魔女が求めるは魔王が欲した世界   作:シャットエアコン

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第7話

アッシュフォード学園の二年の教室の一室。その日は編入生が入ってくるとの噂があり、教室内の生徒の話題になっていた。

誰が編入するのか、男女どちらか、美形か美人か、文武どちらが秀でているのか。話題のタネが尽きる事はなく、朝のホームルームで編入生が教室内に入ってくるまでは好奇心に満ちた表情を皆浮かべていた。

しかし、編入生が教室に姿を見せ、自己紹介をしだすと、その好奇心はすぐにかき消え、困惑と驚愕の表情に変わった。

ざわついた教室が沈黙する。

 

「本日付を持ちまして、このアッシュフォード学園に入学することになりました、枢木スザクです。よろしくおねがいします」

 

朝の最初の授業が終わり、休憩時間となる。

当たり前なのだろうか、スザクの席の周辺からは生徒が消え、皆遠巻きにスザクを見つめて陰口とも言える話題を口々に話す。

 

「枢木スザクってあの……」

「クロヴィス殿下を殺したっていう……」

「バカ、殿下を殺したのはゼロだろ?」

「でも本当に無関係なの?」

「裁判では無罪だって」

 

小さくない声でそのような話があがる、スザクは居心地が悪そうに机に目線を向けて次の授業の準備をする。しばらくはスザクが前を向く事はなかったが、ふと思い出したかのように席を立った。

スザクが席を立つと陰口は一瞬にして消え、スザクの動向を探ろうと一挙手一投足に皆が注目した。

その空気を感じていながら無視しているのか、ただ単に気がついていないのかわからないが、通路を挟んで隣りに座る男子生徒に声をかける。

 

「あの」

 

「えっ! な、なにか?」

 

まさか声をかけられると思ってなかったのか、携帯をいじり自分の世界に入っていた男子生徒はひどく驚いたように肩を上げた。

突然の大声に周りから注目されていると感じた男子生徒はその肩をすぐに丸め、恥ずかしそうに身じろぎした。

 

「すいません、この学園に出来るだけ詳しい方をご存知ないですか? 少し聞きたいことがありまして」

 

「アッシュフォードに詳しい? ……それなら、一年上の生徒会長が学園に一番詳しいんじゃないか?」

 

一瞬彼の心には無視するという言葉が浮かんだが、一度反応してしまった為、声をかけられたことを無視するという難易度の高い技は彼にはできなかった。

周りの視線が気にはなったがスザクの質問に丁寧に答えた。

 

「そうですか……どうすればお会いできますか?」

 

「え、そうだな……今の時間は授業もあるし、昼休みに生徒会室に行けば会えるんじゃないか?」

 

「わかりましたありがとうございます」

 

「い、いや、いいんだ?」

 

スザクはそれを聞くと表情を変えず礼をし、静かに席に座ると再び机の上に目線を向けた。

突然のことだったが、会話のキャッチボールが成立していたことに気づいた男子生徒は横目でスザクをチラリと見ると、どこか誇らしげに、そしてどこか満足そうに携帯を再びイジりだした。

周囲の生徒は2人の会話から様々な予想をし、再び話を始めようとするが、ちょうど次の授業の鐘が鳴った。

 

 

昼休みになった。昼食を食べることなくすぐに席を立った枢木スザクは、生徒会室に向かう。

先程話しかけた隣の男子生徒に生徒会室の場所を聞き、授業後に真っ先に向かった。

男子生徒は同じクラスの生徒会役員に案内を頼もうとしたが、それは迷惑だとスザクは断った。貴重な休憩時間を自分なんかに使わせるのは申し訳ないと思ったからだ。

 

教室から生徒会室に向かう途中も、すれ違う生徒から奇異の目線を向けられていることに居心地の悪さを感じる。しかし、そんなことで今更くじけたりせず、譲れない目的のためにスザクは歩みを止めなかった。

 

生徒会室と書かれた表示を見つけ、立ち止まったスザクは息を整えると、中に誰がいるかわからないが丁寧に3回ノックする。

失礼しますと言いながら扉を開けた。

 

部屋の中へ数歩入る。中には誰もいないと思っていたが、広い部屋の中央に集めて並べられていた机の奥、日本の礼儀でいう所の上座にその女性は座っていた。

金髪に碧眼と、ブリタニアでは珍しくないその容貌だが、女性としては高身長な体格と、女性の特有の特徴がそれぞれしっかりと現れた見事なプロポーションを持っていた。

スザクはおそらく彼女が例の生徒会長なのだろうと検討をつける。なぜ昼休みの直後にいるのかはわからないが、おそらく朝のうちに自分が会いに行くと発言したことで、彼女までその言葉が伝わったのだろうと考えたからだ。僅かに警戒心をのぞかせる彼女に話しかけようとするが、それよりも早くミレイはスザクに声をかけた。

 

「話は聞いてるわ知っていると思うけど、私はミレイ・アッシュフォードよ。それで、枢木スザク君? 私になにか用かしら? 確かに、アッシュフォード学園高等部の生徒会長であり、理事長の孫娘である私が学園に詳しいとは自負してるけど、今日編入してきた貴方を案内でもすればいいのかしら?」

 

どこかトゲトゲしくスザクへ対応するミレイ。スザクはその様子になにか誤解があると感じ、慌てたように弁明する。

 

「い、いえ。そんなつもりではなく、ただお聞きしたいことがありまして……」

 

「なにかしら?」

 

スザクは心のなかでシコリとなっている質問をする。内心では緊張しながらも、不審がられないよう表情に出さないように、極めて冷静にミレイに尋ねた。

しかし、スザクの思いとは反してそれを聞いたミレイは瞼をカッと見開く。

 

「……この学園にルルーシュという名の生徒は在籍してーー」

「どうして!」

「っ!?」

 

「どうして貴方が知っているの!? ルルーシュがこの学園にいることを!?」

 

「ミ、ミレイさん?」

 

大声を出しながら机をバンッと強く叩きながら立ち上がった。

机を挟んでスザクに体だけ詰め寄る。

先程までのトゲトゲしい雰囲気からまた一転し、心なしか目を赤くさせ、どこか焦燥したような雰囲気だ。

スザクはその急激な変化に困惑した。

 

「悪いけど貴方のことは調べさせてもらってたわ、この学園に唯一在籍することになる名誉ブリタニア人だもの、殿下のお口添えがあるとはいえ警戒するに越したことはないからね」

 

「……」

 

その言葉はどこか納得いった。

先日、偶然知り合い、助けることになった女性がブリタニアの皇女殿下であるユーフェミア・リ・ブリタニアであったことから、何の因果か、学園に生徒として入学することとなった。

ユーフェミア皇女殿下が口添えーー身分を証明してくれたため学園に入ることができた。しかし、あくまでもそれはそれ、これはこれ。

学園側からしたら名誉ブリタニア人、それも間違いとはいえ、つい最近まで皇族殺しの罪がかかっていた問題の人物なのだ。

貴族の子息子女も少なくない学園なだけあり、ポーズの意味だけではなくその身元、性格を理解しなければならなかったのだろう。

その上で、日本時代のことも知っているのはおかしくない。

 

「その結果色々とわかったわ、貴方が日本最後の首相の息子で、殿……ルルーシュとも知古の仲ということもね」

 

「えっ! それは……」

 

ルルーシュの名前がでてきたため、思わず声がでてしまう。

ミレイは自分の様子を観察しながら、チラリと扉の方を向いた。小さくため息を吐くと再び自分に向き合い、先程よりは幾分か冷静になって問いかける。

 

「アッシュフォードは元々ルルーシュの……親の家と関わりがあってね、その関係でルルーシュの事を知っているの。まあそれも昔の話だから今はそんなことはいいわ。スザク君改めて聞くわ、ルルーシュがこの学園にいることをーー部外者だったはずの貴方が何故知っているの?」

 

「それは……」

 

スザクは軍事作戦行動中の話ではあるため言い澱む。しかし、すぐさま考えを一転させて正直に言わなければならないと感じた。目の前の女性の表情を見て、嘘は話せないと直感的に感じたからだ。

しかし具体的な話はするわけにはいかない。なので、大部分を濁して事実を話すこととした。

 

「会ったんです」

 

「会った?」

 

「詳しいことは言えないのですが、シンジュクのある地域でこの学園の制服を着た、ルルーシュ、を……」

 

スザクは次の言葉が言えなかった。いや、言葉が続かなかった。

 

「ミレイさん? なぜ……」

 

「…っ!」

 

「なぜ、泣いているんですか?」

 

目の前の凛としていた女性は、表情を変えないまま涙を流していた。

スザクがその指摘をすると、へ? と表情を変え、目元に手を持っていく。涙が手についたことでようやく自分が泣いていたと自覚したのだろう。

そこからは早かった。

涙を拭った手を強く握りしめると、その制服の袖で目元の涙を男らしく拭き取るも、涙は止まらず、徐々に顔を赤くしながらくしゃくしゃにしていき、大粒の涙をその瞳から溢れさせた。

とうとう無駄と悟ったのか、女性らしく両の手を顔面に押し当て、泣き顔を見せないように泣き出してしまった。

 

「ル、ルル、ルルーシュ……本当に、本当にそうなの?」

 

泣き声の中にミレイの言葉が響く。

 

「い、いったい? 彼は学園にいるのではないですか?」

 

「うっ、うぅ……」

 

「教えてください、ミレイさん! いったいどうしたんですか!?」

 

流石に異常を感じたスザクは、泣いているミレイの元に慌てて詰め寄る。机を挟んでいたため、少し迂回することになったが、ミレイの側に行くと下を向いている、ミレイと目線を合わせるため膝を少し折って尋ねる。

ミレイの様子からよくわからないが、ルルーシュに何かあったと感じた。

ミレイは必死な様子のスザクを指の間から涙でボヤけた目で確認する。すると、小さな声で事情を話し出す。

その弱々しい様子は、先程まで警戒心があり不審者を睨む保護者のような姿からはかけ離れていた。

 

「……ルルーシュは……確かにこの学園の生徒よ、貴方と同じ、二年に在籍しているわ」

 

「なら……」

 

スザクの言葉に、被せる。

 

「行方不明なの……」

 

「え?」

 

「行方不明なのよ! ルルーシュは!」

 

「っ!?」

 

顔に手をつけたまま、大きく口をあげて怒鳴るようにスザクに答える。おそらく、目が隠れていなければ睨みつけているのだろう。

腹の底、魂の叫びのごとく気持ちのこもったその一言はスザクを驚かせるのに不思議はなかった。

スザクは表情を固めてしまう。

 

「……大声だしてごめんなさい。でも聞いて、ルルーシュはシンジュクでテロがあった日以来行方不明なの……」

 

「シンジュク、事件の……?」

 

「そう、ルルーシュはヤンチャなところがあってね、その日もリヴァルーー友人と外出したらしいんだけど、偶然シンジュク近くを通っていたルルーシュはシンジュクゲットー付近で事故した車の救助をしていたらしくてね、その時に友人と逸れたらしいの」

 

ルルーシュが行方不明となったのはミレイが知っている話ーーリヴァルから聞いた話によればシンジュクゲットー付近なのは間違いない。

リヴァルとルルーシュの乗るバイクの後ろで事故をしたトラックにルルーシュが向かったのを見届けたのがルルーシュの最期の姿だったからだ。

 

「その日からルルーシュと連絡がつかなくなったわ」

 

「まさか……」

 

スザクには脳内にある言葉と音がよぎった。思わず手を腹部にあてる。

シンジュクゲットー、ルルーシュと再開した場所。クロヴィス殿下の親衛隊、その隊長の言葉。

 

ーー目撃者はーー

ーー殺せーー

ーー1人残らずーー

ーー奴はテロリストだーー

ーーならお前から死ねーー

そして背後から聞こえた銃声。

 

呆然としているスザクに、ミレイは更に現実を突きつける。

 

「後日、軍が学園に来て、私の前に持ってきたわ、シンジュクで拾ったと言って、血まみれの、ルルーシュの携帯を……だから…」

「嘘です!」

 

「え?」

 

だが、スザクには反論の弁があった。今のミレイの話と、自分の知る状況の小さな間違いがあるとわかったからだ。

直前に考え、思い出していた言葉は一旦忘れてその自分に有利な事実だけをミレイに話した。

運動したわけではないのに、暑いわけでもないのに背中に冷や汗を流しながらスザクは声を荒らげる。

 

「確かに僕はルルーシュにシンジュクで会いました! ……ルルーシュはテロに巻き込まれたんだと確かに言ってました!」

 

「……」

 

ミレイはスザクの言葉に耳を傾ける。

両手を顔から離す、顔が真っ赤で無様になりながらもスザクの話を真剣に、聞き逃さないように聞く。

 

「その時訳があって、僕は彼と別れてしまいその後どうなったかわかりません」

 

軍の上官に撃たれて気絶していたとは流石に言えない。そのためその後どうなったのかは知らない。

彼の次の記憶は今お世話になっているロイドやセシルの顔なのだから。

 

「でも、ですが! 事件後の現場検証ではルルーシュの遺体はありませんでした! どこにも見当たりませんでした! その携帯のことは知りませんでしたが、僕自身はルルーシュが無事だと思ってました!」

 

「……スザク、君?」

 

ロイドから聞いた確かな情報だ。

クロヴィスが殺害されたことや、停戦命令があったことから一時現場は混乱したが、普通であればブリタニア側の犠牲者は身元を特定するという義務が軍にはあった。

有象無象が多く死んだ日本人とは違い、ブリタニア人で死者が出た場合は多くが軍人なのだ。きちんとした現場検証や、遺体捜索が行われる為、見落としたということはほとんどないだろう。

そして行った現場検証から、見つかったブリタニア人の遺体の中にルルーシュと似た特徴の持ち主はいなかったらしい。勿論、全面的に信じてはいないが、その情報源は仮にもブリタニアの侯爵だ。嘘よりも真実のはずだ。

 

「携帯はその時落としたのかもしれません、ですが、今でも彼は無事と思ってます。もう一度いいます! 彼の亡骸は見つかっていません!」

 

そのルルーシュの携帯電話のことは知らなかったが、事件から何日もたち、拘留から解放され、編入する前日ーー昨日に聞いた時でもその情報に変わりはなかった。つまり、ルルーシュの亡骸はなく、死んだ証拠はないのだ。

 

「…!」

 

その事実を知ったミレイはまだ涙を浮かべる瞳を大きく開く。

その瞳に力が戻る。

 

「僕は事件後、彼が着ていた制服の学校を調べていました。殿下の口添えで学園に編入することになった際、偶然アッシュフォードの制服がルルーシュが着ていた制服と気づきました」

 

それは奇跡だった。まさか調べていた制服が昨日セシルから渡された時は何の冗談かと疑ったものだ。

 

「ルルーシュは行方不明かもしれません! ですが、それはただ身動きが取れないだけかもしれません、死んでしまったということでは無いと思います」

 

「……」

 

ミレイは静かに涙を拭い、スザクに向き直る。

スザクは少し荒らげていた声を萎め、笑顔を見せながらミレイに尋ねる。

希望はある。

そう瞳で語った。

 

「ルルーシュがこの学園でどのような人物だったかはわかりませんが、僕が知るルルーシュは妹をおいてどこかに居なくなったりしません、ルルーシュはきっと生きています。そうですよねミレイさん」

 

ナナリー。ルルーシュの最愛の妹であり、目と足の不自由な七年前の彼女の姿が頭に浮かんだ。

そんな彼女を忙しなく世話をしているルルーシュを思い出す。

ミレイも同じことを考えたのだろう。目や顔がまだ若干赤くなりながらも雰囲気を落ち着かせて、笑顔を、浮かべる。

 

「……ふふ、そうね。その通りよねスザク君。ありがとう」

 

最後の礼の言葉にはミレイの最大限の気持ちがこもっていた。

 

「いえ、すいません。生意気言ったみたいで……」

 

「いえ、そんなの構わないわ、私こそ無様な姿見せちゃったわね。ごめんなさい」

 

「そんなこと」

 

「いいのよ、自分でわかってるわ。あーあ、私も大人になったと思ってたけど、まだまだよねー」

 

ミレイは自嘲する。スザクは否定しようとするが、他でもない本人が自分の事を一番わかっていた。

軍人の話や、リヴァルの話、連絡が取れないことから最悪のイメージをしてしまい、そのイメージを崩すことがなかったのは事実なのだ。情け無い、諦めるのが早すぎるぞミレイ・アッシュフォードと心の中で呟いた。

 

「ミレイさん……」

 

「まさか会ってから数分も経ってない相手に諭されるとは思ってなかったわ。……そうよね、私達こそルルーシュの事を信じてあげないとね」

 

「私達?」

 

私達と、複数形を強調されたため思わずオウム返しをしてしまう。

ミレイは扉に目線を向けると、その先にいる人物へ声をかけた。

 

「聞いてるんでしょ? リヴァル、シャーリー」

 

「え?」

 

誰もいないと思っていた扉が静かに開いた。

 

「いやー、バレてたとは」

「だ、だって、会長ー」

 

扉からは目を充血させ、涙の跡が残っている藍色の髪の男子生徒と、ミレイ以上に泣き腫らしているオレンジの髪の女子生徒だった。

2人は居心地悪そうに生徒会室にはいると、ドアを閉めた。

そんな2人にやれやれと言いたげな表情を見せる。

 

「そんな部屋の外から啜り泣きが聞こえてたらバレバレよ。スザク君、彼はリヴァル、後ろで泣いてる彼女はシャーリー。2人とも私と同じ生徒会のメンバーなの」

 

ミレイの紹介でその2人の正体を知った。

 

「いやー、盗み聞きして悪いな転校生。俺はリヴァル、リヴァル・カルデモンド。よろしく」

「ぐすっ……私はシャーリー・フェネット。よろしくねスザク君、隠れて聞いててごめんなさい」

 

2人はどこか憔悴した様子だったが、スザクに目一杯の笑顔を見せ自己紹介をした。ミレイとの会話を盗み聞いてしまったことを謝罪する。

盗み聞いたのも、偶々聞こえたのではなく確信犯的に物音をできるだけ立てないようにしていたのだ。

 

スザクはそんな2人の様子に最初は驚きつつも、すぐに笑顔を戻した。

 

「こちらこそ、ご存知かもしれないですが枢木スザクです。よろしくおねがいします。リヴァルさん、シャーリーさん」

 

「硬いなー転校生。いや、この際だからスザクでいいか」

 

リヴァルはスザクとミレイの元まで近づくと、スザクの肩に手を乗せた。

態度は馴れ馴れしく感じるが、その表情は複雑そうにしながらも真剣に感謝の気持ちがこもっていた。

 

「リヴァルさん?」

 

「スザク。本当に感謝してるんだって、正直なところ言うとさ、俺を含めてこのメンツ皆んな今日まで大分落ち込んでてよ、会長やシャーリーなんて少しも笑顔なんて見せてくれなかったんだ」

 

「それは……」

 

スザクの疑問に、今度はシャーリーが答えた。

涙声ながらも、自分を奮い立たせようとしているのか、必死に声を張る。

 

「ルルはね、この生徒会のメンバーだったの」

 

「え、ルルーシュが?」

 

少し驚く。こんな時に考えることではないが、ルルーシュにそこまでの強調性があったことに驚いたからだ。生徒会など、面倒くさいの一言で拒否するような人間だと思っていた。

そんなこと考えているなど露知らず、シャーリーの話の続きをリヴァルは続ける。

 

「だからさ、ルルーシュが行方不明で、事件に巻き込まれて、死んだかもしれないって聞いてからは……なんかさ、皆、笑わなくなったから。

でも、今スザクがルルーシュは生きているって言ってくれてさ、扉越しに聞いてたとはいえ本当に嬉しかったし、本当に助かったんだ。希望はまだある。諦めるなってな」

 

途中涙声になりながらも、自分の気持ちを正直に真っ直ぐスザクに伝えた。

 

「リヴァルさん……」

 

「俺はリヴァルでいいよ、タメだろ俺らは」

 

肩に置いていた手を背中に回し、パチンと音を立てて軽く叩く。痛っと、いいながらもビクともしないのは流石だ。

 

「じゃ、じゃあ! 私もシャーリーで大丈夫!」

 

シャーリーも手を挙げて自己主張をする。

 

「そうね、私もミレイさんなんかじゃなく、ミレイ会長とでも呼んで」

 

ミレイも今までの陽気さを取り戻してスザクに応える。

 

「みなさん……ありがとう、ございます」

 

スザクが腰から綺麗にお辞儀をする。

それを見ていたミレイは、名案が思いついたとばかりに手を叩く。

ミレイは思いついたが有言実行。後先考えず目の前のスザクに宣告する。

 

「そうだ、スザク君、貴方生徒会に入りなさい!」

 

「会長ナイスアイデア!」

 

ミレイの言葉にスザクはええ! と、驚きながらも、リヴァルにすぐに同意をされた。若干リヴァルのミレイへの忖度が入っているかと思ったがそれは考えすぎだろう。

 

「僕が、いいんですか?」

 

「勿論、ルルーシュの知り合いなんでしょ? 遠慮せずにビシバシ働いてもらうわよ?」

 

「でも…」

 

「大丈夫だって! 仕事のことは俺らでカバーするし、それに、最初は名誉だからとやかく言われるかもしれないけどさ、生徒会でお前がしっかり働いてれば皆認めてくれる」

 

そう、今は学園の皆から良い目では見られないかもしれない。理不尽なイジメや心許ない誹謗中傷をうけるかもしれない。しかし、学園のヒエラルキーの中で頂点に君臨するといっても過言ではない生徒会に所属し、地道に仕事をしていれば自然と皆に認められていくのではないかと考えたのだ。

勿論、簡単なことではなく、時間がかかる難しい問題だろう。

しかし、それでもスザクにとってしたらその言葉はまさに天からの救いのようにも感じたのだ。

 

そして、次のリヴァルの言葉が決定的にスザクを後押しした。

 

「それに、ルルーシュが帰って来てお前がいたら面白くなりそうだろ?」

 

「……っ! はい、僕でよければ是非!」

 

「はーい! 話は決まったわね、スザク君、生徒会は私を含めて7人」

 

ミレイは指で人数を表す。

 

「生徒会長である私に、リヴァルにシャーリー。あと昼だから今はここにはいないけど、貴方達と同じ2年にニーナとカレンさんっていう2人の女子生徒がいるわ、また貴方に紹介するわね」

 

「はい、あと2人は……」

 

スザクの声に、待ってましたと言わんばかりにフッと笑う。

そして優しく答えた。

 

「今はいないけど我が生徒会の最高戦力である、生徒会副会長のルルーシュ、それに貴方。スザク君よ」

 

「……」

 

「これからよろしくね、スザク君」

「よろしくな、スザク」

「ビシバシいくわよ? 新人さん?」

 

「こちらこそ、よろしくおねがいします! シャーリー、リヴァル、ミレイ会長」

 

スザクは久しぶりに心の底から笑みを浮かべた。

 




※当小説ではルルーシュを生き返らせるといった展開はございません。
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