魔女が求めるは魔王が欲した世界   作:シャットエアコン

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第2話

ルルーシュが亡くなったいま、ルルーシュの願いを叶えることこそがワタシの、そしてC.C.の願いだ。

 

記憶の中の物語のC.C.は死ぬことを願いとしてルルーシュと契約を結び、ルルーシュの反逆を共犯者として見守り、支えていた。

 

勿論今のワタシの願いも死ぬことであり、この永遠に続く命を絶つことがC.C.の目的であることには変わりない。

 

死ぬ事を願いとするのは憑依する前の自分では考えもしなかっただろう。ではなぜワタシはその願いを持つのか。それは憑依した私が中途半端だからであるからだ。憑依したワタシと被憑依者のC.C.の意識は混ざり合ってしまった。そう考えると分かりやすいだろうか。本来は混ざり合うことのないものが無理矢理混ざり合い、片方の意識と人格にもう片方の意識と人格が融合したのだ。

大元となる意識と人格はワタシのものだ。だが、C.C.の意識と人格も多少は存在しており、ワタシの考えることや思考にも影響している。

それに、C.C.の悲しいほどまでの死にたいという願い。それはC.C.となったワタシには経験と知識としてこの身が教えてくれた。

この身が教える辛く悲しみに満ちた願いと、この身を乗っ取ってしまったC.C.への贖いとして、ワタシはC.C.の願いを叶えることとしたのだ。

元々、なぜ憑依したのかはわからないが前のワタシはおそらく死んだのだろう。一度は人生を終わらせたのだ、死ぬことに戸惑いはない。まあ、こんなにすんなり他人事のように考えるのもC.C.の意識が混ざってしまったのもあるのだろう。

 

だが、ワタシが死ぬのは、C.C.の願いを叶えるのはルルーシュの願いを叶えてからだ。

 

しかし、どうルルーシュの願いを叶えるにはどうすればいい?

 

ルルーシュはその類いまれなる明晰な軍事知能と、政治的な手腕に、生まれ持った呪いともいえる指導者としてのカリスマに、半ばズルともいえる絶対遵守の力をもって数ある奇跡を成し遂げてきた。

ワタシには何も足りていない。

まず、ワタシはルルーシュほど頭脳明晰ではないし、政治力や指導者としての才覚もない。唯一身体能力では勝っているかもしれないが、ナイトオブラウンズ相手どころか、ジェレミアやコーネリアといった目下の敵にすらも叶わないだろう。

 

しかし、絶望視する事はない。

 

ワタシには知識がある。

この世界のあらゆるギアスにも負けない、どんな身体的ハンデなんかよりも余程ズルい知識が。

 

ルルーシュはいない。だがそれがどうした。知識のアドバンテージある。コードの力もある。

……そして心許ないギャンブルのようなモノだが、C.C.の力でなく、知識から得た半ばズルともいえるとっておきもある。

 

ならワタシがやる事は決まっている。

知識にある、ルルーシュと同じ行動をすればいいのだ。

 

ルルーシュは仮面をかぶることで顔だけでなく、ルルーシュとしての素顔を隠し、奇跡を起こす男ゼロとして動いていた。

ただ、物語のその中身が変わるだけ。ゼロとは、個人を示す名称ではない。奇跡を起こし、正義を行う者の象徴がゼロなのだ。

 

ならばワタシがゼロになればいい。

奇跡を起こすゼロに。

 

「ルルーシュ、行ってくるよ。ワタシがどこまでやれるかわからないけど」

 

最後にルルーシュの頬をひと撫でするとワタシは立ち上がる。

横たわるルルーシュの制服の上着を脱がし、そのまま彼の顔を覆い隠す。

 

「すぐ戻ってくる」

 

名残おしいながらもルルーシュを置き去りに地上に向かう。まず最初に向かうところは決まっている。作戦はなんとなくだが考えてある。

 

C.C.としてでなく、ここからは仮面の英雄ゼロとしてワタシは戦おう。この世界を壊すために。

魔王の願いを叶える為にーー

 

 

「ーーとはいっても、アイツと同じ行動などワタシにできるはずがないのだがな」

 

「な、何を言ってる? アイツとはいったいどうい、ヒィ!」

 

ワタシは目の前の男の口元に銃を向ける。豪華な衣装に身を包んだ金髪の青年は怯えて震える。

 

いまワタシがいるのはシンジュク包囲作戦中の、G1と呼ばれる総督が指示を出す管制母艦の中、つまりはブリタニア軍のど真ん中だ。

 

ルルーシュを置いて1人地上に戻ったワタシが最初に行動したのは、あの白く目立つ拘束服を着替えるためだ、アニメではわからなかったがあの拘束服は実に効率的だ。拘束具としてだけでなく、逃亡しても目立つように作られていたのだろう。瓦礫の中の白い拘束服は大変目立って仕方がなかった。

その辺で1人行動をしていたブリタニア軍の兵士をコードの力をゴリ押して意識を奪い、その兵装、軍服、フルフェイスヘルメットを強奪し、それに着替えたワタシはクロヴィスのいるG1に直行した。

 

ルルーシュはテロリストーー旧紅月グループ

ーーを操ることで、ブリタニア軍を正攻法で負かそうとしていたが、枢木スザクが操縦する第七世代ナイトメアフレームであるランスロットに盤上の戦略をひっくり返され、転じて正攻法を諦めたルルーシュはブリタニアの兵士の服を奪い、ギアスで人払いをしながらクロヴィスの元に向かった経緯があるのだが、その課程をワタシが飛ばしても仕方がない。そもそもルルーシュとまったく同じ行動などできないのだから。起承転結の起と結が合えばそれでいい。

 

結果、護衛兵や邪魔な防犯設備を潰しながらクロヴィスの元に無事たどり着いたワタシは、フルフェイスヘルメットを被り、素顔を隠しながら銃でクロヴィスを脅す。

 

「さっさと全軍にたいして停戦命令をだせ。それも自然に、違和感のないようにだ。わかったか?」

 

「そ、そんなことでいいのか? よしわかった。それならお安い御用だよ。なに、任せてくれ」

 

「勿論、変なそぶりは見せるなよ?見せたと思ったが最後…」

 

「わ、わかった! わかっている! 君には逆らわない。約束しよう! だから銃を下ろしてくれ!」

 

ひとまず銃を下げるとホッとしたのか、クロヴィスは大きく溜息を吐いた。そして通信機器を操り、ワタシの知るアニメの記憶通りに停戦命令をだした。

アニメと同じセリフをスラスラと喋っているクロヴィスを見てある意味の関心を覚えた。

ルルーシュもこんな感じで脅していたのだろうか。

そう感慨にふけていると、停戦命令を言い終わったクロヴィスがなにか期待したように話しかけてきた。

 

「さ、さあ。君の思い通りにしたぞ?次はどうする?チェスでもしようか? それとも絵画についーー」

「クロヴィス、オマエに確認したいことがある。質問に答えろ」

 

ワタシはフルフェイスヘルメットを脱ぐ。最初はワタシの思いがけない行動にポカンとしていたクロヴィスも、長い髪とワタシの顔を見た瞬間に目を大きく見開き、驚愕の表情を浮かべた。

 

「ッ!? おまえはームグッ!」

「質問に答えろとは言ったが質問をしろとは言っていない。これが最後だ。もう一度聞く、質問に答えろ。わかったらうなづけ」

 

無駄口を聞こうとしていたクロヴィスの口に銃口を突き入れ脅す。クロヴィスは先程よりも顔を白くさせ、顔面からは脂汗が溢れさせている。おおかたC.C.にした実験を思い出し、それに対する報復を思い浮かべているのだろう。

混乱した様子を見せるが、しばらくして小さく首を縦に振った。

 

「オマエはーー」

 

これは只の興味本位ではない、クロヴィスの返答次第ではワタシのこれからの行動。予定が大きく変わっていく、それほど重要なこと。それはアニメ知識では決してわからないことで、この目の前の男が鍵を握るのだ。

 

「実験をしていたのはーー」

 

 

質問を一通り終えた後、クロヴィスには悪いが彼には犠牲になってもらった。

原作通りに話を進める為という意味もあるがワタシ自身の覚悟を決めるためという意味もある。

ルルーシュもクロヴィスを殺すことで、ブリタニアへの復讐心を再確認し、反逆するというの覚悟、本人の言葉を借りるのなら、撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけという中の撃たれる決意をしたのだ。ワタシもそれに肖ることにした。

ヴィ家をそれなりに気にかけ、皇族の中ではルルーシュ達のことを心配していたであろうクロヴィスを自らの手で殺すことで。

 

まあ、ワタシの場合はその前に親衛隊を一人一人丁寧に撃ち殺しているので今更感があるかもしれないが、あれは正当防衛だ。うん、正当防衛正当防衛。ワタシは正しい。

 

クロヴィスを殺害後すぐさま現場を離れた。勿論、後始末は欠かさない。自らの痕跡を完全に消し、クロヴィスの遺体付近に別の人間の痕跡をカモフラージュで残してきた。無能なバトレーや、脳筋のジェレミアは暫くは誤魔化せるだろう。問題はこの後総督に赴任するコーネリアだ。感のいい女のことだ、不自然過ぎる痕跡を疑うに違いない。

まあ、わざとそう仕向けてるのだが……せいぜい悩むんだな。

 

現場から離れた後、ブリタニア軍に、紛れて連れられた大勢のイレブンの難民を確認し、その中に扇や紅月カレンらしき人物の生存を確認できた。

原作と違い、誰も戦闘の指示を出していない為生きているかどうか不明だったがなんとかなったみたいだ。

 

彼らーー主にカレンの生存を、確認したワタシは地下のルルーシュが待つ所に戻った。

ルルーシュの亡骸を埋葬するためだ。

あいもかわらずそこに眠っているルルーシュの遺体を運び出す。外はもう夜、光のないゲットーの漆黒に紛れてワタシは動きだした。

 

昼間の件が後を引いているのか所々にブリタニア軍が武器を構えて見張りに立っていたがどいつもこいつも無能らしい。終ぞワタシに気づくことはなかった。

 

ルルーシュを抱えながらワタシが来たのはトウキョウ租界から少し離れたブリタニア軍の施設の一部の小さな飛行場。シンジュクゲットーからは少しの距離の飛行場でワタシはそこで小型戦闘ヘリを盗み出した。

手順は実に簡単、警戒の任務を終え飛行場に戻ったばかりのヘリを襲撃。

乗務員をコードの力で発狂させ眠らせた後エンジンがかかったままのそれを奪ったのだ。

トウキョウ租界に警備の人員を回しているため、警備が手薄になっている今日だからこそできる荒技だ。上手くいったことに自分に感心してしまったのはおかしくないだろう。

ヘリコプターまで容易く操作してしまえるのはC.C.様々だ。片方のワタシにはヘリの操縦など到底無理なことだろう。

 

異変に気がついた別の戦闘ヘリが向かって来た時にはワタシは空の暗闇に紛れて消えていた。作戦通り。

トウキョウ租界から太平洋に向かって上空を飛んでワタシはある目的地へ向かった。

 

ヘリを長い時間飛ばしてたどり着いたのは小さな無人島、名を神根島。

コードギアスにおいて重要な舞台となった場所。

 

この島で起きた事をあげればキリがない。

ルルーシュがユーフェミアと邂逅し、ガウェインを鹵獲した事。

ブラックリベリオンにてナナリーがV.V.に攫われ連れられた場所。

黒の騎士団に裏切られたルルーシュを守るためロロが命を落とした地。

そしてルルーシュが皇帝から世界の真実を聞き、王の力をもって神殺しを成した舞台。

上げればキリがない、だからこそルルーシュの眠る地として相応しいのではないかと思った。

島に着いた後ワタシは島の端にある崖の上にやってきた。

そこは海が開けて見える場所であり、その海の先にあるのはエリア11。

アニメ二期で、偽りの弟であるロロの墓標が立つはずだった場所。

 

ルルーシュの遺体をその場所に埋葬した。ワタシが掘った穴に消えていくルルーシュをワタシはどのような表情で見たのであろうか。今となっては確かめるすべはないが、ロクな顔をしていなかったのは確かだ。

 

ルルーシュの墓標として目立たない程度の小さな木の十字架と、見窄らしい献花台を作り備え付けた。これは自己満足でしかないのだがどうしても作りたかった。ルルーシュが眠っている場所を殺風景にしたくない。

ワタシしか解らない献花台に花で作ったの冠を備え付ける。

これで少しは墓らしくなっただろうか。

 

空が朝の空気を連れて明るくなってきた。ルルーシュの墓から振り返って東の空を見ているとすでに空は白く、朝日が見えようとしていた。

それはワタシが見るこの世界で初めての朝日であった。

 

朝日がルルーシュの墓を、そして私を照らし出す。

その光は薄暗い闇の中に救いの手を差し伸べる神の光にも感じられた。

暗闇がみるみるうちに目線の後ろに消えていく様子を幼い子供のようにワタシは見つめる。

ワタシはルルーシュの墓標に背を預け、島の木々の間から見える、昇っていく朝日を見守り続けた。

 

「これは私への罰だ」

ワタシはポツリと呟いた。聞こえているはずはないのだが言わずには言われない。

「ルルーシュ、お前がいない世界はどうなるのかわからないが、やるだけはやってみるから。だからワタシのお願いを、一つ、一つだけ聞いてくれ」

ルルーシュが聞いていたらなんと答えてくれるだろうか、まあ、十中八九「図々しい!」とでも怒鳴り散らすだろうが。怒らないで聞いてほしい。ささやかなワタシの願いだ。

 

「ここから、日本を見渡すことができるここから見守っていてくれ。ワタシは、私は頑張ってみるから」

「サヨナラ、ルルーシュ。また来るよ。今度はちゃんとした花を持って。

また、必ずーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、不貞寝はここで終わりだ。早速で悪いがお前には働いてもらうぞ。なに安心しろ、拒否権など存在しない」

 

ー?

 

「なに、お前は誰かって? そんなもの決まっているだろ、魔王を起こすことができるのは」

 

「魔女だけだろ?」




次の話から少しの間C.C.目線では無くなります。
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