マイページにURL貼っておくので気が向いたら見てください。ロクな事呟きませんが。
『浦の星女学院は来年度より、沼津の高校と統合する事になります。皆さんは来年の春より、そちらの高校の生徒として、明るく元気な高校生活を送ってもらいたいと思います』
体育館にて、浦の星女学院全生徒へと告げられた悲しい現実。
壇上では、取り繕った笑顔を貼り付けた鞠莉が精一杯の明るい声をマイクに乗せていた。
「――――――?」
「――――――?」
ガヤガヤと、たった今統廃合の事実を知ったAqours以外の生徒が戸惑いを見せ始める。
誰もが望んでいなかった足掻きの結果が、その日の浦の星女学院全体を静かに包み込んでいった。
「千歌ちゃん・・・千歌ちゃん!」
「・・・ん?」
統廃合が決定しても、授業が無くなる訳ではない。今朝やった緊急の朝礼以外は通常運行だ。
「次、移動教室だよ?」
「あー・・・、そっか・・・」
抜け殻のように窓の外を眺めていた千歌は、曜の呼びかけで無気力な瞳を彼女に向けた。
「千歌!」
「いよいよ決勝だね! ラブライブ!」
「またいい曲聞かせてね!」
気遣ってくれているのか、上手く統廃合から話題を逸らしながら励ましかけてくれるむつ、いつき、よしみの三人。
そんな声を受け、ガタッと音を立てて立ち上がった千歌にクラス中の視線が集中する。
「そうだよね! 優勝目指して頑張る!」
そう言った笑顔は吹っ切れていた。・・・・・・吹っ切れているように見せていた。
周りは誤魔化せているが、付き合いの長い曜。
「・・・・・・」
〈・・・・・・無理しやがって〉
そして、廊下から今の様子を伺っていた梨子とゼロには通用しなかった。
「今は前を向こ?」
梨子は早歩きで授業先の移動教室へと向かう背中を追う。
目の前にいるのはクラスの皆からの応援に、本音を隠してしまった千歌。
「ラブライブはまだ終わってないんだから・・・・・・」
「分かってる」
前を向こうという言葉にそう答えつつも、一切振り返る事なく立ち去っていく。
「・・・・・・」
普段の彼女でない事は見て明らかだ。その拒絶感漂う雰囲気に、肩を掴もうとする手を伸ばしきれずに止めてしまう。
それ以上何も言えず、ただ足早に歩き去っていく背中を見つめる事しか出来ない。
〈・・・悪い、梨子。今日はもう戻る・・・・・・〉
「・・・・・・うん」
冬制服の袖の中に隠していたウルティメイトブレスレットが消失し、梨子の体内からゼロが抜け出ていく。
「・・・放課後。・・・練習の時は来てね」
〈・・・・・・・・・分かってる〉
短く答え、ゼロはこの場から逃げるように陸の元へと帰還していった。
「マジ⁉ 浦女も統廃合⁉」
「マジマジ。統合先の学校も同じだってよ」
「うおぉぉ! てことはAqoursの子達と同じ学校になれるって事か⁉」
陸の通っている学校。
浦の星女学院の統廃合。朝っぱらからこの話題で持ち切りのクラス内は話し声姦しく、陸は自席の机に突っ伏しながら級友達の興奮した声を右耳から左耳に聞き流していた。
〈・・・・・・おい、生きてるかお前〉
(・・・・・・ゼロ?)
突然の帰還に少しだけ目線を上げる。
(・・・お前見張りはどうした?)
〈・・・・・・流石にあの空気の中にいるのはキツイ。窒息する〉
薄々予想はしていたが、やはり統廃合が決定した浦女の雰囲気もかなり重苦しいものとなってしまっているらしい。
〈沸き立ってんじゃねーかクラスメイト共〉
(超ウゼェ。コイツ等Aqoursがどんな思いでいたのか分かってんのかよ・・・・・・)
今更クラスメイトに腹を立てたところでどうしようもないのは分かっているが、これまでのAqoursの苦心や努力を知らない連中が可愛い女の子と同じ学校になれるという理由だけで喜んでいるのは見ていて気分が悪い。
(・・・千歌はどうだった?)
耳障りなクラス内の喧騒を無視するために耳を塞ぎ、ゼロに伺い立てる。
学校が無くなる。当然Aqours全員が今まで見た事もないような顔でショックを受けていたが、中でも一番酷いのは千歌だ。
〈・・・・・・ずっと上の空って感じだな。一応、クラスメイトには明るく振舞っちゃいるが〉
(やっぱりか・・・)
東京遠征でボロボロな結果に終わった際、Aqoursメンバーや陸にすら本心を隠していた千歌だ。
自身の沈んだ気持ちを周りに伝染させないように気を遣っているのだろう。
〈とりあえず、梨子が練習には顔出せって言ってたぜ〉
(・・・ん。了解)
普段なら言われるまでもなく浦女に足を運んでいるというのに。
今日ばかりは、これまでの日々が嘘のように足が重く感じる。
「・・・・・・」
どうして、自分はそんな大事な時に寄り添ってあげられなかったのか。
傍で見守り、時に力を貸すこと。それが自分に出来る事だと思っていたのに。
「・・・・・・何やってんだろ。俺・・・・・・」
その呟きがクラスメイトの耳に届く事はなく、いつまでも陸の中だけで反芻し続けていた。
「学校が統合になったのは残念ですが、ラブライブは待ってくれませんわ」
こんな時に限って時間とは早く過ぎ去って言ってしまうものだ。
夕暮れ空の下、浦の星女学院の屋上に集まったAqoursメンバーと陸。そして何故か着いて来たヒカルとショウ。
「昨日までの事は忘れ、今日から気持ちを新たに、決勝目指して頑張ろう!」
「勿論よ! 五万五千のリトルデーモンが待つ魔窟だもの!」
「皆善子ちゃんの滑り芸を待ってるずら~♪」
「ヨハネ!」
てっきり沈んでいるものかと思って来てみれば、皆の顔は異様に明るかった。
無論、それが表面上の張り付けただけのものだという事を理解するのに時間は掛からなかったが。
「・・・・・・何でアンタ等もいるんすか?」
隣に視線を流し、興味津々と言った様子のヒカルを見やる。ちなみに昨日はショウと共に当然必然当たり前が如く仙道家に居座っていた。何故なんだ。
「スクールアイドルなんつーもんは俺達の世界にはないからな。そりゃ興味も沸くよ」
となると、以前クレナイガイや朝倉リクがAqoursの練習を見に来たのも単に物珍しさ故だったのだろうか。
「・・・・・・全く、何故俺まで・・・」
「いいじゃんかよー。それに学校でアイドルなんて千草が食いつきそうなもの見逃せる訳ねーだろ? 丁度いいしサクヤにも教えてやれよ。アイドルに興味持つかもしれねーぜ?」
「何・・・? そんなふしだらなものサクヤにはやらせんぞ!」
「あ゛ぁ⁉ 何がふしだらなんだよ! 千草に喧嘩売ってんのかお前‼」
それ以前に目の前の九人の少女に喧嘩を売りまくっている事を理解して欲しい。
「そ、それに! お姉ちゃん達は、三年生はこれが最後のラブライブだから・・・・・・」
一瞬にして口喧嘩に発展した二人は無視し、皆に続いて声を上げたルビィの方を向く。
「だから・・・だから・・・! 絶対に! 優勝したい!」
優勝したい。
一瞬語気を弱めつつも、心からの願いであろうその言葉はハッキリと口にした。
「ルビィ・・・」
「Yes! じゃあ優勝だね!」
「そんな簡単な話じゃないけどね・・・」
全員が、互いに仲間として支え合う言葉を掛け合う。
「でも、そのつもりでいかないと」
学校を救う事が出来なかった事は確かに悲しい。だが、いつまでもそれに囚われていてはラブライブ優勝など夢のまた夢。
「・・・・・・うん、優勝しよう・・・」
そうは言うものの、どこか空虚に感じるその声音。
沈みゆく朱い夕陽が普段通りに。されど、痛いほど優しく彼女達のいる屋上を包み込む。
「じゃあ、アップしてー!」
「ライブ後だから入念にね~」
三年生の声におー! と皆で答え、それぞれ位置について日頃の練習メニューを頭からこなしていく。
「じゃあストレッチいくよー。せーのっ!」
「「「「「「「「「イチニ、サンシ」」」」」」」」」
「そっちもいい加減に」
準備体操を始めた九人を横目に、陸は陸で練習の邪魔になりそうなので未だに言い争っているヒカルとショウを止めに入る。
「・・・・・・」
二人を宥めながら、再びちらりと千歌の方へ意識を向けた。
身体を動かせば少しは気が紛れるだろうかと思っていたが、やはりそう簡単に割り切れるものでない事は見て伺える。
「「「「「「「「「ニーニ、サンシ」」」」」」」」」
いつもの輝きが見えない彼女の瞳には、今何が映されているのか。
傷付いた本心を隠す仲間の姿か。ラブライブの決勝か。
それとも―――、
「っ・・・・・・!」
その答えは、彼女の瞳の端から流れ出た一筋の雫によって明らかとなる。
「・・・・・・千歌ちゃん・・・」
「・・・? どうしたの?」
気付いたのは陸だけじゃない。Aqoursの皆も、ヒカルも、ショウも。彼女の心が無意識の内に零した涙を前にただ立ち尽くしていた。
〈・・・・・・忘れられる訳ねーよな〉
そう。あの瞳には、今もきっと鮮明に焼き付いている光景がある。
あと二人。たった二人だった。
だというのに、無情にも時と現実によって全てを否定されたあの瞬間。
「・・・・・・皆?」
取り繕った笑顔をどんどん崩していくメンバーを見て千歌はきょとんと首を傾げる。
「今日は・・・・・・やめておこうか」
そう切り出したのは果南だった。
彼女は千歌と一番付き合いが長い。例え言葉に出されずとも、千歌の心情を読み取る事など造作もない事なのだろう。
そしてその言葉は、今はそれが最善であると判断したからこそのもの。
「え・・・・・・? なんで? 平気だよ⁉」
千歌はそう訴えるも、こうなると頑固な果南の表情は揺るがない。
「ごめんね・・・・・・無理にでも前を向いた方がいいと思ったけど・・・。やっぱり、気持ちの整理が追い付かないよね」
続く鞠莉も、いくら論理では前を向こうと言っても完全に吹っ切れる事は出来ないという旨を重ねた。
「そんな事ないよ。ほら、ルビィちゃんも言ってたじゃん! 鞠莉ちゃん達これが最後のライブなんだよ! それに・・・それに・・・・・・!」
「千歌だけじゃない」
前に歩み出た果南が言い募る千歌の両手を握った。
「皆そうなの」
今この瞬間まではあえて隠していた事実を告げる。
「ここにいる全員。そう簡単に割り切れると思っているんですの?」
浦の星女学院を救うために誰よりも努力した九人だから。
全校生徒の学校が大好きだという想いを背負ってここまで走り続けてきたAqoursだからこそ、統廃合決定というショックは大きい。
「やっぱり、私はちゃんと考えた方がいいと思う」
一年生の頃にも廃校を阻止しようと立ち上がっていた果南が皆に提示した思いは―――、
「本当にこのままラブライブの決勝に出るのか、それとも・・・・・・」
その言葉を受けた千歌は、静かにこれまでの道を共に歩み続けてきたメンバーの顔を見渡した。
「・・・・・・そうですわね」
陰った笑みを浮かべる者。眉を下げ、心の曇りを見せる者。
表情こそそれぞれ違えど、皆一様に諦めの色を含んでいる事に千歌は敏感に反応する。
「ま・・・待ってよ! そんなの出るに決まってるよ! 決勝だよ⁉ ダイヤさん達の―――」
「本当にそう思ってる?」
鞠莉の一言が千歌を制する。
「自分の心に聞いてみて。・・・・・・ちかっちだけじゃない。ここにいる皆・・・」
「・・・・・・なんか、大変な時にお邪魔しちゃったみたいだな・・・」
結局練習は行われずに解散。
一緒に帰ったはずの曜ともロクに会話を交わさずに自宅へ戻った陸へ、ヒカルは気まずそうにそう言った。
「・・・いや・・・、誰が悪い訳じゃないですよ・・・」
何者かの悪意が引き起こした悲劇じゃない。これまでの事が運んできた結果だ。
だからこそ、残った悔しさややるせなさの矛先が向くのは自分自身。
「・・・すみません。せめてあの夜、私達が付いておくべきでした」
「・・・・・・それで結果が変わったとは思えねぇけどよ。やっぱ、せめて何か言ってやることぐらい出来たと思うとな・・・」
現に、浦女の統廃合に何の関わりもないミラーナイトとグレンファイヤーですらも今の状況に責任を感じているのだから。
「・・・で、なんでお前はずっと黙ってんだよショウ」
「・・・・・・」
戻って以降、何故かずっと黙りこくっているショウ。
その手に握られているのはやはり、あの青いクリスタルで出来た怪獣の人形のような代物―――クリスタルスパークドールズだ。
「なんだ? シェパードンが恋しくなっちまったのか?」
「違う。・・・・・・ただ、少し思い出しただけだ。あの時の事をな」
クリスタルスパークドールズは、元はシェパードンという地底の怪獣だったらしい。
ショウが幼い頃から仲が良かったらしいが、ある事件の際に敵の攻撃からショウを庇い命を落としてしまったとか。
「・・・コイツは、シェパードンは命を落とそうとも俺に寄り添ってくれた」
その命を落としたシェパードンの魂が変化したのが、彼の手の中にあるクリスタルスパークドールズ。
「・・・死んでしまえば、形が無くなってしまってはもう、何も伝える事が出来ないと考えていた。・・・だが、シェパードンは死んでも尚俺に想いを託してくれた」
自分を庇ったせいで死んでしまったのだと、彼はその時自分自身を責めたであろう。
だが、今もこうして前を向けるのは、シェパードンが託してくれた意思があったから。
「・・・大切なものを失う事は誰でも怖い。アイツ等の場合はそれが学校という友との居場所だった。だからこそ未来でも残していたいと思い、その結果があれであれば気持ちが折れるのも分かる。・・・・・・だが・・・」
自分自身にも問いかけるように、ショウは疑念を投げかけた。
「・・・・・・形を残すことだけが、未来に繋がるという事なのか?」
「・・・・・・」
すぐに返せる者はこの場にはいなかった。
Aqoursは浦の星女学院を廃校にさせたくないという想いで努力してきた。きっと彼女達の頭には、廃校を防ぐというという事しか学校を救う方法がないから。
「・・・・・・何か別の、救う形・・・・・・」
そう呟いては見たものの、やはりすぐに思い浮かぶものではなく。ただ時間だけが、陸達を取り残して未来へと進んでいくだけ。
「・・・・・・未来へ受け継がれていくのが永遠の命・・・」
不意にヒカルがそう呟き、何かを導き出したように表情を変える。
「そうだ・・・。ちょっと聞いてくれ!」
思い悩んでいたウルトラマン達に、天光が差し込んだ瞬間だった。
さりげなく陸の学校での描写を書いたのは初めてだったりする。尚今後書く予定なし。
統廃合を防げず、気持ちが折れてしまったAqours。何か答えを見つけたようなウルトラマン達。
絶望を超え、千歌達が進まんとする未来とは一体? そして千歌の胸に輝くものとは。
いよいよアニメ七話は次でラストです。それでは次回で!