オトモ視点…というほどオトモにスポットが当たってない気もします。
更新遅くなってしまい、すみませんでした。
1回書き上げたのが吹っ飛んだ時は頭を抱えました。
夕焼けの空の中、心地よい風が静かに吹き抜ける飛行船の甲板の上。俺とマグロは真剣な表情をして向かい合っていた。レイリスとルファールさんはすやすやと眠っている。起きているのは俺とマグロだけだ。
「………何でお前がそのこと知ってんだ?」
帰りの飛行船の上で、マグロが俺に出した問いかけ。それは、俺がこの世界の人間じゃないことを知ってないと到底出てこないような質問で…。俺はすぐに言葉を返すことができなかった。
「………やっぱりあの天使さんの言う通りなんだニャ」
「えっ? お前、あの天使さんのこと知ってるの? 前に夢で初めて会ったとか言ってたんじゃ…?」
そうマグロに返すと、マグロは落ち着いた様子で俺の側に座った。
「旦那さん。 少し、ボクらの昔話を聞いてほしいニャ」
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
『もし…もしもだよ? 俺がみんなと一緒に居られなくなったら、みんなは流れのオトモになっちゃうだろ?
そうなったときに困らないようにさ、みんながニャンターとしてもやっていけるようにしっかり育て上げるのが雇い主としての役割だと思ってるんだ。』
旦那さんはお気に入りの操虫棍の手入れをしながら、そうボク達によくいっていたニャ。
龍歴院所属ハンターとして、G級最前線を往く旦那さん。 そんな人がボク達にかけてくれた言葉は重みがあって…それでいて優しさに溢れたものでしたニャ。
『これからちょいと重要な依頼があってね。 なんかとある虚城の調査らしいけどさ…。 まぁパパッと終わらせてくるよ。といっても結構長丁場の調査なんだけどな…。お土産にココット村のトロサシミウオでも持ち帰るから楽しみにしてろよ?』
自分だけでなく周りにも活気が溢れる様な明るい笑顔でそう話す旦那さん。
いつものように操虫棍を携えて、調査へと出発していったのニャ。
旦那さんが消息不明になったとの報せを聞いたのは、それから1ヶ月後の話ですニャ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「あ、ありがとうございました! 正直ニャンターってどうなのかなぁ…?なんて思ってたんですけど、皆さんすごい技術ですね!見てて惚れ惚れしました!」
「ありがとうニャ。 ニャンターも捨てたもんじゃないのニャ。 もしハンターさんがオトモを雇ったら、今回の経験を活かしてニャ〜」
少し躓いてしまっているハンターさんのお手伝いということで、ショウグンギザミ狩猟のお手伝いを終えたボクとイクラ。
ハンターさんは無事にクリアすることができて、嬉しそうでしたニャ。
「それじゃ、ボクらとはそろそろおさらばニャ。 ハンターさんもがんばってニャ〜」
イクラがそうハンターさんに答え、ボクらはその場を後にしようとしましたニャ。
だけど……。
「あっ!すいません! ネコさん達の雇い主さんに会うことって出来ますか!? 私、今回ネコさん達と一緒にクエストやって、オトモ雇用してみようかな…なんて思ったんです。 アドバイスをいただけたら嬉しいなと思ったんですが…」
その言葉を聞いたイクラの表情が一瞬曇ったのを、ボクは見逃さなかったニャ。
「だ、旦那さんは今ちょっと忙しくて…! しばらく手が離せないのニャ! ごめんニャ!」
「あっ…い、いえ!出しゃばってすみませんでした! 今回はありがとうございました!」
少し変な空気になってしまったけれど、笑顔を返してくれたハンターさん。
ボクらも少しぎこちない笑顔でハンターさんの背中を見つめていたニャ。
「……イクラ。 旦那さんはもう帰ってこないと思うニャ。 イクラも薄々わかってるニャ?」
「そんなことはとっくにわかってるのニャ。
ただ……認めたくない気持ちがあるだけニャよ」
旦那さんが消息不明になった報せを聞いてから更に1ヶ月。
ボク達はニャンターのお仕事や、他のハンターさんのお手伝いなんかをしていたニャ。
さっきみたいに誰かの助けになれるのならオトモ冥利に尽きるけど…その近くに旦那さんがいないから、ボク達の顔はどこか沈んでいたのニャ。
「ほら、うじうじした顔してたらいいことだって逃げていってしまうニャ。 ボクだって悲しいし納得いかないところもある…。 なんなら旦那さんの捜索をしたい気持ちだってあるニャ。 だけどどうにも出来ないのニャ…」
「そうだニャ…」
沈んだ顔になってしまったイクラにそう声をかけるボク。 ボクだって悲しいしやりきれない気持ちはあるけれど、どうにもならないことだってある。 旦那さんはボク達に立派なニャンターとして頑張ってほしいと思ってるはずニャ。
「どうニャ? 久々に美味しいものでも食べて気分を上げないかニャ?ほれ、あそこにいい感じのサシミウオが売ってるニャ。 帰りに少し摘んで行かないかニャ?」
「ニャ〜…そうするニャ〜。 マグロ、ありがとうニャ」
というわけでボクらは帰り道にサシミウオを買って帰ることにしましたニャ。
お店の親父さんがオマケにモスジャーキーをつけてくれたニャ。 得したニャ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「んニャ…。 サシミウオも美味しかったけど、モスジャーキーもなかなかいけるニャ。 あの親父さん、粋な計らいをしてくれたニャ」
ベルナ村の人が集まるところから少し離れた場所にある高台。
村を一望できるその場所で、ボクとイクラはモスジャーキーをモシャモシャしてたのニャ。
「………マグロ、旦那さんは今どうしてると思うニャ?」
「………きっと呑気に操虫棍をぶん回してるに違いないニャ。ボク達の気も知らずに気楽なもんだニャ」
「ニャハ…旦那さんらしいニャ」
人気のない場所でそんな会話を交わすボクら。ただぼんやりとこんなことを話しているだけでも案外心は落ち着くもんだニャ。
旦那さんはきっともう帰ってこないけれど、それも受け入れなきゃならない。
ハンター稼業というのはそれだけ危険なものなんだからと旦那さんがいつも言っていたニャ。
「さて……そろそろ帰るかニャ? オトモ広場でみんなも待ってるニャ」
「そうだニャ。 みんなにもサシミウオとかは買ってあるから早く届けないとだニャ」
美味しいものも食べたし、気分はスッキリ。
早い所オトモ広場に戻って明日に備えよう。
そう思ったときだったニャ。
「やあ、優秀なオトモさん達。少しだけお時間頂戴してもいいかな?」
「うニャ?」
帰路に就こうとしたボクらの目の前に、急に人が現れたのニャ。
おかしいニャ…? さっきまで人の気配なんてなかったはずなのに…。
目の前に現れた人はハンターみたいだけど…武器を持っていなかったニャ。
「残念だけど明日にしてほしいニャ。 今日も一仕事終えて疲れてるところなのニャ。 ボクらはオトモ広場にいるからまた明日来てニャ〜」
「えっ…ちょっ…! 待て待て! 少しくらい話を聞いてくれよ!」
だけど、ボクとイクラはその人をスルーすることにしたのニャ。
「おたくはハンターやってるのかニャ? アークS装備はなかなか強い装備ニャ。 だけど…アナタの装備には装飾品が一切ついてないニャ。 旦那さんは『古龍の装備してるのに穴空きの人はちょいと問題がある場合が多いから注意だよ?』ってよく言ってたニャ」
「あ、あのヤロウ…。 い、いや…これは教育がしっかり行き届いていると褒めるところだな…これ位で怒ったら天使失格だ…。こらえろ私」
天使…? 何のことなのかサッパリだニャ。
「あ〜…。まず装備のことはおいといてくれ。それっぽいのを作ったばっかりだからさ」
「……まぁ小話くらいなら構わないニャ。手短によろしくニャ」
「うん、ありがとう。 それじゃあまずは……。
結論からズバッと斬り込んじゃおうか」
さて…どうにも怪しい人だけど、どんな話をするのか…? ボクはそこまで期待せずに聞き耳を立てたニャ。
「私が話したいのはキミ達の旦那さんについてだ。
まず…初めに嬉しいニュースを言っておくよ。
キミ達の旦那さんは生きている。 今も元気に操虫棍を振り回してるよ」
アークS装備の謎の人は、そんな言葉を放ったニャ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「………え? あの天使さん、お前らにもう会ってたの?」
「うニャ。 そうだニャ。 出会った次の日にもボクらと話をするために、オトモ広場にいきなりパッと現れたニャ。どうやったのか聞いたら『ヤードラット星の人たちに教えてもらった』とか言ってたニャ。
よくわからない人だったニャ〜」
急にネタをぶち込んでくるな。しかも地味に分かりにくいネタだなおい…。俺以外誰もわからないじゃねーか。
「じゃあ…俺の事も…。俺が1回死んでるってことも、どうやってこの世界に来たのかとかも、その時天使さんに聞いたのか?」
「まぁそういうことになるニャ。 初めてココット村で会った時は、旦那さんが所謂生まれ変わりだってことは知っていたニャ」
なるほどねぇ…そういうことですか…。
「……なぁ、今の話聞いてて思ったんだけどさ」
「何ニャ?」
さっきまでの話を聞いて、思ったことがある。少しだけ口には出しにくいけど…それでもこれは聞いておかないといけない。 そう思った。
「今の話に出て来た旦那さんって……。俺のことじゃないよな?」
「………そうだニャ」
「………つまり、俺はお前らの本当の旦那さんではないってことか」
「……………そうなるニャ」
マグロはどこか気まずい様な顔をして答えた。 あぁ…やっぱそうか。コイツらを雇ったゲームの話。 それなのに、こっちの世界に来たばっかりの俺がいきなりコイツらの旦那さんなんて都合のいい話があるわけない。
実は心のどこかで、コイツらの本当の雇い主は別にいるんじゃないかなんては思っていた。
「…なぁマグロ。なら、何で俺のことを旦那さんって呼んでるんだ?」
「…それは、天使さんからあることを話されたからニャ」
あること…?一体何なんだ……。
「今の旦那さんは、ボクらの本当の旦那さんの恩人らしいのニャ。 本当の旦那さんがあそこまでの凄腕ハンターになったのは、今の旦那さんのおかげだといってたニャ。」
………俺のおかげ?
俺、そんな人に何か手助けをした覚えは無い………いや、待て。
「マグロ、お前らの本当の旦那さんについて質問がある」
「うニャ。なんでも答えるニャ」
今までの話を聞いた限り、その本当の旦那さんとやらに心当たりがあるとすれば…。
「装備はどんなものを身につけてた?
もしかしてシルバーソルZメインに武器はセルレギオスの操虫棍じゃないか?」
「う、うニャ? なんでわかるのニャ?」
……ビンゴ。
「あ〜…、マグロ。 俺さ、お前らの本当の旦那さんのこと知ってるわ」
「本当かニャ!?」
「うん、本当。 んで…考えてみれば確かに俺はその人の恩人であるし、その人は俺の恩人でもあるかな」
「うニャ…? 何言ってるのニャ?」
「まぁ少し難しい話だからそれは置いとこう。 で、他に天使さんとはどんな話をしたんだ?」
「え〜と…。 まず、今の旦那さんについてのことだったニャ。 『キミ達の力である人物を手助けしてやってほしいんだ。 旦那さんと似てる人だからそんなに拒否感もないはずだよ』みたいなことを言われたニャ」
なるほど…。つまり俺がコイツらと出会えたのは天使さんの手引きってことかな?
「まぁそうなるニャ。 実際、今の旦那さんは元の旦那さんに性格も似てるから全然馴染めたニャ」
馴染めたなら良かった。 本当の雇い主じゃないのは少しだけショックだけど、コイツらとはなんだかんだ楽しくやれたからそんなのは気にするほどでもない。
「それと…これが一番大事なことなんだけど…。 旦那さんが頑張ってれば、元の旦那さんといつか巡り会えるらしいニャ」
……なるほどねぇ。
俺が頑張ればコイツらの旦那さんに会わせてやれると…。
「なぁマグロ。 お前らはやっぱり元の旦那さんに会いたいか?」
「………」
マグロは少し逡巡するような顔をした。
「………会いたいニャ。 もし、あの天使さんの言ってることが嘘だとしても…。 もしかしたら今の旦那さんに失礼かもしれないけど…。 ボク達はあの旦那さんに育て上げられて、立派なオトモになったニャ。もしもう一度、元の旦那さんに会えるなら会いたいのニャ…!」
マグロは堰を切ったように喋った。
……やっぱり自分をここまで育ててくれた人だもんな。謂わば育ての親だ、会いたいのは当然だろう。
………よしきた。
「オーケー。 んじゃあ俺に任しとけ。 絶対に旦那さんに会わせてやるからさ。 期待しとけよ?」
「……いいのかニャ?」
「あぁ、俺もお前らには随分と世話になってたからな。 そのお礼だと思ってくれ。ただ、俺1人だと厳しい場面もあるかもしれない。その時は協力してくれよ?」
「もちろんニャ。一流のオトモにかかればクエスト成功間違い無しニャ。 大船に乗ったつもりで大丈夫ニャ」
よし、相変わらず頼もしいな。
………俺が頑張れば旦那さんに会わせてあげれる…か。頑張れば『モンスターハンター』にだって近づける。 コイツらを元の旦那さんに会わせてやることだってできる。願ったり叶ったりじゃないか。
どんな困難だってばっちこいだ。逆境とかそういうのは大好きな性分なんです。
「……旦那さん。 ボクもちょいと疲れたニャ。 少し寝ることにするニャ〜…」
「おう、ゆっくり休んどけ」
マグロが目を眠たげにして俺にそう言ってきた。確かに緊張した感じで話してたからなぁ…。 俺も少し眠いや…。
「俺も少し寝るか…。くぁぁ……」
空は一面夕焼け空。 寝るには明るいかもしれないけれど、少しくらいならいいだろう。
新しく固めた決意を胸に隠しながら、俺は浅い眠りについた。
飛行船の甲板の上。
全員が寝ているハンターのパーティの内、1人が起き上がった。
「……………生まれ変わりに別の世界、か。
迷子君、喋ってくれないと思ってたけどそういうことだったんだね………」
少し寂しげな声でそう呟いた女性。
燃えるような赤い色をした髪が、甲板の上を吹き抜ける風でなびいていた。
少しずつ最終話に向けて進めていってます。
終わるのはいつ頃かなぁ…。 更新頻度をなんとかして上げたいところです。
でも次はアカム武器の方を更新しそう…。気長に待っていただければ幸いです。
感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。