魔女が求めるは魔王が欲した世界   作:シャットエアコン

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第4話

朝の登校時間、部活を行なっている生徒たちからしたら朝練の後片付けを行っている時間。ブリタニアの学生、カレン・シュタットフェルトは登校するため、アッシュフォード学園の入り口へ向かう中庭を歩いていた。

 

彼女はブリタニアと日本人のハーフであり、本来の名前は紅月カレン。シュタットフェルトは父方であるブリタニア人としての姓。学園に通う際は日本人の名を隠し、ブリタニアの名を使っていた。

しかし、生まれてから日本人として育ってきたカレンは祖国である日本をブリタニアから取り戻すために日々テロ活動を行なっているーーはずだったのだが。

 

「病弱設定なんかにしちゃったけど、失敗だったかな」

 

カレンは自分は最近ついていないと思う。

昨日、自分が所属する日本人のレジスタンスグループ、扇グループはブリタニアに支配されている現状を打破するため、ブリタニアに一矢報いるために入念な準備を重ねてあるテロ計画を実行した。

しかし、計画実行当日に仲間の1人の凡ミスにより、計画が最初から頓挫、結果失敗した。

だが、当初の計画を失敗しながらも、毒ガスをブリタニアの研究所から強奪するという作戦は成功した。だが、それまでだった。逃走中に軍の異常なまでの対応速度で追い詰められた結果、毒ガスを運ぶトラックと運転手の役を任されていた仲間1人を死なせる羽目になった。

自身は虎の子のグラスゴーを操り、追撃してくるブリタニア軍を翻弄。

グラスゴーの一世代上のナイトメアフレーム、サザーランドの部隊に囲まれる中で獅子奮迅の働きをしたものの、ブリタニア軍の大戦力の前には焼け石に水。

最初につかっていたグラスゴーが中破した後に敵の不意をついてサザーランドを一機奪ったのはいいが大勢に影響はなく、統率のとれた敵の本隊の前にあえなくサザーランドを破壊され敗走することとなった。

逃げた先で大勢の日本人を護衛していた仲間と出会うことができたのはいいが、ブリタニア軍に隠れ場所を発見され、ついになすすべなく追い詰められた時、クロヴィスの停戦命令が発令され、命からがらギリギリ一命を取り留める事ができた。

敵の大将にお情けをもらう形となり、悔しかったし情けなかったが命あっての物種。とりあえずはこの場を凌ぐことで精一杯であった。

 

しかし、自分たちが実行したテロ計画から始まってしまった、後にシンジュク事件と呼ばれることになった事件影響で、シンジュク付近のゲットーは軍の監視と警戒が一段と強くなってしまった。

 

カレンがシュタットフェルト家の学生としてアッシュフォード学園に来たのはその為。

扇グループのリーダーであり、自らの兄の親友でもあった扇要の命により、シンジュク事件のほとぼりが冷めるまで学園での待機をカレンは命じられたからだ。

ブリタニア軍の真ん中で大立ち回りをした自分を、ブリタニア軍は必ず見つけ出そうと必死なのだ。グラスゴーからサザーランドに乗り換える際にーー遠くからとは思うがーー自分の姿を見られたせいもあるのだが、現在絶賛指名手配中になってしまった。誇らしい気持ちもあるが、大半の思いは面倒なことになってしまっただ。

赤髪の日本人ーー男女問わずーーは見つけ次第捕まえろ、生死は問わないらしい。

まあ、居なくなった兄と自分以外の赤髪の日本人は見たことがないので他の人に迷惑はかけないだろうが……

 

その指名手配の件があるため、人を隠すなら人の中というわけではないが、赤髪が珍しくはないブリタニア人の中で生活してほとぼりが冷めるまで待機するのは理屈としても正しいだろう。

だが、釈然としないのもたしかだ。自分は日本人の紅月カレンであり、ブリタニアの学生、カレン・シュタットフェルトではない。

校舎に向かって歩き続ける彼女の中で吐き出してはいけない鬱憤がどんどんと溜まっていく。

 

「だいたい、みんな私がブリタニアの学園に行くのになんで賛成なのよ、反対なのは私と玉城だけって……」

 

昨日、シンジュク事件の後にグループの仲間内の話し合いを思い出す。

学園に行けと言う扇と賛同するみんな。

学園なんか行かずにブリタニア人としてバイトでもして、レジスタンスの資金を調達したほうがいいという反対意見に賛同したのは当事者の私と玉城だけ。

ーー解せない、なんでこんな時ばかり玉城と意見が被るのだろうか。

 

「玉城と、意見が被るってことは、もしかしたらみんなの意見が本当に正しいって……」

 

考えるあまり、知らない内に校舎の扉へ近づいていたカレン。扉が内側から外側ーーつまりは自分に向かってーー急に開き、ガンッと大きく音を立てて扉にぶつかってしまった。

 

不意を突かれたカレンは衝撃で後ろへ倒れそうになる。しかしそこは紅月カレン。不意だろうとすぐさま受け身をとり体勢を立て直した。だが、病弱設定だったことを一瞬後に思いだしたカレンは咄嗟の判断でワザとらしくないように後ろへ倒れ込んだ。

常人が見ればただ後ろへ倒れ転んだだけのように見えたそれは、目に見えない受け身を挟んだ実に人間離れした動きであり、カレンの身体能力の異常さを物語った。

カレンは痛そうな演技をしながら扉を睨みつける。しかし、扉の先にいたのは思いもかけない人物だった。

 

(軍人!? なんで学園の中にいる!? )

 

扉の先に軍人が三人立っていたことに怯んだカレン。悪いことはしていないのに警察を見るとドキッとしてしまう現象の一つだ。まあ、カレン自身は悪いことに身に覚えがありすぎるのだが。

 

一瞬の沈黙の後、三人の軍人の一人が声を荒だてた。

 

「女っ! 貴様どこに目をつけている! 」

 

「え、あの」

 

「よい、こちらも不注意だったのは確かだ。いきなり部下が失礼した、なにぶん先程から鬱憤が溜まっているようでな」

 

「は、はあ」

 

こちらに突っかかってきた軍人の1人を真ん中の偉そうな軍人がなだめる。てっきりこの猿め! とでも怒鳴り散らすかと思っていたカレンは穏やかな態度に困惑するも、今は自分はブリタニア人だったことを思い出す。

 

「まあ、扉の先の確認を怠った我々にも非はあるが、前は見て歩いたほうがいいと忠告させてもらおう」

 

「いえ、すいませんでした」

 

軍人はさっぱりとそう告げるとその場を去ろうとした。立ち上がった私の傍を通る。

自分に用があったわけではなく、偶々いただけと判断したカレンは内心ホッと一息をつく。

 

「ーー失礼、気のせいだと思うが、私とどこかで会ったことはあるか?」

 

とりあえずこの場を離れようと一歩歩みだしたカレンの耳に、後ろから軍人の声が聞こえた。

ハッと後ろを振り向いてしまう。

軍人の1人が自分を見つめていた。初めて目と目が合う。

軍人の瞳は憎きブリタニアの敵であるが、綺麗に透き通っていた。

黙っていると不味いと感じたカレンは弱々しく返答を返す。

 

「い、いえ。基本的に家で寝込んでいることが多いので、人と会うことは、あまり……」

 

「……そうか、いきなりすまなかった。忘れてくれ」

 

「と、とんでもないです」

 

こちらが否定の返答をすると何事もなかったかのように立ち去る軍人。マントを翻し再び歩きだすその所作は、ブリタニア貴族面していたが、なんとも凛々しさを感じさせる振る舞いだ。何故だか悔しいと思ってしまった。栄華を誇るブリタニアの軍人と、コソコソと地下を隠れながら嫌がらせのようなことをしている自分。どこで違ってしまったのだろうか。そんなことを思いながらついその後ろ姿を見送ってしまう。

 

「ーーそれと」

 

見送っていたはずの相手が気づくと再びこちらを向いていた。

え、とキョトンとした顔をしたカレンの顔を見て、フッと小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、諭すような、子供に親が叱るような口ぶりで語りかける。

 

「倒れ方はもう少し下手にやることだな」

 

「ーー!?」

カレンは驚愕の表情を浮かべる。

それを見た軍人は満足そうにした後、優雅に歩き立ち去っていった。

 

「あいつ。……気づいた? あの一瞬で?」

 

カレンの学園生活の初っ端は、病弱設定を見ず知らずのブリタニアの軍人に見破られるというバットスタートから始まってしまった。

 

 

そしてその軍人は次の日の放課後ーー、生徒会長のミレイ・アッシュフォードに誘われて加入することとなった生徒会の歓迎会の最中にテレビ越しで正体を知ることとなった。

 

ジェレミア・ゴットバルト。

日本人を……私たちをイレブンと侮蔑し、嘲笑うブリタニア人たちの中でも民族差別主義の強い軍事派閥、純血派のリーダーであった。

 

 

 

枢木スザクは困惑していた。目の前で繰り広げられるその光景に。

 

昨日、突然に純血派に捕らえられ、エリア11の総督であるクロヴィス殿下の殺害の犯人に仕立て上げられたスザクは、取り調べ室で拷問に近い尋問を経たのちに軍事法廷まで移送されていた。

移送といってもそれは静かなものではなかった。

自分は装甲車の上に拘束着に足枷手枷首枷をした状態で乗せられ、二人のブリタニア兵によって傍を固められており、その装甲車の、周りを四機のサザーランドが周りを固めていた。

拘留場所から法廷までの沿道には大勢のブリタニア人が詰めかけており、皆測ったかのように口々に自分への悪態をついていた。

更に、道路上は通行規制がされており、市民に紛れてマスコミの報道人やカメラを確認できている。

あまり政情に詳しくないスザクでもこれは出来レースなのだと理解できてしまった。

何故自分がそのターゲットにされたかは理解できないが、心当たりがないわけではないし、そんなことはスザクにとって関係ないことだった。

今から自分は軍事法廷で死刑を宣告され、即日処刑されるのだろう。

そんな諦めにも似た思いを持っていたスザクの内心は静かなものだった。

 

だが、とある橋の上で装甲車や周りのサザーランドが停止してからは静かでいられることはなかった。

 

自分たちの進む進路の先、前から歩いてきたのだ、人が、一人で。

それも堂々と。通行規制がかかっているはずの道路のど真ん中を。

ただ道路上を歩いている、それだけなら規制を理解できない痴呆が紛れてしまったのだろうと察することができる。奇異の目で見られても驚かれることはないだろう。

だが、そう思わないのは沿道に配置されている、ブリタニア兵が誰もその人を止めようとしないからだ。

 

無数の一般のブリタニア人と、多数のブリタニア軍人に囲まれている橋の上の道路、我が道を進むと言わんばかりに人は歩いていた。

枢木スザクを移送する部隊が止まったことにざわつくブリタニア人たちもその人を見た途端おし黙る。

静かになった橋の道路を、一歩一歩踏みしめるように歩くその姿は黒かった。

別に周囲が暗いわけではない。むしろ昼間よりも電気的な白い光で眩しいくらいだった。

 

人は男だろうか?

 

誰にも止められることなく歩き続けた人物の全体像が見えてきた。

身長は高く、細身だががっちりした印象がある。

だがそれはどうでもいい、何より目立ったのは男の格好だった。

 

一言で言えば騎士、一色で言えば黒。

 

上半身で目を引くのは肩、胴部、腰、臀部、前腕部を守るための鎧。

それも黒い素材の金属でできたであろう中世の貴族系の騎士がつけるような、細かな意匠が存分に使われている見事なもの。それは漆黒と呼ばれても違和感のないくらい黒く、金属感がないように感じる。

顔は鎧の下に着ているであろう黒い服のフードで隠されていた、そのフードは顔全体を隠すほど深くかぶっているわけではないのだが、何か特殊な工夫でもしているのだろうか、フードの中は黒く、顔があるであろう部分に肌色は見ることができなかった。

下半身は鎧の中で着ているであろう黒の纏いと、色を全身の黒と合わせた前がけで全体を隠しており、唯一見える足元も黒い靴を履いているとしかわからない。

男はそれらを完璧なまでに着こなし、ぎこちなさを感じさせない。普段着のように当たり前のようにその格好で歩き続ける。

場所が場所ならコスプレをした男ではあるが、この周囲の状況からみてコスプレだと笑うことなどできない。

 

枢木スザクはその男が立ち止まった自分たちの元まで来るのを見続ける。

自分の周りのブリタニア兵も状況がわかっていないのは同じなのだろう。二人ともキョロキョロと挙動不審であった。

 

「貴様! 何者だ」

 

静けさの中に、純血派のリーダーであるジェレミアの冷静な声が響いた。ピタッと黒の男の足が止まる。

黒の男はいつの間にかに話すことができるくらいの距離まで迫っていた。

 

歩いていただけの男のフードが僅かに上向きになる。サザーランドの上部から見下ろすジェレミアを見ているのだろう。

静かにジェレミアを見つめた黒の男は、ジェレミアや周囲を囲むブリタニア人たちに向け名乗りをあげた。

 

「私はーーゼロ」

 

ゼロと名乗った黒の男の声は変声機で変えているのだろうか。肉声ではなく、機械的な音と変わっていた。

 

黒の男ーーゼロが名乗ると同時に、溢れ出たかのように群衆のざわつきが聴こえてきた。

先程まで自分を罵っていたその野次はゼロの話でもちきりとなった。

 

そんな周囲の反応は無視し、ジェレミアはゼロから目を離さず語りかける。

 

「もういいだろう、ゼロ? 君のコスプレショーの時間はお終いだ」

 

懐から銃を取り出し、空に向けて発砲する。発砲と同時にサザーランド四機落下してきた。ゼロの周りを重装備に対戦車用機関銃をもったサザーランド四機が囲む。

サザーランドで囲まれたゼロが何もしてこないことで自分達が優位だとわかったのか、それとも、何らかの計画なのかはスザクにはわからないが、警戒心を少し解いたジェレミアはサザーランドを進め、ゼロと名乗った男の元へ向かう。

 

「さあ、まずはその邪魔なフードを外してもらおうか」

 

ジェレミアの言う通りにフードに手をかけるゼロ。しかし、その手はフードを外すためではなく、フードから胸元に手をのばし、即座に何かを引っ張りだした。

ゼロはジェレミアへ赤く鈍く光る何かを見せつけた。

 

ジェレミアの表情が硬くなる。そして静かに分析したジェレミアは片腕を上げ、ゼロを囲むサザーランドへ武器を下ろせと指示をした。そして小さな声ーーギリギリスザクに聞こえる声でその正体の答え合わせをする。

 

「これが何かはお解りになるだろう。ジェレミア代理執政官殿?」

 

「リュウタイサクラダイトを圧縮し、加工したものか、なるほど。愚かで大胆な行動の割には考えたものだな。ここにいるブリタニア市民をまるごと人質にとったか、それも人質に気づかせないまま」

 

リュウタイサクラダイトを加工したもの。それは一言でいえば導火線に火がつけられる直前の大型爆弾と言えるだろう。

その威力は定かではないが、ゼロが大胆に行動してきた理由を考えたジェレミアは、それがこの周囲一帯を破壊し尽くす威力があると理解した。

ブラフも疑うが、赤く鈍く光るその色はサクラダイトを加工した場合に素材が放つ蛍光色であり、関わったことのある科学者か軍人しかわからない事実だ。一般人はそれが何かすらわからないものを堂々と出したことにブラフと決めつけるのは危ないだろう。

それよりも、一般人には気がつかれず、軍人には抑止力になる物体をもったゼロの思惑と計算高さに恐れをなした。

 

ジェレミアは形勢が逆転してしまったとわかる。仕方ないと言わんばかりにゼロにその思惑を訪ねる。

 

「わかった、何が目的だ、要求はなんだ?」

 

「話が早くて助かるよジェレミア。交換しようじゃないか。私のコイツと、枢木スザクを」

 

それを聞いたジェレミアは冷静ながらも声を荒立て否定する。

 

「笑止! この男はクロヴィス殿下を殺めた大逆の徒、引き渡せるわけがあるまい!」

 

そういうとジェレミアはスザクの方に銃を向けた。それと同時にスザクの周りの二人のブリタニアも手に持った銃をスザクに向ける。

だが、人質にするような行動をとったジェレミア達をあざ笑うかのようにゼロは冷静だ。

宥めるようにジェレミアへ語りかける。

 

「違う、間違えているよジェレミア、犯人は彼ではない、ありもしない根拠で濡れ衣を彼に着せないでもらいたい」

 

「何を根拠にーー」

「ーークロヴィスを殺したのは、この私だからだよジェレミア」

 

辺りの音が再び消えた。ジェレミアも流石に唖然とゼロを見る。そんなことに構わず要求のアピールをするゼロ。

 

「そこの彼一人で大勢の命が救えるんだ、悪くない取引とは思うけどーー」

「ーー狂っている! 殿下を弑しただと!? 貴様の戯言はそれで終わりだ! 貴様が何者かは知らんがもう、どうでもいい! このジェレミア・ゴットバルトが直々に誅してくれる!」

 

呆然としていたジェレミアは突然顔を豹変させ、鬼の形相となってゼロへ銃を向ける。リュウタイサクラダイトを無視し、ゼロを殺そうとする。

しかし、それでもゼロは冷静だった。

 

「……はぁ、それは困るな……オレンジ」

 

「ーー!? オレンジィ!?」

 

ジェレミアは顔を赤くしたり青くしたり、表情を二転三転させる。

ジェレミアはそのワードに酷く驚いたように見えるが、何だそれと、スザクの側にいた二人のブリタニア兵は困惑をした。

 

「そうだよオレンジ卿。忘れては困るな、わかったらーー枢木スザクを解放し、私を見逃せ」

 

集まった民集や、いつのまにかそばにいたジャーナリストのカメラにもはっきり聞こえるように、強い口調で告げる。

ジェレミアは表情を再び一転させ、先程までの冷静な表情に戻り、サザーランドや兵に意向を伝えた。

 

「…………ふん、よかろう、その男を解放しろ」

 

「ジェレミア卿!? 今なんと?」

 

スザクの後ろにいたサザーランドから、思わずと言った声がでる。

ジェレミアは視線をスザクの後ろのサザーランドに向ける。

 

「枢木スザクを解放しろと言ったんだ。誰も手を出すな!」

 

「どういうつもりだ、そんな計画は!」

 

ジェレミアから見て右、スザクの乗る装甲車からみて右のサザーランドのハッチが開き、中から軍人が出てきて抗議をする。

 

「キューエル! これは命令だ! もう一度言おう。誰も手は出すな! その男を解放するんだ!」

 

先程までとは別人のような上官に戸惑いながらも、その気迫に押されたキューエル。

そして戸惑いながらもスザクの側のブリタニア兵は、ひとまずスザクの足枷だけを解き、ゼロの元に行くようにと背中を押した。スザクは押されて装甲車から飛び降りると、状況は分かっていないが、ゼロへ歩きだす。

尽きない疑問はあるが、口を開こうとすると首枷が電気を発生させ、言葉を言えないようにスザクの口元を麻痺させる。言葉はだせない。

 

そして二人が邂逅する。スザクは思わずといった形でゼロと名乗った男のフードの中を観察しようとする。すると、黒で何も見えないのだと思っていたが、なにやら黒い仮面のようなものを着けているのかもしれないと気づいた。

顔のある部分に無機質の黒い物体が見えたのだ。

 

「枢木スザク。言いたいことがあるが場所が悪い。場所を変えるよ」

「それはどういーーウッ!」

 

思わず喋ってしまったスザクが痺れたすきにゼロは動きだした。

手の中のリュウタイサクラダイトーーと思われる物を思い切り地面に投げ落とす。

 

周囲に耳障りな大きな音と、白く強い光を発生させた。

閃光弾と音爆弾の一種だったそれと同時に懐で隠し持っていた煙玉を大量にばら撒く。

辺り一面に煙が充満する。

大きな音と光、そして黒く色付けされた煙に辺りは混乱した。

 

「なんだこれは!?」

「どうなっているの!」

「うわぁー!? 煙は吸うなー!」

 

エキストラとして配置したブリタニア市民が悲鳴をあげてパニックを起こしたのだ。

誰か一人がその場から逃げ出すと大勢がそれに吊られるように逃げ出した。

沿道の警備の軍人も宥めようとするが効果はなく、逃げようとする勢いに押されてしまう。サザーランドの部隊は先程の命令に続き、発音、発光、発煙騒ぎに完全に混乱。無線もノイズが走って役に立たず、煙のせいでコミュニケーションもとれない。

 

更に、追い討ちをかけるかのようにサザーランドの一機が急に動きだす。

それを確認したゼロはスザクを脇に抱えると、人一人抱えている重さを感じさせない動きでサザーランドの手の平に飛び乗る。2人が手に乗ったことを確認したサザーランドは橋を飛び降りようとする。

 

あまりの場の混沌ぶりに先のサザーランドのパイロットの一人、ヴィレッタ・ヌウは逆に冷静に物事を考えられ、焦ったように攻撃をしようと銃を向けた。しかし。煙と先程の光の残光でうまく狙いがつかない。

 

「くっ、ここで逃したら私達が」

 

ようやくサザーランドを射程におさめるも、ジェレミアの乗るサザーランドがその動きを妨害した。

 

「ジェレミア卿!どうして!?」

 

「言ったはずだ、手を出すなと。キューエル、全部隊に徹底させろ。手は出すな見逃すんだ」

 

「どう言う事だジェレミア! そんなことできるはずないだろう!」

 

キューエルはジェレミアの突然の錯乱とも思える行動に、付き合ってられないと判断し、ゼロとスザクの乗るサザーランドに発砲する。しかし、とうに橋を飛び降りていたゼロ達のサザーランドには当たるはずがなかった。

銃声で更に悲鳴があがる。

キューエルは橋から降りたゼロ達を確認しようと橋の縁で下を覗く。

下の川には着水しておらず、橋の下を通る旧地下鉄線へ逃げ込もうとするサザーランドを見つける。

キューエルは自分も降りて追走しようとするが、サザーランドのハッチ部分に銃を突きつけられる。ジェレミアは通告する。

 

 

「キューエル! 命令したはずだ! 手を出すな、見逃せ。全力で見逃すんだ!」

 

 

ゼロと枢木スザクを乗せたサザーランドは、彼らの前から完全に姿を眩ませた。




誤字脱字無いように気をつけてはいますが、見つけたらご連絡ください。よろしくお願いします。
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