「あら、こんなところにいたのね。」
ふと少女から声をかけられた。
うん、月を眺めるのは好きだからさ。特にここは高い場所にあるんだから絶景だ。
「あぁ、あの3人からは逃げ出して来たよ。
まぁ…3人といっていいのか微妙だけどさ…。ありゃ3匹って言った方が正しくないか…?」
そう言葉を返すと少女はクスリと笑った。
「フフッ、まぁそう言わないであげて? あの子達も貴方みたいな人を見つけられて楽しいのよ。
『こんなに楽しい毎日は初めて!』って言ってたわ。」
少女は愉しげに言葉を落とす。 うん、まぁオレがいるおかげでみんなが楽しいのなら万々歳かな?
「………君も大変だな。 いつも我慢してるように見えるよ。」
少女にそう言葉をかける。
オレがみんなと一緒になってからそれなりの時間が経ったけど、この少女は周りのみんなとは違い、いつも何かを我慢したように一歩退いているような…そんな気がする。
「………だって、それが私の役割だもの。 1番上に立つ者としてのね。
『アナタ』がもっと頑張ってくれれば私も楽しくいられるんだけどね?」
そういって少女に睨まれる。
す、すいません…。いや…だって、オレって立場弱いじゃんか。 頑張ろうにも頑張れないって。
それにこればっかりは俺がどうしようと解決しないでしょ。
「あの天使さんも、もうちょっと気前が良ければいいんだけどなぁ…。」
「ワガママ言わないの。 あれは理外の存在よ。
下手したら何をしでかすかわからない。
最悪、この世界だってきゅっとしてドカーンよ?」
おぉ…怖いですね。 どこの吸血鬼だ。
「まぁ…貴方に何か言っても始まる話でもないかしら? 気長に待つことにするわ…。
それに、貴方にだって出来ることはあるはずよ? 毎日ハンターとしての腕を磨けば、いずれ来る日のためにはなると思う。
その時には、一緒に楽しみましょうね?
最高の舞踏会を開こうと思ってるんだから…。」
そう言って、少女は消えていった。
ハハ…最高の舞踏会ね…。武闘会の間違いなんじゃないだろうか。
まぁ、ハンターとしての腕を発揮できるんならウェルカムです。
ただ…こればっかりはどうもなぁ…。
あの少女が我慢しているのは見てるこっちも少し辛い。けれど、オレにはどうにもできないんだよなぁ…。
オレがどうこうしようと何も変わらないのがちょっと悔しい。
『モンスターハンター』か…。
早い所、その高みにいってもらいたいところだけど…。
てか、オレだって頑張らないと。 まだまだ力は磨けるんだから。
舞踏会に招待された時のために頑張っとかないとね。
「くあぁぁ…。 流石に眠い…。 オレも寝るかぁ…。
……あの3人はもう突撃してこないよな?」
3人に少しだけ怯えながらも、オレは自分の寝床へと向かった。
「おおっ。すごいな。 なんていうんだっけ…。月食だっけか?」
空には、欠けたままの月が光り輝いていた。