ただ今の俺に一万円も出す余裕はないぞ。そしてそんな事よりウルフェス行きたい。
早朝。
『デェェェヤァァァッ‼』
『オォォラァァァァァ‼』
突然内浦の町に現れたロボット―――レギオノイドに、ストロングコロナゼロとグレンファイヤーの拳が炸裂する。
出現したレギオノイドの数は十体。だが二人の炎の戦士の前に瞬く間にその数を減らし、今や二体だけとなっていた。
『おし! あと一体!』
『こっちも負けるかよ!』
最初は迎撃のために出陣したはずなのに、今は何故かどっちが先に五体倒すかの勝負と化している。
まあ、戦わないよりは遥かにマシだが、それでも少しは真面目に戦って欲しいものだ。
『ウルトラハリケーン‼』
『ダアラッシャァァァァァァ‼』
同時に天高く投げ飛ばしたレギオノイドに対し、ゼロは右腕の温度を上げ、グレンは自身もまた空へと昇っていく。
『ガルネイトバスタァァァァァ‼』
『燃えるマグマのォ・・・、ファイヤァァ・・・・・・、フラァァァァッシュ‼』
爆炎の奔流と紅蓮の槍が二体のレギオノイドの機体を破壊し、またもや同時に大爆発を起こした。
『どうだゼロ! 俺様の勝ちだろ!』
『何言ってんだ、俺の方が早かったぞ!』
『あ˝あん?』
『んだゴラァ?』
暑苦しい視線で火花を散らし、次の瞬間には殴り合いに発展しそうな雰囲気のヤンキー二人。
「はぁ・・・・・・」
『うおぉっ⁉』
『おい⁉ ちょっと待て陸! まだ勝負は終わって――――――』
陸は呆れ気味に溜息をついた後変身を解除し、引き留めてくるグレンをガン無視して自転車に跨った。
「・・・・・・学校行こ」
「なああぁぁぁ~~~~~・・・・・・」
放課後。浦の星女学院の屋上にて、千歌が大の字になって身体を床に預けている。
「・・・・・・どうしたお前」
先程ここについた際に、鞠莉の父親に話をつけて決定を延期させることが成功した事は聞いた。
Aqoursにとっては良い事はずだったのに、何故千歌はこんな事になっているのだろうか。
「だってラブライブの予備予選がこんなに早くあるなんて、思ってなかったんだもん」
「出場グループが多いですからね」
「この地区の予備予選は来月始め。場所は特設ステージ」
「そんな近いのか?」
まだ東海地区予選が終わって一か月も経っていないというのに。しかも特設ステージを設置してまで行うとは・・・、恐るべしラブライブ。
「有象の魑魅魍魎が・・・集う宴!」
「でも、早いと何が困るずら?」
「それは・・・、その・・・・・・」
首を傾げる花丸から目を逸らし、返答がハッキリしない千歌。
「歌詞を作らないといけないからでしょ?」
そんな彼女の代わりに、日頃から千歌に対する歌詞の催促に苦労している梨子が答えた。
「ああ、なるほど・・・」
納得したように視線を移す陸と花丸を見て、千歌は不満げに口を尖らせて自分ばかりに矛先が向く事に講義を始めた。
「あー! 私ばかりずるいー! 梨子ちゃんだって二曲作るの大変だって言ってたよー‼」
「それを言ったら曜ちゃんだって」
「あはは・・・九人分だからね・・・・・・」
予備予選のみならず、今回は学校説明会で行うライブの準備もあるのだ。
二曲分の作詞、作曲、衣装作りとなれば、それらを担当する二年生への負担は半端ではないだろう。
「つか、この中でダントツで進行遅いのお前だからな」
「なぁう・・・・・・」
詞のイメージが曲の元となり、曲のイメージが衣装の元となるため、千歌が詞を書かない限り梨子と曜は自分の仕事に移れないのだ。
「同じ曲って訳にはいかないの?」
「残念ですが、ラブライブには未発表の曲、という規定がありますわ」
「厳しいよ、ラブライブ・・・・・・」
もはや運営が高校生に何を求めているのかが分からなくなってきた。
「それを乗り越えた者だけが・・・・・・頂からの景色を見る事が・・・出来るのですわ・・・」
「それは・・・分かっているけど・・・・・・」
まさしくスクールアイドルの甲子園と言ったところか。
努力に努力を重ね、それでも突破できるか分からないという厳しさ。
ラブライブとは狭き門だ。
「・・・・・・で、作詞の方は進んでいるの?」
「・・・そ、そりゃあ・・・、急がなきゃ・・・・・・だから・・・あは?」
『・・・もう見飽きたわこれ』
ファーストライブの時からずっと見続けているこのやり取り。
これだけ経験を重ねても千歌の作詞スピードは一向に上昇の兆しを見せないので、梨子の苦労も程々だろう。
「ここに歌詞ノートがあるずら」
「わ――――っ‼」
梨子から隠すようにして置いてあった歌詞ノートを花丸に広げられ、大慌てで奪い返そうとする千歌。
何をそんなに慌てているのだろうかと思い、陸が千歌を押さえつけながらノートに目をやると。
「どんだけ進んでねーんだおま―――――」
あらかじめ結果を予想して用意しておいた言葉は途中で止まることになった。
花丸のページをめくる速度は異常に早く、しかもその視線はある一点のみに集中している。
ご丁寧に毎ページの端に書かれていたのは、歌詞ではなく簡易的なイラストとなった梨子だった。
目を吊り上がらせ、口元を鳥の嘴のようにしている辺り、かなり完成度は高い。
「すごいずら~!」
「そっくり!」
「結構、力作でしょ?」
どうしてこう、この集中力をもっと別のものに使えないのだろうか。
いや、むしろ集中力がないこそ誕生した作品・・・・・・、どちらにしろ感心できるものではない。
「昨日、夜の二時までかかって―――」
最後のページが捲れると共に、千歌の描いたイラストと全く同じ表情をした梨子の顔が現れる。
「「「あっ・・・・・・」」」
明らかに頭に来ている梨子に鋭い眼光を向けられ、千歌は上体をのけ反らせた。
「・・・千歌ちゃん・・・?」
「・・・・・・はい・・・」
『・・・・・・ホント、成長の気配がねーな・・・』
呆れ気味のゼロの言葉に、皆うんうんと首を振るのであった。
「うぅ・・・・・・ん・・・」
部室に戻っても、千歌の作詞が進むことはなかった。
手に取ったペンでノートに歌詞を綴ることはせず、先程からずっと唸っては机に突っ伏している。
「でも、このまま全部千歌達に任せっきりというのもね」
ここ数十分間苦しみ続けている千歌を不憫に思ったのか、パソコンを弄っていた果南が不意にそう言った。
「じゃあ果南、久しぶりに作詞やってみる?」
「い、いいや・・・、私はちょっと・・・・・・」
「え? 姉ちゃん作詞やってたの?」
「・・・うん。まあ、少しだけ・・・・・・」
「へー・・・・・・・・・・・・想像できねぇ」
基本的に身体を動かしているイメージしかない彼女がペンを手に歌詞を綴っている姿が全く想像できないのは陸だけではないだろう。
だがうっかりそう思った事を口にしてしまったのは陸だけだったようで、果南は背後に何やら炎のようなオーラを浮かび上がらせながら掴みかかってくる。
「ん~? どういう意味だ~~?」
「あ・・・、ちょ・・・、ギブ。姉ちゃんギブ」
ダイビングで鍛えられたしなやかかつ強靭な筋肉に首元を締め付けられ、青い顔になる陸。
「そんなでも前はちゃんと作ってたのよ」
「そんなって何さ。あとそれ言ったら鞠莉だって曲作りしてたでしょ?」
陸を解放すると共に不満げに鞠莉へと反撃をする果南。
果南の作詞も想像しがたいが、鞠莉の作曲もあまりピンとこない。
勝手なイメージで悪いが、彼女が作曲したら全てメタル系の激しい曲調になってしまいそうな気がするのだが。
「じゃあ衣装は?」
梨子の問いで、自然と皆の視線が唯一名前の出ていない三年生に移る。
「まあ、わたくしと・・・・・・」
皆の疑問に答えつつ、ダイヤが自分の妹に目を向ける。
「あぁ! だよね! ルビィちゃん裁縫得意だったもん!」
「得意って言うか・・・・・・」
衣装担当の曜に褒められ、照れくさそうに俯くルビィ。
「これも・・・・・・ルビィちゃんが作ってくれたずら!」
そんな様子を見ていた花丸がどこからか手提げ型のバッグを取り出し、そこに施された刺繍を見せつけてきた。
「可愛い!」
「刺繍もルビィちゃんが?」
「・・・うん」
「ん? じゃあこの前ルイズの野郎に渡してたハンカチもお手製か?」
「うゆ。ライブの応援の時、汗かくかなぁ・・・って」
あのルビィソロライブ以降二人はすっかり仲良しになり、ルビィは今でもたまに陸を連れてメトロン星人ルイズの家を訪ねているのだ。
このところは彼女の人見知りも徐々に改善されてきていて、やはりこれまで恐怖の対象だった宇宙人と仲良くできた事はルビィの中でも大きかったらしい。
「仙道さん」
「うぇ?」
陸が子供の成長を見守る親のような感覚に浸っていると、突然ダイヤの顔が視界いっぱいに映る。
「そのルイズさんとは誰なんですの⁉ まさか殿方⁉ ルビィがわたくしの知らない所でどこの馬の骨かも知らない殿方と親密になっているというんですの⁉」
「ええい顔が近い! つか落ち着けシスコン‼」
親の仇でも見るかのような瞳でここにはいないルイズを睨みつけるダイヤに、年上だという事も忘れてツッコんでしまう。
妹の事が心配なのは分かるが、こいつはちょっと大げさすぎやしないだろうか。
将来ルビィに彼氏でも出来た日は、その彼にとっての一番の壁は間違いなくダイヤだろう。
「じゃあ、二手に分かれてやってみない⁉」
がたんと椅子が動いた音と共に鞠莉の提案が耳朶に触れる。
「二手・・・ですの?」
(・・・今だ)
ダイヤの気が逸れた一瞬の隙に部室の隅へと避難する陸。
「曜と、ちかっちと、梨子が説明会用の曲を準備して。他の六人が、ラブライブ用の曲を作る! そうすれば、皆の負担も減るよ」
「でも、いきなりラブライブ用の曲とかなんて・・・・・・」
「だから皆で協力してやるの! 一度ステージに立ってるんだし、ちかっち達よりいい曲作れるかもよ!」
自信満々に豊満な胸を張る鞠莉。不安気なルビィとは対照的だ。色んな意味で。
「かもではなく、作らなくてはいけませんわね。スクールアイドルの先輩として!」
「おおっ! 言うねぇ!」
無駄に好戦的な気質である三年生は全員賛成のようだった。
「それいい! じゃあどっちがいい曲作るか、競争だね!」
千歌も少しでも作詞の負担から逃げたいらしく、特に反論する様子もないまま賛成の意を表明する。
「ルビィちゃん」
「う、うん」
「承知」
「では、それぞれ曲を作るという事で決まりみたいですね」
「よし! 皆で、がんばろ―!」
「「「・・・・・・・・・」」」
陸、曜、梨子の三名が不安そうに顔を見合わせる中、それぞれで作曲をするという事で話が合致した。
「じゃあ、私達は千歌ちゃん家で曲作ってるね」
「頑張るずら~」
「お前等が一番な」
『・・・・・・あの面子じゃ不安だし、俺ちょっと向こうについてくわ』
「いいよー。おいで~」
陸の身体からゼロが抜け、こいこいと手招きする果南へとウルティメイトブレスレットと共に宿る。
ベロクロンのミサイルによる陸の傷はもう癒えたので、もう一体化を解除しても問題ない。
というか元々半端じゃない身体能力を誇る果南にゼロの力が宿るとか、軽い流れで地球圏最強生物が誕生してしまった。
「じゃあゼロ! そっちは任せたぞ!」
『おう! そっちも気を付けろよ!』
二年生達の背中が話し声と一緒に遠ざかっていくのを一瞥した後、果南は残った五人を見据えた。
「さてと。私達はどこでやろうか?」
「ここら辺だと、やっぱり部室?」
「代り映えしないんじゃない?」
「そうですわね。千歌さん達と同じで、誰かの家にするとか?」
『・・・場所で変わるもんなのか?』
「まあ、環境を変えるってのも、大事だと思うよ? 見えてくるものも変わってくるしね」
『ふ~ん・・・』
ゼロ達ウルティメイトフォースゼロがマイティベースという秘密基地がありながら、現在陸の家を拠点にしているのと同じ原理なのだろうか。
「鞠莉んとこは?」
「え? 私?」
「確かに、部屋は広いし、ここからそう遠くもないですし・・・・・・」
何やら話し込み始めた三年生を尻目に、鞠莉の家に行ったことのない一年生組はひっそりと話し合い始める。
「もしかして、鞠莉ちゃんの家ってすごいお金持ち?」
「うん! そうみたい!」
「スクールカーストの頂点に立つ者のアジト・・・・・・」
「私はNo Problemだけど・・・・・・、三人はそれでいいの?」
鞠莉の問いに、三人は一秒の迷いもなく同時に手を挙げた。
「賛成ずら!」
「右に同じ!」
「ヨハネの名にかけて!」
「OK! Let`s Together‼」
興奮気味の一年生を引き連れながら、鞠莉はずんずんと自分の家へと歩を進めていく。
『・・・そんなにすげーのか? 鞠莉の家って』
「・・・少なくとも、私達とは住んでる世界が違うよ」
と、他のAqoursメンバーとは体力面で住んでる世界が違う果南が言うからには間違いないのだろう。
ゼロも少しだけ期待に胸躍らせながら、その後へと着いていった。
果南はウルティメイトブレスレットを手に入れた! ・・・下手しい陸より強いんじゃね?
そしてルイズよ。ダイヤさんに目ぇ付けられたけど、強く生きろよ( ´∀`)bグッ!
うむ。今回は基本的にアニメ通りに進めたから特にいう事ないですな。
つーわけで、それでは次回で!