 

〈本当に大丈夫かよこの学校・・・・・・〉

 

 あんなのが理事長と生徒会長だというのだから、世の中本当に不思議だ。

 

「それにしても・・・、惜しかったわよね」

 

「うん。あともうちょっとで全国大会だったみたい」

 

「過ぎた事をいつまで言ってても仕方ないずら」

 

 揉めるダイヤと鞠莉を尻目に、善子、ルビィ、花丸の一年生三人組は先日のラブライブ予選についての話題に触れていた。

 

「しっかぁーし! 参加賞が二色ボールペンってどうなの?」

 

「決勝大会に進出すると三色になるとか・・・・・・」

 

「未来ずら~・・・」

 

「どこがよ!」

 

 

「シャラァ――――――――――ップ‼」

 

 

 徐々にひそひそと話し続ける生徒達の声が支配し始めた体育館に、鞠莉の注意の叫びが響く。

 同時にマイクのハウリングも生じ、大方の生徒はその不快な音に顔を顰める。花丸だけがドヤ顔で耳を塞いでいた。

 

「確かに、全国大会に進めなかったのは残念でしたけど・・・・・・」

 

「でも、ゼロをイチにする事は出来た。ここにいる皆さんのおかげですわ」

 

 自然な流れでダイヤが鞠莉の隣に立ち、全校生徒に向かってそう言った。

 

〈・・・・・・理事長挨拶だよな? これ・・・〉

 

(まあ、あの二人に言うだけ無駄だと思うよ?)

 

〈そういや、今入学希望者の数ってどうなってるんだ?〉

 

(・・・十人・・・、だったかな? 予選が終わってから少しずつ増え始めたんだよ)

 

 まだまだ少ないが、それでも希望は繋がったと思っていいだろう。

 ゼロからイチへ。少しずつだが彼女達の努力が実を結び始めている。

 

「それだけではありませんわよ!」

 

「本日! 発表になりました! 次のラブライブが! ・・・・・・同じように、決勝は秋葉ドゥーム‼」

 

 その時。

 

 体育館の入り口から、急いで駆け込んできたような足音が聞えた。

 

「千歌ちゃん!」

 

「Too Late!」

 

「大遅刻ですわよ!」

 

「・・・次のラブライブ・・・」

 

 大きく肩を上下させながら、それでも口を動かそうとする千歌。

 

「どうする⁉」

 

「聞くまでもないと思うけど」

 

〈まあ、皆分かり切ってる事だよな〉

 

 こんな時に彼女が言う言葉くらい、ここにいる全員理解している。

 

「出よう! ラブライブ! ・・・そして、・・・・・・そして、イチをジュウにして、ジュウをヒャクにして、学校を救って! ―――――そしたら!」

 

 

 ――――そしたら⁉

 

 

 期待を孕んだ全校生徒の声が体育館に木霊する。

 

「・・・そしたら、私達だけの輝きが見つかると思う! きっと‼」

 

 

 ――――輝ける‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ほーん。もう次のラブライブ決まったのか」

 

〈早いもんだよな。まだ前回のラブライブから一か月も経ってねーっつーのに〉

 

 西日が傾く夕暮れの刻。

 

「イチ、ニ、サン、シ・・・」

 

「んっ・・・・・・、あぁ・・・・・・」

 

 Aqoursが練習前のストレッチを行っている光景を見守っている陸の耳に、善子の呻き声が滑り込んでくる。

 

「善子ちゃんは相変わらず身体固いよね? ちゃんと家でストレッチしてる?」

 

「うぅ・・・、ヨハネぇぇ・・・・・・」

 

 目を閉じて音だけ聞いていると、背中を押している果南が善子を虐めているようにも思えなくない。

 

「そんなんじゃダメダメ」

 

「痛い痛い痛い!」

 

 軽く腰を曲げた前屈の状態から全く動こうとしない善子に、果南は更に体重をかける。

 身体の固い人間が無理に関節の限界可動域を超えようとするのは、かなりの痛みが伴うものだ。

 陸も身体は固い方なので、善子には少し同情する。

 

「ちょっと陸! 見てないで助けなさいよ!」

 

「ふふん♪」

 

「それでもリトルデ――――ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」

 

 言葉の途中でゴキンと嫌な音が鳴り、一際大きい悲鳴が夕空に溶けていく。

 動かなくなった善子に向かって十字を切ってから、陸は同じように柔軟体操をしている栗色の少女に目を向けた。

 

「花丸は随分と曲がるようになったよな」

 

「ずら。毎日家でもやってるずら」

 

 始めた頃は体力も筋力も柔軟性も壊滅的だった彼女がここまで成長したのは、偏に努力の賜物だろう。

 

「じゃあもう階段ダッシュの時に背負わなくていいか?」

 

「それは駄目ずら」

 

 頼むから辞めてくれと視線で訴えてくる花丸。いい加減一人で完走して欲しいものだ。

 既にそれが可能な程度には体力は付いてきたと思うのだが、どうしてこうも陸の救助を求めてくるのか。

 

「成長の兆しが見えねーな」

 

「そんな事ないずら! 腕立ても出来るようになったずら!」

 

「ホントか~?」

 

「む~・・・、じゃあ見てるずら!」

 

 今の口論が聞こえていたのか、腕立ての姿勢に入った花丸に全員の視線が集まる。

 

「い~~~~~~~~~~・・・・・・」

 

 肘を曲げて体勢を落としてから、全く動かない。

 

「~~~~~~~ち。・・・完璧ずら」

 

 結局再び肘を伸ばすことのないまま力尽き、それでも何故か得意げな顔をする花丸。

 

「・・・・・・筋トレ追加ですわね」

 

「そうっすね」

 

「ずらぁっ⁉」

 

「ずらじゃない。善子も柔軟サボるな。姉ちゃん容赦ないから、その内死ぬぞ」

 

「へ~・・・い」

 

 成長しているのは確かなのだが・・・、まだ皆苦手分野は克服できていないようだ。

 

「それで、次のラブライブはいつなの?」

 

「多分、来年の春だと思うけど・・・・・・」

 

「ぶっぶーですわ! その前に一つやる事がありますわよ」

 

 互いにストレッチをし合っていた曜と梨子の会話に、ダイヤが割り込む。

 

「忘れたんですの? 入学希望者を増やすのでしょう?」

 

「学校・・・説明会・・・」

 

「ああ、そっか・・・」

 

「Off Course! 既に告知済みだよ!」

 

「せっかくの機会です! そこに集まる見学者たちにライブを披露して、この学校の魅力を伝えるのですわ!」

 

「それいい!」

 

 快活な声が背後から聞こえ、皆一斉にそちらを見やる。

 そこにはにっこりと笑顔を作った千歌がいた。

 

「それ、すっごくいいと思う!」

 

(・・・・・・千歌が、ネクサスか・・・・・・)

 

 千歌自身にその時の記憶が残っていないのは、ネクサスが彼女の意識を遮断していたからだそうだ。

 そのネクサス自体も別に千歌と一体化をしている訳ではなく、彼自身は別の所にいるらしい。あの時は意識と一部の力だけを飛ばし、絆の光と彼女身体を媒介にして実体化していたとかそんな。

 オウガの話によると、あの光はベリアル復活の鍵になる絶望であると同時に、ベリアルを滅ぼす希望なのだとか。

 仲間との絆が深まれば深まるほどあの光も強く発現し、ネクサス、及びノアは力を取り戻していくそうだ。

 ノアの力を取り戻すことが出来ればこちらのものなのだが、一体どうすれば光を増幅させることが出来るのかは分からない。

 だからこそその方法が見つかるその日までは、彼女のためにも千歌を守り抜かなければいけないのだ。

 

「トイレ長いわよ! もうとっくに練習始まってるんだからね!」

 

「人の事気にしてる場合~?」

 

 にやにやと意地悪く笑みを深めた果南に更に体重を掛けられ、再び悲鳴を上げる善子。

 

 

 周りが苦笑する中、ただ一人鞠莉が険しい表情になった事には、まだこの時は誰も気が付いてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか、秋になると終バス早くなっちゃうんだよね」

 

 練習終わり。帰りのバス停前。

 皆が談笑する中、一人バスの時刻表を眺めていた曜が不意にそう呟く。

 

「そうずらね」

 

「日が暮れるのも早くなっちゃうから、放課後の練習も短くなっちゃうかも」

 

 自転車の陸と一緒に乗っている曜は関係はないが、他の皆はバス通学なのだ。

 終バスの時間が早まれば、当然練習の時間も削られてしまう。

 

「説明会まであまり時間はありませんわよ」

 

「それは・・・、分かってるけど・・・・・・」

 

「・・・練習時間は、本気で考えないといけませんわね」

 

 皆が頸を捻る中、何か思いついたような果南が手を叩く。

 

「朝、あと二時間早く集合しようか」

 

「・・・姉ちゃん・・・、合宿の日の事覚えてないのか?」

 

 また花丸に泣き付かれても困るし、睡眠時間が削られるのは健康上あまりよろしくない。人前に出るスクールアイドルなら尚更だ。

 だが他に案がないのか、誰も別の意見を上げようとしない。

 

「じゃあ決まりね♪」

 

「やめんか」

 

 陸も早朝から曜にたたき起こされるのは嫌なので、一人話を進めようとする困った姉を諫める。

 

「それと善子ちゃん。もう少し早く帰って来るように言われてるんでしょ?」

 

「ギクッ! ・・・ど、どうしてそれを・・・・・・」

 

 梨子の言葉が図星だったのか、おかしなポーズをとって身体を強張らせる善子。

 

「うちの母親が、ラブライブの予選の時に善子ちゃんのお母さんと色々話したらしくて・・・、なんか部屋にも入れてもらえないって」

 

「だ、だからヨハネは堕天使であって、母親はあくまでも仮の同居人と言うか・・・・・・」

 

 そんな事を言っているが、恐らく部屋の惨状を見られたくないのだろう。

 以前夏コミでの戦利品を運ぶべく、一度だけ彼女の部屋にお邪魔した事があるが・・・・・・、まあ、一般人には理解できない光景が広がっていた。

 

「お母さんって、どんな人?」

 

「学校の先生なんだって。善子ちゃん、幼稚園まで哺乳瓶放さなかったからお母さん――――」

 

「こらあぁぁぁぁぁぁ‼」

 

 とても楽しそうな笑顔で堕天使ヨハネの黒歴史を開示していく梨子。

 まさかとは思うが、ダークザギに操られてダークファウストをなっていた時の様にサディスティックな一面を持っていたりするのだろうか。

 いや、むしろそれが本性だとかいう可能性も・・・・・・。

 

「・・・待って、沼津からこっちに来るバスは・・・遅くまであるのかな?」

 

「えーっと・・・、仕事帰りの人がいるから・・・・・・あっ! 向こうで練習すればいいんだ!」

 

 閃きがそのまま反映されたように明るい表情になる千歌。

 

「それなら時間も確保出来るずら!」

 

「ルビィ賛成!」

 

「そうだね。・・・・・・鞠莉は?」

 

 果南が後ろを振り向くと、鞠莉は一人だけ少し離れた場所で携帯の画面を見つめていた。

 

「・・・へっ? No Problem!」

 

「・・・?」

 

 一瞬戸惑ったような表情を浮かべた鞠莉だが、すぐにいつもの笑みを取り繕う。

 

「よし! じゃあ決まり!」

 

「明日練習場所になりそうな場所、皆で探しましょ」

 

「・・・・・・」

 

 一、二年生が和気藹々と明日の予定を話し合う中、果南は訝しむような視線を鞠莉に向けていた。

 

 

 




千歌の夢に出てきたネクサスが伝えたかった事とは?
そして千歌に何か不穏な事を言い残したベリアル陛下は一体どこに?


いやー、始まり方がとにかく不穏だぜい。誰か俺に平和な小説の書き方を教えてくれ。



それでは次回で! ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!(ジードは出ません)

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