それでは本編どうぞ。
「うん、足湯もなかなかいいな。」
「うふふ、そうですね。
ユクモ村の風景は綺麗なので、ここの足湯から一望できるのはいいものです。」
お昼が過ぎてからそれなりの時間。
俺はクルルナと一緒に足湯に浸かっていた。
「トマトさんは混浴に入ると何かとトラブルを起こしますから…。
そんなことばっかりしてたら妬けちゃいますよ?」
うぐっ…。クルルナの目が怖い…。
い、いやぁ…あれは俺が悪いと一言に言えないことばっかりでしたから…。
「今日もクエストは来なさそうかな…?
いやぁ、しばらくのんびりできそうだ…。」
「ふふふ…この間までは疲れた顔をしてましたからね。
一体どうしたらあんな顔になってしまうのか…。
体調を崩してしまわれないか心配でした。」
「いや、それはクルルナたちが…
「なにか?」
「あっ…なんでもないです…。」
あぁもう…。クルルナさん最近怖くないですかね…?
俺なんて最近はイビルジョーに襲われる夢を見るようになってしまったじゃないか。
「う〜ん、でもクエストが来ないってのはちょっとつまらないかな…。
いや、平和なのが一番なんですけどね。」
「あらあら。トマトさんったら今まで1回も私達に勝てていないじゃないですか…。
すぐにへばってしまって…私達はもっと…
「はいダメ。そこまでにしてください。お願いですから。」
だから作者はなんでクルルナをこんな感じにしているんだ…!?
キャラがブレッブレじゃないか!
そんなやりとりをしていると、不意に後ろから声をかけられた。
「あらあら。仲睦まじい様で…。微笑ましいことです。
少し私も話に入れさせてもらってよろしいですか?」
穏やかで優しげな口調の女性の声が聞こえてそちらを振り向くと、そこには落ち着いた雰囲気を醸し出す竜人族の女性がいた。
「あっ…。村長さんですよね…?」
「ええ、そうです。 若輩ながらこのユクモ村の村長…ならびに浴場の女将を務めさせていただいてますわ。 以後よしなに。」
ユクモ村の村長。
竜人族の中では若い方らしいけれど、長命な竜人族だからきっと俺なんかよりはずっと長生きなんだろうな…。
生で見るのは初めてだけれど、なんていうんだろう…。
オカメ?っていうんだっけか…。独特の化粧をしていて落ち着いた雰囲気が出ている。
うん。ゲームではわからなかったけれど美人さんですね。
そんなことを思ったら温泉に入っている俺の足をクルルナが思い切り踏みつけた。
いったぁ……。心読めるんですか…?
「あら?お顔が優れないようですが…。大丈夫ですか?」
「いてて……すいません、なんでもないです。
それで…俺達と話がしたいってことですけど…。
もしかしてモンスターでも出ましたか?」
「うふふ。貴方達ほどのハンターとなると勘も随分鋭くなっていらっしゃるのですね。
ええ。今言われた通りモンスターについてのお話がありまして…。
先程、渓流に木材を取りに行った村人の子が慌てて帰ってきましてね…。
どうやらかの《雷狼竜》が渓流に現れたらしいんですの…。
以前にもユクモ村はこの子の脅威に晒されてまして…今回も森が荒らされ始めているらしいのです…。
不安の目は早めに摘み取っておきたいものなので、お2人にあの子の狩猟を頼みに来た次第です。
受けてくださいますでしょうか?」
ジンオウガか…。
1回は実際に目に入れておきたいモンスターの筆頭だ。やっぱりかっこいいもんね。
これは受けないわけにはいかないでしょう。
「俺はバリバリいけるんだけど…。
クルルナはどうだ?」
「ええ。問題ありません。
村長さん。その依頼は私達に任せてください。
バッチリ達成してみせます!」
俺達がそう応えると、村長さんは微笑んだ。
「うふふ。頼もしい限りです。
ただ…、何となく違和感を感じるような気がしますの…。
ジンオウガが森に居座っているので森に緊張感が漂っているのはわかりますが…どうもそれだけでは説明できないような…。
いえ、わたくしの気のせいですね…。
とんだお節介でしたわ。」
村長さんったらフラグを立てるのはやめてください…。
また怒り喰らうイビルジョーなんてのは勘弁ですよ?
……まぁ考えてたってしょうがないか。
よし、久々のクエストだ。
ジンオウガの狩猟、いってみよー。
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太陽は完全に沈み、空には明るく輝く真ん丸の月が浮かんでいる。
俺達は夜の渓流を訪れていた。
「すっげぇ…。満月だぁ…。綺麗だなぁ…。」
「何をブツブツ言ってるんですの…。早く行きますわよ。」
ちょっとくらい風情感じてもいいじゃんか…。
ケチだなぁ…。
「………貴方、今失礼なことを考えていませんか?」
「い、いや。そんなことないよ。」
なんなんだ一体…。全員読心能力持ちとかじゃないよね…?
「旦那さん、あんまりのんびりしていたらジンオウガがどっかに行っちゃうのニャ。
満月もいいけどやるべき事はしっかりやるニャ。」
ボマーオトモのマグロにもダメ出しされました…。
俺ってなんでこんなに立場弱いんだ…?
「はいはい…わかったよ。そんじゃあ行きますか。」
「トマトさんったら…、そんなに拗ねないでください…。
狩りに響いちゃいますよ…?」
「あ、うん…。拗ねては無いから大丈夫です。」
俺達は、ジンオウガを探して渓流を回り始めた。
ジンオウガを探して数分後…。
エリア5にその姿はあった。
雷狼竜……ジンオウガ。
胴体部を覆う青い鱗と、頭部や背面、腕部などに立ち並ぶ黄色の甲殻、
そして腹部や首回りなどを中心に白色の体毛が生え揃っている。
険しい山間部での移動を可能とするため、強靭に発達した四肢を持つその牙竜は、薄暗い森の中に堂々と佇んでいた。
「おぉ…。かっちょいいな…。」
「あら、トマトさんがモンスターにそんな感想を抱くなんて珍しいですね。」
うん、たしかに珍しいと思う。
でも俺だって好きなモンスターはいますよ?
ジンオウガはもちろんだし、ラギアクルスとかも大好きだ。
何故か雷属性が多いのは気にしないでおこう。
「まぁ、好きなモンスターも何匹かはいるかな。
でも無駄話してたってしょうがないや。
今はアイツを狩猟することが第一だろ?」
そう言うと、2人と1匹は頷き返してくれた。
そんじゃあ行きますか…。
さあ、狩猟開始だ。
クルルナがネルスキュラ弓で頭に矢を撃ち込み、戦闘が始まった。
今回、俺はブレイヴ操虫棍。
クルルナはブシドー弓、セレスはギルド片手剣かな?
俺とセレスは後脚を狙い、クルルナが頭をしっかり射抜く。
今回はしっかり基本を守っていこう。
ジンオウガは操虫棍だととても立ち回りやすい。
というか、相性の悪い武器なんてほとんどないんじゃ無いかな?
ランスだとちょっと難しそうだけど…。
それなりに痛い攻撃を連続で放って来て、
尻尾で薙ぎ払う攻撃や、背中でドーンなんかの大技を持つジンオウガ。
だけどその連撃をしっかり対処しきることが出来ればちゃんと攻撃する隙が出てくる。
いわゆるターン制のコンセプトがよく出来ている良モンスターだと思います。
戦闘開始後、すぐにジンオウガは背中に超電雷光虫を集め始めた。
おし、攻撃チャンス。
「俺は左足を狙う!セレスは逆の方頼む!」
チャージ中のジンオウガにラッシュをかける。
ジンオウガはたまらずに怯み、チャージを止める。
よし、いい感じ。
ジンオウガはセレスを狙って連続でダイナミックお手。
「そんなものに当たりませんわよ!」
うまく回避して後脚を切りつけるセレス。
あれ…?でもちょっと攻撃するタイミングが早すぎない?
なんてことを思っていたら、ジンオウガはのしかかり攻撃に派生。
あっ…これはマズイですね。
「えっ…?しまっ…!?」
そんなセレスの声が聞こえた途端、ジンオウガの攻撃が直撃。
セレスは吹っ飛んだ。
ありゃりゃ…まぁ大ダメージってわけでは無いだろう。
あれだな。
セレスはラディスと真逆で『武器の扱いは大丈夫だけど、モンスターの動きの見極めがまだまだ』って感じかな?
まぁ後でちょっと話してみよう。
その後、ジンオウガは再びチャージに移る。
もちろん黙って見ているわけではなく、チャージ阻止のために攻撃を加える。
まだまだ溜めさせないぞ……ってあれ?
………怯まない?
「あっ…セレス!一旦離れろ!」
「えっ!?わ、わかりましたわ!」
そうセレスに注意した直後、ジンオウガは超帯電状態へ。
やっぱり体力を減らしてるから移行が速いね。
さあ、面白くなってきたぞ…!
超帯電状態に移行したことにより、ジンオウガの連撃はさらに苛烈に。
だけど、超帯電状態になるとジンオウガの肉質は柔らかくなる。
お互いにとってハイリスクハイリターンの状態だ。
ジンオウガがお手を繰り出す。
だけど、操虫棍の機動力なら回避することは大して難しくは無い。
俺は落ち着いて連撃を対処。
最後のダイナミックチャージお手もしっかり避けきり、後脚へ攻撃。
そこでジンオウガはダウン。
ブレイヴ状態になっていた俺はステップで距離を詰め、頭に向かってラッシュをかける。
ダウンから復帰したジンオウガは怒り状態へ。
満月の下で青く光るジンオウガはカッコいいです。
だけど、こっちだって負けるわけにはいかない。
俺はジンオウガに向かっていった。
そんな俺に向かってジンオウガは突進。
それを俺は歩いて回避する。
だけど随分と距離を離したな…。
これはきっとアレだろう。
走り去ったジンオウガはブレーキをかけながら反転。
そして…大ジャンプ。
俺に向かって背面ボディプレスをかましてきた。
ほれ見たことか。
だけど…それはこっちにとってもチャンスだな…!
俺は背面ボディプレスをイナす。
多少、体に痛みが走ったけどこれくらいなら全然平気。
そして、そのまま反撃に移る。
抜刀攻撃、そして飛燕斬り。
するとジンオウガはたまらず怯んだ。
「やりますわね!次はわたくしの番ですわッ!」
怯んだ一瞬の隙を狙ってセレスが駆け込んできた。
そして盾を突き上げ、一気にジャンプ。
そこから更に盾を使ってジンオウガの頭を殴りつけた。
『昇竜撃』
片手剣専用狩技の一つ。
盾を使った強烈な打撃を放つ狩技で、一撃でスタンを奪うことだって出来る強力な狩技だ。
昇竜撃を喰らったジンオウガはたまらずに超帯電状態を維持することが出来ず通常状態へ。
更にスタンが発生した。
セレスったらやるじゃん。ステキです。
そんなことを考えていたら、クルルナに矢を当てられた。
クルルナは闇を感じる笑顔でこちらを見てました…。
絶対読心能力とかあるだろ…。
…………さて、だいぶジンオウガの体力だって削れているだろう。
きっとあと少し。だけど油断はしないように。
スタンから復帰したジンオウガを見る。
「《無双の狩人》ね…。いい呼び名じゃんか。
だけど…俺はもっと上を目指してるからさ。
今回は勝たせてもらうぞ?」
そう呟くと、ジンオウガは軽く咆哮を上げた。
さあ、ラストスパートだ。
俺は操虫棍を強く握って、ジンオウガへと駆け出した。
「ふぅ。お疲れさん。
セレスもナイススタンでした。ありがとな。」
「わたくしにかかればあれくらい当然ですわ!
少しの被弾はありましたけれど、なかなかのものでしょう?」
実際強いよな…。
セレスのレベルだって充分強いのにレイリスやクルルナはその上をいってるんだ。
そりゃ『英雄』なんて呼ばれるのも当然だ。
とまぁ、そんな会話をしながら俺達はジンオウガの剥ぎ取りを終えた。
「そういや、クルルナは今回どうしたんだ?
全然喋ってなかったけれど…。」
「えぇ…。何か変な気配を感じていて……。
でも気のせいですね。何も現れませんでしたし…。」
………村長さんもそんなことを言ってたよな。
………何かいるのか?
「……ま、まぁジンオウガも倒したことだし、今日はもう帰らないか?」
「そうですね。きっと気のせいでしょう。
早く温泉に浸かりたい気分です!」
そんな感じで俺達は渓流から帰ることにした。
……………だけど。
「………旦那さん。………何か来るニャ。」
不意にマグロが立ち止まり、そんなことを呟いた。
「………は?急にどうし…」
すると、背後から何かが着地したような音が聞こえた。
すぐさまそちらを振り返る。
「なっ、何で…!?」
セレスがソイツを見て青ざめる。
「なるほど………。そういうことでしたか……。」
あのクルルナでさえ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「………………何でコイツが。」
俺だってすぐには声に出せなかった。
だってコイツが乱入してくることは、
そこにはジンオウガがいた。
だけど…そのジンオウガは普通じゃなかった。
そのジンオウガは目も眩まんばかりの黄金色に輝く体毛、そして異常に発達した豪壮な右角を持ち、圧倒的な存在感を放つ黄金の雷光が全身を迸っていた。
『ただ…、何となく違和感を感じるような気がしますの…。』
なるほど…。
村長さんが言ってたのはこういうことでしたか…。
満月が輝く空の下、
渓流に金色の王の咆哮が轟いた。
ほい、二つ名初登場です。
評価バーに色がついてから、UAとお気に入りの伸びがグンと良くなりました。ありがとうございます。
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