ゼロライブ! サンシャイン!!   作:がじゃまる

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九十四話 二つの戦い

 

 

「ちょっと待ってて」

 

 予選会場は東京故、Aqoursが学校に辿り着くまでにも時間がかかる。

 時刻は夜八時を過ぎ、辺りも既に暗闇が支配していた。

 

「どう?」

 

 理事長室に戻るや否や鞠莉はパソコンを開き、正確な入学希望者数を確認する。

 

「・・・・・・変わってない・・・」

 

「そんな・・・・・・」

 

 揺るがぬ数字と現実が九人のいる室内を包んだ。

 

「まさか・・・・・・天界の邪魔が・・・!」

 

「「・・・・・・」」

 

 こんな時でもいつも通りの善子にルビィと花丸の冷たい視線が注がれる。少しは気を盛り立てようとしてくれたのだろうが、今回ばかりはやるタイミングを見誤ったとしか言えない。

 

「ではやはり・・・・・・」

 

 今現在の人数は八十人。統廃合の話を白紙にするために課された条件まではあと二十人だ。

 だが、指定されたタイムリミットまでは・・・・・・、

 

「あと四時間しかないよ?」

 

「Aqoursの再生数は?」

 

「ずっと増え続けてる・・・・・・」

 

 ライブの再生数が増えても、それに比例して入学希望者数が増える訳じゃない。

 Aqoursを知る者にとってAqoursはスクールアイドルでしかなく、どこの学校なのかは些末な事なのだ。

 ましてや浦の星は田舎の学校。ライブに魅了されたと言っても、同じ学校に通いたいとは思いにくい部分があるのだろう。

 

「・・・パパに電話してくる」

 

 すっと立ち上がった鞠莉と、それに続いたダイヤが部屋を出て行く。

 

「・・・・・・」

 

 少し静かになった理事長室の中で、残されたメンバーはその身に留めきれない不安と緊張を抱きながら二人の背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 鞠莉とダイヤが交渉に臨んでから一時間が経過した。

 午後九時を回った時計の針が刻む時間が刻一刻とタイムリミットに迫り、少女達の焦燥をより焚きつける。

 

「遅いね・・・鞠莉ちゃん・・・」

 

「・・・うん」

 

「向こうは早朝だからね。なかなか電話が繋がらないのかもしれないし―――」

 

 ガチャリと開いた扉が果南の言葉を遮り。出て行った時よりは幾分か朗らかになった表情で腕を組む鞠莉が現れる。

 

「・・・Waitingだったね」

 

「・・・・・・お父さんと話せた?」

 

 不安を隠し切れない様子で千歌が問う。

 

「うん。話した。決勝に進んで、再生数が凄い事になってるって」

 

「・・・それで?」

 

 梨子の問いにはすぐに返答が帰って来ない。しばらくの沈黙の後に鞠莉が顔を下げ、代わりに彼女に同行していたダイヤが口を開いた。

 

「何とか明日の朝まで伸ばしてもらいましたわ。ただ、日本時間で朝の五時。そこまでに百人に達しなければ、募集ページは停止すると・・・・・・」

 

「最終通告って事ね・・・」

 

 これまでも散々期限を引き延ばしてもらっているのだ。これ以上鞠莉にも彼女の父にもワガママは言えまい。

 

「でも、あと三時間だったのが八時間に伸びた」

 

 たった五時間、されど五時間。今の自分達にはとても大きな希望だ。

そして、その希望が連鎖するように、

 

「ふわぁっ! 今、一人増えた‼」

 

 ルビィがパソコンを抱えたまま興奮気味に叫ぶ。

 

「やっぱり・・・! 私達を見てくれた人が興味を持ってくれたのよ!」

 

「このまま増えてくれれば・・・・・・!」

 

「っ!」

 

 自分達のしてきた事が無駄ではなかった。それが証明されそうだというのに、千歌はパソコンに目もくれずに部屋から出て行こうとする。

 

「ちょっ⁉ ちょ、どこ行くのよ⁉」

 

「駅前・・・・・・浦の星をお願いしますって、皆にお願いして、それから! それから・・・・・・」

 

 タイムリミットこそ伸びたとはいえ、入学希望者数はまだまだ百人には届きそうにない。

 それにより抑えこんでいた焦りが爆発してしまったのか、善子の呼び止めも聞かずにドアノブへと手を掛ける。

 

「今からじゃ無理よ!」

 

「っ・・・! じゃ、じゃあ今からライブをやろう! それをネットで・・・・・・!」

 

 梨子の制止で一旦は止まるが、すぐに別の案を掲げて皆に促した。

 

「・・・今行なったところで、視聴数は期待できないと思いますわ」

 

「それに、準備してる間に朝になっちゃうよ?」

 

 ダイヤと果南の年長組にも制され、すぐにその考えは無理だと流されてしまう。

 だが、それでも千歌は必死に頭を働かせ、振り向いては更なる動きを見せる。

 

「そうだ―――――!」

 

「千歌ちゃん!」

 

 そんな彼女を、曜は抱き付く事で物理的に留まらせた。

 幼馴染であり親友である曜の自分を思うが故の行動に、千歌は徐々にその身体を脱力させていく。

 

「落ち着いて! ・・・大丈夫、大丈夫だよ・・・!」

 

「・・・でも、何もしないなんて・・・・・・!」

 

 最後まで足掻く。それが千歌の、そしてAqours皆の決めた事。

 今から自分に出来る事なんてほとんどないだろう。けど、学校を廃校にしたくない。だからいくら手段が少なくてもやれることは全部やりたい。

 

「信じるしかないよ。今日の私達を」

 

 もう一人の幼馴染が優しく励ましてくれる。

 皆だって気持ちは同じだ。じっとしていられない。何か行動したい。だが、今はただ自分達のやってきた事を信じ、祈ることしか出来ないから。

 

「・・・・・・そうだよね・・・。あれだけの人に見てもらえたんだもん。・・・・・・だいじょぶ、だよね」

 

 部屋の中を見回し、皆が自分と同じ心境であることを悟った千歌はようやく焦りから解放される。

 

「さあ、そうとなったら皆さん帰宅してください」

 

 事が収束したタイミングを見計らい、ダイヤが下校を促す。

 もう時刻は九時を過ぎている。流石に帰らないと親御さんたちが心配するだろう。

 

「帰るずらか?」

 

「なんか一人でいるとイライラしそう・・・・・・」

 

「落ち着かないよね・・・・・・気になって・・・」

 

 だが、誰もすぐには帰ろうとせず、それどころか暗い表情へと変わっていく。

 流石にこうなってしまっては変える事が後ろめたくなってくるのだ。

 

「だって?」

 

 こうなることが予め分かっていた様子の果南がダイヤに目線を向ける。

 

「仕方ないですわね」

 

 ダイヤも薄々勘付いてはいたようで、特に嫌な顔もせずにあっさりと承諾。

 

「じゃあ、いてもいいの⁉」

 

「皆さんの家の許可と・・・、理事長の許可さえあれば・・・・・・」

 

 目だけを動かして鞠莉を見やる。

 当然、浦の星の理事長様はこんな時に気が利かない程シケてはいない。むしろ喜んで即答した。

 

「勿論! 皆で見守ろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 清き水を湛えた地球を眼前に構えた月面。

 Aqoursがじわじわと攻めよってくる統廃合のタイムリミットと戦う一方で、こちら側でも別の激闘が展開されていた。

 

『ッ―――――――‼』

 

 Uキラーザウルスの放つ四本の触手やミサイルを、三人のウルトラ戦士は縦横無尽に宙を舞ってそれを回避し続ける。

 

『ハアァァァ・・・・・・!』

 

 旋回して身体の向きを変えたギンガの全身のクリスタルが赤く発光を始め、自身の周囲に燃え盛る隕石のような火の玉を生成。

 

『ギンガファイヤーボール‼』

 

 突き出した腕の動きに合わせて進軍を始めた火炎弾がミサイル群と衝突し、互いの威力で爆散し合う。

 

『エメリウムスラッシュ‼』

 

『ッ――――――‼』

 

 爆発によって生じた黒煙の中から、ゼロの頭部から伸びた熱線が不意を打つように飛び出す。

 だがUキラーザウルスはいとも容易くそれを跳ね除け、逆に触手の内一本を死角からゼロへと伸ばした。

 

[ウルトランス! キングジョー! ランチャー‼]

 

『ヅォリヤ‼』

 

 触手を弾いたのはビクトリーの腕から飛んできた光弾。

 その腕の形状は元のビクトリーのものではなく、かつて戦ったキングジョーブラックに供えられていたペダニウムランチャーに酷似していた。

 

「何だあれ⁉ 腕の形変わってんだけど⁉」

 

『ん? あぁ、ビクトリーは怪獣の力を身体の一部に還元できるんだよ』

 

 唯一彼の能力を知らない陸のみが驚きを見せ、ゼロ、ギンガ、ビクトリーの三人は尚も敵の攻撃をかわし続ける。

 

[ウルトランス! サドラ! シザース‼]

 

『ヒカル! 今だ!』

 

『おう!』

 

 今度は右腕をカニのような鋏へと変化させ、Uキラーザウルスの攻撃を纏めて弾く。

 

『ギンガセイバー‼』

 

 奴の意識がビクトリーに集中した隙に、腕から光剣を伸ばしたギンガが二本同時に触手を刈り取った。

 

『流石のコンビネーションだな・・・・・・っと!』

 

 ブレスを叩き、その身を青く染め上げながら横一文字に薙ぎ払われた剛腕を回避する。

 

『ミラクルゼロスラッガー!』

 

 ルナミラクルゼロへとタイプチェンジ。指揮棒代わりのゼロランスを駆使して操る光の刃で次々とミサイルを切り裂いていく。

 

『オオォォォ・・・・・・!』

 

 クリスタルを黄色に光らせ、頭上に発生させた雷雲から吸い寄せた電気をその身に宿すギンガ。

 

『ギンガサンダーボルト‼』

 

[ウルトランス! ハイパーゼットン! シザース‼]

 

 投擲された円盤状の雷撃と並んでビクトリーが飛び出し、巨大な爪となった右腕をUキラーザウルス本体へと向けて刺突させる。

 が、

 

『ッ――――――――‼』

 

『っ⁉』

 

 奴の頭部の発行体に煌き、そこから放たれた光の柱がギンガサンダーボルトもろともビクトリーを飲み込んだ。

 

『ショウ! だいじょ――――――ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ‼』

 

 気を取られたギンガにも大量のミサイルが襲いかかり、爆発の衝撃波が音のない宇宙空間に轟く。

 

『ガルネイトバスタァァァァァァァァ‼』

 

 落下していく二人へ向けられた意識をこちらに向けるべく、ストロングコロナゼロが爆炎を奴へとぶつける。

 

『ッ――――――‼』

 

『ぐっ・・・!』

 

 狙い通りこちらに向かって来たのはいいのだが、これ程身体の大きさに差があるとタイマンで相手取るのは無理がある。

 

「ゼロ飛べ! 距離取ってあの二人が起き上がるまで時間を稼げ!」

 

『っ! そうか!』

 

 陸のアイデアを聞いたゼロは言葉の通りに飛び上がってUキラーザウルスから距離を取るが、

 

「『い゛っ・・・⁉』」

 

 奴は上空のゼロを追い、その巨大な体躯が浮かび上がらせたのだ。

 

「飛べんの⁉ 嘘だろ⁉」

 

『当たり前だ! 我等が技術の粋を結集した最強の超獣を侮るでないわ‼』

 

 Uキラーザウルスが押されている間は黙っていたヤプールが、形勢が逆転した途端勝ち馬に乗って高々に我が子の自慢をしてくる。

 

『ッ―――――――――――‼』

 

「『がああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ‼」』

 

 瞬く間に上を取られ、振り下ろされた巨大な両腕がゼロを強襲した。

 拳だけでもゼロの身体を上回る大きさを持っているのだ。防ぐ術もなければ回避する術もなく、弾丸が如し速度で地面に叩き落されてしまう。

 

『ぐ・・・ぁ・・・・・・』

 

 その一撃は重く、モロに喰らった身体はすぐには起き上がってくれない。

 

『クク・・・、どうだ。かつてウルトラ兄弟を苦しめた我が最強兵器の実力は?』

 

『がっ・・・あぁぁぁ・・・・・・‼』

 

 虫ケラを踏み潰すかのように踏みつけられ、奴の全体重が圧し掛かってくる。

 

『フハハハハ・・・・・・! どうだ? かつて倒した敵に甚振られる気分は』

 

『・・・テメェ・・・! どうしてこんなに早く復活した・・・・・・⁉』

 

 ヤプール人は負の感情を糧とし生きる存在。例え肉体を滅ぼそうとも、人々のマイナスエネルギーがあれば何度でも蘇ることが出来る。

 だが、今回はいくら何でも復活までが早すぎる。東京で奴を倒した時から、まだ半年もたっていないというのに。

 

『フフ・・・、いいだろう。冥土の土産に教えてやる。肉体を失くし、異次元空間を彷徨っていた我等に語り掛ける者がいたのだ。我等を復活させる代わりにウルトラマンゼロを倒せ、とな・・・・・・』

 

『何・・・・・・? 誰だそいつは⁉』

 

『スライとかいうメフィラス星人だ。・・・・・・貴様等もよく知っているであろう?』

 

「っ・・・・・・! またあの野郎か・・・!」

 

 ダイヤを操った一件以降はナリを潜めていたが、ここへ来てとんでもない奴を復活させやがった。

 

『ウルトラサインを偽造し、かつて我が野望を潰しおったウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーもここへおびき寄せ、まとめて叩き潰す。・・・これほど、我が完全復活を宣言するに相応しい舞台があるか⁉』

 

『くっ・・・!』

 

『この・・・・・・!』

 

 ギンガとビクトリーが自身は異次元空間で高みの見物を決め込んでいるヤプールを睨みつけるが、依然地を舐めたままで立ち上がることが出来ない。

 

『苦しめ! 慄け! 恐れろ! 貴様等の負の感情が更に我等の力を増大させる‼』

 

「『ぐ・・・・・・ああぁぁぁぁ・・・・・・!」』

 

 ぐりぐりと左右に踏み躙られ、身体を内部からぐちゃぐちゃにされているかのような激痛が駆け巡った。

 

『我が復讐はこれだけでは終わらん! 貴様等を倒した後は、貴様等の守り続けてきたものを全て破壊してくれるわ!』

 

『な・・・・・・に・・・?』

 

 ヤプールの意思に沿うように、Uキラーザウルスが地球へと目を向ける。

 

『・・・まずはウルトラマンゼロ。あの地球で貴様が随分と気に掛けているあの子娘共からだ!』

 

 徐々に薄れ始めた陸の意識の最奥に、九人の少女の姿が浮かんだ。

 

(―――――破壊・・・する・・・・・・?)

 

『どう嬲り殺してやろうか・・・・・・・まて、超獣に改造して死ぬまで我等が操り人形にするもの一興・・・・・・!』

 

(――――――殺す・・・・・・?)

 

 胡乱の中に引きずり込まれつつあった思考が這い上がってくると共に、何か別の何かが身体の奥底から湧き上がってくるのを感じる。

 

『・・・いや、まずは貴様等の亡骸を見せしめるところから始めなくてはな。あの子娘共の泣き叫ぶ顔を見てから捕らえ、どうするかは一人一人ゆっくり決めるとしよう。・・・・・・何せ九人もいるのだからな』

 

(――――――泣かせる?)

 

 九人。その単語が出てきた時点でヤプールの狙いはAqoursとみて間違いないだろう。

 その瞬間、

 

「っ・・・・・・‼」

 

 ドクンと、心臓が強く跳ね上がったのを感じた。

 

(――――――アイツ等を・・・?)

 

 頭の中が真っ白になり、不思議な感覚が全身に広がっていく。

 冷たく、刺さるような心地の悪い感覚。

 苦しさのあまり、今にも狂いそうな感覚。

 

(――――――んなことさせるか・・・)

 

 

 鼓動が早くなり、真っ白だった頭の中がドス黒い殺意の色に染め上がっていく。

 その感情は目の前にいる巨大な超獣と、今は目に見えない赤い悪魔へと向けられたもの。

 

(――――――その前に・・・・・・!)

 

 黒い巨人のイメージが脳裏に浮かび上がったその時。

 

(――――――テメェを・・・、ブッコワス‼)

 

『ッ―――――――――⁉』

 

 ゼロを踏みつけていたUキラーザウルスの足元から膨大な闇が噴出し、その巨体を薙ぎ払った。

 

『何ッ⁉』

 

 初めて焦りの色を見せたヤプールの声音。

 

『ヴァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼』

 

 立ち昇った暗黒の柱の根元で、ゼロダークネスは漆黒の殺意と化した咆哮を巻き散らせた。

 

 

 




一度や二度の暴走では気が済まず、またもや暴走する系主人公仙道陸。
今回の暴走は前とはちょこーっと違うんですけどね。それはまた次回のお楽しみって事で。

んでもってヤプールの復活にはスライが関わってました。皆さんもう気付いてらしたでしょうが。
一期の話の時にめんどくさそうな態度を取っておきながら、今になって結託とは。ますますダークネスファイブが何を企てているのか分からなくなってきましたねー(白々しい)

・・・・・・あれ? 浦女の廃校問題は?

その辺も次回の第九十五話で描きます! それでは次回で! 
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