ハーレム?いえ、既に詰んでいます   作:ねぎぼうし

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「失われた記憶」からの人はいつもありがとうございます。
初めしてのかたは初めまして。
ラブコメは初めての斜めにかまえるです。
普段はミステリーで投稿していますが息抜きで少しずつ書いたものが一話分出来たので投稿しようと思います。
いわゆる落書き的なものなので不定期更新です。
ラブコメは初めてですがご覧ください。





アイドルはラブホはお断り

一般的には幼なじみ、というのは同性が多いらしい。

どこかのラノベのように幼なじみヒロインというのはそうない。

幼なじみの場合それは恋愛ではなく、友達として認識されるためだ。

よってこれを回避するために作られた絶対的システムがある。

そう、『転校』である。

しかもラノベ主人公どもは毎度毎度「転校!?」とお決まりのように驚く。

さらに戻ってくる先は決まって昔住んでいた場所だ。

ご丁寧に幼なじみの顔まで忘れ、「お前、〇〇か!?」なんて言う。

そんなやつに昔ヒロインは惚れていた、という設定が王道だろう。

さて、ここに一人、異性が幼なじみという珍しい男がいる。

だが現実は甘くないらしく、王道など歩ませてはくれない。

ではその男を覗いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

「おはヨーソロー!」

「おはようございます……」

「よーちゃんおはヨーソロー!」

 

浦の星前のバス停。女子校のバス停だが乗るのは女子校生だけというわけではない。前述した男も登校にこのバスを使用している。

そこで喋っているわけだが順番に説明しよう。

先に挨拶した灰色の髪の子が渡辺曜、最後に挨拶したみかん色の髪のが高海千歌、そしてその間に挟まり、けだるげに挨拶したのが、前述した男、

 

「元気ないね?どうしたの椿くん?」

  

湊斗(みなと) 椿(つばき)

高校三年生の健全な男子。童貞。

敬語は癖であり、先輩後輩構わず使う。

本人談によると常に敬意を払うのは大切、だそうだ。

 

「いえ……昨日千歌に買い物に付き合わされましてすこししんどくて……」

「つーくんオシャレなんだからセンスあるとおもって!」

「そのつーくんってのやめてくださいよ……。もう高校生なんですから」

「幼なじみだからいいじゃん!」

 

椿の呼ばれかたは様々である。

千歌からはつーくん、曜からは椿くん、そして……

 

「おはよ、三人とも!って椿?元気ないけどどうかした?」

「デシャビュぅぅ……。昨日千歌に連れ回されまして……」

 

松浦果南、彼女からは椿、と呼び捨て。

ずいぶん親しく、ラノベならこの中で三角関係でもできている。

だが三角関係などない。

おっと、先に言っておく。

親の都合やらで実は理事長に縁があり……なんてことで椿は女学院生になりはしない。

もちろん、ダイビングショップや旅館などにも泊まりはしない。

そもそもこれはラノベではない。

現実はとても厳しく、冷酷である。

もう一度確認しよう、三角関係などない。

現実は……

 

(昨日の買い物、デートって思ってくれてるかな……)

(千歌ちゃんとデート……いやいや!まだ恋人同士じゃないからノーカウントでありますっ!)

(……。私も今度一緒にダイビング誘おうかな……?)

 

三角関係よりも複雑で限りなく、めんどくさかった。

まさかの1対3、というクソめんどくさい状況に、椿は気づいていないのだが。

なにせ椿にとって三人は、『幼なじみ』なのだから。

それ以上でも、それ以下でもない。

だが皆さんには勘違いしないで頂きたい。

ハーレムというのは、決して楽ではないということを、重々理解し、この男を見てほしい。

なにせ、一人を愛でると二人が嫉妬するという、どうしようもない『チェックメイト』でスタートしているのだ。

そしてまた、椿は『チェックメイト』であることも知らない。

そう、泥沼化確定のクソゲーなのだ。

さて、幼なじみというのはどうしてかモテない。

ではなぜこのようになったのか。それは彼を見ていれば分かるだろう。

 

───  ───  ── ─

 

「見てみて!これつーくんに選んでもらったんだよ!どうつーくん!?」

「いや選んだの僕ですしどうって……」

「かわいい!?」

「えぇ、可愛いですよ。とても」

「えへへ~」

「「……………」」

 

二人が怪訝そうに僕をみます。

なにかしたでしょうか僕?

褒めただけですよね?

あ、普通感想聞くなら私達でしょっていう僕に対する嫉妬でしょうか?

いや求めてきたの千歌ですし。

 

「今度は私とデートしよっか!」

「デートぉ?」

 

した覚えはないですよ曜。

 

「買い物付き合ってよ」

「それをデートとは……いいですけど。千歌?どうしたんです?」

「なんでもない!」

 

いやなんでもあるでしょう。

不機嫌じゃないですか。

褒めて上機嫌になったとおもったら……喜怒哀楽が激しいですね。

にしても買い物ですか。

2日連続ですが幸い今日は土曜です。

明日は予定もないですし付き合うだけならいいでしょう。

 

「あ、じゃあ千歌、こっちこっち」

 

果南が千歌を呼ぶ。

そして耳打ち。

なにを言ってるのかは分かりませんが耳打ちということはろくでもない事です。

介入するメリットなどありません。

 

「明日朝の6時!駅で待ってるね!」

「はい。お待ちしています」

 

───  ───  ── ─

 

「あ、いた!椿くーん!」

「ん、お待ちしていました。では行きましょう」

 

朝6時、駅前、宣言通り待っていました。

行き先は聞いてませんがおそらく沼津の服屋でしょう。

切符を買い、電車に乗ります。

 

「あ、そうだ。椿くん」

「なんでしょうか?」

「実はAqoursの衣装案が思い付かなくて……。なにかアドバイスください!」

「僕より曜さんのほうが衣装作りは得意でしょう?僕は素人ですし」

「でもアイドルの見る側の視点も反映したいしね」

「なるほど……といってもAqoursは三人しか会ったことないですよ?」

 

無論、ようちかなんです。

本当は三人を通して会えるのですが正直、一ファンとして見るのも良いもので別に会わなくても……と、言う感じです。

勿論、初ライブからのファンです。

急に千歌が「スクールアイドルするっ!」なんて言ったときは驚きましたが。

 

「そうですね……案、ですか……」

 

といってもそんなに早くは出てきません。

 

「そういえば椿くんはAqoursの中で誰が好きなの?」

「推しですか?」

「そうそう。私達はあまりファンには聞かないけど気になる♪」

「えと、私の推しは一応善子さんです」

「……………意外だねっ……!」

 

あ、あれ?

 

「怒ってます?」

「そこは曜ちゃんでしょう!」

「本人が言ってちゃ世話ないですよ。でも曜は結構人気あるみたいですよ?」

「ほんと!?」

「えぇ。ほら。『元気イッパイで可愛い』『一緒に映画とか行きたい』『ヨーソロー!』。ね?」

「…………でも肝心の人がなぁ……」

「肝心な人?」

 

スマホを見せると少し喜びましたがすぐ落ち込みました。

肝心な人とはだれでしょう?

お母さんとかでしょうか?

 

「ちなみに善子ちゃんのどんなところが好きなの?」

「そう……ですね。『これ』ですかね」

 

そういって『堕天』のポーズをとります。

 

「えええええ……もしかして椿くん、『そっち』?」

「ちがいます!いえ、勿論善子さんが可愛いというのもあるんですが……」

「わたしが推しじゃないのはなんで?」

「うーん……やはり幼なじみというのが大きなポイントだからでしょうか」

「やっぱりー!」

「まぁ仕方ないですよ。ファーストライブでは二人が踊ってるの凄い違和感でしたし」

「だよねぇ……」

「っと、着きましたよ。降りましょう」

 

立ち上がり電車をおります。

 

「さて、まずは……はい」

 

曜に僕の被っていた帽子を被せます。

突然だったので曜はひどく焦りました。

そんなに僕の帽子が嫌なのでしょうか?

 

「な、なにこの帽子!?」

「忘れてるでしょうが曜は人気者ですよ?それもスクールアイドル。男の人と歩いていたら噂になりますでしょう。僕の帽子が嫌でしたら服屋でパーカーでも買いましょう。とにかく顔は隠さないと」

「う、ううん!この帽子でいい!」

「よかったです。では」

 

曜に向かって手を差し出します。

 

「………?どうしたの?」

「いえ、手を繋ぎますよ」

「!?なんで!?」

 

僕は相当嫌われているようです。

手を繋ぐのさえ驚かれました。

 

「曜がいくらボーイッシュな格好しても女の子です。ナンパになんてあったら貧弱な僕には到底助けられません。だからカップル風に歩いて事前に防ぐのがベストかと。……聞いてます?」

「聞いてる聞いてる♪」

 

手を繋いでくるのはよいのですが話くらいは聞いてほしいものです。

 

「離れないでくださいよ。曜は可愛いですからナンパされやすいですし」

「ごめん!よく聞こえなかったもう一回言って!」

「だから曜は可愛いですから……」

「うんうん♪」

「……もういいですよ。ほら、行きましょう」

「ヨーソロー♪」

 

買い物とあって幼なじみは元気です。

元気なのは結構ですが引っ張らないでいただきたい。

 

「私本屋いきたかったんだぁ!」

「曜は本苦手じゃありませんでしたっけ?」

「ファッション雑誌!」

「なるほど」

「というわけで~♪可愛い子いないかな~♪」

 

周りをキョロキョロ見渡す曜さん。

はたから見れば不審者です。

 

「なんでファッション雑誌を買うのに可愛い子探すんですか?」

「その子にどんな雑誌みてるか聞くんだ~♪」

「初対面でも?」

「初対面でも!」

「……はい」

 

曜にカメラを内カメにして見せます。

 

「…………なに?」

「そんなに可愛い子探すなら鏡でも見てください」

「~~~!?椿くん大好きっ!」

「はーいそうですか~。では本屋へ向かいますよ~」

 

愛の告白しながらハグを迫る曜をヒョイとかわし、手を繋いだまま服屋に向かいます。

曜からのなんでかわすの!みたいな視線が刺さりますが手を繋ぐのさえ嫌がっていた人のハグや愛の告白など知ったことではありません。

 

「ん?あの人なんてどうです?」

「え?」

「可愛い子ですよ。あのサングラスの」

「…………デート中に他の女の子褒めるのはNGだよっ!」

「曜が探してたんでしょう……。というかデートだったんですかコレ?それはそうと声かけましょう」

 

帽子を被っていてサングラスと不審者ですが不審者らしからぬお洒落な着こなしでした。

モデルさんとかならラッキーです。

ぜひお店を教えて頂きましょう。

 

「あのー……」

 

私が声をかけると自分に対して話しているのが分からなかったのか周りを少し見渡して自分を指差し

 

「私かしら?何の用?」

「あ、はい。実はですね……」

 

どこかで聞いた声でした。

どこでしたっけ?

 

「あの、その服……」

「あーーーーーーっっっ!!」

 

手を繋いだまま隣の曜が驚きます。

どうしたんでしょう?

 

「善子ちゃん!」

「ヨハネ!ってあああっ!!」

「え?ヨハ、あっ!!」

 

ヨハネさんでした!

そりゃ聞いた声です。

 

「曜じゃない!誰その男!?」

「あ、しまっ……!!」

 

手を繋いだままでした。

一旦手を振りほどこうとしますが

 

「………いつまで握ってるんですか?」

「さっき離れるなって」

「言いましたねそうでしたね」

 

ヨハネさんの誤解が進みます。どうしましょう?

 

「あー、ヨハネさん」

「なにかしら?」

「詳しく誤解なく正直にお話します」

 

変わらず曜は手を離しません。

 

───  ───  ── ─

 

「なるほどね……」

「はい。そんなわけで曜と恋人風に歩いているわけです。幼なじみなだけで恋人では…イタイイタイ!イタイです!曜、握力!手を握る力を弱めてください!潰れます!ヨハネさん助けて、あ゛あ゛あ゛っ!!」

「自業自得よ。反省しないさい」

 

何が自業自得なんですか!

僕の否ないですよ!

 

「それで?貴方は誰が推しなの?」

 

その問いにもちろん迷うことなき即答。

 

「私はリトルデーモンですっ!イタイ!曜!いい加減に……」

「……貴方私が好きなの?」

 

その質問に一瞬隣から殺気が…。

なんですなんです!?

 

「善子ちゃん……?」

「ヨハネ。安心しなさい。その気は無いわ。で、どうなの?」

 

好きか?

ふむ、ライクのほうですよね?

そもそも初対面の人にラブを聞く人はいないでしょう。

 

「もちろんですよ。推しですから」

「じゃあ……」

 

急にヨハネさんが僕に接近し僕のアゴをクイッと少し持ち上げ顔を近づけて

 

「ヨハネと契約……する?」

 

ちょっ!?

待ってください!まさかラブの意味で聞いたんですか!?

あなたアイドルですよね!?

堕天使!?小悪魔の間違いでしょう!

なぜならこんなにも胸が締め付けられ……

 

「あ゛あ゛あ゛っ゛!腕も締め付けられますうううううっ!!」

 

曜、殺気やめてください!確かにスクールアイドルとして許されない行為だから怒るのは分かりますけど!

数秒僕の目を見つめたヨハネさんはやっと離れてくださり、

 

「……なんてね。応援ありがと♪これからもリトルデーモンでいてほしいけど……」

 

チラリと曜を見て、

 

「それじゃ、可哀想ね」

「可哀…想?なにがですか?」

「それはヨハネの口からは言えないわ。あ、でも」

「でも?」

「曜はもう少し頑張らないと私にとられるかもね♪」

 

そう言ってヨハネさんは僕の唇に細い指を置き、ウィンクを決め、そのまま場を去りました。

その様子にしばらくキョトンとしますがふと我にかえり、冷静になります。

負ける?なんでしょう?

 

「…………勝つ!」

 

いやだから何をですか。

 

───  ───  ── ─

 

「ふぅ、買いましたね」

「重いね」

「持ちましょうか?」

「ありがと!」

「はい。ではそろそろ手を離してください。荷物が持てません」

「やだ」

 

なんなんですか。

ヨハネさんとあってから手を離してくれません。

でも何故か荷物は私に持たせたいようで「ん!」みたいな感じで荷物を押し付けてきます。

仕方がないのでとっくに許容量を越えている片手で持ってあげます。

 

「ところでですね」

「なに?」

「…………走れますか?」

「う、うん。どうしたの急に?」

「声を潜めて。尾行されています」

「尾行!?」

「静かに。さっきから後ろに同じ人が二人います。曜のスキャンダル目的かなんだか知りませんが逃げるのが得策です。準備はいいですか?」

「うん。何処に逃げる?」

「後で考えます!!行きますよっ!!」

 

曜を引っ張って走ります。

最初こそは引っ張られていた曜ですがさすがはスポーツ人。逆に私が引っ張られる羽目に。

後ろを見るとサングラスの二人が追ってきます。

走ってると言うことは隠す気は無いということです。

そのまま走り続けますが逃げ切れません。

速すぎますよ。曜と同等の速さとはなかなかです。

何か隠れられる場所は……。遠くを見るとホテルらしき建物が。

あのなかなら逃げ込めそうです。

流石にホテルマンがいるなか、追ってくることはないでしょう。

 

「曜!あのホテルに……」

 

言ってる途中。

そのホテルの看板が目に入り、光より速く口を閉じました。

 

『ホテルHA・JI・ME・TE

 ご休憩5時間1960円 均一

 ご宿泊 2990円 均一』

 

ラブホオオオオオオオッ!!

もうちょっと店名カモフラージュして!

バレバレじゃないですか!入れるわけないですよぉぉ!!

 

「椿くん!?ホテルがどうかしたの!?」

「どぉぉぉぉぉもしてませえええええんッ!!異常なしです!」

「そ、そう?でもこのままじゃ追い付かれちゃう……。何か逃げ込める場所……」

 

あっ……。

 

「……………///」

 

やってしまった!

周りを見渡した曜、顔真っ赤です。

心なしかつかないでいる手の温度も上がっています。

見つけた瞬間無言になるのも気まずいです。

くっ!男としてなんとかしなくては!

 

「と、とにかくこの場から離れましょう!」

 

グッ!と曜を引っ張りますが何故か曜は動きません。

 

「よ、曜!?追い付かれますって!」

「あ……」

「あ?」

「あ、あのホテルに逃げ込むのはどうかな?」

「………………え?」

 

………………あの、ホテルに?

落ち着け私。そうだ落ち着け。ただの聞き間違いだ聞き間違い。

落ち着いてもう一度聞けば……。

 

「も、もう一回お願いします」

「あのホテルに逃げ込むのは……だ、ダメ?」

「ダメにきまってますよ!一瞬でも聞き間違いを期待しましたよ!そもそもあれは……」

「つ、椿くんとなら……」

「え?」

「椿くんとなら、いいよ?」

 

@&☆*★#!?

ま、まってまって!?

私と一緒なら良いってそれは、それはつまり……。

 

「ってあの二人は?」

「は、はい?」

 

予想外の返答に頭を抱えていると曜が走ってきた方向を指差して首を傾げます。

そこには何もない。つまり、

 

「に、逃げ切った?」

「みたいだね……」

 

よかった……のでしょうか?

なんかこう……男してもったいないことをしたような……。

そ、それよりも、

 

「曜?その……」

 

名前を呼ぶだけでビクッ!と跳ねます。

これはさっきの事は聞かない方が正解なようです。

 

「これからどうします?」

「走って疲れちゃった……」

「じゃあ何処かで休憩を……」

 

言ってから気付きます。

ここが何処で今どんな状況にあるかが。

 

「椿くん……?」

「いやいや!決して休憩というのはそんな意味ではなく!普通にカフェとか漫喫とかで!」

 

こっちの必死な弁解に曜は顔を赤らめながらも繋いだ手は離してくれません。

 

「…………いこう!」

「は、はい」

 

無理矢理引っ張られてカフェへ向かいます。

さっきの尾行がまだ続いてるかもしれないので注意を払いながら向かわなければなりませんでした。

しかし、スタバより近くにマクドがあったのでそっちに変更。

なんとかつく頃には体力はほぼ残っていないということに。

しかしこれが大失敗。

なんとマクドはカップル割引というキャンペーンをしており、手を繋いでいた私たちは「カップルですか?」と問われました。

即座に否定をしようとしたとき、なんと曜が「はい!」と答えたので「あらー!まだ若いのに!」みたいな目で見られました。

恥ずかしすぎて体力を持っていかれました。

疲れをとるために疲れてカフェへ向かうとは僕らは何をしてるんでしょう?

 

 

 

さて、テーブルに座り、やっと休憩が出来ます。

流石に二人向かい合って座ると思いきやなんと、さも当然かのように僕の隣に。

考えられるのは二つ。

さっきの事で面向かって座れない。

理由は分からないけれど単純に手を離したくない。

どっちもの気がします……。

座ってからもお互い無言で時間だけが過ぎていきます。

普通はスマホとか触りながら駄弁(だべ)るとかするのでしょうが手は塞がっていますし、喋れる状況でもないです。

ですがここで私の頭にある行動が浮かびます。

 

──────さっきの事をきいたら?

 

なぜ私とならいいのか?なぜ手を離してくれないのか?

聞くべきか?聞かないべきか?

出来るだけ表に出さぬように焦っていると口元にポテトが。

 

「………ん」

「ん、ってこれ……食べるんですか?」

「ん!」

 

顔はそらしたまま繋いでいない方の手で僕にポテトを差し出します。

それは俗に「あーん」と言われるもので……。

 

「…………!これで良いですか?」

 

仕方がないので食べて上げます。

だって食べないと曜が怒りそうで……。

すると曜は上機嫌にこちらを向いて、

 

「はい!」

「……………え?」

 

目を閉じて笑顔を向けます。

口は結んだままで。

しかも身長はこちらのほうがあるのでちょうど顎を上げて。

これはつまり、その………き、キs

 

「食べさせて♪」

「あっ、はい」

 

単純に間違えました殺してください。

いえ、そっちじゃないです。キスに比べて劣っていますが食べさせてってそれはそれで難易度高めです。

まぁこれでも幼なじみ。照れていては示しがつきません。

ポテトを一つつまんで口元に持っていきますが……

 

「曜、口開けてください」

「目つぶってるからいつ開けて良いか分かんなーい」

「…………」

 

これはつまり、そうしろということ。

周りに客がいないか確認をして、流石に照れながら

 

「あ、あーん」

 

今度はパクッ!と食べてさらに上機嫌に。

お姫様は気難しいです。

一方あーんなんてしたこっちは恥ずかしすぎて死にたいです。

 

ですがこれで空気もほぐれてきたようで会話が弾むようになりました。

スクールアイドルの話。近況の報告。いろいろ話している中、

 

「そういえば善子さんと会いましたね。感動です……!」

「あっはは……。毎日アイドルと会ってるけどね」

「曜、目が怖い」

「怖いと言えばあの二人だよ。なんだったんだろうね?」

「さぁ?何はともあれなんとか逃げ出せて良かったです」

「結構速くてどうしようかとおもったけどね」

「そういえばなんで私となら良いんです?」

「えっ?」

 

あまりにもナチュラルに。勢いで言ってしまいました。

さすがに答えてくれないだろう。それよりどう良いわけをしよう?

そんなことを考えていると曜、ポテトを片手でポキポキ割りながら少し照れて、

 

「椿くんなら変なことしないでしょ?」

「……………」

 

要は男して見られてなかったと。

なーるほどっ!私のプライドと引き換えに謎は解けました。

 

してもよかったんだけど……

「え?曜?なにかいいました?」

「なにもっ!」

 

あまりに小さな声で聞き取れませんでしたが掘り下げると怒られそうなので止めておきます。

曜も聞かれるのが嫌なようで話題をそらそうと机の上を片付けます。どうやらもう出るようで。

異論はないのでパパッと盆を片付けて店を出ます。

するともう外は暗くなっていました。

夏なので昼は長いはずなのですが……。

これでは本屋に行くことは出来なさそうです。

 

「帰りましょう」

「そうだね」

「すいません。本屋に行けなくて」

「私はとっても楽しかったからいいよ!」

 

笑顔でそう答えた曜は結局、内浦まで手を離してくれませんでした。

追われて走ってあーんして。

不思議な一日でした。

 

 

 

 

後日の話になりますが、こんなことがありました。

 

「おはよー!よーちゃん昨日は楽しかった?」

「千歌ちゃんおはヨーソロー!楽しかったよ!ね!」

「私は疲れました……。正直今日の学校が憂鬱です」

「疲れるって……なにしたの?」

「あーんとか?」

「あーん!?ちょっとつーくんどういうこと!?」

「あぁあぁあぁ!肩を揺さぶらないで酔いますから!」

 

このあと千歌から根掘り葉掘り聞かれましたが曜がいちいち誤解を招くような発言をして……。

大変でした。

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