モンハン世界で狩猟ツアー【完結】   作:糸遊

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ちょっと長めになりました。



第34話 竜の合挽ハンバーグ

 

 

 

 

 

「えっ…? 一人で倒したってマジ…?」

 

「ふっふっふ…。まぁ本気を出せばこんなもんですよ!」

 

 

金雷公に負けた次の日。

いざリベンジを…なんて思って、準備を整えて集会浴場を訪れたら、レイリスが1人で金雷公を討伐したとの報告を受けた。

 

えぇ…マジっすか? レイリスさん強すぎない…?

せっかくいにしえの秘薬とかをガッチリ準備して臨もうと思ってたのに…。

 

というか…いくらタフネス関連の強化はなさそうだったとはいえ、超特殊許可レベルの攻撃力を持った奴をソロで倒したんですか?

なんて無茶をしてるんだ…。

 

 

「これで迷子君に貸し一つだね!

というわけで早速お願いがあるんだ!」

 

 

とかなんとか考えてたらレイリスからそんな言葉をかけられた。

んん?お願いとな?

 

 

「迷子君は今日、私と1日デートね!」

 

 

 

 

………はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レ、レイリス…?まさかトマトさんを独り占めなんてことをするわけじゃないですよね…?」

 

 

クルルナがワナワナと震えながらレイリスに問いかける。

 

 

「いやぁ〜、今回ばっかりはクルルナ相手でも退けないなぁ!

でもでも〜?クルルナが負けちゃった相手を私が頑張って倒したんだし?クルルナにも貸しが1つあるんだよね!」

 

「うぐっ…!それを言われると…!

 

ハァ…、しょうがないですね…。わかりました。

トマトさん、今日はレイリスを労ってあげてください。

レイリスも頑張ったみたいですし…。」

 

「それじゃあそういうわけだから!迷子君も行こうか!」

 

「え…、いや…、ちょっ、俺の意見は…。」

 

 

俺の声はレイリスの耳には届かなかったみたい。

レイリスは俺の手を引っ張って歩き出した。

 

 

「えへへ…私デートなんて初めてだな…!

 

……まぁデートなんて言ってるけれど、おしゃべりしながらユクモ村をブラブラしてくれるだけでいいからさ!今日は私のワガママに付き合ってほしいな!」

 

 

う〜ん…まぁレイリスも頑張ってくれたみたいだから多少のワガママなら聞いてあげてもいいかな…?

……えっちなのはダメですけどね?

 

 

「うん、わかったよ。そんじゃあ適当にブラブラすることにしようぜ?

最初はどうするよ?なんか食べたいとか買い物したいとかなら一緒に付き合うけれど…。」

 

「う〜ん…それじゃあちょっと早めだけどご飯を食べたいな!昨日は疲れて眠っちゃって今朝起きたのもすごい遅かったんだ〜。だから朝ご飯食べてないの!お腹ぺこぺこだよ〜。」

 

 

あらら、そんなになるまで頑張ってくれたのね。

これは感謝しないと。それじゃあ今日は出来る限りのお礼をしないとだな…。

 

 

「うし、じゃあまずは食堂だな。

オススメのメニューとかあったら教えてくれよ?」

 

 

レイリスにそう言葉をかける。

 

 

「うん!私も食堂はよく通ってるからね!

迷子君のほっぺが落ちる様なメニューを教えてあげるよ!」

 

 

レイリスは見惚れる様な笑顔で俺にそう返してくれた。

 

 

…なんだか振り回される様な感じで始まった1日だけれど、楽しくなりそうだ。

 

 

そんな事を考えながら俺たちは食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ランチタイムというには少々早めの時間。

俺達が訪れた時間だと食堂はあまり混み入ってはいなかった。

 

 

「私のお気に入りはやっぱり『竜の合挽ハンバーグ』かな〜。 迷子君も食べる? すっごく美味しいんだから! 五穀豊穣米とかとの組み合わせは最高だよ!」

 

 

おっ、ハンバーグか。いいね。

そんじゃあ俺も頼んでみよう。

 

 

「そんじゃ、俺も同じのを頼むことにするよ。」

 

「オッケー!それじゃあ…

 

あっ!アイルーさん!注文お願いします!

 

『竜の合挽ハンバーグ』と『五穀豊穣米』を2つずつヨロシク!

迷子君は他にない?」

 

「う〜ん、あっ。 トマトジュースも1つよろしく頼むよ。」

 

 

注文を受けたアイルーは厨房へと駆けていった。

 

 

「迷子君って本当にトマト好きだよねぇ…。

なんか理由があるの?」

 

 

う〜ん…、トマトが好きな理由か…。

何でだろうね?自分でもよくわからないや。

 

 

「いま考えてみたんだけどよくわからんや…。何でだろうな?」

 

「ふふっ。迷子君はやっぱり変わってるね。」

 

 

レイリスはクスリと笑った。

 

 

「そういや…昨日の夜だっけ? 1人で金雷公の狩猟に向かったんだろ? どんな感じだったんだ?」

 

「どんな感じって言われてもなぁ…。

私はすっごく集中してたよ!きっとあの姿を迷子君が見たら一目惚れ間違いなしだね!」

 

「いや…、えぇ……?

もっとこうさ…何かないのか? こんな立ち回りをして倒したとかさ。」

 

「う〜ん…そう言われてもなぁ…。

物凄く集中してたから正直よく覚えてないんだよね…アハハ。」

 

 

う〜ん…その話を詳しく聞けないのは残念だなぁ…。

でもレイリスがすごい集中力を発揮したらとんでもない動きをしそうだなぁ…。

それこそ振り向きざまに、怯み計算有りきの溜め斬りブチ込んだりとかしてたりして…。

 

 

「そうか…。

ん?でもさ、何で1人で行ったんだ?村にはラディスもいたよな?」

 

「あっ、それかぁ。

ん〜…まぁそれについては後でゆっくりお話ししたいな。

今日は時間もあることだしね。」

 

 

金雷公の狩猟に1人で向かったということに疑問を覚えて、レイリスに質問してみた。

けれど、うまい具合にはぐらかされてしまったみたいです。

まぁ後で話してくれるならいいかな?

 

 

そんな具合で時間を潰していると、俺達の前に美味しそうな音を立てている料理が運ばれてきた。

 

 

「お待たせしましたニャ。『竜の合挽ハンバーグ』と『五穀豊穣米』ですニャ。

鉄板がお熱くなっているので注意してニャ。」

 

 

目の前には鉄板の上で未だにいい音を立てているハンバーグ。

デミグラスソースみたいなのもかかってるな…。

こりゃ美味そうだ。

 

 

「そんじゃあいただきます。」

 

 

俺は箸を手にとった。

 

 

 

まずは食べやすい大きさにするために箸で切れ目を入れてみる。

 

その途端、中から大量の肉汁が溢れ出した。

鉄板に流れ出した肉汁は、ジュージューといい音と匂いを辺りに響かせる。

 

こりゃ相当熱そうかな…?

でも熱いうちに食べないと損しそう…。

 

俺は意を決して、熱々のハンバーグのかけらを口に運ぶ。

 

 

 

「あっ…ふ!?あふぁ!?」

 

 

 

あっつ!?熱すぎないですかね!?

レイリスはそんな俺を見て大笑い。

 

というかレイリスは普通に食べてるし…。

何?ハンターはそんな所でも人外なんですか?

 

ともかく、口の中を落ち着かせるために口を開いたまま呼吸をする。

 

ある程度落ち着いてきたので、ゆっくりと肉を噛み締めてみた。

 

 

 

あぁ…。こりゃ美味ぇや…。

 

 

 

噛みしめるたびに、塩コショウの風味が効いたうまみたっぷりの肉汁が溢れ出す。

肉はやや粗挽になっており、しっかりと肉の歯ごたえを楽しめるようにもなっている。

何よりデミグラスソースが絶妙な味付けだった。

甘みと酸味、塩気が効いたそのソースは、肉の旨みを更に引き出すのに一役かっていた。

 

 

これは…あれだ。

米と一緒に食わにゃ勿体無いな。

 

 

すぐさま俺は五穀豊穣米をかきこんだ。

 

すると、今まで口の中に広がっていた肉の旨みに米のほんのりとした甘みが加わった。

もう絶品だった。

そのままだと少々味付けが強いかな?なんて感じるハンバーグも米と一緒に食べると絶妙な塩加減となり、別格の味だった。

 

俺は無我夢中でハンバーグを食べ続けた。

 

 

 

 

 

数分後…、俺はあっという間に料理を食べ終わっていた。

 

 

 

 

 

「ふぃ〜…、うっまぁ…。」

 

「……プッ、アッハッハッハ!

迷子君ったらがっつきすぎだよ!見てるこっちもすっごく面白かったじゃんか!

汗ダラッダラでハンバーグを頬張る迷子君…。

おかげで食べ物吹き出しちゃうところだったよ!」

 

 

えぇ…?そんなにがっついてたかなぁ?

でもレイリスの皿だって空になっていた。

 

 

「でもレイリスだって食べ終わってるじゃんか…。」

 

「私は丁寧に食べてたからね!迷子君みたいに汗水垂らしながら食事はしてませんよ〜だ。」

 

 

う〜ん、釈然としないなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

食後に少しだけ談笑してから、次の予定の話になった。

 

 

「次はどうするよ? 俺はレイリスに合わせるけど…。」

 

「う〜ん…どこに行きたいって感じでもないしなぁ…。

それじゃあ適当に散歩でもしない?」

 

 

散歩か…。今日は天気もいいし、良さそうですね。

 

 

「うし。それじゃあ適当に歩くことにするか。」

 

 

というわけでお散歩をすることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「当たった!……けど倒れないね。」

 

「ムググ……。なぜ倒れないんだ…!?」

 

 

ユクモ村を歩いていると、射的の屋台を見つけたのでちょっと遊んで行くことにした。

 

だけど…景品が全然倒れないんです。

こりゃイカサマしてやがるな?

 

 

「どれどれ、ちょっと私にやらせてみてよ。

私はボウガン得意だからね!」

 

 

いやいや…ボウガンが得意だからってそんなにうまくいくわけが…

 

「あっ、やったぁ!倒れたよ!ふっふっふ。見たかね迷子君?」

 

……マジかよ。

 

 

「はっはっは!ハンターの兄ちゃんも可愛い彼女さんの尻に敷かれてるねぇ!

そんなんじゃ彼女さんに愛想つかされちまうぞ?」

 

 

あ、愛想をつかされてしまうですと…?

それは勘弁して欲しいところだけれど…。

 

 

「店主さん!彼ってば普段はこんな感じで頼りないんだけれど、いざクエストになるとすごい動きをするんだから!

やるときはやってくれるカッコいい人だよ!」

 

「おっ、そうなのかい。

俺なんかが口出しするのは野暮だったみてえだな!

兄ちゃんも頑張れよ!こんなべっぴんさんがつきあってくれてるんだからよ!」

 

 

ちょっと弱気になっていたところで、レイリスが俺のことを褒めてくれました。

正直言って嬉しい。ありがとう。

 

 

「そんじゃあ2人のハンター生活に幸があることを願って景品はオマケ付きにしておくぞ!

また来てくれよな!」

 

 

店主のオヤジさんは俺達にリオレウス、リオレイアのデフォルメされたぬいぐるみをくれた。

気前いいじゃんか。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が夕焼け色に染まり、太陽もそろそろ山の陰に帰ろうとする時刻。

 

 

射的を楽しんでから俺達はまた村をフラフラと歩いていた。

うん、さっき買ったユクモラムネが冷たくて美味しいです。

 

 

「あれっ! ヘタレとレイリスじゃんか!

こんなところでなにしてるんだ?」

 

 

なにか面白そうなもんは無いかと歩き続けていると、急に後ろから聞き覚えのある声が。

 

振り向くと、そこには予想通り小柄な少女のハンターがいた。

あと、隣には高飛車な性格をしてそうな金髪の女性ハンターも。

 

 

「ありゃ?セレスとラディスはこんなところで何してるんだ?」

 

「何って…ラディスと一緒に渓流での採集クエストにでも行こうかと…。

 

……まさかレイリスさんに無理矢理迫ってるわけではありませんわよね?」

 

 

セレスが鋭い目をこちらに向けてくる。

なんで俺ってセレスに変態扱いされてるんだろうな…?

 

 

「アッハッハ!セレスったらそんなんじゃないよ〜。

今回は私が迷子君にお願いして付き合ってもらってるだけ。 まぁデートってやつだね。」

 

 

レイリスがセレスにそう応える。

 

 

「むっ…。それならいいんですけど…。

くれぐれも変態は変な行動をしないように…

「え〜っ!?デートってあのデートか!?2人ってそんな関係だったのか!」

 

 

……なんかセレスの話を遮る勢いでラディスが食いついたな。

こうゆう話には興味なさそうだと思ってたけれど…。

 

 

「なになに!?どこまで進展してるの!?

お泊まりとかしたの?ほっぺにちゅーとかしちゃった?

ねえねえ教えてよ!」

 

 

ラ、ラディスさんったらグイグイ来ますね…。

これにはレイリスも困り気味。

さてどうしたものか…。

 

 

「ラ、ラディス…!レイリスさんに向かって何を言ってるんですの!?

今はレイリスさんがせっかく楽しんでいる時間なんだから邪魔をするのはまずいでしょう…!?はやいところクエストに行きましょう…!」

 

「ん…?そっか〜…、コノハからよくそういう面白い話を聞くからレイリスにも聞いてみようと思ったんだけど…。

 

それじゃあ、またの機会にするよ!じゃあ2人は楽しんでね〜!」

 

 

そう言ってラディスとセレスはクエストに赴いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「お〜い、ヘタレ〜。 あんまりキスしすぎると責任が〜とか赤ちゃんがどうとか〜ってコノハが言ってたからな〜。

アタシはよくわからんけど、ヘタレも気をつけてな〜。」

 

「ラ、ラディス!何を言ってるんですか!?」

 

 

 

 

 

去り際にそんな声をかけられて、俺はユクモラムネを噴き出した。

 

 

「ア、アハハ…。なんだか台風みたいだったね…。

 

それにしてもコノハちゃんったら……。

あとでクルルナやササユさんに頼んでシメて貰わないとね…。」

 

 

レ、レイリスさん…?闇を感じる笑顔はやめてもらいたいのですが…。

 

 

「あっ、ごめんごめん!ちょっと考え事してたよ!

それじゃあ…次はどうする?

あんまりやりたいこともなくなってきたし…。

 

そういえば今日はユクモ村の花火があがるみたいなんだよね!

ちょっと案内したいところがあるんだけど……いいかな?」

 

 

レイリスがどこかモジモジしながら俺に尋ねてくる。

アレな感じではないなら俺はOKなんだけれど…。

 

 

「え、いいけど…。どこに行くんだ?」

 

「え〜っとね…。 ササユさんに頼んでちょっと貸し切りの温泉を頼んでおいたんだ…。

 

……ダメかな?」

 

 

 

………oh。……温泉ですか。

 

俺が混浴に入ると何かしらトラブルが起こるから避けたいところなんだけれど…。

 

 

 

「俺は全然OKかな。

……まぁアレな事をしないってならだけど。」

 

 

「うん!それなら大丈夫だよ!

 

人のいないところでお話したいだけだしね!」

 

 

うん、これなら大丈夫そう。

 

それじゃあ温泉に行ってみることにしますか。

 

俺達は温泉に向かって足を運びだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

そうとしたんだけど、急に声をかけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ!そこのカップルさん!ちょっとウチの商品を見ていってくれないかい?」

 

 

声をかけられた方に顔を向けると、そこには如何にも胡散臭そうな雰囲気を醸し出した露天商があった。

 

………てか、こんなところに露天商なんてあったか?まるで一瞬で此処に現れたような…。

 

 

「カ、カップルだなんて…!照れちゃうなぁ…。

 

……でも胡散臭そうなお店だね。どうする?迷子君?」

 

 

「ちょ、ちょ!ちょいと待ってくれ!

これでも品質には自信があるんだ!少しでいいから見ていってくれないか?」

 

 

そう言って露天商は品物を広げた。

 

すると、そこには様々な装飾品が並べられていた。

 

 

「えっへん!なかなかのものだろう?

数は少ないけれど、品質は保証するよ!」

 

 

なんだこれは…? ただキラキラしてるだけじゃないか…。

 

 

 

なんて思っていたけれど…。

 

 

「……えっ?これってエルトライト鉱石の加工品ですか?」

 

 

レイリスが驚いたような声をだした。

 

 

「えっへん!お嬢さんにはこのアクセサリーの価値がわかるみたいだね!

 

そのとーり!数々のツテを使ってついに出来上がった希少鉱石の加工品!

これほどの質のアクセサリーは世界を見てもなかなか無いとの自負があるね!」

 

 

…マジかよ。胡散臭そうなクセして品質は一流なのかいな。

 

………今気づいたんだけど、この露天商。なーんか聞いたことあるような声してるんだよなぁ。

 

 

「というわけでそこのお兄さん!彼女に1つ、プレゼントでもどうだい?

私もいっしょに品定めをしてあげるよ?」

 

「おっ、迷子君からのプレゼントかぁ。

そんなのがあったら嬉しいなぁ〜。 センスが感じられるものだったらいいなぁ〜。」

 

 

そして、露天商とレイリスのおかげで自然と俺がプレゼントを買う流れに。

……この露天商やりおるな。

 

まぁ、普段お世話になってるお礼かな?

今回は買ってあげることにしよう。

 

 

「ほいほい…。そんじゃあ選ぶからレイリスは一旦離れといてくれ。

 

さて、露天商さん。どんなのがいいかね?」

 

「そうだねぇ…。彼女は燃えるような赤い髪が綺麗だから…。

こんなのはどうかな? 火竜を象ったエルトライトのネックレスさ。」

 

 

そういって渡されたネックレスは、燃えるような光沢を放っていた。

おぉ、綺麗じゃんか。

 

 

「うん、じゃあこれにするよ。値段はおいくらかな?」

 

「これはなかなかの上物だから、60000zは下らないかな…。」

 

 

高ッ!? ……はぁ?ボッタクリじゃねえか!

 

 

「いやいや、これはそれに見合う価値はあると思うよ?

何より彼女の笑顔を見れるなら安いものだとは思わないかい?」

 

 

う、うぅん? そう考えると安いような…。

 

 

「ほらほら、善は急げっていうだろう?

早く彼女にプレゼントしてあげなよ?それにぶっちゃけお金には困ってないんだろう?

装備を作り終えたハンターなんてそんなもんでしょ。」

 

 

おいおい、メタメタしい発現は控えなさい。

な〜んか納得いかないけれど、お金には困っていないのは確かだ。

 

よし、決めた。

 

 

「よし、買うよ。 なんか綺麗な包みとかある?」

 

 

そう言うと、露天商はニヤリと笑い

 

 

「あぁ、もちろん。 シンプルに気持ちがこもっていると伝わるようなヤツを用意させてもらおう。」

 

 

そして、露天商はネックレスを包み俺に手渡した。

 

 

「ありがとう。そんじゃあプレゼントしてくるわ。」

 

「あぁ、頑張ってくれ。あと最後に1つだけ……

 

 

そう言うと、露天商は俺に近づいてきた。

 

……なんだなんだ?

 

そう訝しげに思ったのも束の間、

 

 

 

「別にクエストを失敗したからってそう落ち込むことはないさ…。

一応様子を見に来てみたけれど、仲間達のおかげで気を落としている様でも無いみたいでよかったよ。

 

私はこうやってたまに君の側に現れる。

けれど、気にせずに頑張ってくれ。

 

期待しているよ。

 

 

……ただし、君が君らしく頑張れなくなったらその時は何が起こるかはわからないけどね。」

 

 

 

そう呟かれた。

 

 

 

「…ッ! アンタ…!」

 

「さて、それじゃあしばらくは会うことは無いだろう。

 

ま、君らしく頑張ってくれ。」

 

 

露天商はそう言うと、その姿を一瞬で変えた。

 

 

 

 

胡散臭そうな外套姿から、アークSシリーズの防具へと。

 

 

 

 

そして、瞬きする間にその姿は消え失せた。

 

 

 

 

 

 

………ドッキリはやめてくれよ。なんか気になることも言ってたし…。

 

でも…いいものをくれたな。

 

 

 

 

 

「迷子く〜ん。まだかな〜?」

 

 

おっと、レイリスを待たせてるんだった。

 

 

「はいよ〜。

ほい。こんなのを選んで見たんだけれど…どうですかね?」

 

 

そう言って俺はネックレスをレイリスに渡した。

 

 

「……わぁ。……綺麗だね。

 

………大事にするよ。ありがとう。」

 

 

うん、喜んでくれたみたい。早速つけてくれてるし。

 

ネックレスはレイリスの胸のあたりで、淡い真紅の輝きを放っている。

 

…天使さんったらいいセンスしてるじゃないか。

 

 

「あれ?露天商の人はどこに行ったの?」

 

「あぁ、きっと忙しいんだろうな。すぐに消えて行っちゃったよ。」

 

 

そう教えると、レイリスは残念がっていた。

お礼を言いたかったみたいです。

 

でもそんなことするとあの天使さんは調子に乗りそうだ。

 

 

「さて…それじゃあ今度こそ温泉に向かいますか?」

 

「うん。そうしようか。それじゃあ出発!」

 

 

俺達は改めて、集会浴場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「こんな所貸切できるって…レイリスさんったら権力あるのね…。」

 

「や、やだなぁ! ちょっとギルドの人達にも顔が利くだけだってば!」

 

 

 

レイリスに案内された温泉は、ユクモ村を一望できる高い場所にある、静かな露天風呂だった。

 

こんな場所はゲームだと来れなかったなぁ…。

 

景色が素晴らしい。

というか、ユクモ村の夜ってすごい綺麗だ。

 

全体的に優しい感じの灯りに照らされていて見てると心が落ち着く。

 

 

「う〜ん…今日は花火が上がる日だって聞いてたんだけどなぁ…。

 

……あっ!ほらほら!花火だよ!」

 

 

 

夜空に一筋の光が走り、消える。

 

そして、夜空に大きな光の花が咲いた。

 

 

 

「おぉ…、すっげぇ。 綺麗だな…。」

 

 

その後も花火は打ち上げられ続けた。

 

夜空が光の花で彩られる。

 

俺とレイリスは言葉を出す暇もなく、食い入る様に花火に見入っていた。

 

 

 

「……迷子君。 さっき、なんで1人で金雷公の狩猟に向かったのかって聞いてくれたでしょ?」

 

 

レイリスが不意に喋り始めた。

 

俺は黙ってその話に耳を傾けることにした。

 

 

「私ね……強くなろうと思ったんだ。

 

今まででも、それなりの力は持てていたと思う。

それこそ、『英雄』と呼ばれる位には。」

 

 

「けれど、迷子君は私よりずっと強かった。

 

正直、怒り喰らうイビルジョーを回復アイテム無し、1人だけの状況で捕獲に持ち込むなんて次元が違う強さだって感じたんだ。」

 

 

……次元の違う強さか。

……俺は自分がそこまで強いとは思ってないけれどなぁ。

正直レイリスやクルルナより強いかと言われれば何とも言えない。

 

そんなことを考えながら、俺は話の続きを聞く。

 

 

「だから、強くならないとって思ったんだ。

 

このままじゃ迷子君を守れない… ネコちゃん達からの依頼も達成できないからね。

 

それで、昨日は金雷公に1人で挑んだんだ。」

 

 

「無事に勝てたわけだけど…。 私、その場で思ったんだよね。

 

迷子君を……好きな人を守るなら『英雄』だと力不足だ、

『モンスターハンター』なんて呼ばれるくらいじゃないと…ってさ。」

 

 

「だから決めたよ。

 

私、『モンスターハンター』と呼ばれるようなハンターになる。

世界中に、ほんの数人しかいない存在らしいけれど…それでもその領域に到達してみせる。」

 

 

レイリスの放ったその言葉はどこか力強かった。

何というか…覚悟を感じられた。

 

すると、レイリスはこちらを向いて微笑んだ。

 

 

「………私の話を聞いてくれてありがとう。

 

最後に1つだけ言いたい事があるんだけど…いいかな?」

 

 

ん?何だろう。 別にぜんぜん構わないけれど…。

 

すると、レイリスは真剣な表情になってこちらを向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君……。私は迷子君が……貴方のことが好きです。

 

だから……これからもずっと私の……私達の側にいてくれますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………胸の中で何かが跳ねた。

 

………うまい言葉が出てこない。 考えようとしても頭が全然働かない。

………あぁもう、なんで俺はこうヘタレなのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………約束する。……と言いたいところなんだけど、俺では決められないことかもしれないんだ…。」

 

 

……あの天使さんは、俺をこの世界に転生させてくれた。

 

けれど、それはまた同じようなことを俺にさせるかもしれないということ。

 

正直、さっきの天使さんの言葉はゾッとした。

 

 

「もしかしたら………行き先も告げずに、急に消えてしまうかもしれない。

ちょっと窮屈な身分なもんでさ…。」

 

 

「………でも、俺だってレイリスと。

 

みんなと一緒に楽しくやっていけたらいいなって思ってるよ。

 

だから、もし俺が抱えているものをハッキリと終わらせる事が出来て、そこにみんなといれるって道が残っていたなら…。

 

俺はきっとその道を選ぶと思う。」

 

 

「だから……、もし約束できる時になったら改めて言うことにするよ。

 

そういうことでお願いできるか…?」

 

 

俺はそう応えた。

 

 

 

「………ふふっ。 ………はぁ。 言質はとれなかったかぁ…。

 

迷子君は強敵だね…。今まで相手してきたどんな相手よりも攻略が難しいや…。」

 

 

レイリスはどこか残念そうな…、そして憂を帯びたような顔で呟いた。

……すいません。けれど、複雑な事情があるんです。

 

 

「うん、わかりました。 ゆっくり待たせてもらうことにするよ。

 

私も『モンスターハンター』って呼ばれてからのほうが色々と気分がいいしね。

 

……でも迷子君も自身のことで悩みがあったりしたらちゃんと相談してね?

私達はパーティなんだからさ!」

 

 

……ありがとう。 本当にいい仲間に巡り会えたよ。

 

 

「あっ!あの花火でっかい!いやぁ〜綺麗だね!

迷子君もこの露天温泉気に入ってくれた?」

 

 

うん、素晴らしい場所だと思います。

 

 

「それは良かった!

 

それじゃあしっかり疲れを抜いて、また明日からのクエストに備えないとね!」

 

 

またレイリスはいつも通りの元気いっぱいの調子に。

 

……ハッキリとした返事を返せなくてごめんな?

いつか必ず、改めて約束するからそれまで待っててほしい。

 

 

 

「た〜〜まや〜〜!!」

 

 

 

隣で叫んでいるレイリスを見る。

 

 

『モンスターハンター』か…。

 

今までは1人で頑張っている感じだったけれど、頼りになる仲間も同じ高みを目指しているみたい。

同じ場所を目指すなら手を取って頑張りあえる。

 

なんだか一歩前へと進めたかな?

 

それに…自分のためだけじゃなく、レイリス達のために頑張るってことになるんだ。

 

自分以外の何かのために頑張るとなった時の俺は、なかなかの力を出せちゃうんですよ?

 

 

 

 

「絶対にその高みに辿り着いてやるからな…。

待ってろよ…?」

 

 

 

 

夜空には、一面に光の花が咲き乱れる。

 

 

咲いては枯れてまた咲くことを繰り返す、夜空を彩る花を見ながら、俺は新たな決意を胸に固めていた。

 

 

 




ほい、デート回…?でした。
うまく纏めて終わらせる事がすっごく難しい…。
綺麗に〆て終わらせれる作者さんは本当に尊敬します。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。

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