「曜ちゃん! 大丈夫!?」
荒れ狂う波に船体が大きく揺れる。
海の音が聞こえ、喜んだのもつかの間。突如天から現れたあの怪獣によりその雰囲気は壊された。
「うん・・・、平気、転んだだけだから・・・。でも・・・」
千歌に支えられて起き上がった曜が、海上に出現した白い怪獣へと視線を移す。
「また、怪獣が現れるなんて・・・・・・」
六年前以来、一度も出現していなかった怪獣が、一週間の内に二回も出現している。しかも出現場所はどちらも内浦。
一体何が起きているというのだろうか。
「っ! あれっ!」
曜と同じく怪獣の方を見ていた梨子が声を上げた。
その視線の先には、数日前の怪獣騒ぎの際に現れた青い巨人が。
「味方なのかな・・・・・・、あの巨人・・・」
未知の存在に畏怖を感じる梨子に、千歌が確信を含む声音で断言した。
「味方だよ! だってこの前も怪獣を倒してくれたじゃん! きっと味方だよ!」
千歌が頑張れと叫ぶのと、巨人の蹴りが怪獣にヒットするのは同時だった。
『オオォウラァァァァァァァァァ‼』
裂帛の気合と共に、炎をまとったゼロの必殺キック、ウルトラゼロキックがエレキングに炸裂する。
『―――――――ッ‼』
エレキングが倒れこむと、ゼロはすかさず長い尻尾を掴み持ち上げ、ぶんぶんとエレキングを振り回す。バリバリとエレキングの体が帯電してきたのを見たゼロがその手を離すと、エレキングは勢いよく天へと昇って行った。
『デェヤァッ!』
天高くエレキングを放り投げた後、ゼロ自身も飛び上がってエレキングの遥か上空で制止する。
「すげぇ・・・、ホントに戦ってるよ・・・」
初めてウルトラマンに変身し、戦っていることも忘れて軽い感動と高揚感を覚える陸。
町も人も、全てが小さい。しかも空を飛んでいるという事が更に陸を興奮させる。
『驚くのはこれからだぜ? ゼロツインソード‼』
ゼロの頭に装着された二つの刃、ゼロスラッガーが二つ合わさって変形し、一本の弓の様な大剣が生まれた。
『ちょっと早すぎる気もするが・・・・・・、決めるぜっ‼』
その大剣、ゼロツインソードを構えたゼロはエレキング目掛けて急降下を開始した。それと同時にゼロツインソードが光を纏う。
『ピィィウィィィィィィ‼』
『セヤァッ、デェェリャッ‼』
エレキングが口から放った三日月形の光弾を打ち砕きながら、ゼロはエレキングへと肉薄していった。
『喰らいやがれッ! プラズマスパークスラッシュッ‼』
文字通り一刀両断。
ゼロがエレキングと交錯した刹那、胴を切り裂かれたエレキングの体が真っ二つになった。
『フィニッシュッ‼』
ゼロがポージングを決めると共に、空中でエレキングが爆散した。
エレキングを瞬殺したゼロに、小さな歓声が上がる。
下を見れば千歌がぴょんぴょんと跳ねながらありがとーと言っているのが見えた。
『へっ・・・』
ゼロが千歌に裏ピースで返した。ウルトラマンでも感謝されると嬉しいらしい。
「しかし、騒ぎ立てた割には随分とあっさり終わったな。ホントに弱体化してんのかお前」
『まあ、元が強すぎるからな。今でもあの程度余裕よ!』
「調子乗んな」
『へーへー。じゃ、戻るとしま―――』
「わあああぁぁぁぁ‼」
エレキングも倒した事だし変身を解除しようとしたゼロと陸の耳朶に、更なる悲鳴が響いた。
見ればなんと長すぎるが故に爆散しきらなかったエレキングの尻尾が、四人の乗る船に向かって落下して行っているではないか。
『なぁっ!?』
光線で撃墜しようにも、尻尾があそこで爆発したら確実に船を巻き込むことになる。
念力で止めようにも大きすぎる。通常形態のゼロの念力では無理だ。
「おい! どうすんだこれ!」
『クソッ・・・、ルナミラクルの力が使えれば・・・・・・』
ゼロは今レゾリューム光線を喰らった影響により、本来の力が発揮できない。
使う事の出来ないものに縋っても仕方ない。苦し紛れにゼロスラッガーを投擲するが、もはや間に合うはずもない。
船は諦め、せめて海に落ちた四人だけでも救おうとゼロが再び降下を始めたその時、
『ッ!? 何?』
突如船の中が青色に光ったのだ。
そう思ったらエレキングの尻尾が軌道を変え、僅かに船を逸れて着水していった。
船はその波に飲み込まれかけたが、何とか踏ん張って目立った損傷もないまま海上に浮かんでいる。
それ見た陸が、ホッと安堵の息をついた。
「ったく、ゼロ! 気を付けてくれよ・・・・・・、ゼロ?」
ゼロからの返答がない。何か信じられないものを見たように船に視線を注いでいる。
『まさか・・・・・・、あれはっ・・・』
「もーダメじゃないかゼロくーん。ちゃんと周りを見てなきゃ―」
内浦の傍ら、両手から大量のアニメグッズが入った紙袋を下げながらゼロとエレキングの戦いを観戦していた者がいた。
「でもまさかこの地球にもゼロ君が現れるとは思わなかったよ。どうやらボクと君は運命の赤い糸で結ばれているらしいね。・・・って、ボク達男同士じゃないか、参ったな・・・」
ケタケタと笑いながら、その男は謎の光が発生した船へと目を移す。
その者の視線は光の発生源ではなく、ゼロを応援していた少女に注がれていた。
「・・・あの子、もしかして・・・・・・」
男はより一層笑みを深めた後、闇へと溶け込んでいった。
謎の減少によって事なきを得た四人の乗る船。
その中では、エレキングの尻尾が船体に当たらなかった事を喜んでいるという雰囲気はなく、皆一様に言葉を失い、一人の少女に視線を向けていた。
「桜内・・・さん・・・?」
千歌がようやく絞り出した声が、静かな船内に響く。
怪獣の尻尾が眼前に迫ったその瞬間、梨子の胸から青色の光が発生し、波動の様な物が怪獣の尻尾を押し戻したのだ。
千歌、曜、果南の三人も驚きでそれ以上の事が言えないが、一番驚いているのは梨子だった。
「え・・・? 何・・・、これ・・・?」
まだ光ったままの自分の胸を見て、梨子がか細く震える。
一体自分の体に何が起こったのか、あの力は一体何なのか。考えるだけで身震いが止まらない。
「と、とりあえず戻ろ? 陸も心配してる事だろうし・・・」
まだ混乱したままの果南の提案に千歌と曜も賛同し、船は陸の待つ淡島へと戻って行った。
『おいっ! 見たぞあの光、一体誰が!?』
船が戻って来るや否や、陸の体を乗っ取ったゼロが四人に詰め寄る。
「陸ちゃん落ち着いて。・・・・・・桜内さん、自分でもよく分からないみたいで・・・」
陸、ではなくゼロを諫めた千歌が視線を映した先には、青い顔で震える梨子の姿が。どうやらあの光の発生源は梨子らしい。
よほどショックが大きかったのか、曜に支えられながら船から降りてくる。
『っ・・・・・・、スマン、冷静じゃなかった・・・』
「でも一体何があったんだ?」
ゼロから体の主導権を取り戻した陸が千歌に問う。
「・・・・・・怪獣の尻尾が船に向かって飛んできた時に、急に桜内さんの胸が光ったと思ったら、波? みたいなものが怪獣の尻尾を押し戻して・・・・・・」
「とりあえず今は安静にしてあげよ? 陸、自転車で桜内さんの事バス停まで送ってって上げて?」
「ああうん。分かった・・・」
果南に言われた通り、陸は梨子を自転車に座らせてバス停まで送った。
付き添いの千歌と曜と共にバスに乗って走り去って行った後、再びゼロが口を開いた。
〈何故、この世界にリトルスターが・・・・・・〉
『あれはっ・・・』
謎の五人が潜む宇宙船。
ゼロとエレキングの戦いをモニタリングしていた五人のうち一人が、梨子の胸から発せられた青い光を見て声を上げる。
『くっく・・・・・・、遂にこの地球でもリトルスターが発現しましたか・・・・・・』
『だがあれはウルトラマンの力になり得るリトルスター。吾輩達が求めるものではないぞ』
『ゥゥゥゥゥゥゥゥ』
『ええ、あのリトルスターがゼロの力となる前に発現者を始末するとしますか。ゼロも彼女のリトルスターの発現に気付いたようですが、幸い、ゼロと一体化している少年も分かった事ですしね・・・・・・』
その赤い双眸が映す先のモニターには、ウルトラマンゼロと一体化している少年、仙道陸と――――
この地球で初めて確認されたリトルスター発現者、桜内梨子の姿が。
『ふふ・・・、そう何度も思い通りにはさせませんよ、ウルトラマンゼロ・・・・・・』
心底底冷えする響きが、闇に溶けていく。
『ダダを向かわせて発現者をここに連れてこさせましょう。人間の捕獲には奴が適任です』
と、ここで今まで黙っていた一人が呟いた。
『・・・・・・ところで、あのエレキングってベロクロンより強力だったのか? 瞬殺だったぞ』
『『『『・・・・・・・・・・・・』』』』
そのツッコミには、唸り声すら返ってこなかった。
補足の説明。
今ゼロはレゾリューム光線を喰らった影響で、ルナミラクル、ストロングコロナ、シャイニングゼロ、ゼロビヨンドにタイプチェンジ出来ず、ウルティメイトブレスレットも壊れてしまったのでウルティメイトゼロにもなれません。
それをこの先どうするかって話だけど、アレが出てきた時点でまあ分かるよね。
あとゼロの戦いを見て笑ってた謎の存在ですが、あれベロクロンの時に「ウルトラマン」って言っていた奴です。今後の物語でそこを説明する予定がないので一応。
それでは次回で。