前回が1ヶ月前ってマジィ!?
まだ読んでくれる人がいるの本当に驚きです。
更新サボってて死んだとおもった方も何人かいらっしゃるのでは……?
安心してください生きてますよ!
今回は新キャラを出したり、キャラ回の二週目になったりと盛りだくさんとなっております。では、参りましょう!
サンサンと降り注いでいた太陽が弱まり、人々の溢れ出る熱気がかすれるこの季節。
久々にカバンを肩にかけ、ゆっくり坂道を上ります。
すれ違うたび、「久しぶりー!」などと聞こえ、平和だなと感じます。
そう、今日は9月1日。
いわゆる夏休み明けです。
我が高校のお話を少しばかりしましょう。
薫ヶ峰高校。
薫、なんて綺麗な高校名ですが、女子は浦の星や、他学校にとられていますので、ほぼ男子校のようなモノ。
総合学科で、二年生からは受ける授業を選べるという学校です。
私は演劇部に所属しており、なにかイベント、例えば文化祭などがあった時は、ステージ発表をしますので、それなりに名は通っています。
浦の星はそう遠くはないですが、なにせ男子が多いので関わりがほぼありません。
ちなみに、我が校にスクールアイドルはいません。
最近では珍しいですが、女子の低下が原因ですね。
スクールアイドル部が無いと女子は余計遠のいていくと思いますが…。
さて、三年生の私の教室は2階。
もう歩き慣れた階段を一度上り、廊下を歩きます。
すると、何があったのか、ザワザワと教室から騒ぎが聞こえます。
その正体を確認するためにも、扉を開けて、周りを見渡します。
「おはようございます」
「ん、おー!椿ぃ!コレみろコレ!」
「ん?何やら騒いでいるのはソレですか」
男子がこぞって何かを覗いています。
なんでしょう?ガチャでURが当たったとかそんなのだったらつまらないですが。
「ほれ!」
すっと、手を挙げ、持っていたスマホ見せてくれます。
スマホに何かあるようです。
えっと、動画?
「えっと?『スクールアイドル、Aqours!人気沸騰!』…え、コレって」
「そう!浦の星だよ!あの高校!いやー、場所近いし実物にあいてぇなー可愛いだろうなー」
すいーっと視線を逸らします。
冷や汗が背中から溢れ出し、焦りと笑いを誤魔化すのに顔をそむけずに話題についていけません。
私の気持ちなど知るわけもなくクラスの男子は嬉々としてスマホを囲んで話し続けます。
「俺果南ちゃん推しだわ!」
「俺曜ちゃんー!」
「千歌ちゃんだなー」
…すいませんっ…!全員幼馴染ですっ!
というかなんでそんなピンポイントで攻めてくるんですかっ!
花丸さんとかダイヤさんとか、わたしの幼馴染以外いっぱいいるでしょ!
「お前は?どの子?」
「あ、私はヨハネさんです」
「そうかー!…ん?お前にこの子の名前言ったっけ?」
「え?…あっ、あぁー!Aqoursなら私、前からファンでして」
「マジか。いやー、俺ら付け焼き刃の知識だからよ!いろいろ教えてくんねぇか?…ってどうした。顔引きつってるぞ…」
「い、いえ…なんでもないです…」
「ふーん、そっか。ならいいや」
よくないんですよ…。
それより、この場所をなんとか離脱しないといずれボロが出そうです。
「あ、私、先生に呼ばれてるんで」
「おう、そうか行ってこい!」
手をヒラヒラさせて、出て行く私を送るクラスメイト総勢。
一方、先生に呼ばれてなどいない私は、
「Aqoursブーム!?何ですかソレ!よりによって我が高校に!?」
知り合いというか、幼馴染とバレたら凄い事になりそうです…!
知らぬが仏、他人と思うが吉!
というか、先生に呼び出されたと言って誤魔化しまして逃げてきましたが…!
見つかったらめんどくさそうです。
なにかないですかね…?
「あ、椿先輩!おはようございます!」
「ん?あ、おはようございます」
後輩が先輩にご挨拶。
この人はリュウくん。
フルネームで覚える必要はありません。
彼はリュウくん、私の後輩の演劇部で、陽キャ属性を持つも彼女いない歴=年齢。問題は彼の性格にあるのですが…。
ちなみにチャラいです。明確にピアスとか付けてるわけじゃ無いですがナンパとかします。そのナンパのセンスも、
「そこのgirl's、俺とティータイムでもどう?」
というセンスですので、残念極まりないです。
そんなリュウくんですが、演劇部に入った理由は、「ほら、注目浴びてモテそうじゃん?」ではなく「んー、なんかビビッときたんですよねー。観客にこんな劇見せれたらいいなーって思ったんで入っちゃいました」だそうです。
根っからのチャラ男ではなく、むしろ逆に根はいい子なので。敬語もちゃんと使えますし、優しい子ですから。
きっといつか彼女さんはできると思いますよ。
そんなリュウくんの手には大量のノートが。
「重そうですね。手伝おうか?」
「大丈夫っすか?」
「いいですよ。ほら、半分かしてください」
そっちの方が、先生から頼まれたーって言い訳できますし。
クラスの全員分であろうノートの束の半分を取り、階段を上ります。
この子は1年生なので、4階。道のりは長いです。
「あっ、そうだ!先輩!」
「ん?どうした?」
「Aqoursってスクールアイドル知ってます!?」
どっしゃーん!
「ああっ!ちょっと先輩!ノートおとさないで下さいよ!」
誰のせいだと思ってるんですか!
「もう…!って先輩、なにか落ちましたよ?」
ノートを一緒に拾ってると、何か落ちた模様。
「あー、私のスマホですね」
あー、スマホが裏向けで落ちています。
あいにくノートで手は塞がってますし…
「大丈夫ですよ先輩。僕が取りますから」
「あ、ありがとうございます!すいません」
「いえいえ…あ!」
「ん?どうかしましたか?」
「先輩ってー、彼女いないんですか?」
「いませんよ?なんですか急に」
「ふっふっふっ…今スマホを持っているのは私です。つまり、女関係の写真の行方は私の手の中!」
「だから彼女いませんって」
「失礼しまーす」
「あぁちょっと!」
別にやましい写真はないのでいいですが…。
サクッと他人のスマホを取り、表向きに回し、慣れた手つきで勝手にスマホを触るリュウくん。
字面だけ見たら相当やばいヤツです。
やれやれ…と、思いつつも写真なんて全然ないので…。
なんていうとを考えていると、後輩の手が急にとまり、顔が悪巧みしている笑い顔から苦笑いに…!
「せ、先輩?」
「なんですか?」
「この人…誰ですか?」
この人?
画面を覗き込むと…!
目深に帽子を被り、サングラスをかけて私とのツーショットでピースサインをしている…女の人が写っていました。
あれぇ?この写真どこで…?
『せっかくきたんだし、ほらピースピース!』
『ショッピングにツーショットいりますか?まぁ曜がいいなら別に…』
『あ、ついでにさっき買ったコレをつけて…』
『メガネ?そんなの買ってたんですか。って曜もつけるんですか?』
『記念だから!じゃあいくよ!はいチーズ!』
…あの時かー!
曜と2人でショッピングに行った時です!
帽子貸してて手繋いでましたねそういえば!
幸い眼鏡をかけてくれているので友達といえばごまかせそうです。
「それは、私の友だちですよ」
「へぇー、先輩の友達…。友達ねぇ…」
マジマジと写真を見つめるリュウ君。
まったく。プライベートもお構いなしですか。
まぁ全然問題ないですけど。
「先輩…」
「どうかしましたか?」
「……この子俺に紹介してくれません?」
前言撤回ッ!!!問題ありすぎですッ!!!
友達と言った以上、紹介しないと怪しまれてしまいます。
しかし、会わせたら変装させても、かのスクールアイドル『Aqours』の渡辺曜とばれてしまいます。
そうなれば最後、曜は私の彼女とかあることないこと噂され、最悪Aqoursの活動に支障が出ます。
それだけは絶対に避けたい。
私の平穏な生活の為にも、アイドルと付き合ってるスキャンダル野郎なんてレッテルは貼られたくないのです。
そうなれば残った手はひとつ…!
「……すいません、この子実は僕の彼女でしてー」
「あーやっぱりですかぁ」
「はぁい。恥ずかしいので黙ってましたぁ。なのでリュウくんとは付き合えませんので、紹介はまた今度…」
「へ?なんでですか?」
「ん?」
「いや、先輩の彼女可愛いし、生で見たいんで紹介。お願いしますよ?」
「は、はいぃ?」
─── ─── ── ─
「と、いうわけでして…」
「………………へぇー。誤魔化したんだ。友達だって。で、困ったら彼氏っていうんだ。へぇー」
時はそれから9時間後。放課後と言うのが分かりやすいでしょうか。
曜の部屋で私は曜の冷ややかな視線を浴びながら正座しています。
きっと勝手に彼女呼ばわりして怒っているのでしょう。
「それで?なんで私の家に?」
「…曜さん怒ってます?」
プイッ!とそっぽを向く曜。
怒ってますね…。
「その…お怒りのところ申し訳ないのですが…」
「なに?」
「その…紹介しないといけないので、彼女役になってくれませんか…?」
「…いいよ」
「ですよね。ダメですよね…っていいんですか!?」
「うん。というか椿くん勘違いしてるね!」
「へ?な、何がですか?」
「私が怒ってるのは、椿くんが私を友達って紹介したからだよ!男の子ならちょっとぐらい意地はってさぁ!なに?私じゃ不満なの?」
「ちょっ、どういうことですか!?つまり、親友とか、幼馴染とか、もっと言い方あったでしょ、ってことですか!?」
「……!…もう、知らない!」
えぇ!?な、なんなんですか!?
「それで?その紹介はいつするの?」
「……」
「???椿くん?どうしたの?」
「……明日」
「ん?なんて言ったの?」
「明日…です」
「……………………」
「……………………」
「………はい」
「はいじゃないよ!明日!?早すぎない!?」
「そうですけどぉ!なんか勝手に話が進んでてぇ!」
なされるがまま…。
しかし、起きてしまった事はしかたありません。
曜は「はぁー」と大きなため息を付き、頭を抱えてしばらくすると顔を上げ、
「椿くん、ウィッグと眼鏡」
「変装するですね。まぁそのままだとバレるでしょうからね」
「そうそう」
「でもなんでウィッグなんですか?演劇部にあるっちゃありますけど、写真では地毛ですよね?」
「髪染めたってことにしとけばいいよ。バレないのが最優先」
「なるほど。では、明日用意しておきます。では、要件は済みましたので私はこれで」
スッと立ち上がり帰る準備を整えます。
その途中、
「椿くん、私って…その、やっぱり、可愛くない…かな?」
「…?どうしたんですかイキナリ?」
「……椿くんは、私が彼女って、イヤ?」
……?あぁ、明日のことについてのミーティングですか。
要は、彼氏みたいに振る舞うのは、イヤだったら別にいいからね。
ってことですよね。
「いえ、全然大丈夫ですよ」
「ホントに?」
「は、はい。そんなに心配しなくても、むしろ彼女にしたいくらいですし」
「………あぁもう!//」
バタン!と音を立ててベッドに飛び込み、すぐ様布団を被ります。
なにか私地雷踏みましたっけ?
「よ、曜〜?」
「…ずるい!急に言うのはズルイ!」
「……………………」
「なんで急に黙るの!」
「や、ピンクのお布団可愛いな〜と思って」
「………!見ないで帰って……!」
「ハイハイ……。それでは、また明日」
「うん……」
とびらを出るときの曜の声は……なにか、弾んでいたような気がします。
─── ─── ── ─
そんなわけで、翌日。
残念ながらAqoursブームは冷めておらず……いや、残念…なのかな?
まぁその辺は置いておいて、英語の先生の「ヘイ!ミスターツバキィ!」という謎のテンションの授業を受け終わりリュウくんより一足早く曜の家に行き、約束どうりウィッグと眼鏡を渡しました。
ちなみに、曜は別人と思うほど、綺麗な美人に。
「にしても、金髪大正解でしたねぇ。金髪メガネの曜、なんかハリウッド女優にいそうです」
「それって普段は綺麗じゃないってこと?」
「んー、綺麗な時もありますけど、どっちかっていうと普段は可愛いですからね」
「ぐっ…!ふぅ……落ち着くであります私……!……………椿くん!」
「はい椿くんです」
「彼女になってあげるから、しっかり彼氏してよね!」
「彼氏ってどういう風にやるんですかね……?……『今日も可愛いぜ曜』とか?」
「よくその演技力で演劇部務まるね。まぁ、そんな感じでいいかな」
「了解です。…………あ、迎えに来いとの連絡がきたので、ちょっと行ってきます」
「行ってらっしゃい……椿」
「曜!」
「な、なに!?」
「呼び捨ては彼女っぽいですが……行ってらっしゃいとなるとどっちかっていうと新婚夫婦……」
「いらないこと言わないでいいの!」
顔を真っ赤にする曜。
からかいすぎたかな〜お思いながら、これから起こる災難に不安を募らせ、リュウくんを迎えに行くのでした。
─── ─── ── ─
それからしばらくしてリュウくんを曜の家にまで案内して今、扉の前にいます。
上手くやってくれよとドキドキしながらそっと、ゆっくりインターホンを鳴らします。
「はーい」という声から少しすると変装した曜がドアを開け、
「どうぞ、入って」
と促します。
「ごめんな、よ……あぁイヤ……陽子」
あぶないあぶない、曜と言ってしまいそうになりました。
「陽子……。あぁ、うん、全然いいよ」
曜もそれとなく察したようで、陽子という名前を受け入れてくれました。
千歌の無茶苦茶に付き合ってる分、適応力がとても高い。
曜の凄い点です。
「紹介するよ、私の彼女の渡辺陽子。陽子、私の後輩の、リュウくんです」
「よろしくお願いします!」
寸分たがわずピッタリ90度の礼を曜にかますリュウくん。
あぁ、ナンパ成功させたことないので女の子に対して緊張してるんですかね。
それに対して、
「うん、よろしくね」
と微笑みかける曜。
うっわ、可愛い。
同じ事をリュウくんも思ったようで、「おぉ……」と感嘆の声がでてます。
さて曜が美人すぎるのでこのままでは「先輩本当にこの子の彼氏なの?」とか言われかねません。
「先輩本当にこの子の彼氏なの?」
ほらね?
「そういうのは玄関でする話じゃないでしょう。ほら、部屋に上がりますよ」
スッと曜の手を取って曜の部屋まで歩きます。
イメージ的には……舞踏会の王子様がお姫様の手を取るアレ……!
うぅ……わかってやっても恥ずかしいです。
「ちょ、ちょっと椿く」
「お、くん付けですか?」
「…つ、椿……!」
「はい、なんでしょう?」
くん呼びしそうな曜を小声と目線で諭し、チラリとリュウくんに目線を流します。
「手!コレ、恥ずかしいんだけど!」
「えー、じゃあ、よっと!」
「きゃっ!」
グッと曜を引っ張り素早く足に手をかける。
そして左手を曜の首に回し、右手は膝裏にスライド。
そして立つことによって、
「椿くん!ダメ!私ダメだから下ろして!」
「えー…お姫様だっこまでしたのにですか?」
「うるさい!」
頭を小突く曜。
仕方ないので下ろしてやると
「こういうのはちゃんとしてから……」
とかまたよくわからない事を呟きますが、さっきからリュウくんの視線にしか集中できません。
幸いぽかーんとしてるので、恐らくラブラブすぎて呆れてるのでしょう。
この調子でいけばどうにかなりそうです。
部屋に着くと、迷わず曜は椅子に、私はベッドに座ります。
普段遊びに来た時は地面だったり机にもたれかかったりするので、ベッドに座ったぐらいじゃ曜はどうこう言わないようです。
「えーっと?本当に彼氏なんですか?でしたっけ?」
「は、はい…」
呆然と答えるリュウくん。
動揺しちゃってます。
でも冷静になると、バレる可能性があるので、このまま押しきっちゃいましょう。
「さっき見せたでしょう?アレが証拠です」
「た、確かにお姫様だっこはそうですが……!口裏合わせれば実行できます!」
ふむ、痛いところを疲れましたね。
どうしたら…
こうなったらキスとかしてみましょうか
「キスでもしましょうか?」
「えぇ!?」
流石に驚いたようです。
……あー、皆さん勘違いしてるみたいですが…。
さっきの「えぇ!?」って言ったの…。
リュウくんじゃなくて曜です…。
「な、なんで陽子さんが驚いてるんですか!」
「僕らは潔白なお付き合いをしてるので、動揺したみたいです」
「ど、動揺なんかしてない!」
「訂正します。してないそうです」
「いやしてるでしょう!陽子さん顔真っ赤じゃないですか!」
「これは…陽子の特技です」
「どんな特技ですか!」
「そう言ってもリュウくん。陽子がしてないって言うのならしてないんでしょう」
「恋人バカ!親バカならぬ恋人バカですよこんなの!」
「いいよリュウくん!そのまま椿にお灸をすえちゃうであります!」
「陽子はどっちの味方ですか!」
「すいませんね陽子さん!ウチの椿が迷惑かけてます!」
「いえいえ、ウチの椿をよろしくお願いします」
「私はどっちの椿ですか!…いやどっちの椿でもないですよ!何勝手に親気取りしてるんですか!」
正座してお互いに礼をしあっている2人はもう手に負えません。
「ところで、陽子さん」
「ん、なにかな?」
「どうして椿を好きになったんですか?」
「へ?」
あー、まぁ鉄板ネタではあります。
ただ難しい内容ですね。優しいから。では薄っぺらいです。
リアリティ欠ける回答になるのは仕方ないので、上手く話題をそらしたい所。
曜が私の好きな所を上げちゃうとリアリティはほぼゼロになr…
「…昔ね、」
「お、昔話ですか」
「…私、こう見えても母国では飛び込みの選手でね」
あー、嘘は…ついてないですね。
母国は日本ですし。
「その…一時期イップスになっちゃって」
「陽子さん…」
「本当にくだらない事だったんだよ?友達が飛び込みで失敗して足を怪我して…私もなったらどうしようって思ったら足が動かなくて…」
「……………………」
…覚えています。
ちょうど生でみてました。
パァン!と盛大な音と、誰が見ても失敗した、マズイ、と思うような水しぶきの量。
次の瞬間、いろんな人がプールに駆け寄って飛び込んだ人を引っ張り上げたのですが、プールサイドに上がっても足の痛みを訴え続けていた人がいました。
結果、その人は病院に搬送されたそうなのですが、選手生命は絶たれたそうです。
その時からです。
曜が飛び込み台の上に立つと下を見て、顔を歪めるんです。
他の人に急かされ、曜は結局飛び込みましたが素人の私が見ても酷い有様のフォーム。いや、普段の曜が綺麗なフォームなので、普通のフォームだったのかもしれません。ただ、明らかに調子が落ちていました。
別に、調子が落ちることについては私は構いませんでした。
私が一番心配したのは……
「私、飛び込むのが怖くなってね?」
あくまで、フォームは基本的に忠実でした。
きっと、長年培ってきた勘でしょう。
なんとなくでも、なにも考えずとも綺麗になるのです。
ただ曜が普段と違ったのは、飛び込む瞬間、
そして、着水。
すぐに水面に顔を出し、顔を苦しそうに振る曜。
その表情は暗く、見ていられないモノでした。
それで、思ったんです。
なんか嫌だなって。
曜の恐怖心なんか私にはどうにも出来ないと思ってました。
でも、体が気がつくとプールサイドに向かっていて。
「そんな時、急にコーチから呼ばれたんだよ。あぁ、叱られる。あんな酷いフォームで飛び込んだんだ。仕方ない。そう思ってコーチのもとにいくとね。いたの。椿くんが」
─── ─── ── ─
「椿くん…なんで?」
「なんでも何も、あんな飛び込みされたらそりゃ呼びますよ。あ、コーチ、2人にしてくれますか?話したいことがあるので」
「お、彼氏さんの言うことじゃあ仕方ない」
「ちょ、ちょっとコーチ!」
腰を上げ、立ち去ってくれるコーチ。
彼氏だと思われてるのか知りませんが、割と簡単に曜を任せてくれてありがたいことこの上ないです。
「さて………曜?」
「な、なに?」
「ハッキリ言いますね」
「う、うん………」
「今日の曜、全然可愛くない」
「………へっ!?」
「いやへっ!?じゃないですよ。ぜんっぜん可愛くない。世紀末レベルで可愛くないです」
「ちょ、ちょっと椿くん………」
「ハイなんですか?」
「なんの話!?」
「笑ってない曜なんて、酷すぎて見てられないって話です」
「………え?」
「曜、飛び込みは好きですか?」
「そ、そりゃあ勿論!」
「だったら笑ってくださいよ。ホラ、スマイルですよ。にー!」
「アイタタタ!頰を引っ張らないでー!」
「やめてほしいなら笑ってください。曜、笑うと可愛いんですから」
「………………フフッ」
「アハハハハハッ!なにそれ、椿くん変だよ!」
「変とか言わないで下さいよ。僕、好きなんです」
「……え?す、好き?」
「はい!飛び込む時の笑顔も!水面から出た時頭を振る動作も!」
「そ、そんな……急に言われても困るし……!」
「はい、なんなら付き合いますよ!」
「ええっ!?つき、付き合…えぇ!?」
「それぐらい僕、大好きなんです!」
「……わ、私も」
「曜の飛び込みが!」
「…………………………え?」
「練習にも付き合います!だから、元気を出してください!」
「あー、うん。そっちね。うん、あくまで飛び込みが好きなんだね」
「……?はい……」
「はぁー、もう……!わかった!こうなったら今度の大会、一位とってあげる!」
「すごい啖呵きりますね」
「そうじゃないと、負けた気がするからね」
「誰に?」
「椿くんに」
「??????」
「首傾げないの。というか椿くん、言ったからね!?ちゃんと付き合ってよ!」
「練習ですか?勿論です!といってもアドバイスも出来ない素人ですが……」
「そばにいてくれるだけでいいよ」
「でもそれじゃあ上達しなくないですか?僕がそばにいるだけで上手くなるって、そんなゲームのバフみたいな」
「私、渡辺曜だよ?」
「………………ま、なら大丈夫ですね」
─── ─── ── ─
「改めて思い返すと本当に謎でしたね。見守ってるだけで本当に上手くなっていくんですから」
「椿くん、呆気にとられてたね」
「そりゃそうなりますよ」
「で、次の大会で私が一位になって」
「曜には本当に驚かされます」
「その頃気がついたんだ。あぁ、私椿くんのこと好きになってるなって」
あっ、最後に大嘘吐いて行きましたよ!いい話だなーって思ったのに!
ですがリアリティーとしては最高の出来です。
語ってる表情ですらまるで恋する乙女です。
さすがアイドル部、女優指導とかなにかでされるんでしょうか?
兎にも角にもリュウくんの反応次第です。
視線をリュウくんへスライドすると、下を向いてワナワナと震えています。
「り、リュウくん?」
「椿先輩……」
「は、はい」
「この子絶対に幸せにしてくださいよ!」
「えっ?あっ、はい……」
おぉビックリした。心臓に悪いので急に大声出さないでほしいですよ。
というか、曜はガッツポーズしすぎです。
バレなくて嬉しいからガッツポーズするって、ガッツポーズバレバレなので逆効果になってますよ。
「あ、そういえば椿先輩」
「はい?」
「陽子さんのことさっき曜って言ってませんでした?」
「えっ?」
「陽子さんも、椿くんって呼び捨てをやめて……」
「あっ……」
「「………………………………」」
「空耳ですよ!ね、陽子!?」
「そうだよー、ねっ、椿!?」
「ふぅん……そうですかぁ……」
あっぶなぁぁぁい!昔話に浸ってて意識するの忘れてました!
「ほら、リュウくん、送りますよ!そろそろ終バスの時間です!」
「ゲッ!?マジ!?」
「マジです!それじゃ陽子!僕らはこれで!」
「ありがとうございました!」
ドタバタと部屋を出ていくリュウくんと私。
こうでもしないとさっきの話を追及されてはマズイです。
無事、リュウくんはあの後バスに乗って帰れました。
あとは後始末のため、もう一度曜の部屋に戻るだけです。
改めて曜の家のインターホンをならし、「椿です」というと鍵を開けて、今度は灰色の髪をしたスクールアイドルが迎えてくれました。
「曜、今日はありがとうございました」
「いいよ。私も楽しかったし!」
「それはなにより……!私はまだ胃痛が治りませんよ……!」
「私はドキドキが止まらないかな!誰かさんがお姫様抱っことかしたおかげでね」
「すいませんって!バレないかどうかでドキドキしたのは僕も一緒なので、許してくださいよ!」
「そういう事でドキドキしたんじゃないんだけどなぁ」
「じゃあなんで……」
「はい、この話おしまい!今日はありがとうね!」
なんか……都合よく話の腰をおられた感じがしますが、今回のことは曜に借りを作っています。深く追求するのは失礼ですかね……。
「こちらこそありがとうございました!」
「ん、それじゃ、これは貸しだね」
「どうやって返したらいいでしょうか?」
「んー、そうだなぁ……椿くん、ちょっと目を瞑っててくれる?」
「?はい……?」
とりあえず目を閉じてみます。
……キスとかされちゃいます?
……まさかね。
というか視界を塞ぐって何気に怖いのです、ガッ……!?
「よ、曜!?流石にこれは……!」
「まだ、目は開けちゃダメだよ?」
じゅ、順序立てて説明しますね?
えっと、目を瞑ってたら急に前から締め付けられ…というか、抱かれる感触が……!
てててていうか!二つのお山が私の胸板に押し付けられてるんですが!
こ、これは不可抗力不可抗力……!理性を保つのです私……!
き、キスの準備はしてました!それに比べてハグだけなら……!
「はい、お終い!目を開けていいよ」
「っぷはぁぁぁっ!」
「……どうしたの?息してなかったの?」
「息の根を止められる覚悟をしてました」
「なにしてるの……。それより学校では上手いこと言っといてよ。私、コレ何回もやる元気ないよ?」
「はい……。上手いこと言っておきます……」
─── ─── ── ─
時は流れて翌日。
私は上手い言い訳を引き下げ、階段を駆け上がり教室の扉を勢いよく開けました。
理由?なんか勢いよく入った方がその勢いに押されて昨日のこと聞かれないかなぁって。
まぁ私彼女がいるなんて1日じゃ広まらないにきまって……
「お、きたな本日の主役」
「さぁー、どういうことか話してもらおう被告人」
「グローバルな人は俺らがなにしても許してくれる器の持ち主だよなぁ!?」
………………なるほど。
ガラガラ……ピシャッ!
「……………………」
ガラッ!
「なに逃げようとしてんだ椿ィ!」
「うるさいですよ!勝手に人を主役に抜擢しないでください!あと被告人にするならせめて弁護士をください!」
「わ た し が し ま し ょ う」
「リュウくんなんでいるんですか!いや私の話広めるために来ましたね!じゃあ元凶リュウくんじゃないですか!誰が弁護させますか!」
「椿お前金髪ブランドの美人さん彼女とかいい加減にしろよホントに!」
「まさかとは言いますが会わせろとか言いませんよね!?断っておきますが彼女、明日アメリカに発ちますよ!?」
「「「……え?」」」
「はぁ……、金髪ってところで察してくださいよ。そんなずっと外国人が日本に居座るわけないでしょう。…ってそんな絶望しきった顔しないでください。どんだけ会いたかったんですか」
なんとか収まりました。
とりあえず海外いかしときゃいいやという安易な発想ですが、効果は絶大のようです。
シンプル イズ ベスト とはこの事です。
そんな事を思っているとリュウくんが大爆弾発言。
「ま、いいや。僕には花丸がいますし」
「……は?」
いま、なんと?
〜続〜
男2の編成大好きです。
ついやっちゃいますねw
今回も例外なく2人目出しちゃいました!
さてさて、少し早いですが私、冬休み特別企画をしようと思います!
といっても内容は超簡単で、なんと!あのななかまが!
『1日短編1話投稿』をしようと思います!
短編といってもだいたい5000字ぐらいのを予定してます!
失踪気味だったお詫びの意味合いを兼ねて、頑張ります!
開催日程は後々。ななかまが冬休みに入ってからになります。
お待ちくださぁい!
それではまた次回会いましょう!